クリス・ハート、初の武道館ライヴは「ツアーファイナルであり、新しいスタートでもあります」

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2016.2.19
クリス・ハート

クリス・ハート

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昨年7月から、外国人アーティストとしては初の47都道府県ツアーを行なっているクリス・ハート。目下、後半戦のツアーで全国を巡り、4月30日には初の日本武道館公演も控えている。今回のツアーで各地のファンとの触れ合いやそれぞれの地で文化を体感したことで、よりリアルな作品になったというニューシングル「僕はここで生きていく」について、そして念願の武道館公演について、じっくり話を訊いた。



――12月の国際フォーラムでツアーの3分の2を終えられて、どんな感触をお持ちですか?

国際フォーラムが35公演目だったんですが、会場によって土地の文化もエールも全部違うから、毎回フレッシュにできました。アメリカ人からしたら、日本はサイズとしては小さい国というイメージを持っているかもしれないけど、実際にあちこち行くと、深い歴史や文化、もちろん名物や食べ物もバックグラウンドもあって、そういう発見がまだまだあるなんてすごいなと思いました。

―― 一旦の区切りとしての国際フォーラム公演の感想はいかがですか?

フォーラム公演はクリスマスアルバムを出した頃だったから、ちょっとだけセットリストも入れ替えて、すごく楽しかったです。でもあの日を全力でやったからこそ、これからの武道館は同じセットでやるより、武道館だけの新しいステージを作ってみたいなと思っていて。今、まだまだプランニング中だけど、レベルアップして、あのステージよりもっといいステージにしたいなと思いました。フォーラムに関しては、サプライズ発表とか、もう何カ月も前から分かってたのにガマンして言わないようにしていたり(笑)。全国から来てくれてる皆さんがいるので、あそこでちょっとみんなでお祝いしたい気持ちがあって。子供のことはツアーが始まる前からもう分かってたけど、フォーラムまで何も言わずにガマンしていたんです。だけど“ストーリーコーナー”(映像で、家族のフィクションの物語を上映)に重ねてる内容があって、毎回、涙が出そうになって(笑)。“自分の子供はどういう感じかな?”と思って。でもストーリーがあることで、ただ歌ってるだけじゃなく、いろんな人の曲、自分の曲でもサウンドトラックのように人生ストーリーを歌えるようになって、自分の理想のステージができましたね。

――クリスさん自身がお父さんになるというリアルな思いが反映されたと?

そうですね。今までは想像の世界で“こんなパパになりたいな”と思って歌ってたんですけど、ほんとに子供ができたって分かっただけで、このツアーでの「home」や「あなたへ」は感動しながら、涙が出そうになるのをガマンして歌ってました。2月に生まれたので、これからはリアルに子供の顔も分かった上で歌うことになるので、たぶん完全に涙が出ると思いますけど(笑)。

――クリスさんの人生のドキュメントにリアルタイムで接しているツアーになっていますね。

自分でそこまでプランニングできないので、たまたまですけどね(笑)。でも僕と同じ経験をしてきた人もたくさんいるかなと思って。違う街に行ったり、家族ができたり、いろんなチャレンジがあって、苦労もあって。それは僕の音楽プロジェクトには一番いいストーリーかなと思いますね。いろんな人が悩んでいるからこそ、“一人じゃないよ”ってメッセージを伝えたくて。だから共感できるストーリーを作って、歌っていきたいなと思うんです。

――そしてこのタイミングでニューシングルの「僕はここで生きていく」のリリースは非常にタイムリーですね。

ははは(笑)。この曲の制作は去年の春から始まって、春という季節にはすごく合ってるテーマなんですね。卒業とかに合っている曲なので。僕自身は、帰化申請のこととか子供を持つこととか、自分のストーリーもありながら、でも誰でも共感できるストーリーで。成長して一人暮らしを始めて、悩みとか不安な気持ちとか故郷への思いとか、それを全部入れたいなぁと思って。成長していく、大人への世界はまずそこから始まるから、そういうストーリーを大事にして歌ってみたいなと思いました。

――因みにクリスさんが帰化申請しようと思われた実際のきっかけは?

いろんなことがありました。12歳のころから日本のことが好きになったことと、13歳のときのホームステイがあって、どうしても日本に住みたいなと思ってて。あっという間に20年間が経ちまして(笑)。自分の命はもう3分の2以上は日本と繋がりがあって、離れることも考えられないし、結婚して子供のことも分かって。もちろん日本のために力になれることがあれば頑張りたいなとも思うし、自分の子供のことを考えたら、何より日本人のアイデンティティを持っていてほしいから、それなら僕も日本国籍になればと思って。帰化申請した方がいいと思ったし、もっと強くなりたいなっていう気持ちがありました。仕事のことはそこまで関係なかったかもしれないです。サラリーマン時代も、音楽でデビューしなくても、やっぱりずっと日本に住みたいなと思ってて。でも、この機会があって、気づいたのは、やっぱり海外の皆さんにもっと日本のことを紹介していきたい気持ち。でも外国人としては、ちょっと壁があるというか、同じような責任感は持てないから、上手く伝えられない、そういう問題があるかなと思ったので、帰化したうえでなら、歴史や文化の話をもっと上手くできるかなと思ったということもあります。

