ジャンル「ブロークン」を掲げるBroken my toybox、ポップとロックがせめぎ合う音楽の源泉ーー「まだまだ僕たちは突き進んでいける」
Broken my toybox 撮影=山川哲矢
ジャンル「ブロークン」を掲げ、バンドサウンドに制限されないポップやロックを鳴らしてきたBroken my toybox。そんな彼らが7月1日にリリースしたミニアルバム『life』は、「人生」というあまりにも大きく、どこまでも普遍的な一語を発端に、自身のパーソナルな側面を吐露する一枚となった。それではなぜ、彼らはここまで包括的なキーワードを設定することができたのだろうか。その理由を、藤井樹(Vo,Gt)は「ライブハウスから大きな会場へのステップアップを表現できるタイミングが、今しかなかった」と語った。そう、Broken my toyboxは今まさにライブハウスを飛び出し、より広大な地平を描くための岐路に立っているのである。全国6ヶ所を巡る夏のツアー『箱庭へようこそ~Re:Parade~』、東京・Zepp Shinjukuへと向かう全9公演のツアー『箱庭へようこそ~ジオラマを抜け出して~』。2つのツアーを控えた3人に、『life』というアルバムと見据える景色について語ってもらった。
■Broken my toyboxは「人生そのものを鳴らしているバンド」
――Broken my toyboxの音楽は、ギターロックの形式にとらわれない豊かなサウンドを、藤井さんのボーカルによって1本に束ねている印象で。ハイトーンでの大きな波形のビブラートや中音域の儚げな気配を纏った歌唱の使い分けが素晴らしいなと感じています。皆さんは、Broken my toyboxをどのような音楽を鳴らしているバンドだと考えていますか。
藤井樹(Vo,Gt):ジャンル「ブロークン」を掲げて活動している以上、ジャンルにとらわれないことはもちろんなんですけど、同時に日本の古き良きJ-POPを汲み上げたり、J-ROCKの新しい代表格を作りたいと思っています。たくさんの人に聴いてもらえる耳馴染みの良いものを目指していますね。
――特定の音楽性にこだわらない作品を手がけつつ、メインストリームを目指していく手法を思い描いている背景は何なのでしょう。
藤井:幼い時からユーミン(松任谷由実)や椎名林檎を聴いてきたこともあって、いわゆる大衆音楽に育てられた一面があるんですよね。同じ感情や意味を伝えるにしても、日本語にはいろんな種類の言葉があるじゃないですか。だからこそ、色んな言葉を選ぶことができるし、みんなに受け入れてもらう方法もいっぱいある。そういう意味で、日本語の歌詞やそれを彩るメロディー、サウンドにずっと感銘を受けてきたっていう。これまで聴き続けてきた日本音楽のど真ん中が、僕のオリジンなんです。
藤井 樹(Vo,Gt)
――一つの感情に対して適切なワードを模索する際には、どのような思考を辿っているんですか?
藤井:昔からタイトルがフックになる形が理想的だと考えているので、制作はタイトルから始めることが多いです。思わず言いたくなる言葉だったり、まだ歌詞で使われていない単語だったりを探していますね。とはいえ、一過性になりすぎる言葉は選びたくなくて。10年後、20年後に聴いたとしても、きちんと伝わる歌詞にしなきゃなと。
――なるほど。高田さんと郷間さんは、Broken my toyboxをどのようなバンドだと考えていらっしゃいますか。
高田健太郎(Gt):要素が凄く多いからなぁ。……自分でも気づいていなかった感情に気づかせてくれるバンドですかね。デジャブというか、「言語化できていなかったけれど、そういう気持ちの時もあるわ!」と思わせてくれる。物語を聞いているみたいな感覚を与えてくれる一方、人生そのものを鳴らしているバンドだとも思っています。
郷間直人(Ba):一見、ジャンルも凄くバラバラに見えるんですけど、藤井の声と歌詞によってまとまりが生まれている気がしていて。僕は海外のポップパンクから影響を受けていることもあって、熱心に歌詞を読み解くタイプじゃないんですよ。そういうヤツでも、藤井の歌詞にはハマった。そこが武器なんじゃないかな。
郷間直人 (Ba)
――では、郷間さんが思う藤井さんのソングライティングの魅力を教えてください。
