“挑む女”鹿目由紀の新作ロングラン公演が、名古屋で開幕

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2016.3.4
 劇団あおきりみかん『パラドックス・ジャーニー』チラシ表

劇団あおきりみかん『パラドックス・ジャーニー』チラシ表

演劇というより肉体訓練!? あおきりの新作はスゴイことになっている!

劇作と演出、そして役者もこなす鹿目由紀率いる、劇団あおきりみかん。名古屋小劇場界で最大動員数を誇る彼らの第34回公演『パラドックス・ジャーニー』が、3月3日から約2週間にわたって名古屋・伏見のG/pitで上演中だ。

鹿目は前作『だるい女』(2015年6月~8月に上演)で、自身と同世代の女性の悩みと成長をいつもよりシリアスな視点で丹念に描き、それまでの作品とは一線を画す新たな地平を切り拓いた。また、出身地・福島も被災した東日本大震災についても主人公の体験として触れたこの意欲作で、全国5都市公演を敢行。念願だった故郷での上演も実現した。

そして新作『パラドックス・ジャーニー』でも、また新たな挑戦を試みたという。『だるい女』ならぬ“挑む女”鹿目が今作で目指すものとは何か、また一体どんな作品になるのかを知るべく、公演を間近に控えた稽古場を訪問した。

前列左から・真崎鈴子、みちこ、花村広大、近藤絵理、鹿目由紀 後列左から・平林ももこ、カズ祥、近藤彰吾、松井真人、川本麻里那、山口眞梨

前列左から・真崎鈴子、みちこ、花村広大、近藤絵理、鹿目由紀 後列左から・平林ももこ、カズ祥、近藤彰吾、松井真人、川本麻里那、山口眞梨

── まず、今作の発想はどこから生まれたのでしょうか。

前回の『だるい女』が、福島のことや自分に即したことを書いた作品だったので、ツアーで上演を重ねていくうちに逃避心が芽生えてきたんですね。面白くはやれているんですけど、だんだん他のことを考え始める時ってあると思うんです。それで次は全然違う作品にしたいなと。重いことが入ってるものじゃなくてスカッと爽やかなものが書きたいっていうのと、『ジョジョの奇妙な冒険』という漫画が好きで、その第3部のようにちょっと馬鹿らしいけど旅に出ちゃう、みたいな感じの話が良いなと思って。みんなで銭湯に行った帰りに考えてたんですけど、なんとなくイメージとか根幹になりそうな所が、その時に頭の中で出来上がったんですよ。

── “パラドックス(逆説、矛盾の意)”というキーワードについては?

前から「パラドックス」という言葉に惹かれていて。タイムパラドックスとか頭の体操とか、そういうものを考えるのが好きなんです。なんでこんな整合性取れないことが起こるんだろう? って。そういうことって世の中多いので、「矛盾」をはらんだことを抱えている人が旅に出る、というのがいいんじゃないかなと。

稽古風景より

稽古風景より

── チラシにも「矛盾だらけの旅」と書かれていますが、ストーリーとしてはひたすら矛盾を追い続けていくのか、別の要素もはらんで展開していくのか、どのような感じになるんでしょう。

主人公の男が「矛盾だらけの世界から抜け出したい」と思うところから始まります。自分がそもそも、どこの誰なのかもわからない。今見ている自分が「本当の自分なのか」ということを疑うんです。でも“自分探し”とは違って、具体的に行動としての「旅」に出ようとするんですね。言葉として、矛盾が解消される「パラドックスの向こう側」というのが出てくるんですけど、そこを目指して進むうちに、またいろいろな矛盾をはらんだ事が起こる…という感じですね。そのことに「えっ?」ってなるんだけど結局、解消はされずに進んでいくんですよ。どちらかというと、どんどん広がっていく方に近い。

── 敢えて解消せず、まとめない?

そうですね。哲学的なことを考えているようでいて、今までで一番エンターテイメントな作品だなと思っているんです。やっぱり今回目指していたのはエンターテイメントだったんだなと、創っていく中で気がついてきて。

── 哲学的なことを話していても、観ている人にとっては可笑しく見えるという。

かなり可笑しいですね。肉体的に酷使してるんですよ、今回。いつも役者には枷を与えるんですけど。つま先立ちでずっとやってくれとか、ジャグリングが出来るようになってくれとか。2ヶ月位で(笑)。

稽古風景より

稽古風景より

── それは何のために?

