渡辺俊幸インタビュー、『THE SYMPHONIC SOUL』の魅力に迫る

インタビュー
音楽
クラシック
2016.3.11
渡辺俊幸

渡辺俊幸

NHKドラマ『おひさま』、NHK大河ドラマ『毛利元就』、映画『宇宙兄弟』『モスラ』ほか、数々の代表作を持つ作曲家・渡辺俊幸が、オーケストラと実力派シンガーのコラボレーションで贈る贅沢なコンサートを実現。長年温めてきたというとっておきのステージに向け、その思いを語ってくれた。

エンターテインメント性の高いシンフォニック・サウンド​を楽しんで欲しい

──今回のコンサートは、長年温めてきた企画だったそうですが。

私はオーケストラサウンドをとても愛している作曲家ですが、こういうシンフォニックなサウンドはクラシックが好きな方には馴染みがあっても、そうでない人はなかなか触れる機会がありません。それは本当にもったいないことだとずっと思っていて…より多くの方々にオーケストラサウンドを届けたいというのが、私の中にずっとあった大きなテーマだったんです。これまでもいくつかコンサートはやってきていますが、よりエンターテインメント性の高いモノ、例えばラスベガスやハリウッドで開かれているようなゴージャスなステージが日本でももっと身近に楽しめたらいいのに…と思っていて。そんな中出会ったのが、THE ORCHESTRA JAPANでした。

──今回タッグを組むオーケストラですね。

“いいオケができたんですよ”って紹介されまして、実際に彼らの『ディズニー・オン・クラシック』も観ましたが、ホントに楽しいオーケストラなんです。正統派のクラシックにこだわらず、始めからああしたカジュアルで間口の広い演奏もどんどんやっていこうという前提で集まったメンバーなので、登場からとても楽しい、ワクワクしたプレゼンテーションのあるオケ。“じゃあぜひご一緒しましょう”というところから、今回のコンサートが動き出しました。

ゴスペラーズには「永遠(とわ)に」やEW&Fを、GILLEにはホイットニーやレミゼを

──具体的な内容については?

僕の独断と偏見で選んだ名曲をやろう(笑)。まず、今までやってないようなこともしたかったので、いかにもクラシカルなものと結びつきにくいアーティストの方をお呼びしたかったし、本来ポップスを好む観客にも喜んでもらいたい。その思いをまず『ザ・シンフォニック・ソウル』というタイトルに込めました。魂を揺さぶる、感動を与えるというソウルと、音楽のジャンルのソウル。そのダブル・ミーニングで。ゴスペラーズは以前から親交があって、彼らにはぜひこういうステージにトライしてもらいたいと思っていたのでお声かけしたところ、“楽しそうですね。ぜひ!”と、快諾してくださいました。女性シンガーのGILLEさんはゴスペラーズのみんなを通じてつながった縁。ゴスペラーズのソウル・サミットというコンサートに出演されているのを拝見して素晴らしい才能だと思い、同じく出演をお願いしました。

──すでに演目も発表されています。

ゴスペラーズはオリジナルナンバーを今回のために編曲させてもらったのに加え、僕がぜひにと提案したアース・ウインド&ファイヤーのカヴァーで『After The Love Has Gone』を、やはり今回オリジナルのオーケストラサウンドにアレンジしたスタイルで披露してもらいます。彼らのコーラスワークもしっかり生かされた、相当カッコいいアレンジなのでぜひ期待していただきたいですね。GILLEさんは英語詞でさまざまな曲のカヴァーに挑戦されていますが、今回は彼女の原点とも言えるホイットニー・ヒューストンの『Greatest Love of All』と、僕の“ミュージカルナンバーにもぜひトライして欲しいです”という要望にお応えいただいて、『レ・ミゼラブル』の『夢やぶれて』をセレクトしました。もちろん、これらも今回のオリジナルのアレンジです。『夢やぶれて』は今回のアレンジワークのために本当にいろんなバージョンを聴き比べましたが、たぶんね、今までで一番いいんじゃないかな(笑)。自信作です。