郷間:僕が好きなグリーン・デイ(Green Day)やオフスプリング(The Offspring)は、悲しい内容を強いメロディで歌い上げているんですけど、藤井もそれに近しいことをやっているんですよ。文字だけだと悲しい内容をすんげぇポップに昇華するし、フロアを見ても、楽しそうなのに泣き顔になっている、みたいな不思議な状態を作りだしている。悲しい気持ちをがっつり歌い上げてくれることで、肯定されるような気持ちになるんです。
――言っていただいた通り、悲しみに満ちた歌詞とファンタジックな演奏を連動させていくのがBroken my toyboxの音楽だと思うんですけれど、こうした方向性はどういった経緯で形づくられていったんですか。
藤井:結成当初はマイナーキーを使ったダウナーな音楽性だったんですが、年数を重ねていく中で、悲しい音楽だけで突き進んでいくことに限界を感じた瞬間があったんです。このままのロックを続けていくのが正しいのか、分からなくなってしまった。でも、そんな時に、自分のルーツでもあるポップなメロディーや歌詞を落とし込めるんじゃないかと気づいたんです。そのタイミングがあったことで、みんなで目指すべき方向性を再確認できて。その結果、サウンドと歌詞にギャップがあるような曲を届けられるようになってきました。
――悲しみだけを突き詰めていくことに、限界を感じたキッカケは何だったのでしょう。
藤井:それぞれが薄々感づいていたとも思いますし、ドラマーが脱退したことも大きかったですね。物理的に人数が変わってしまう以上、バンド自体も変わらなきゃいけなかった。バンドを続けていくこと自体は共通認識だったので、どうやって変化していくべきなのかを話し合っていったんです。
高田健太郎(Gt)
――その話し合いの中で、悲しみと寂しさをポップに歌い上げる現在の音楽性が醸成されていったと。
高田:というよりも、新しい形でバンドを再スタートさせる上で「どうやったらバンドとして格好良くなっていけるのか」を話し合っていった結果、その方向性が自然と見えてきたんです。曲の根幹は間違っていないという確信があったからこそ、トップチャートを走る人たちと戦うためにはどうするべきかを話し合って。PCを使って制作を進めたり、バンドサウンド以外の音色を取り入れたりしながら、ポップスらしいアプローチにも挑戦し始めたという。
藤井:もちろん、ドラマーが脱退してしまったことは悲しかったんですけど、同時に「さぁ、ここから何をしようか!」みたいな高揚感もあって。心機一転でやるからにはこれまでの延長線上の音楽をしていても意味がないし、ずっとやりたかった自分の中のポップを表現することにしたんです。
■Broken my toyboxの更なる飛躍を表明するミニアルバム『life』
――よく分かりました。では、7月1日(水)にリリースされたミニアルバム『life』についても訊かせてください。表題曲「LIFE」や「Diary」をはじめ、人生の喜怒哀楽が生々しく濃縮されていると思いますし、これまでのファンタジックな世界観だけではなかなか知り尽くせなかった人間らしさが表れた一枚だと受け止めています。改めて、どのようなミニアルバムになったと感じていますか。
藤井:これまでリリースしてきた『My Fantasia』や『THERAPY』は、定義したキーワードの中で遊んでいくようなイメージだったんですけど、今回は『life』という名前にした時点で、だいぶ大きなアルバムになるだろうと思っていて。この大きな言葉を元にしながら、構成する1個1個の要素を作品へ落とし込んでいくことにチャレンジしました。
――おっしゃる通り、今作は非常に包括的なタイトルを掲げていますが、責任が伴うこのワードを選び取れた理由は何なのでしょう。
藤井:むしろ、「今やっておかないといけないな」と思っていたんですよね。この先、もっと多くの人にBroken my toyboxを届けていくためにも、僕らがこれだけ大きいメッセージ性を持っているバンドであると伝える必要があった。どんどんライブのキャパシティが大きくなってきて、いわゆるライブハウスではない会場で演奏する機会も近づいている中で、ライブハウスから大きな会場へのステップアップを表現できるタイミングが、今しかなかったというか。「まだまだ僕たちは突き進んでいける」っていう意思を表示できる段階が、今だったんです。
――それこそ、2024年に発表された「Tasty」や「Stitch」は衣食住をテーマにした楽曲だったじゃないですか。人生のカギを握る3要素をそういう作品で歌ったからこそ、今回『life』というワードに到達したようにも思えたのですが。
藤井:あぁ……そうか、確かにそうかもしれないです。
郷間:俺はてっきりそうだと思ってたんだけど、違うの?