単純に役者との共同作業なので、「こんなことやれないだろうな」ということを挑戦するのが、みんな絶対好きなはずだ、って思ってるんです(笑)。やってほしいことに関しては、まだ一回も「出来ない」って言われたことがないんで。「やれるかな?」って聞いたら、「やれないことはないです」って言うので、調子に乗ってやらせるっていうことがどんどん増えていくんですよね(笑)。

── 人間の肉体がどんどん壊れていく様が面白いみたいな。

肉体が酷使された時に出てくる言葉っていうのが、結構本当の言葉に近いというか。セリフの出方も(疲れていくことで)変わるじゃないですか。それが面白いんです。

── 演出家に言われたら、役者は断れませんよね(笑)。

そうですね。断れないと思います、私も。だから今、いろんなことが大変なことに…。みんなにお願いしたことにめっちゃ時間が掛かっていて、稽古もままなっていないのに、自分も(役者として)それをやることになってることに気がつくわけですけど(笑)。

── その内容は観てのお楽しみ、ですよね。

そうですね。ただ、G/pitでしか出来ない、あの狭い空間だから出来ることをやってます。広いところでももちろんできるんですけど、狭い方がより面白いだろうなということをやっていて、目指しているのは“SF映画”なんですよ。観ている方が、あの狭い空間の中に壮大な広がりを感じてくれればいいな、と思いながらやってます。

── 舞台美術としてはどんな感じになるんでしょう。

すごくシンプルです。本当に何もなくて、ポールしかないです。真っ黒なポールが何本か立っているだけで。

稽古風景より。檻のように配された計14本のポールが、演出の重要な役割を担う

稽古風景より。檻のように配された計14本のポールが、演出の重要な役割を担う

── 舞台美術をあまり作らないというのは何か理由が?

今回は人間でなるべく想像力を掻き立てたいと思って。映像とかもほとんど使わないんですよ。なんとか人間で映像を感じさせられないかっていう(笑)。

── 人間力に賭けると(笑)。

人間をどこまで信じてるんだって思いますけど。最初は映像も考えたんですよ。やっぱり“SF映画”と言うからには、文字面がバーッと出たり『マトリックス』みたいなことになってもいいんじゃないかって一瞬思ったんですけど、それをなんとか人間で感じさせられないものかと。どういうチャレンジなのか、わかんないんですけど(笑)。

稽古風景より。左下は演出をつける鹿目由紀

稽古風景より。左下は演出をつける鹿目由紀

── 最近はG/pitでの上演が続いていますが、このことにも理由が?

たまたまG/pitが空いていたというだけなんですけど、ロングランがやりたくて。今回はツアースケジュールの関係で2週間ですけど、前回も3週間くらい上演して、長い方が作品との付き合いを楽しめる、ということに気づいたんです。再演とかもそうですけど、ウチは再演する機会は今のところあまりないので。今回も名古屋、東京、仙台…と丸一ヶ月、ツアーで回るのがすごく楽しみです。


外部からの劇作・演出の依頼も多い鹿目だが、その一連の取り組み方を見て思うのは、現状に甘んじることなく、常に“挑み続けている”ということだ。それが顕著に現れるのは、やはり信頼を寄せる劇団メンバーとの作業なのである。その姿勢は公演が始まっても変わらず、「気になっちゃったら台本も変えます。今回も名古屋と最後の上演地・仙台では、かなりイメージが変わったりすると思います」と言う。諦めることなく日々高みを目指し、さまざまなスペックを身につけていく彼らの本公演は見逃せない。

『パラドックス・ジャーニー』チラシ裏

『パラドックス・ジャーニー』チラシ裏


 
公演情報
劇団あおきりみかん 其の参拾四『パラドックス・ジャ←ニ→』

■作・演出:鹿目由紀
■出演:花村広大、松井真人、カズ祥、近藤彰吾、みちこ、平林ももこ、真崎鈴子、近藤絵理、山口眞梨、川本麻里那、鹿目由紀

<名古屋公演>
■日時:2016年3月3日(木)・4日(金)19:30、5日(土)14:00・19:00、6日(日)11:00・15:00、7日(月)19:30、8日(火)15:00・19:30、10日(木)・11日(金)15:00・19:30、12日(土)14:00・19:00、13日(日)・14日(月)11:00・15:00  ※9日(水)は休演
■会場:G/pit(名古屋市中区栄1-23-30 中京ビル内)
■アクセス:名古屋駅から地下鉄東山線で「伏見」駅下車、7番出口から南へ徒歩8分

<東京公演>
■日時:2016年3月18(金)19:30、19日(土)14:00・19:00、20日(日)11:00・15:00
■会場:池袋シアターグリーン

<仙台公演>
■日時:2016年3月25日(金)19:00、26日(土)13:00
■会場:せんだい演劇工房 10-BOX

■料金:前売2,800円、当日3,000円、大学・専門学生1,800円、高校生以下1,200円  ※仙台公演のみ前売2,300円、当日2,800円、ユース(23歳以下)1,500円
■問い合わせ:劇団あおきりみかん 090-8075-0683(18:00~22:00)
■公式サイト:http://www.aokirimikan.net
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