徹底したロジカル・コメディで愛すべき人間を描く 注目劇団・電動夏子安置システムへインタビュー

インタビュー
舞台
2016.3.9
電動夏子安置システム 第31回公演『オシラス』

電動夏子安置システム 第31回公演『オシラス』

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旗揚げ以来、徹底したロジカル・コメディへのこだわりを持ち味とし、着実に支持者を増やしてきた実力派劇団「電動夏子安置システム」。グリーンフェスタ2012 フェスタ賞・BASE THEATER賞を受賞するなど、その実力は折り紙つきだ。今回、そんな電動夏子安置システムの主宰である竹田哲士と役者・広報を担当する道井良樹にインタビュー取材を敢行。有名アイドルの出演が決定しているなど、この春小劇場界をざわつかせそうな次回公演についてもたっぷり伺った。

 

--電動夏子安置システムさん結成までの経緯を教えてください。

明治大学演劇研究部にて、6本の作演出を手掛けていた竹田哲士が、過去の公演の成功に気をよくしていた中川祟宏(通称・じょん)と斉藤直樹(通称・斉藤ミルク、消息不明)に焚き付けられて、ぬくぬくとした学内ではなく、厳しい小劇場界にて、自分たちの演劇センスを問おうではないかと、劇団結成を決意し、「OLになる」と言っていた渡辺美弥子と、卒業後の進路が何だかよくわかってない小原雄平を誘い、ただただ、お調子と勢いに乗って2000年11月の結成にいたります。

第25回公演・10周年記念公演『PerformenVI〜Paradiso〜』

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--電動夏子安置システムさんの作品の特徴や雰囲気、作風を教えてください。

当劇団の特徴である「ロジカル・コメディ(論理悲喜劇)」とは、理不尽な状況下において、それに立ち向かおうと抗い、滑稽に立ち向かう人間の知恵とエゴが、さらに状況を混乱させてしまう喜劇的展開と、そのやや悲劇的結末を描くものです。
大きな運命には逆らえず、日々、それを受け入れてながら生きていくしかないのが人間でありますが、ただただそれに流されるだけではなく、精一杯あがいて、もがかなければなりません。報われないとわかっていながらも、状況打破に立ち向かわざるを得ない「生」にしがみつく、そういった愛すべき人間の姿を描き続けています。

第29回公演・シアターグリーン3劇場連動企画『机の上ではこちらが有利』

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--次回公演『ブレッチリーの啼かない鵞鳥たち』について、作品のあらすじを教えてください。

第二次世界大戦中、イギリスのブレッチリーパークと呼ばれる場所では、秘密情報部主導の下、暗号解読のエキスパートたちが集められて、ドイツのエニグマ暗号の解読が進められていた。優秀な頭脳の持ち主ではあるが、どこか常識の欠落している変人の集団は、その能力を如何なく発揮し、戦争を勝利へ導いたのである。
終戦から1年後。その施設は未だに残されていて、職員達は何の目的もなくただ、日々を過ごしていた。理由は明らかにされていないが、彼らは気づきつつある。この施設に、ドイツへの内通者がいるのではないかと。職員達の苛立ちは、いつしかその内通者の特定へと向きつつあった。同じ頃、目的を失い、暇を持て余した研究者たちはかつての精彩を欠いて今は、奇妙な研究を始めようとしている。それはただの機械に、人間としての知性を与える、「人工知能」の実験であった。これは暗号解読に知恵と情熱を注ぎすぎ、今や燃え尽き症候群となった天才(変人)たちの喜劇的な群像である。


--次回公演『ブレッチリーの啼かない鵞鳥たち』の見どころを教えてください。

本作は当劇団の特徴である「ルール」に基づいた笑いのほか、ミステリー要素も含まれておりますので、観客の皆様にも、登場人物と同様の情報量を徐々に得ながら、真相を探っていただける知的な興奮を味わえるかと思います。多くの伏線と情報が、「笑い」の中に隠されていますので、何度見ても新しい発見があることでしょう。

