和田雅成「朗読劇の正解は一生わからない」――友情コメディ『たもつん』に重ねる思い

インタビュー
舞台
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8月5日(水)~11日(火)まで、東京・IMM THEATERにて朗読劇『たもつん』が上演される。同作は、NHK連続テレビ小説『虎に翼』などで知られる脚本家の吉田恵里香が、2015年に連続ラジオドラマとして書き下ろした作品。2025年に朗読劇として上演され、好評を博し、本年、Aチーム・Bチームの2チーム制で再演されることになった。物語の中心に立つのは、営業職をしているユーキチと空気が読めないお坊ちゃん・しゅうまい、野球部時代のウザいヤベ先輩という3人の“ちょいダメ男”。彼らによる、くすっと笑えて、くすっと泣ける友情コメディとなっている。注目の集まる同公演において、Bチームでしゅうまい役を務める和田雅成に稽古場で単独インタビューを実施。2.5次元の舞台から映像作品まで、縦横無尽に活躍する和田が朗読劇にどのような思いで臨んでいるのか、本音を朗らかに語ってくれた。

「ゴールを決めない」芝居で見つけた新たな発見

和田雅成

和田雅成

――しゅうまい役のオファーがきたときは、どのようなお気持ちでしたか?

僕自身、朝ドラがすごく好きなのもあり『虎に翼』の吉田さんが脚本を書かれていること、さらに今井(隆文)さんが演出を手掛けられることをお聞きして、とにかく「楽しそう!」と思い、お引き受けさせていただきました。しかも昨年が初演で1年で再演なんて、なかなかないですよね。面白い作品なんだろうなあと、直感で思いました。

――実際に台本を読まれて、作品のどこに魅力を感じましたか?

「やさしいなあ」と思いました。『虎に翼』もほかの作品においても、僕は吉田さんの脚本の色が好きなんです。誰も悪者にしないんですよね。悪いやつにも見えるけど、ちゃんとその人にも正義があって、お互いがその正義を認め合って一つになるという印象をいつも受けます。今回も読んだときに同じ感情を抱いたので、「やっぱりやさしいなあ」と感じました。

――和田さんが演じるしゅうまいは、“空気が読めないお坊ちゃん”ですよね。珍しい役どころだと思いました。

ですよね! メインキャストはユーキチ、ヤベ先輩、しゅうまいの3人なんですけど、僕、普段だったら絶対ユーキチのオファーなんだろうなと思ったんです。だから、しゅうまいのポジションはすごく新鮮でしたし、同時に難しいなとも思いました。ユーキチはどストレートに自分の感情をドカンと表現する役、ヤベ先輩はある意味、飛び道具的な感じで入れてくださる役、そしてしゅうまいというポジション。この役では、自分でゴールを決めないでおこうということだけ意識してやっています。

――自分でゴールを決めないとは、どういうことですか?

『たもつん』はコメディと銘打たれているじゃないですか。コメディだと思ってセリフを言うと、自分で面白くしたいというか、ゴールを決めに行っちゃいたくなるんです。そうではなく、シーンによってユーキチやヤベ先輩にパスをしっかり回して、ゴールを決めてもらうように組み立てていかないと、演劇として成り立たないなと思ってやっています。今まで、ありがたいことに頭でやらせていただくポジションが多かったんです。自分がどう動くかを、みんながわかって合わせてくれていたことを、しゅうまいをやったことによって改めて感じました。今は手探り状態ですけど、楽しみながらやっています。

「朗読劇は舞台以上に緊張する」

(左から)和田雅成、猪塚健太、落合モトキ

(左から)和田雅成、猪塚健太、落合モトキ

――今日はお稽古終わりに取材させていただいておりますが、お稽古はいかがでしたか?

今日で2回目の稽古でした。1回目は僕と猪塚(健太)さんの二人でワークショップ的なことをやったんです。最初から今井さんが、猪塚さんと僕の相性がいいと言ってくださっていて。実はそれは僕も感じているというか……(笑)。先輩を相手に恐れ多いんですが、役の作っていき方や台本の書き込み方も似ているな、と勝手に親近感を抱いています。今日は落合(モトキ)さんともご一緒できました。落合さんは完全に今日が「はじめまして」でしたが、本当にしっかりゴールを決めてくださる方なので、僕も乗るところは乗って、引くところは引いてやっていきたいな、と思いました。どんどん違うものが生まれている感じです。慣れることなく、このまま本番を迎えるんだろうなと思っています。

――猪塚さんと相性がいいとは、どこで感じたんですか?

