Bialystocks・甫木元空のFM802『MUSIC FREAKS』最終回レポートーー「卒業式スペシャル」でDJ’sと大合唱や母とのピアノ共演も
『MUSIC FREAKS』甫木元空 撮影=渡邉一生
アーティストが隔週でDJをつとめるFM802の人気プログラム『MUSIC FREAKS』(毎週日曜22:00~24:00)。2025年10月から1年間DJを担当したのは、なとりとBialystocksの甫木元空(Vo.Gt)。9月20日のなとりに続き、9月27日に甫木元も最終回を迎えた。
甫木元の『MUSIC FREAKS』最終回は「卒業式スペシャル」と題して、まさに卒業式さながらに番組が進行していった。本番3分前、スタジオは和やかな雰囲気。甫木元がオープニングで喋ろうとすると「9月27日日曜日、時刻は夜10時を回りました。FM802をお聴きの皆さん、こんばんは。Bialystocksキーボードの菊池剛です」とまさかの乗っ取りが発生(笑)。ポカンとする甫木元と大喜びのスタッフ。チームのサプライズと遊び心が、冒頭から深い愛を感じさせる。
『MUSIC FREAKS』甫木元空
曲が明けると、甫木元は菊池の音声との掛け合いで1年の思い出を振り返る。「初回、とんでもない放送事故からこのラジオが始まりまして。皆様のおかげで無事最終回を迎えようとしております」と述べ、共に1年を駆け抜けたなとりにも「本当にお疲れ様でした」と言葉を贈った。
ちあきなおみの「喝采」を生歌唱したあとは、「ホキモトラジオ」のステッカーやBialystocksのアートワークなどを手がけるデザイナー兼CGディレクターの潮杏二氏が、卒業式の「開会の儀」を担当。生まれて初めてラジオ局に来たという潮氏は、生放送で懸命に開会宣言。ウクレレを弾くスタッフと共に「翼をください」を歌う場面もあり、チームの仲の良さがにじみ出る。なお、当日は甫木元とスタッフ全員が、潮氏デザインの「全回放送事故! Tシャツ」を着用していた。
『MUSIC FREAKS』甫木元空
この日は甫木元が「旅立ち」をテーマに選んだ楽曲を、自ら歌唱するスペシャルな展開。「あの鐘を鳴らすのはあなた」(和田アキ子)、「大空と大地の中で」(松山千春)、「瑠璃色の地球」(松田聖子)と、日本の名曲たちを繊細かつ豊穣な歌声で朗々と歌い上げた。
リスナーからは続々と祝電メッセージが届く。落合健太郎からDJの技を教わった回が印象的だったというおたよりを受けて、急遽落合がブースにイン。「1年経って、僕は少しは変われたんでしょうか?」と尋ねる甫木元に、「802の誰よりも変わったと思うよ!」と労う落合。そして、落合から甫木元へ生祝辞が贈られた。「甫木元空殿。この1年、あなたはいかなる困難にぶち当たろうとも、柔らかい笑い声と、そしてちょっとだけ頼りなさそうなその声でリスナーを味方につけ、素晴らしい番組を担当されました。1年間、ラジオの空気を、日曜日の夜の空気をあたたかくしてくれて、ありがとうございました!」との言葉に「ちょっと泣きそうです。802の皆さんはほんとあったかいんですよね」と感動していた。
『MUSIC FREAKS』甫木元空
ホキモトラジオは、2026年1月4日放送回が『第63回ギャラクシー賞』ラジオ部門で「奨励賞」を受賞する快挙を成し遂げた。映画監督や小説家としても活動する甫木元ならではの視点と思考から生まれるアイデアで、数々の実験的な試みも行ってきた。同放送回にゲスト出演していた音楽家・映像作家の井手健介の家族に甫木元がインタビューした「井手健介のファミリーヒストリー回」は本人にとっても印象深く、「庶民の暮らし、歴史のB面から戦争の歴史を掘り下げていくことができないかなと思った」と回顧した。
卒業式と言えば、卒業生全員でセリフを唱和する「呼びかけ(別れの言葉)」が定番だ。甫木元に続いてスタッフが唱和する形で、思い出を振り返る。
「初めてあげたー!」「カフ!」
「初回放送、どこで始まるか分かりませんでしたー!」
「楽しい場所を教えてもらった!」「関西の秘密基地!」
「教えてもらったのに、ほとんど行けてないので、また行きます!」
など、正直でクスッと笑える掛け合いに頬が緩む。