藤井:今おっしゃっていただいてから、確かにそうだなって(笑)。純粋に自分へプレッシャーをかけるためのコンセプトだったんですが、もしかすると、無意識の内に人生を細分化しようとしていたのかもしれません。
郷間直人 (Ba)
――そこは偶然の一致だったんですね。お2人は、今作を振り返ってみていかがですか。
郷間:ここ数年間の新体制での活動と、結成当初からやってきた音楽の両方があったからこそ、完成した一枚だと思っています。Broken my toyboxとして歩んでこなかったら、決して完成しなかった作品なんじゃないかな。特に「LIFE」なんかは、藤井の内面が表れていると思うし。昔から知っているヤツだからこそ、この人じゃなきゃ書けない歌詞だと思いましたね。
高田:どんどん大きな舞台へ立たせてもらっている中で、ダイナミックでありながらもロックバンドである、みたいなギリギリの美学が表れている作品になったと思っています。それこそ「LIFE」で言うと、「アラジンかな?」みたいなファンタジックなパートがあるじゃないですか。かと思えば、ロックバンド然としたアウトロもあって。ジャンル「ブロークン」を掲げてたこれまでの自分たちとは違って、ジャンル「ブロークン」を背負えるようなバンドになりつつあるんじゃないかなと。
――“ジャンル「ブロークン」を背負える”というのは、具体的にはどういったイメージ?
高田:言ってしまえば、これまでは自分たちに発破をかけるような側面もあったんですよ。ジャンル「ブロークン」って言いたい、みたいな。でも、そのスローガンを掲げて活動を続けてきた結果、色んな表現が板に着いてきたんですよね。もちろん、実験作ではあるんですけれど、どの曲も凄く体に馴染んでいるなって。
高田健太郎(Gt)
■藤井の一番寂しい部分を書き切った「LIFE」と「Diary」
――郷間さんと高田さんからも名前が出た「Diary」と「LIFE」の2曲について、もう少し教えてください。まずは「LIFE」から。表題曲である点や、先ほどおっしゃっていただいたバンド然とした音像と幻想的なサウンドが絶妙なバランスで交ざり合っている点を鑑みても、このアルバムを代表する楽曲だと思っています。この歌は、どういったところからスタートしたのでしょう。
藤井:『life』というミニアルバムを作る以上、これまで『THERAPY』に「THERAPY」、『My Fantasia』に「Fantasia」という曲を収録してきたみたいに、「LIFE」という同名の曲を入れること自体は確定だったんです。にもかかわず、この歌は、他の楽曲が出来上がるまで完成しなかった。というのも、次々にミニアルバムのピースが埋まっていく中で、「人生というものを、自分のフィルターを通して作らなきゃいけないんだ」と改めて思ったんですよね。加えて、自分が作り出す「LIFE」という楽曲が、ストレートな人生賛歌にならないのは分かりきっていたので。そういう意味でも、エモーショナルに聴いてもらえるサウンドや歌詞を用意していきました。
――なるほど。
藤井:あとは、アウトロの前にアコースティックパートを追加できたことも大きくて。やっぱり、僕は「自分の内心を誰かに理解してほしい」って気持ちが凄く強いんですよ。だからこそ、小さい部屋で鳴っているような音とともに、自分の一番寂しい部分を書き切れたのはよかったなと。
――先ほど「LIFE」はなかなか完成に至らなかったとも話していただきましたが、どういったピースが見つかっていなかったんですか。
藤井:小さい部屋から飛び出していくような広がりを見せていきたい、というアイデアはあったんですけれど、そこを意識しすぎていたんですよね。スケールを大きくするとは何なのか、が結局分からなくなっていた。でも、テレビから流れてくる音楽をたくさん聴いたり、ずっと残り続けている名曲を聴き漁るうちに、「自分はこういう音楽が好きなんだ」「こういう音楽は苦手なのかもしれない」という選択ができるようになってきて。その時に、ポロンとギターを鳴らした先で、自分がどうなっていきたいかを書けばいいと気づいたんですよね。もともとの自分と、これからなりたい自分を繋げればいいと分かった。そこから完成するまでに、時間はかからなかったと思います。
藤井 樹(Vo,Gt)
――「LIFE」だけではなく「Diary」も、藤井さんの原点を赤裸々に明かしているナンバーですよね。
藤井:そうですね。この曲は、とにかく自分が書きたいことを書いていったというか。万人受けする歌詞じゃなくても、自分に近しい人に理解してもらえたらいいなと思っています。だからこそ、人付き合いに対するネガティブな思考や1人の孤独感を書くことができましたし、自分を最も見つめ直せた歌になるのかなと。
――今のお話を踏まえて伺いたいんですが、そもそもこのミニアルバムに『life』というタイトルを掲げた理由は、より大きなバンドへ成長を遂げていくことを宣言するためだったじゃないですか。そんな作品の中に、自分のコアに最も近しい曲、言い換えれば非常に狭い範囲の曲を入れることにした訳は、なぜだったんです?
