宇多田ヒカルの新作「パッパパラダイス」を深掘り、Spotifyで制作秘話を語るーー 『New Music Wednesday [Podcast Edition] [Music+Talk Edition]』ロングインタビュー × SPICE連動記事

インタビュー
音楽
2026.5.6

Spotifyの人気ポッドキャスト『New Music Wednesday [Podcast Edition]』のスペシャルインタビューシリーズとSPICEの連動企画。今回は、5月6日(水)に新曲「パッパパラダイス」をリリースした、宇多田ヒカルが約3年ぶりにゲストに登場! 『ちびまる子ちゃん』と作者・さくらももこへの想いやAIと音楽について、好奇心と創作の関係性など、番組ナビゲーターの竹内琢也が深掘りしていく貴重なロングインタビューとなった。SPICEでは、Spotifyで配信中のエピソードをダイジェストでお届け。インタビュー本編は、ぜひSpotifyで楽曲と合わせてチェックしてみてほしい。



ーー前回は約3年前、2023年の夏にインタビューを行い、楽曲の書き下ろしや、音楽と建築の類似性などについてお話しいただきました。そして、本日5月6日(水)にリリースされた新曲「パッパパラダイス」が、3月29日(日)よりアニメ『ちびまる子ちゃん』のエンディング主題歌に採用されています。『ちびまる子ちゃん』は9歳の時、アメリカから日本に引っ越してきたばかりの頃に出会い、日本の日常と世界どこでも変わらない人間味を感じさせてくれる作品だとおっしゃっていましたが、詳しくお聞きしてもいいですか?

すごく新鮮というか、それまで知っていたアニメと全く違うものでした。みんなの腹黒いところや自分勝手なところを自然に描いていて、ユーモアのセンスもダークだったりして綺麗事がない感じ。でも、素直で純真な優しさもいっぱい詰まっていて、そりゃみんな感情移入するし、親しみを持つし好きになるだろうと思いました。

ーー作品は漫画から入ったんですか?

どっちからか覚えてないんですよね。でも『りぼん』(集英社)は読んでいましたし、さくらももこさん、岡田あーみんさんは直撃世代なので、本当に好きでした。自分も10、11歳ぐらいの時に『りぼん』に漫画を投稿したんですよ。

ーー米津玄師さんとの対談でも話されていましたよね。

「ギャグ漫画」と言ったら米津玄師さんが「ギャグ漫画!?」とすごいびっくりされて(笑)。それはさくらももこさんと岡田あーみんさんの影響でしたね。それぐらい好きだったし、私があまり知らない日本の日常という面でも(影響は)ありました。

ーー日本の日常が感じられるというのは?

私の両親はあんまり“普通”の日本人じゃなかったんです。『ちびまる子ちゃん』に出てくるお父さんやお母さんとは全然違っていて、まだ日本人が髪を染めてないような頃に、お母さんは「メグ・ライアンにしてほしい」とか言って金髪にしてパーマをかけて帰ってきたり、お父さんも半ズボンを履いて批判されたりとか。両親が西洋育ちで、西洋圏の影響が濃かったので、『ちびまる子ちゃん』はもっと上の世代、おばあちゃんと過ごした思い出と被るところがありました。おやつにカンパンや魚の骨を焼いたものを食べたり、部屋にこたつがあったり。でも、日本の学校には行ったことがなかったので、日本の校舎や、給食を子どもが配膳すること、教室の掃除を自分たちでやることも知らなかったんです。黄色い帽子もランドセルも、苗字で呼ばれることも知らなかった。日本で育ったら当たり前にある体験に馴染みがなかったんですよ。『ちびまる子ちゃん』を通じて、そういうものへの憧れも含めて「素敵だな」と思っていました。

ーー日本の日常を感じさせてくれる漫画でありつつ、世界どこでも変わらない人間味というのは、どういうことでしょう?

すごくドラマチックなこと、世界を救うヒーローや、信じられない悪人がいるような世界ではなくて。人間のちょっとした呼びようのない感情とか、ちょっとした気まずさとか恥ずかしさとか、「やだな、がっかりしたな」って気持ちとか、そういうものをすごく丁寧に繊細な目線で描いていることがスッと入ってきたんです。<シーン><たらーん>とか、そういうリアクションも友達と真似してやってましたね。

ーー前回のインタビューでは、書き下ろしについて「作品のために書くというよりかは、今自分の中にあるものをどう作品とリンクさせるか」とおっしゃっていました。今回はどういうプロセスを辿られたんでしょうか?