「僕、甫木元空は『MUSIC FREAKS』を卒業します!」の唱和に続いて流れた「青春の影」(チューリップ)、井手が超訳した言葉で歌唱した「Alone Again」(ギルバート・オサリバン)も極上だった。
「怒涛の1年、初めて尽くしの1年」だったという甫木元だが、届いたメッセージを噛み締める穏やかな表情には、確かな充実と喜びが満ちていた。 離れた場所にいる人と電波で繋がり、人生のどこかで重なり合う奇跡。甫木元は「ラジオは、友達でもないけどちょっと一緒に遊んだ知り合いみたいな感じで、こういう仲間を持ててすごく嬉しいですね」と愛おしそうに微笑んだ。
『MUSIC FREAKS』甫木元空
23時台も「春夏秋冬」(泉谷しげる)、「夏の終わりのハーモニー」(井上陽水)「BOY MEETS GIRL」(TRF)など、豪華なカバー曲を披露。旅立ちの気分がじわじわと高まっていく。
ブース内には、落合をはじめ、板東さえか、高樹リサ、内田絢子、豊田穂乃花、早川和余、土井コマキのFM802 DJ’sが大集合。それぞれ甫木元にお祝いの言葉を贈る。「凹むぐらい面白くて、自信がなくなる(土井)」「ラジオの概念を変えてくださった。いつかドキュメンタリードラマをやってほしいと思うぐらい刺激を受けました(早川)」「21時30分まで『FUNKY BAR』(打ち合わせにも使われるFM802内のフリースペース)で非常に物静かにいらっしゃるのが好きで、22時になると一気に甫木元さんの世界になるのが素晴らしい(豊田)」「ラジオの新しい創造の楽しみ方、色んな可能性を教えていただきました(内田)」「音楽のプロというイメージ。ラジオではのびのびとされていて。そのファンキーさが憧れでもありました(高樹)」「甫木元さんに多くの人が影響されてるなと、この1年間すごく感じました。ジェラシーです。ギャラクシーです(板東)」「一言言うなら……ホキモトラジオ最高ー!!(落合)」と、プロのDJたちにとっても、創造性溢れるホキモトラジオがどれほど刺激的な存在だったかが伝わってきた。
『MUSIC FREAKS』甫木元空
フィナーレは、甫木元空&ホキモトラジオ合唱団(DJ’sとスタッフ全員)で、卒業ソングの大定番「旅立ちの日に」を大合唱。ブースの外にもマイクが立てられ、廊下には総勢20人ほどのスタッフが集結した。DJ’sは、本番までの間に『FUNKY BAR』に集まって部活のように自主練をするなど気合い十分。心をひとつにした圧巻のハーモニーは、高樹が感極まるほど温かく、記憶に刻まれる時間となった。
さらにもうひとつ忘れられない演出があった。流れてきたのは、「MY WAY」(フランク・シナトラ)のピアノ弾き語り。これは甫木元の母・志津さんが生前、現在の甫木元と同世代の頃に喫茶店で演奏していた貴重な音源で、大阪の映画館「シネ・ヌーヴォ」で甫木元がライブを行った際にファンから手渡されたという。母の演奏に重ね合わせるように、魂を込めて歌い上げる甫木元。時を超えた母と子の共演には胸がいっぱいになった。
「閉式の儀」に続き、編成部から卒業証書が授与される。甫木元は「最後までたくさんの方に見守っていただきまして、本当にありがとうございます。始まるときから温かく受け入れてくださって、スタッフ、DJ分け隔てない感じがほんとに好きで、遊びに来るような感覚で1年続けられたのは802のおかげだなと思っています」と感謝を述べる。
『MUSIC FREAKS』甫木元空
エンディングでも、愛すべき甫木元らしさは健在。「僕はまた絶対に802に遊びに来て、少しデカい顔をして歩いて……本当に皆さんありがとうございました」と語り、最後はオンエアでもたびたび触れられた初回放送の伝説のオープニングで締め括られた。
1年間のホキモトラジオを総括するような、盛りだくさんの卒業スペシャル。スタッフ陣も達成感と充実感をにじませて、「みんなで作った番組だった」と口を揃えていた。最後は「卒業写真風に撮ろう!」という板東の提案で記念撮影。笑いと感動に満ちた中で、番組は1年の歴史の幕を下ろしたのだった。
2026年10月からの1年間は、AirA(OddRe:)、AOi(CLAN QUEEN)がDJを担当する。新しい『MUSIC FREAKS』も楽しみにしていよう。
『MUSIC FREAKS』甫木元空
取材・文=久保田瑛理 撮影=FM802提供