かつしかトリオ、世界に広がるJ-フュージョンの今を語る――“超絶技巧”の先に届けたい音楽とは

インタビュー
音楽
2026.10.8
かつしかトリオ 撮影=福家信哉

かつしかトリオ 撮影=福家信哉

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世界的な広がりを見せている日本のフュージョン音楽。そのシーンの第一線で活躍する櫻井哲夫(Ba)、神保彰(Dr)、向谷実(Key)によるバンド・かつしかトリオが、10月14日に4thアルバム『SO-DAYONE !』をリリース。また、10月より5都市を巡る『かつしかトリオ COBALT EXPRESS TOUR 2026』も開催。大阪では11月3日(火・祝)に森ノ宮ピロティホールで公演が行われる。

J-フュージョンの歴史を語る上で欠かせないCASIOPEAの初期に在籍し、2021年にかつしかトリオを結成した3人。2026年にはソウル、台北での公演も成功させるなどし、ファン層も大きな広がりを見せている。今回はそんな櫻井、神保、向谷に、現在のJ-フュージョンの盛り上がりについて話を訊いた。

■星野源、Official髭男dismにも影響を与えたJ-フュージョン

――8月23日放送『EIGHT-JAM』(テレビ朝日系)でフュージョンが特集され、SNSでも話題になりました。神保さんが出演され、またみなさんが在籍されていたCASIOPEAも紹介されましたが、反響はいかがでしたか。

向谷:地上波でフュージョン特集が組まれること自体とても珍しいことでしたよね。1980年代は我々もテレビには結構出ていましたが、それも人気ボーカリストとコラボという形が多かったので、『EIGHT-JAM』のような取り上げられ方はほとんどなかったと思います。

――番組の中では、世界的にもJ-フュージョンへの評価が高まっているとされました。

神保:先日、かつしかトリオで韓国公演も行いましたが、地鳴りのような歓声が起きました。お客さんも20代が多く、日本とはまた違う受け止め方があるように思いました。フュージョンは、日本国内では割とコアなファン層が多い印象です。ライブをやったり、アルバムを出したりすると、そのコア層が熱心に聞いてくれるものだと捉えていました。

神保 彰(Dr)

神保 彰(Dr)

――なるほど。

神保:かつしかトリオは結成当初からホールをベースとしたコンサートツアーをやっていますけど、今回の『かつしかトリオ COBALT EXPRESS TOUR 2026』の東京2公演もの売れ行きがいつもより早く、ほぼ完売状態なんです。そういった状況を考えると、フュージョンを聴く層が広くなってきたように感じますし、流れも確かに変わってきた気がします。

櫻井:日本国内で評価が高まっているのはもちろん嬉しいですが、神保さんが言うように韓国であったり、あと台湾などでもJ-フュージョンが受け入れられていて、リスナーの多くが若者なんです。そこは日本と海外のファン層の違いかもしれません。一方で日本での活動でも僕らは本当に恵まれていて、東京の大きなホールで2度公演を行なって、どちらも客席が埋まるフュージョンバンドはそれほど多くはありません。ずっと聴き続けてくださっている日本のファンのみなさんのおかげで、今の良い流れがあると思います。

向谷:3人でやっていることは、これまでと大きく変わっていないんです。J-フュージョンが世界的にも流行り出しているから、それに合わせて新しいことをやってやろうというのではなく、自分たちの音楽を40年、50年やり続けています。それが評価されることもあれば、忘れられるようなこともありましたし。ただ、その評価がワールドワイドになったことは明確に違いますね。一つは高中(正義)さんの影響が大きいです。それに関連して「日本のフュージョン・ミュージックは世界のものとはまた違う」と見られるようになり、在籍していたCASIOPEAや、現在のかつしかトリオも海外の人から注目されるようになりました。

櫻井:台湾でライブをしたときは、僕らが空港に到着するのを待ってくださっている方もいて。僕らが1980年代に活動していたときのことをリアルタイムで知らない世代ばかり。だから「本物が来た!」みたいな感じで(笑)。あと、僕は昭和音楽大学で客員教授として教えてもいるのですが、「J-フュージョンについて勉強したい」「かつしかトリオのベーシストに教わりたい」という留学生がたくさんいるんです。

――若者の間でJ-フュージョンがこれだけ浸透したら、音楽制作の面でも、そのエッセンスを織りまぜた楽曲が今後さらに増えそうですよね。

向谷:現在でも、星野源さんはCASIOPEAから影響を受けた話をしていらっしゃいますし、実際にフュージョン的な楽曲もあります。

櫻井:ヒゲダン(Official髭男dism)なんかもその要素が強くありますよね。J-POP BANDでもフュージョンバンドに負けないくらいテクニカルなことをやっていますし。

■“超絶技巧”だけではない、かつしかトリオが追求する音楽

――その話に関連してなのですが、フュージョンのミュージシャンは演奏技術がとてつもないですよね。かつしかトリオも「超絶技巧」と紹介されることが多いように思います。フュージョンは、高い演奏技術が求められるジャンルでもあるのでしょうか。

神保:基本的に、フュージョンをやっている人は演奏が好きな人たちですよね。かなりコアでマニアックなところまで演奏を追求しているミュージシャンばかり。「バンドをやりたい」という気持ち以上に、「演奏することが好き」という人たちがフュージョンをやっている印象です。世界を見渡すと、ものすごいテクニックでフュージョンを演奏するちびっ子ドラマーもいて。競技会みたいになっているんです。

櫻井:フュージョンはコード進行もおもしろいですし、実験的でもあるんです。フュージョンというシーンは、音楽を突き詰めてやりたい人が集まっているのではないでしょうか。