番外公演app.13『或ルゴリズム ~duplicate~』

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--次回公演『ブレッチリーの啼かない鵞鳥たち』のキャストの中に小川麻琴さんのお名前がありますが、こちらは元モーニング娘。のあの小川さんのことでしょうか。もしそうだとするならば、小川さんが電動夏子安置システムさんに参加することとなった経緯をお教えいただければと思います。

……。
…だよね…?
……道井さんが、前に…よね?…。
………。


主宰の竹田が黙ってしまったので、代わりに道井がお答えします。
僕が以前に舞台で共演した事がありまして。その時に、「元モー娘。の小川さんだ〜!」とはしゃいでいた私とは裏腹に、物凄くお芝居に真面目で常に探求してるのを感じまして。大いに反省した次第です。焼酎もお好きという事でお話するようになり、人柄を知るにつれて是非小劇場でも共演してみたい!と思ったわけです。特に電動夏子はちょっと面倒な設定とかで、それでいてコメディとかで。そんな芝居に是非出て貰いたくて貰いたくて。いや、しかしですよ?小劇場とかに果たして出て頂けるものなのか?と。小劇場と言えば、乾燥と塵と埃の巣窟ですよ?アイドルをそこに連れ込んで大丈夫?天罰とか大丈夫?心配ごとが尽きない尽きない。
ありましたからねぇ。昔の稽古場が劣悪な環境で。出て下さった女優さんが「この稽古場でやるならもぉ出たくない。」劇団員の高松が禿げたのはこの頃からですよ。まぁ確かに当時の稽古場は、稽古場っていうより倉庫でしたからね。
15年やってると様々なトラウマを劇団も抱えるもんですゎ。そうこうしてるうちに、かなりの月日が流れまして。ある晩、ウィスキーをストレートで呑みまくってしまった僕は、「えいっ!」と送信ボタンを。そしたら、そしたら!と、まぁ、そういう事です。

第22回公演『深情さびつく回転儀』

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--電動夏子安置システムさんの今後の展望・野望があれば教えてください。

結成から15年が経ち、勢いで揚げた劇団の旗が地面に着かないように走り続けてきました。ただただ長くやればいいというものでもないかもしれませんが、「面白い」と信じたものをこの先20年、30年と提供し続けられる事は簡単ではないけれど、意味がある事なのだと思います。ですから本多劇場や2000人動員や演劇賞の受賞などなどへの憧れも多々ありますが、赤字が当然という小劇場界の中で、まずは健全で継続的な劇団運営ができるよう、毎公演を興行的に成功させることが野望です。端から見たら小さい夢かもしれませんが、とても困難な事でもあるので、非常に大きな野望だと思っております。

第30回公演・シアターグリーン3劇場連動企画『随分と線引きの甘い地図』

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番外公演app.11『笑う通訳~Laugh'in Interpreter~』

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--電動夏子安置システムさんに関心を持たれた方に、メッセージをお願いいたします!

当劇団が標榜している「ロジカル・コメディ」とは笑いながら哲学していただく事を目的に製作しております。哲学というと、小難しく思われるかもしれませんが、まずは頭を空っぽにして楽しんでください。何も考えずに笑った先に、ふと「人間の面白さ」のようなものを感じていただけたら幸いです。

 
 
 
イベント情報
電動夏子安置システム『ブレッチリーの啼かない鵞鳥たち

日時:2016年4月20日(水)~24日(日)
会場:駅前劇場(下北沢)
出演者:

小原雄平
道井良樹
岩田裕耳
新野アコヤ
片桐俊次
武川優子
渡辺美弥子

犬井のぞみ
小笠原佳秀(殿様ランチ)
小舘絵梨
瀬崎良太
下平久美子(類プロダクション)
谷仲恵輔(JACROW)

小川麻琴

 

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