東京都交響楽団 プロムナードコンサート No.367
“作品至上主義”の音楽づくり
小泉和裕が都響の指揮台に登場すると、いつにも増して腰を据えた真摯な音楽が生まれ、スコアそのものが語り出すという印象を受けるのは筆者だけだろうか。現在は終身名誉指揮者という肩書きをもつが、九響と名古屋フィルの音楽監督を務め(後者は2016年4月から)、仙台フィルと神奈川フィルでも客演指揮者のポストを得ているという人気ぶり。しかしその背景にあるのは「じっくりと」という言葉が似合う、作品至上主義の音楽づくりなのだ。
その小泉&都響コンビによる3月のプロムナードコンサートでは、ベートーヴェンの交響曲第2番と、R.シュトラウスの交響詩「ドン・キホーテ」が演奏される。実はこの2曲、前者は32歳、後者は33歳のときに初演されているのだ。ベートーヴェンの交響曲は、30歳を過ぎてようやく作曲家としての個性が際立ってきた時期の作品であり、意欲作となる第3番「英雄」へと向かう栄光の階段。第1番で聴かせた古典派スタンダードへのちょっとした抵抗を、さらに推し進めた野心的な作品だ。一方の「ドン・キホーテ」は物語のフォーマットに乗せた壮大な変奏曲であり、首席チェリストの古川展生(ドン・キホーテ)と首席ヴィオリストの店村眞積(サンチョ・パンサ)が、音楽で名コンビぶりを聴かせてくれるだろう。
どちらの作品も「揺るぎのない静かな自信」という言葉を想起するような音楽として、ホールに響くことだろう。
文:オヤマダアツシ
(ぶらあぼ + Danza inside 2016年3月号から)