色を合わせることもできるし、分けることもできるし、重ねることもできる、というイメージです。例えば、僕らが赤色と青色だったとして、赤と青のセパレートの一つずつの部屋にもできるし、合わせて紫にもできるというイメージです。僕の中で、それは相性がいいと感じるんです。

――今井さんはオファーの段階で相性のよさをなんとなく察していらっしゃったのですかね?

僕は今井さんとも完全に「はじめまして」でしたので、全然わからなかったと思います(笑)。本当にたまたまだと思うんです。僕がお芝居をするときの信条として、お相手があった上での自分ということを大事にしたいというのがあるんですが、きっと猪塚さんもそういうタイプなんじゃないかなと思うんです。お芝居のリズムが似ているのかもしれないですね。

――朗読劇だと、舞台のように長くお稽古でご一緒するわけではないと思いますが、コミュニケーションはどんな距離感で取られています?

難しい質問をされますね(笑)。本当にちょっとした会話がずっと続いている感じだと思います。それは舞台でも同じなんですけど、稽古の休憩時間とかで、どれくらいの温度でしゃべっていいのかという探り合いみたいなものはあるので(笑)。でも、猪塚さんも落合さんも、お芝居の中でコミュニケーションが取れる俳優さんなのですごくありがたいです。お芝居をしていると、相手がどういう人なのかが見えてくるときがあるんです。全部が全部そうではないですけど、人柄は出るような気がしていて。相手のお芝居を受けて、渡せて、また受け取ってもらったときに、なんかわかっていく気がしますね。

――ちなみに、Aチームのお稽古もご覧になっていますか?

見ていません。まったく(稽古も)バラバラなんです。

――興味深いですか?

たぶんこのまま見ないですね。影響されちゃうし。もちろん参考にする部分はあると思うんですけど、それを追うのもまた違うな、と考えているんです。例えば、「Aチームはここでお客さんが笑っていたから、僕らもそこで笑わせよう」とすることほど、つまらないものはないと思っていて。それは今井さんが全部演出してくださると思うので、そこは頼って、自分たちのチームの色を出していけたらと思っています。

――今井さんの演出で印象に残っていることなどはありますか?

初日の稽古のとき、今井さんがヤベ先輩役で入ってくださったんです。そのときのお芝居が技巧派すぎました! 技として見せているのではなく、とてもナチュラルに演じていらっしゃって、参考にさせていただきたいと思いました。というのも、僕が一番理想とするお芝居は、お芝居をお芝居としては見せないことなんです。セリフはあるけれど、「今のアドリブで言ったの? セリフなの? どっち?」みたいな感じこそが、お芝居の醍醐味だと思っているので。今井さんは、セリフを本当にその場で出てきたものみたいに言うし、力も抜けていて、その抜け感みたいなものは本当に目指すべきところだなと思いました。

「今回は‟朗読劇なのか!?”と思えるほど新鮮」

和田雅成

和田雅成

――舞台や朗読劇の経験も豊富な和田さんですが、朗読劇というジャンルにはどのような思い出や思い入れがありますか?

正直に言うと、僕は朗読劇が苦手でした。10年前ぐらいに1回やって、2025年に『私の頭の中の消しゴム Final Letter』(以下『頭の中の消しゴム』)をやったんです。朗読劇は台本を持っているが故に、お客さまからしたら「読んでいるから大丈夫でしょう」と思われるかもしれないのですが、感情が入っていくと、どこのセリフかわからなくなるんです。もちろん覚えているつもりではあるんですけど、台本を見ながら読む意識も持っていると、どこか見失ったりするんですよ。そうしたバランスが僕にはすごく難しくって。むしろ台本を(覚えて)離したほうが楽……というか、役者は覚えて演じてこそ、表現することに長けている人たちだと思っているんですね。それで言うと、普段の舞台よりもめっちゃ緊張します!

――『頭の中の消しゴム』のときも、その思いで臨まれていたんですか?