世代を超えて愛され続けてる映画音楽を

──映画音楽を中心としたインストナンバーもありますね。

全部僕が大好きで、世代を超えて愛され続けていって欲しいと思っている曲ばかりです。デイヴィッド・フォスターは、クラシカルでありながらジャズテイストを生かした、当時の最先端を行くコンテンポラリーな音楽を生み出した人。今の時代の人たちにもぜひ聴いて欲しいです。エンニオ・モリコーネも、たぶん知らず知らず耳にしたことのある曲ばかりなんじゃないかな。また、僕が音楽を担当した映画『モスラ』シリーズの楽曲を組曲にした組曲『平成モスラ』は、是非特撮ファンのみなさんにも楽しんで欲しい試みですし、本当に世代を選ばない、誰もが楽しめる構成になっていると思います。

──枠にとらわれずにステージングされた、“シンフォニーサウンドを愉しむ”がコンセプトのとても自由なコンサート。このスペシャルな企画を通じて、渡辺さんが客席へ届けたい思いというのは?

コンサートの構成を考えるうちにどうしても新曲もやりたくなってしまい(笑)、『Welcome to Happy Time!​』という書き下ろしをオープニングでお披露目するのですが、それくらい僕自身も非常に楽しみにしているコンサートです。おなじみの曲や昔流行ったナンバーを、今の時代の人たちが愉しめるような新たなアレンジでお届けすることで、その曲がもともと持つ魅力を再発見してもらえたら嬉しいですし、なにより素晴らしいオーケストラと素晴らしいミュージシャンが生み出す生の音、美しく感動的でダイナミックなサウンドを身体中で感じてもらいたい。サントリーホールという、本当に素晴らしい会場でみなさんのお耳に届けることができるのも、本当にスペシャルなことだと思っています。既存のジャンルを超え、幅広い層の方たちがオーケストラサウンドに触れる新たな場を提供できたらなによりです。

──今回はその第一歩。お客様にはぜひ感想や次回へのリクエストなどもいただきたいですね。

いいですね。そうやってこのコンサートならではの楽しさをみなさんと分かち合いながら、次はどんな素敵な歌手の方をお呼びしようか。こんな曲を持って来たらみなさん驚くだろうなって、さらにまだやったことのないステージを続けていけたら、またひとつ夢が叶います。シリーズ化できたら素晴らしいですね。

取材・文=横澤由香 撮影=渡辺マコト

公演情報
渡辺俊幸PRESENTS“THE SYMPHONIC SOUL”ザ・シンフォニック・ソウル
~魂を揺さぶる極上のエンターテインメント!~
渡辺俊幸・ゴスペラーズ・GILLE

渡辺俊幸・ゴスペラーズ・GILLE

■日時:2016年3月31日(木)19:00開演(18:30開場)
■会場:サントリーホール大ホール
■出演:
渡辺俊幸(指揮・編曲)、THE ORCHESTRA JAPAN(オーケストラ)
ゴスペラーズ(スペシャルゲスト)、
GILLE(スペシャルゲスト)
■演奏曲目(予定)
<ゴスペラーズ>

永遠(とわ)に(自身初のフルオーケストラバージョン)
街角–onthecorner-(同上)
EarthWindAndFire”AftertheLoveHasGone”(カヴァー初披露)etc..
<GILLE>
『レ・ミゼラブル』より”夢やぶれて~IDreamedaDream~”
ホイットニー・ヒューストン”IHaveNothing”/”GreatestLoveofAll”
『サウンド・オブ・ミュージック』より”MyFavoriteThings”etc..
「ニュー・シネマ・パラダイス」(エンニオ・モリコーネ)
「セント・エルモス・ファイアー」(デイヴィッド・フォスター)
「ウィンター・ゲームス」(デイヴィッド・フォスター)他
料金:S席8,800円A席7,800円B席6,800円(全席指定・税込)
■公式サイト:www.harmonyjapan.com/tss
■公演に関する問合せ:ハーモニージャパン TEL:03-3409-3345


 

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