藤井:(間髪入れずに)高いところ、大きなところのスケールを示すためには、底辺の存在が必要だったんです。自分の一番小さいところと大きいところを同時に見せることで、グワーッと成長していく過程を見せたかったんですよね。
■「さらに大きなステージに向かっていく最中であることを伝えたい」(藤井)
――2026年11月からは東京・Zepp Shinjukuへ至る全9公演のツアー『箱庭へようこそ~ジオラマを抜け出して~』がスタートします。ユートピアや桃源郷といったテーマを大切にしてきたゆえのツアー名だと思うのですが、このタイトルを掲げた経緯を教えてください。
藤井:これまで全国各地のライブハウスを回ってきたんですが、ライブハウスで開催できる最も大きいスケールのツアーが今回だと思っていて。ライブハウスを卒業するわけでもないし、これからもお世話になる大事な場所であることに変わりはないんですけど、「まだまだ大きくなっていくよ」と表明したかったんです。さらに大きなステージに向かっていく最中であることを伝えたくて、このタイトルにしました。
――おっしゃっていただいた通り、Broken my toyboxにとって、間違いなくターニングポイントとなるようなツアーだと思います。改めて、どういったライブにしていきたいですか。
高田:大きい会場で演奏できる分、きっと新しいお客さんも来てくれると思うんです。だからこそ、その人たちに「ブロークンのライブはこうしなきゃいけない」みたいなルールは提示したくなくて。みんなにとっての居場所であれたらなと。友達と来てもいいし、1人で黙々と聴いたっていい。ステージングや演出はもちろん頑張る部分なんですけど、ライブは僕らだけじゃ完成しないので、来てくれる人たちが自由でいられるように、頑張らなきゃいけないと思っています。
郷間:Zeppでのツアーファイナルは、バンドマンにとって一つの夢だと思うんですよ。なので、今来てくれているファンの方やこれから出会うファンの方と一緒に、夢を叶えられるようなツアーにしたい。そのためにも、1公演ずつどんどん熱を上げていきたいなと。
――ありがとうございます。さて、7月からは全国6か所を巡る夏のツアー『箱庭へようこそ~Re:Parade~』も始まります。こちらはどのような旅路にしたいですか。
藤井:ジャンル「ブロークン」、そしてBroken my toyboxの音楽を、改めて伝え直すツアーにしたいです。「Broken my toyboxはこういうことができるバンドになれたんだ」という成長を確かめつつ、お客さんと対話していきたい。渡せるものは渡して、受け取れるものは受け取りながら、みんなでBroken my toyboxを再定義していく。そんなツアーにしたいと考えています。
取材・文=横堀つばさ 撮影=山川哲矢
リリース情報
2026年7月1日発売
【初回限定盤(CD+DVD)】
ECLO-0002 / ¥3,300(税込)
【通常盤(CD)】
ECLO-0003 / ¥1,980(税込)
■CD収録曲
(テレ東 水ドラ25「サレタ側の復讐〜同盟を結んだ妻たち〜」エンディングテーマ)
■初回盤DVD収録内容
2026.1.11 SHIBUYA WWW X ONEMAN LIVE
「箱庭へようこそ〜メラトニン〜」
En. 鱗
タワーレコードオンライン:https://tower.jp/artist/2793485
ライブ情報
「箱庭へようこそ〜Re;Parade〜」
※全公演ソールドアウト
2026年7月25日(土) 福岡 OP's
2026年7月26日(日) 広島 ALMIGHTY
2026年8月8日(土) 仙台 enn 3rd
2026年8月22日(土) 梅田 Shangri-La
2026年9月19日(土) 恵比寿 LIQUIDROOM
Broken my toybox [Live Tour 2026 - 2027]
「箱庭へようこそ〜ジオラマを抜け出して〜」
2026年12月12日(土) 名古屋 SPADE BOX
2026年12月13日(日) 金沢 GOLD CREEK
2027年1月16日(土) 仙台 ROCKATERIA
2027年1月30日(土) 広島 Cave-Be
2027年1月31日(日) 福岡 INSA
2027年2月6日(土) 高松 TOONICE
2027年2月7日(日) 心斎橋 JANUS
2027年4月4日(日) 東京 Zepp Shinjuku