『頭の中の消しゴム』は1日2公演だけでしたが、昼公演が終わった後、もう立てなくなりました。

――すべてを出しすぎて、ということですよね。

そうです! あの作品は二人で紡いでいく2時間だったので、出ずっぱりで体力的な消耗も大きかったと思うんですけど。終わって、とても充実感がありました。今回もありがたいことに、出ずっぱりでしゃべるスタイルですよね。でも今回はコメディでテンションを上げて楽しいシーンがとても多いので、そこに助けられている部分はたくさんあります。

――『頭の中の消しゴム』とは真逆ともいえるジャンルですよね。

全然違いますね(笑)。もはや今回は「朗読劇なのか!?」と思えるほど新鮮だと思います。朗読劇は声で感情を届けて演じるものだと思っていましたが、今回はとにかく動くので!  それで言うと、朗読劇2作品しか経験がないと思っていたんですが(笑)、もう1作品ありました! 『刀剣乱舞』でご一緒した、僕の敬愛する演出家の末満健一さんのバースデーイベントで、朗読劇をやらせていただいたことがあるんです。それも動く朗読劇だったので、あの経験が今めっちゃ生きているかもしれないです。でも、朗読劇の正解は難しいですね。一生わからないと思います。

――『たもつん』は久しぶりに集まる仲間の物語でもありますが、最近、昔の友人と再会して「学生時代に戻ったな、懐かしいな」と感じた出来事はありますか?

あります! 本当にタイムリーなことに、1週間くらい前に二人の男友達と再会しました。一人は大阪で、もう一人は東京で僕のことを居候させてくれた友人なんです。僕の面倒をたくさん見てくれていたその二人は、大阪で19歳のときくらいから一緒に芝居をやっていた仲間でした。もう14~15年の付き合いになるのかな? 東京で住まわしてくれた友人が結婚することになったので、「久しぶりに飯食おうか!」と、先日なんと4年ぶりに会いました。

――どうでしたか!?

本当に何にも変わってなくて、いい意味でがっかりしました(笑)。3人で「がっかりするね~」と言い合っていましたよ。大人になって自由に使えるお金は当時と比べれば増えたかもしれないけど、中身は何にも変わっていないね、と話していました。それががっかりでもあり、よさだなと思いました。

――だから、見栄を張ったりすることもなく。

でも若干の照れくささがあるんですよね。4年ぶりに会うので、大人になったというちょっとした見栄みたいなものもあって。けど、それすらもお互いにバレているし、なんか恥ずかしいし、お互いのことを全部知っているんだからさらけ出せばいいのに、そうもできない自分にもがっかり……みたいな(笑)。お互いにさらけ出しきれていないから、ちょっとニヤニヤしちゃうんですよ。でも、その時間がすごく愛おしかったですね。「何にも変わっていないな、俺ら。がっかりだな~!」と言い合うのが。

――お二方とも、和田さんの活躍についてはご存じなんですよね?

二人とも今は芸能を離れてしまったんですけど、俺はその中でも本当に一番下手だったんです。「お前はやめたほうがいい」といろいろな人に言われ続けていましたし。ただ、僕は一貫して、ずっと「売れたい」と言い続けて、お芝居が好きだから続けられただけなんです。……という話をそのときもしていました(笑)。「お前、ずっと“売れたい”と言っていたけど、今、売れている感覚もないんでしょ?」と言われて、その言葉には思わず考えさせられました。「ごはんは食べられているだろうけど、満足していないでしょ?」という自分の気持ちを理解してくれているのは、やっぱりあの二人だなと思いました。

――最後に、これから公演を楽しみにしている読者に向けて、一言メッセージをお願いします。

舞台は、その日のその瞬間の空気、その場でしか味わえないことがあると思っています。もしも今「どうしようかな、行こうかな」と迷ってる方には、「あなた込みの空間を一緒に作らせてください!」とお伝えしたいです。ともすれば他力本願に聞こえちゃうかもしれませんが、舞台はお客さま込みの空間で完成だと思っているので、あなたが来るか来ないかで本当に変わると思います。だから、ぜひ一緒に作ってほしいですし、一緒に楽しんでいただきたいです。

取材・文=赤山恭子 撮影=(C)GEKKO

公演情報

朗読劇『たもつん』
 
日程:2026年8月5日(水)~8月11日(火・祝)
会場:IMM THEATER
 
脚本: 吉田恵里香
演出: 今井隆文
 
出 演:濱田崇裕 浜野謙太 コッセこういち
猪塚健太 和田雅成 落合モトキ
 
全日程出演:渡邉美穂/今井隆文
料金(全席指定・税込):全席指定 8,800円(税込)
お問い合わせ:公演事務局0570-200-114(12:00~17:00 土日祝除く)
  
公式サイト:https://tamotsun.jp/
公式X:@tamotsun_jp
 
制作:ゴーチ・ブラザーズ
主催・企画・製作:朗読劇「たもつん」製作委員会
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