長野・松本の木造ドームで生まれる“思考解放”の秋フェス『overhead fes'2026』の楽しみ方を早瀬直久×FM802 DJ加藤真樹子が語る
早瀬直久、加藤真樹子 撮影=ハヤシマコ
北アルプス・南アルプスの山々に抱かれた長野県松本市。信州まつもと空港のすぐそばに佇む日本最大級の木造ドーム「やまびこドーム」を舞台に、秋の音楽フェス『overhead fes'2026』が11月14日(土)、15日(日)に開催される。今回語り合うのは、同フェスの総合プロデューサーを務めるクリエイター・早瀬直久と、FM802 DJ・加藤真樹子。旧知の二人が顔を合わせると、現場は一気に和気あいあいとした空気に包まれた。「空港から徒歩6分」「日本中にまだバレていない奇跡のロケーション」「型にはまらない思いやりの空間」。音楽、街、人が心地よく混ざり合う唯一無二のフェスは、どのようにして生まれ、どこへ向かうのかーー。 笑顔と情熱に満ちた対談をお届けする。
「なんで松本でフェスを?」“街おこし”から始まった、長野との縁
『overhead fes'2026』
加藤真樹子(以下、加藤):早瀬さん、お久しぶりです。この前のFLAKE RECORDSのイベント『FLAKE RECORDS 20TH』で一瞬バッタリお会いして以来ですよね。まさかこんな形で対談することになるとは思わなくて、ちょっと緊張します(笑)。
早瀬直久(以下、早瀬):ほんま久しぶり。なんで緊張すんねん(笑)。今日はゆるりといきましょう。
加藤:今日は『overhead fes』の総合プロデューサー・早瀬直久としてお話を伺いますが……まず「早瀬さん、生まれも活動拠点も大阪なのに、どうして松本でフェスをやっているんですか!?」という素朴な疑問から伺いたくて。
早瀬:みんな、そこが気になるよね。最初のキッカケは長野県松本市からのライティングの仕事をいただいたことでした。漫画の『orange』って知ってる?
加藤:ごめんなさい、私、ピンときていないかも……。
早瀬直久
早瀬:実写映画にもなった人気作でね。作者の高野苺先生が松本在住で、先生の一枚絵に僕がコピーを書くポスター企画をやったの。その中で美ヶ原高原にある道の駅みたいなところをどうにかしたいと声をかけてもらって。そこに「5年後に届く未来ポスト」を置いて普段あまり言えないような思いとかを投函してもらえるようにしたら、美ヶ原の店に訪れる人も少し戻ってきて喜んでもらえたみたいで。
加藤:素敵な仕掛け! そこからどうフェスにつながったんですか?
早瀬:その効果を実感した市から「松本市のプロモーション曲を書いて」と頼まれて。「え、早瀬さんってミュージシャンだったんですか?」と驚かれつつ(笑)。曲やPR動画を作ったり、松本市からもほど近い生坂村のプロジェクトメンバーに加わったりと、ご縁が続いて。そんな中、サッカーJリーグ・松本山雅FCの元社長でもある神田(文之)くんと友達になって、「松本の人たちが元気になれるイベントを一緒に作って欲しい」と相談されたのが始まりでした。
加藤:曲を作る中で、松本の街にかなり通い詰めたのでは?
早瀬:うん、そうだね。関西から行くと松本泊になるから、毎晩飲み歩いて友達もできて。駅から国宝の松本城までの徒歩20分ほどの間に、元気な個人店がぎっしりあって本当にいい街。でも観光客がお城だけ見てすぐ帰っちゃったりすることがあるのでそれがもったいないなあと。街の魅力と音楽を掛け合わせたかったんです。
「空港から徒歩6分」「巨大な楽器の中で鳴らす」まだ日本中にバレていない奇跡のドーム
加藤真樹子
加藤:そこからフェス立ち上げへと動いたわけですが、会場の立地を聞いてびっくりしました。「信州まつもと空港から徒歩6分」って、日本中のフェスで聞いたことないですよ。
早瀬:すごいでしょ? 神戸空港から直通便で1時間、降りて6分歩けばフェス会場。これ、まだ日本中にバレてないんですよ。
加藤:関西から四国とかのフェスに行くより早い!(笑)
早瀬:ほんまにそう。空港を取り囲む広大な「信州スカイパーク」内に佇むのが、今回の舞台「やまびこドーム」。日本最大級の木造ドームなんです。
加藤:映像も見ましたけど、屋根の木組みが本当に美しいですね。
早瀬:入った瞬間、初めての人はみんな「でっか!」と驚くんですよ。教会のような神聖さもあるけれど、東京ドームのような巨大建造物の圧迫感はなくて、温かい「木の音楽堂」みたいな空気が流れてる。
加藤:木造ならではの独特の包まれ感があるんですね。
会場風景(『overhead fes'2025』)
早瀬:実は松本って日本一のギター生産地で、楽器の街でもある。このドームの木が音を優しく吸って丸く返してくれるんですよ。「巨大な楽器の中で楽器を鳴らしている」ような感覚。
加藤:ミュージシャンにとって最高の鳴りじゃないですか!
