圧倒的なパフォーマンスと“上質なカルトホラーの世界”に酔いしれる! 『THE ALUCARD SHOW』開幕

レポート
舞台
2026.10.8

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2026年10月6日(火)より東京・日本青年館ホールにて幕を開けた『THE ALUCARD SHOW』が、初日目前にプレスコールを実施した。初演・再演を経て12年ぶりに観客の前へと華麗に舞い戻った新感覚のエンタテインメント・パフォーマンスショー、その伝説的なステージとは──

ゴシックな空気漂う劇場、老齢の女性が伝説のダンスユニット「アルカード」について語り始める。続いて老齢の男性、そして車椅子に乗ったもうひとりの老齢の女性が現れる。3人の口を突いて出るのは、人々を熱狂させ、そして忽然と消えてしまったアルカードへの想い。「アルカードとは何者なのか?」。時を遡った“狂気の日々”が甦る。

恐ろしい世界に足を踏み込んでしまうのでは…という怖いもの見たさな気持ちが湧いた瞬間、メインテーマと共に絶対的リーダーのブラド&6人のダンサーからなるアルカードが登場! スタイリッシュで攻撃的で自信に満ちた謎めいた男たちが、冒頭からそのパフォーマンス力を見せつけていく。ブラドを演じるのは初演・再演と『THE ALUCARD SHOW』の世界観を一身に背負い、天性のカリスマ性を見せつけてくれた松下優也だ。そして松下と共に本作を支えてきたのがオルロック役の平間壮一。さらにカーミラ(SANTA)、ジルド(滝澤諒)、バット(龍澤翼)、サンジェルミ(赤名竜乃介)、ボブシー(山野光)もパワフルに躍動。冒頭から“アルカードの伝説”を言葉ではなくパフォーマンスで観客の目と心に刻み込んでいく。

続いて登場したのは国民的人気アーティストのマリア(彩風咲奈)。アルカードの赤と黒の男たちの世界から一転、真っ白な衣装に身を包み、女性ダンサーを従えてのパフォーマンスだ。強さと柔らかさのある彩風の表現が凛々しいマリアらしい楽曲…と思いきや、突然その場を離れるマリア。どうやら彼女は現状に苛立ちを覚えているよう。「ただのポップスターから脱却したい」「次のツアーでは新しいマリアを見せるのだ」と焦っている。そこで敏腕マネージャーのウォルター(坂田聡)が、最近出会ったスゴ腕のダンスグループの話を持ち出す。彼らは出会った時からちょっと変わっていたが、パフォーマンスは最高だ、と。さあ、物語の始まりだ。

原作・構成・演出の河原雅彦が振付のMIKIKOと組んで創出した本作は初演から多くの観客に愛され、「アルカドニア」というファンネームも生まれた。パフォーマーとして伸び伸び真ん中に立つ松下と、それぞれが個で活躍しているにも関わらずあえて匿名性を持ってダンスに集中したアルカードメンバーの在り方も素敵だった。冒頭の3人の呼びかけ、「アルカードのことを覚えているか?」には「覚えてます!」、「アルカードにもう一度会いたい!!」には「私も!」と、心の中で返答している“待たされすぎた”現役アルカドニアと、何が起きるのかただただ見守る今回初遭遇のネオアルカドニアが混在する客席の空気は物語の構成ともリンクしており、このメタ的な状況も予期せぬ憎い演出。偶然ブラドと出会って魅了されてしまい、人生を賭けたストーカーと化す主婦のサラはそんな観客の究極の姿。サラを演じる野口かおるの硬軟織り交ぜた様子にもそそられる。予期せぬ人生の展開を多彩な表情で生きる彩風のマリアですら、アルカードに取り込まれたひとりなのだ。

真剣になればなるほど滑稽に見えてしまう人間の弱さと、その滑稽さを愉しむ人ならざる者たち。『THE ALUCARD SHOW』の魅力は、“寡黙”なアルカードの言動が世の中の様子を奇妙に歪めていく過程にゾクゾクするB級ホラーならではの“上質なカルト感”だ。そしてもちろん、アルカードの鉄板のカッコ良さと、俳優たちの個性とパッションとエンターテイナー精神を感じるゴリゴリのダンスパフォーマンス! 過去2作を踏襲しつつ確実に深化している作品の成長を逃さす写し取ったエッジの効いた世界観、シンプル且つインパクトのあるセット転換やライティング、そして俳優たちの研ぎ澄まされたセンスが一体となった舞台上の“美”(ノンバーバルな身体表現の場面もシュールな絵画のよう)。物語の行く末は観てのお楽しみ。そして…この世界を知ってしまったのなら、自らがアルカドニアとして彼らの危険な魅力を語り継ぐひとりとなるのもまた一興だろう。

取材・文=横澤由香 撮影=田中亜紀・加藤春日

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