向谷:ただ、ちょっと語弊があるかもしれないけど、音楽は演奏技術がすべてじゃないよね。技術をどう音楽として落とし込み、飽きずに聞いてもらえるかが大事。インストゥルメンタルは特にそれがキモになります。演奏技術が高いと、それを見せたくなるので曲も長くなることがあります。演奏している側は気持ちがいいんですが、リスナーがいろんなシチュエーションで、軽い気持ちでそれを聴けるかと言ったらちょっと難しいと思うんです。つまり、その音楽が生活の中でどういう立ち位置になるか。我々の場合はそのバランスを強く意識していて、アルバム収録曲も、5分を超えるものもありますが、基本的には4分半くらいが多い。「もっと聴かせたい」という部分は、ステージで発散すればいいので。

神保:これはあくまで個人的な意見ですが、演奏が“うまい・あまりうまくない”という評価基準は、楽曲が“良い・あまり良くない”に比べると、それほど高いところにあるとは思いません。テクニックはあるに越したことはないけど、それが音楽の良し悪しには強く影響しないような気がします。

櫻井 哲夫(Ba)

櫻井 哲夫(Ba)

――新作『SO-DAYONE !』はその点で、楽曲内容、演奏、どちらも充実したものが並んでいると思います。

櫻井:1曲目から3曲目は特に「これぞJ-フュージョン」という楽曲が並んでいます。J-フュージョンの教科書になってもいいくらいの自信作です。一方で4曲目「Marmalade Island」はレゲトンのラテンのリズムも取り入れ、いろいろなフュージョンやジャズ的要素もあります。1枚通して聴いていただくと、“音楽の旅”を体験できます。

神保:1st、2ndを制作し、3rdとなる前作『“Organic” feat. LA Strings』(2025年)では、ロサンゼルス録音とあって向こうのストリングスをフィーチャーした企画性のあるアルバムになりました。そして今回は、我々の本分であるエレクトリックなフュージョンサウンドに原点回帰しています。「これぞJ-フュージョン」という曲から我々なりに冒険した曲もあり、いろんな景色をご覧いただけると思います。

向谷:『SO-DAYONE !』というタイトルがキャッチになると思います。「J-フュージョン、そうだよね!」とイコールになるのではないでしょうか。様々なドラマやイメージが思い浮かぶよう、曲順も含めてよく考えて作りました。最後の曲「TanTan」のラストに馬の蹄の音が入るんですけど、それは遊び心で入れました。そして、その蹄の音が消えていく。そこで、「かつしかトリオは次に向かってどうなっていくんだろう」という余韻を感じてもらい、今後への期待感を抱いていただける内容になっています。

■3人で出せる音の限界へ。海外公演を経て全国ツアーに挑む

向谷 実(Key)

向谷 実(Key)

――『かつしかトリオ COBALT EXPRESS TOUR 2026』で収録曲がどのように演奏されるのかも楽しみです。

櫻井:2026年はかつしかトリオとして韓国、台湾での公演で海外デビューを果たすことができました。両公演ともに機材の都合で、神保さんのドラムはパッドを使えませんでしたが、それで大成功が収めることができ、より演奏力だけで勝負することができて自信もつきました。今までアンサンブル重視でパッドに助けられていたところもあったのですが、土台にある演奏力とグルーブをパワーアップさせることができました。その上で今回はダンスコーナーなど盛り上がれる要素もたくさんあるので、楽しみにしていてください。

向谷:本来は神保さんがエレクトリック・パッドを叩くことで、例えばキーボードだけでは弾き切れないハーモニーをサポートできるんです。海外公演では今回、その機材の調達ができなかったのですが、それを抜いた形でツアーをやったことで、グルーヴ感をかなり強調できるような演奏もできました。その上で今回は『SO-DAYONE !』のツアーでもあるので、いつものかつしかトリオを存分にお見せすることができます。3人で出せる音の限界に、真正面からぶつかって挑戦するコンサートになるはずです。

神保:大阪公演が開催される11月3日は文化の日。J-フュージョンが日本の文化として世界的に評価されているという状況なので、昔から聴いてくださっているコアなファンの方はもちろん、新しいファンの方にもこの公演を楽しみにしていただきたいです。

取材・文=田辺ユウキ 撮影=福家信哉

リリース情報

発売日:2026年10月14日(水)
品番:YCCS-10126
価格:3,500円(税抜3,182円)
 
[楽曲タイトル]
01. Twilight Run
02. SO-DAYONE !
03. Cobalt Express
04. Marmalade Island
05. Paris-Nice
06. Journey To Aurora
07. Last Train To Summer
08. Black Ice
09. TANBI(耽美)
10. TanTan
公式サイト:https://www.katsushika-trio.com/

ツアー情報

『かつしかトリオ COBALT EXPRESS TOUR 2026』
・2026年10月24日(土)
 東京・かつしかシンフォニーヒルズ モーツァルトホール ※Sold Out!
 OPEN 16:00 / START 17:00

・10月31日(土)
 福岡・福岡市民ホール 中ホール
 OPEN 16:00 / START 17:00
 
・11月3日(火・祝)
 大阪・森ノ宮ピロティホール
 OPEN 16:00 / START 17:00
 
・11月7日(土)
 愛知・中日ホール Sold Out!
 OPEN 16:00 / START 17:00
 
・11月13日(金)
 東京・東京国際フォーラム ホールC ※Sold Out!
 OPEN 17:30 / START 18:30
 ※通常席Sold Outにつき、機材席解放中!
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