2年半ぶりの少年王者舘本公演、その動向やいかに!

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2016.2.8
 前回の本公演『ハニカム狂』(2013年7月〜8月上演)より  撮影:羽鳥直志

前回の本公演『ハニカム狂』(2013年7月〜8月上演)より  撮影:羽鳥直志

未だ全貌見えず…の本番直前稽古場レポート。名古屋公演の運命は!?

少年王者舘が2年半ぶりに行う本公演『思い出し未来』が、まもなく名古屋で開幕する。王者舘の本公演はそれまで年一ペースで行われてきたが、今回2年半という長い準備期間をとったのは、遅筆の天野天街に新作執筆のための充分な時間を…という劇団の判断によるものだった。

ところが、その間に番外公演や他団体との合同公演、KUDAN Projectの活動、さらに外部団体からの劇作や演出依頼などが相次ぎ、結局スケジュールは満載。“数ヶ月自宅にこもって考え尽くし、やっと書き出せる”天野にとってその時間のなさは致命的で、結果、本番10日前の時点で台本はようやく数ページという由々しき事態に。

今回は名古屋に続き、四日市、伊丹、そして東京と4都市ツアーが予定され、初の上演地・四日市公演や4年ぶりの関西公演など、期待もより高まる中での危機的状況、なのである。

稽古風景より  撮影:羽鳥直志

稽古風景より  撮影:羽鳥直志

今作のタイトル『思い出し未来』は“思い出し笑い”の洒落でもあるが、<記憶と時間>という王者舘にとって根幹ともいうべきテーマを、敢えてストレートに表現したものになっている。天野いわく、「それまでそのことをずっと描きながら、言語として使わないようにしてきた“夢”をわざと使った『夢+夜~ゆめたすよる~』(2009年上演)のように、王者舘の集大成となるような作品を目指してこのタイトルにした」と言う。

そのため準備期間には、「この世の現在」を徹底的に知るべく量子力学や相対性理論の関連本を読みあさり、「量子の動きを芝居に変換できたら面白いと思った」と考えたそうだが、「難しすぎた」と弱音も。
役者が舞台上を瞬時にめまぐるしく出入りしたり、単語を連続で発声していくセリフや大人数で展開されるダンスなど、これまでの作品もまさに量子を思わせるものだが、本公演としては過去最少人数の出演者(10名)という構成要素の少なさも難しさを助長しているのだろうか。

あらゆる角度から執筆の糸口を探るも、「どう考えても、もうやったような気がするものばかり。概念ばかりで、それを具現化するイメージがなかなか出てこない」と、悶絶寸前なのである。そんな作家の苦しみをよそに、鑑賞者としてはむしろ、その難産を越えて生まれてくる作品とはどんなものだろう…と、一層の期待を寄せずにはいられない。

稽古風景より。右端は、執筆の合間をぬって演出をつける天野天街

稽古風景より。右端は、執筆の合間をぬって演出をつける天野天街

一方、王者舘名物のダンスはといえば、「今回はあまりにも(台本が)何もなかったので、作品タイトルとは関係なく、踊りを創る上での言葉や詩を天野さんや虎馬鯨(コバケイ)に出してもらって創りました」と、振付担当の夕沈。パーツだけ決めておいて、あとは練習時にみんなで踊りながら全体を組み立てていくそうだが、最近になってある小道具が急遽増えたことで調整が必要になり、こちらも悪戦苦闘の様子。とはいえ、今作のために数曲書き下ろされた珠水によるオリジナル楽曲が「無茶苦茶いい曲!」とのことで、ダンスのモチベーションも相当上がっているそうなので楽しみだ。

さて、鋭意執筆中の内容については、作家自身にも未だ全貌が見えていないようなので、重要なファクターから作品の片鱗を探っていこう。
まず、舞台美術のイメージは「工場と駅」である。<工場>は、何か空虚なものを大量生産している場、そして出発地であり到着地、通過点である<駅>は、線のイメージだという。在るのか無いのかわからない<工場>と、時間の象徴ともいえる<駅>。SFでもレトロフューチャーでもなく、アマノ感覚でしか表現し得ない、何時でも何処でもない場を出現させるべく、目下美術スタッフが製作に明け暮れている。また、映像や照明は今作で新たな試みに挑戦するそうなので、そちらも注目したい。定評あるスタッフワークは、絶体絶命の状況下でもさらなる高みを目指しているのだ。