早瀬:アコースティックにも強いPAチームに入ってもらい、木の鳴りを活かす音作りをしています。去年出てくださったORIGINAL LOVEの田島(貴男)さんも、最初はドームの反響を心配してたけど、ライブ後に「最高だったよ!」と絶賛してくれて、TENDREのタロー(河原太朗)くんも「今まで歌った中で一番くらい気持ちよかった」って。客席には不思議と音がホットに届くし、歌い手も気持ちいい。
加藤:しかも全天候型だから雨や風の心配もない。
早瀬:そうなんです。ドームを一歩出れば南アルプスの山々が広がる大自然。11月の松本って朝晩は冷えるけれど晴天率が高くて雪も降らないから、天候を気にせず音楽に没入できる最高の環境です。
加藤:そして今年、個人的に一番テンションが上がったのが「ドーム内が人工芝で、レジャーシートを敷けば飲食OK」という情報です。
早瀬:そうなんです。人工芝が敷き詰められているので、寝転べちゃう。去年は飲食禁止だったんだけれど、「やっぱり飲み食いしながら音楽を聴きたいやん」と思って交渉して、シートの上なら飲食OKの許可をいただきました。
加藤:最高! フェス飯やお酒片手に、寝転んで生演奏を聴けるなんて。
早瀬:2つのステージが交互に進むんだけど、エリア全体が半径200メートル前後にキュッと収まってる。大型フェスみたいに何十分も歩く必要がなくて、ドームを出ればすぐ外にキッチンカーやマーケットが並んでいる。平坦な公園だから段差も坂もなくて、お子さん連れも安心なんです。
頭上を見上げて思考を解放! 『overhead fes』を新たな“秋の風物詩”へ
『overhead fes'2026』ラインナップ
加藤:ところで『overhead fes』という名前にはどんな想いが?
早瀬:松本山雅FCにかけた「オーバーヘッドキック」もあるけれど、一番は「忙しい頭を超えて、思考を解放して上を見上げてみようぜ」というメッセージ。たまに頭上を飛行機が飛んでいくし、ドームを見上げれば美しい木組みがある。のんびり上を向いてリラックスしてほしいんですよね。
加藤:そして出演者も豪華です。サニーデイ・サービス、大橋トリオ with 菊池剛(Bialystocks)、奇妙礼太郎、アフロ(MOROHA)、ヒグチアイ、Salyu、石崎ひゅーい……さらにニッチローやどぶろっくまで!
早瀬:大橋トリオとBialystocksの菊池先生の共演は贅沢でしょう? 長野出身のアフロくんやヒグチアイちゃん、地元ラジオで人気の天々高々も出てくれる。長野在住で松本山雅サポーターのニッチローさんなんて、誰よりも入念に肩回して準備していて完全にアスリート(笑)。どぶろっくも僕の中では完全にミュージシャン枠です。
加藤:どんなテンションのお客さんでも包み込んでくれるような顔ぶれですね。
早瀬:立って踊ってもいいし、寝転んで聴いてもいい。皆さん個性と肝が据わったアーティストばかりにお願いしています。
加藤:さらにはマーケットやお客さんを喜ばせるための各種企画も目白押しですね。
早瀬:クラフトビールやワインなど約40店舗のマルシェに加え、自作アウトドアギアを作ったりしてる面白いチームも10数店集まります。JA全農長野さんの温かいきのこ汁のふるまいや、紙飛行機名人を招いて、転換中にみんなで一斉に紙飛行機を飛ばす企画もやりますよ。
加藤:大人も子どもも夢中になれる遊び場ですね!
早瀬直久
加藤:単なる音楽フェスを超えて、人と街が心地よくつながる居場所を目指しているのが伝わってきます。
早瀬:最近のフェスはルールが厳格化して少し窮屈な部分もあるけれど、ここでは「みんな、言わんでも分かるよね?」という信頼関係でやりたくて。「何か問題あったらいつでも俺がマイクで言うから!」と思ってるくらい(笑)。ルールで縛るのではなく、みんなが自然と「来たときより綺麗にして帰ろう」なんて思えるような、「気持ちいい」で成立する空間にしたいんです。
加藤:地元企業や地域の協力が手厚いのも、早瀬さんが何度も松本に足を運んできたからこそですね。
早瀬:打ち合わせに通いすぎてホテル代がかさむから、真剣に松本でアパートを借りようかと思っています(笑)。「絶対部屋借りた方が安いやん!」って。
加藤:もう半分移住ですね。それくらい地域に溶け込んでいる。
会場風景(『overhead fes'2026』)
早瀬:例えば超有名人を呼んで一過性で人を集めて終わり、にはしたくない。地元の人たちが「今年もこの季節がやってきたな」と集まれる、松本の“秋の風物詩”に育てていきたいんです。地元の夕方の情報番組『ゆうがたGet!』(テレビ信州)で特集してもらったり、TRFのダンサーのETSU & CHIHARUさんとEZ DO DANCEを踊ったり(笑)、普段フェスに行かないような人にも気軽に遊びに来てほしくて。
加藤:フェスって、本来「フェスティバル=お祭り」ですもんね。美味しいものを食べて、芝生に寝転んで、知らなかった音楽と出会う。
早瀬:まさしく! 会場から松本駅への無料シャトルバスも出ます。空港から会場に入って、夜は松本駅前の城下町で居酒屋や名店をハシゴして1泊する旅のプランも最高ですよ。
加藤:全国の音楽ファンや旅好きにとって、最高のご褒美トリップになりますね。
早瀬:札幌や福岡からも直行便が出ています。関わってくれるすべての人を楽しませる準備は整っていますので、是非ふらりと遊びに来てください。僕は会場でMCもしながらうろうろしてるので見かけたら、「飛行機で来ました!」なんて声をかけてくれたらめちゃくちゃ嬉しくて即乾杯です(笑)。
『overhead fes'2026』タイムテーブル
取材=加藤真樹子 文=SPICE編集部(湯澤菜穂) 撮影=ハヤシマコ
イベント情報
アーティスト:
サニーデイ・サービス / ACO / 奇妙礼太郎 / 石崎ひゅーい / ETSU & CHIHARU from TRF / MOS / どぶろっく / ニッチロー / Power Live