今回も基本的には同じなんですけど、作品に寄せるというよりかは作者に寄せる、作者と共感できる部分を感じて作っていきました。

ーーなるほど。作品というより作者なんですね。

映画やアニメのタイアップ曲があると「これはどのキャラ目線だ?」という考察や意見交換がよくありますが、すべてのキャラクターは作家自身の投影じゃないですか。作家がその物語を通して何をどんな感情を伝えたかったのか、作家の人生に想いを馳せるので、作中の細かいキャラとかはあんまり気にしない。今回もちびまる子ちゃんというキャラとしてではなく、ちびまる子ちゃんを作らざるを得なかったさくらももこさんの一生について考えました。彼女のほかの作品『コジコジ』やエッセイも好きで読んでいたので、漫画、歌詞、エッセイ、いろんなものを通して、私がさくらももこさんから感じ取ったものを、私なりのメッセージにしたい気持ちでしたね。

ーーさくらももこさんのどういう部分とリンクしたのでしょうか?

リンクしたのは歌詞の面ですが、さくらももこさんのエッセイって本当に面白いんですよ。昔から持ってる本に加えて、今回知らなかった本も読んで、改めて近くに感じたというか。とくに『おんぶにだっこ』という本が面白くて。痔になった話や、ポール・マッカートニーにインタビューする話とか、何かあった出来事を面白おかしく描いているエッセイが多いんですが、『おんぶにだっこ』はとにかく初期体験というか、一番古い記憶の話を描いているんです。

ーー人間としての?

そうです。「そんなちっちゃい頃の記憶持ってる人あんまりいないよ」と言われて描いてみたものの、本当にこれって面白いのかなと迷ったと、たしかあとがきに書いていました。それを読んで身近に感じたというか、繊細な子どもだったんだろうなと。人一倍いろんなことを気にしたり疲れたりしても、それを突破するパワーを持っていたり、彼女も息子が一人いてそれで仕事も続けているとか、シングルマザーでもあったり、そういう部分にも思わず自分を重ねていましたね。

ーー宇多田さんは「音楽を作る上で、言葉にできないような、自分でもアクセスできないような感情が出てくる」と話されていましたが、今回もこういうプロセスを辿っているということですよね。

そうですね。一番いつもと違ったのは、子どもへのメッセージを込められる場だということ。自分の子どもを含め、世界中の子どもたちに投げかけられる言葉があるなら何だろう? と考えた時、「心の自由をずっと忘れないで持っていてほしい」と。無理に周りに合わせなくてもいい。ある程度は協調性がないと辛いかもしれないけど、辛い生き方もそれはそれで素敵なんじゃないか。別に何が正解なんて誰にもわからないし、自分で決めることだから、自分にとって正解な生き方をできたらいいなと思って、心の自由を自分でも大事にしています。そういうメッセージから作り始めることはあんまりなかったですね。

ーーすべての大人はもともと子どもなわけで、これは大人にも向けられているのでしょうか?

はい、もちろん。人類です。

ーー宇多田さんは「新しい発見が出てきたら楽曲を完成と判断する」というのを聞いたことがあるのですが、今回はどんな感じだったのでしょう。

子どもに伝えたいことを意識したことで、私が人として一番大事にしてるのは「心の自由」だということに気づけました。それが自分を守ることでも周りを守ることでもあって、自分らしくいないと、周りにも自分らしくいてと言えないし。それが私が親から学んだ一番大事なメッセージであって、さくらももこさんから受け取った一番大事なメッセージかもしれません。

……つづく

さらにインタビューは、欧州原子核研究機構 CERN(セルン)に行った話や、歴史学者 ユヴァル・ノア・ハラリとの対談でのAIと音楽について。そして好奇心と創作・表現の関係性について広がっていく。詳細は、Spotifyにてチェックを!

取材=竹内琢也 文=SPICE編集部(岡島彩乃)

リリース情報

「パッパパラダイス」
(アニメ『ちびまる子ちゃん』エンディング主題歌)
2026年5月6日(水)リリース
 

Podcast情報

プレイリスト
『New Music Wednesday』
毎週水曜日・00:00配信

ポッドキャスト番組
『New Music Wednesday [Podcast Edition]』
#NMWポッドキャスト
 
『New Music Wednesday [Podcast Edition]』とは……
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