稽古風景より

稽古風景より

作品をつくり上げていく役者・スタッフにとっても、作品を観る観客にとっても、天野の台本遅れは大きな問題であることに違いない。けれど、その制作過程を間近で見ていると、本番へ向かう極限状態の彼らの必死さや壮絶な集中力が、幕が上がるとそのまま、ヒトというものの生の輝きや愛おしさに変換され、天野が描きたい「アタシはなぜ、ここにいるのか?」ということが、より凄みを増して端的に伝わってくるような気がするのだ。
本番を目前に控え、「なかなか未来が思い出せない!」と断末魔の雄叫びをあげる天野だが、今は数日後の結実を願うしかない。

また今作の目玉といえるのが、かつて王者舘の舞台で活躍した懐かしい顔ぶれの集結である。日替わりゲストとして登場する彼らの出演シーンの詳細も未だ決まっていないのだが、そこは艱難辛苦を乗り越えてきたOB・OGたちのこと。きっと上手く立ち回り、大きな華を添えてくれるに違いない。

 
『思い出し未来』チラシ表  原画:アマノテンガイ

『思い出し未来』チラシ表  原画:アマノテンガイ

 
 
イベント情報
少年王者舘 第38回本公演『思い出し未来』

■作・演出:天野天街
■出演:夕沈、虎馬鯨、白鷗文子、雪港、ひのみもく、小林夢二、宮璃アリ、水柊、池田遼、る正和…他ゲストあり

<名古屋公演>
■日時:2016年2月11日(木・祝)19:30、12日(金)19:30、13日(土)14:00・19:30、14日(日)14:00
■会場:七ツ寺共同スタジオ(名古屋市中区大須2-27-20)
■料金:一般前売・予約3,000円、当日3,500円 学生前売・予約2,000円、当日2,500円

<四日市公演> Yonbun Drama Collection〜四日市演劇化計画〜
■日時:2016年2月18日(木)19:00、19日(金)19:00
■会場:四日市市文化会館 第1ホール舞台上特設ステージ(三重県四日市市安島2-5-3)
■料金:一般前売3,000円、当日3,300円 学生前売1,500円、当日1,600円

<伊丹公演>
■日時:2016年2月26日(金)19:30、27日(土)14:00・19:30、28日(日)14:00
■会場:AI・HALL
■料金:一般前売・予約3,000円、当日3,500円 学生前売・予約2,000円、当日2,500円

<東京公演>
■日時:2016年3月3日(木)19:30、4日(金)19:30、5日(土)14:00・19:30、6日(日)18:00、7日(月)14:00・19:30、8日(火)14:00
■会場:ザ・スズナリ
■料金:一般前売・予約3,500円、当日4,000円 学生前売・予約2,500円、当日3,000円

■問い合わせ:少年王者舘 070-1624-5884 syounen@oujakan.jp
■公式サイト:http://www.oujakan.jp/
 
<ゲスト出演予定>
【名古屋公演】
2月12日(金)19:30 田口大地、篠田エイジ
2月13日(土)14:00 姫子/19:30 すうどん
2月14日(日)14:00 石丸だいこ、丹羽純子、松宮陽子
【四日市公演】
2月19日(金)19:00 篠田エイジ
【伊丹公演】
2月26日(金)19:30 サカエミホ
2月27日(土)14:00 サカエミホ/19:30 サムソン熊田
2月28日(日)14:00 月宵水
【東京公演】
現在調整中につき、公式サイト及びツイッターで確認を。

※尚、2/11(木)はゲスト出演なし。 その他の日もゲスト出演がない場合あり。

■公式サイト:http://www.oujakan.jp/

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