――日本で生活してきた中で自然と生まれた気持ちなんですね。

自然でしたね。考えすぎるところはなくて、この流れでこれは一番当たり前なことかなと思って。ツアーでファンの皆さんから「ずっと日本にいてください」とか、優しい思いのメッセージをいただいて。やっぱりファンの方の中には「いつかクリスさんはアメリカに帰るのかな」と思われている方もいて、それは残念だなと思って。僕は、帰らないで日本には最後までいるつもりであることを知ってもらいたいので、ファンのためでももありましたね。だからこのツアーで、ファンの皆さんに自分のプライベートな情報そのまんま(笑)、シェアしようと思って。それがあったからこそファンの皆さんが家族のような存在になって、より近くなりました。

――そういう流れをお聞きすると「僕はここで生きていく」という歌のリアリティが増しますね。今回は、作詞家の高木洋一郎さんとクリスさんが歌詞を共作されていますね。

こういう作詞のチャンスはバンド時代以来10年ぶりで、デビューしてからは初めての作詞なので、けっこう難しかった(笑)。10代の時も作詞はしていたんですが、ちょっと日本人が共感できない歌詞ばかりで、まだ壁を感じたので作詞は休憩していたんです。そこから日本の生活も始めて、日本の名曲の勉強もしようと思って、“いい歌詞はどんな歌詞だ?”っていうのを4~5年確認していたんです。それでやっとこのチャンスに高木さんと共作で作詞してみたら、やっぱり今のクリスとしては日本に住んでいろんな経験があって、日本の景色も分かってるから、もっとうまくできるようになったかなと思って。やっぱり経験がないとうまく曲を作れないということを、改めて分かってきました。それは自分のストーリーも入ってるけど、日本人リスナーとしてはこの曲を聴いて、自分の故郷のイメージも出るようにいい歌詞を作らないとダメだなぁと思って、高木さんと話し合って、高木さんの経験と僕の経験を合わせて、この曲はうまくできたかなと思います。

――好きなフックや歌詞はありますか?

ああ(笑)、僕に合ってるところは“お母さんの味を再現してる”ところですね(<好きだったかあさんの味 思い出しながら 作ったごはんは なぜか思うようにいかなかった>)。日本にはギター一本だけを持って来て、一人暮らしの時に、お母さんが作ってくれたものをちょっと作ってみたいなと思って、全然上手くできなくて(笑)。僕のお母さんはパスタとかピザとかを生地から作ってたので、それを再現してみようと思ったけどうまくできなくて、だんだん諦めた(笑)。でも気づいたのは、お母さんの味を真似するより、自分の生活だからこそ、自分のオリジナルな味を作らないといけないと思って。それも料理だけじゃなく、自分の人生、自分の道を選んで生きるしかないから、自分のレシピを自分なりに完成させて、うまく生活できるようになって。自分のオリジナルフレイバーができるようになることって、僕はここで自分なりに生きて行くっていう話になるかなと思いました。卒業とか結婚などで違う街にくるといろんなことがあると思うんです。最初の一歩はほんとに怖くて、辛くて悔しくて、いろんなことがあって、それを乗り越えることにちょっと時間がかかるけど、でもシンプルにそのスタートのことを曲にしたいなと思いました。

――カップリング曲の「I Believe~手をつなごう~」は、すでにライヴでも歌ってらっしゃいますね。

はい。「I Believe」は長い制作の期間があって、一昨年の夏から作り始めた曲ですね。世界中のニュースを見て、戦争の話とかいろんな話があって、悩んでる人が多いからこそちょっとでも力になれる曲が作りたいなと思って。一人でこの世界を変えることは考えられないから、でも変えたいんだったら、まずは一人ひとり、自分のことを信じることが大事ですし、平和のことや世界や幸せのことを信じてたくさん人が集まったら、世界を変える力になるかなと思って「I Believe」っていうタイトルになりました。まずはこの世界について、希望、信じて頑張っていこうっていうメッセージを言いたかった。この曲はリリースしなくても歌いたい気持ちがあったので、去年のクラシックコンサートから歌い始めて…実は去年の1月に一回レコーディングしたんです。それからクラシックコンサートやツアーで歌って、だんだん成長して歌い方も変わってきて、去年の11月に再レコーディングしました。やっぱり歌いながらいろんな人の顔を見て、いろんなストーリーが分かって、自分の心が変わってきて、歌い方も変わってきて、それを再度レコーディングしたいなと思ったんです。そういうことがあったからこの曲を作るのは難しかった。やっぱり自分のための曲じゃないというか、いろんな人を繋いで、そのやり取りの中で生まれるものだったので、面白い経験になりましたね。

――そして和のテイストの「ゆいざくら」もこれからの季節にぴったりですね。

これも一昨年の夏から2年間かかりました。当初、東京での春の経験しかなくてうまく完成できなくて、ちょっとゆっくり制作を進めたんです。でも、やっとこのツアーの影響でいろんな景色を見て、うまく日本のイメージが自分の中にできて歌えるようになりましたね。ツアーで毎年いろんな出会いがあって、いろんなファンに会って話すけど、ツアーの途中にファンの家族の方が病気で亡くなったとか、そういう話もけっこうありまして。ほんとにその時その時を大事にしたいなと思うようになってから、この曲を歌えるようになりましたね。

――ラストは、合唱曲でおなじみの「旅立ちの日」のカバーですね。

バンドマスターもうちの妻も、卒業式でこの歌を歌ったらしいです(笑)。メロディもいいしメッセージもいいし、この季節にぴったりなので歌ってみたいなと思って。この曲は自分一人で歌うのでは足りないなと思ったから、NHKの児童合唱団とコラボをさせていただいて。コーラスが入ったことで、すごくあったかい気持ちになって、完全に曲の雰囲気も変わりました。ほんとにつながってるなぁっていう気持ちになって。僕は卒業してないけど(笑)、学生の頃を思い出して、あの頃の自分になりましたから。聴いていただいた皆さんも元気になれると思います。

――2016年はツアーの後半ももちろんありますが、さらにどういうシンガー、アーティストとして活動していきたいですか?

そうですね……難しいですね(笑)。歌手や歌がうまい人っていうところより、やっぱりストーリーテラーっていうところを大事にしたいなと思ってますね。いろんな人のストーリーを歌いたいなと思って。カバー曲はもちろん、たくさんリクエストがきてるから、それを歌い継いで、皆さんの大好きな曲をみんなで楽しめるように、そういう曲も歌いながら、音楽の世界には感謝の気持ちを返すため、オリジナルの曲も作っていきたいです。

――そしてツアー後半戦のゴール、そしてこれからへのスタートになりそうな日本武道館公演があります。

はい。武道館はまだ言えないサプライズが多いですね(笑)。でも僕の中では『続く道』、47都道府県ツアーとしてはそういうタイトルがあるんだけど、新しいスタートでもあります。次のスタートに向けていろんなことも考えているので。来ていただく皆さんが期待できるように頑張りたいと思います。

――クリスさんにとって日本武道館はどういう場所ですか?

ロックバンド時代からいつか武道館ライヴをしたいなと思ってたけど、その夢は忘れちゃって、普通の生活で頑張って。この感じでライヴをできるようになって、僕にとっては大きなことになりました。この歳でパパになることとか、3周年のちょうど前ですね。あの日は僕の結婚式と同じ日かな? 僕のデビューの3日前に結婚式があったので、けっこういろんなことがお祝いできることが嬉しくて。お父さんとお母さんも来てくれるかな? と思ってるけど。今までの20年間がやっと形になって、日本で生活できて歌手としても活動できて、パパになって、そこで全部お祝いしたいなと思って。そういう場所になってます、全部つながってる(笑)。今考えたら、20年「僕はここで生きていく」っていうテーマなんですよね。そのお祝いの日が武道館なんですね(笑)、合ってますね。運命かな? 裏にプロデューサーがいるんじゃないか? っていうぐらい(笑)。

インタビュー・文=石角友香

 

リリース情報
シングル「僕はここで生きていく」
2016年2月17日発売
【初回盤】(北原里英絵柄)DVD付 UMCK-9810 ¥1,600+税
クリス・ハート「僕はここで生きていく」初回盤

クリス・ハート「僕はここで生きていく」初回盤

【通常盤】(クリス・ハート絵柄)UMCK-5591 ¥1,200+税
クリス・ハート「僕はここで生きていく」通常盤

クリス・ハート「僕はここで生きていく」通常盤


<収録曲>
1.僕はここで生きていく
2.I Believe~手をつなごう~
3.ゆいざくら
4. 旅立ちの日に(カバー)
 
 
ライヴ情報
『クリス・ハート 47都道府県Tour2015-2016~続く道~ presented by IBJ』
2月11日(木・祝)宮崎市民文化ホール
2月12日(金)鹿児島市民文化ホール 第1ホール
2月14日(日)びわ湖ホール
2月20日(土)神戸国際会館こくさいホール
2月21日(日)和歌山市民会館
2月27日(土)米子コンベンションセンター
2月28日(日)鳴門市文化会館
3月06日(日)仙台サンプラザホール
3月18日(金)長崎ブリックホール
3月19日(土)広島HBGホール
3月21日(月・祝)松山市民会館
3月31日(木)ロームシアター京都

『クリス・ハート 日本武道館LIVE 2016 "僕はここで生きていく"
 ~47都道府県Tour2015-2016~続く道~ FINAL~』

4月30日(土)日本武道館
開場/開演 16:00/17:00

 
 

 

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