2015年オリヴィエ賞最優秀コメディ賞の日本版が上演!『九条丸家の殺人事件』松下洸平インタビュー
松下洸平(撮影:大倉英揮)
2015年英国オリヴィエ賞最優秀コメディ賞を受賞し、現在もイギリスでロングラン中のコメディが早くも日本初上陸を果たし、4月8日からの東京・俳優座劇場を皮切りに、名古屋、大阪、福岡にて上演される。
バナナマンら人気芸人の傑作コントや、バラエティ番組、ドラマも手掛ける構成作家オークラの上演台本・演出で、ストーリーも日本を舞台に書き直され、タイトルも『九条丸家の殺人事件』と名付けられている。
100分間という上演時間の中で、予測不可能なドタバタの劇中劇も繰り広げられる本作品。高度な演技力が求められるキャストには、芝居力に定評のある実力派が勢ぞろい。山崎樹範、松下洸平、上地春奈、久保田秀敏、伊藤裕一、また大水洋介(ラバーガール)と長谷川忍(シソンヌ)はWキャスト、さらに彩吹真央、梶原善も出演とバラエティに富んでいる。
【あらすじ】
これまでまともな上演をした事がない劇団「荻窪遊々演劇社」が、満を持して上演する“殺人ミステリー劇『九条丸家の殺人事件』の開幕初日。セットのドアが開かなかったり、あるはずの小道具がなかったり、役者がセリフ間違えたりと、本番中まさかのアクシデントが立て続けに勃発!それでもシリアスな芝居を必死に続けるが…舞台は奇想天外な展開に…!
劇中劇という二重構造の中で繰り広げられるこのスリリングな舞台で、劇団員の看場徹に挑む松下洸平に作品の内容や役柄を話してもらった演劇ぶっく4月号のインタビューを、別バージョンの写真とともにご紹介。
松下洸平(撮影:大倉英揮)
真面目に一生懸命に演じるコメディ
──作品に接した印象はいかがですか?
全体が劇中劇なのですが、まず面白いと思ったのが劇中劇ならではの裏のドタバタをいっさい見せないところでした。例えばあるべき小道具がなかったりした時に、本来はその理由があるはずで、裏で繰り広げられている大騒動を見せるやり方もあると思うんです。でも今回は、それは見せずに、舞台上の役者たちはただ一生懸命に芝居を成功させようとしている、その真面目さが、笑いにつながっていくんだろうなと。ですから、コメディと銘打たれている作品ですが、僕たちはお客様を笑わせようとするのではなくて、真剣に懸命に演じていって、その姿を観て笑って頂く、そんな作りになっています。特に正味100分の崩壊喜劇と謳われているので、きちんと100分以内でお観せしなければならないという、プレッシャーもありますが(笑)、オークラさんならではの笑いも詰まっていくと思いますし、こういう芝居ほどチームプレイなので、色々なジャンルの役者さん、また今回は芸人さんも出演されますから、お互いの間を感じ取って集中して演じていきたいです。
──「看場徹」という劇団員の役ですが、舞台上では、その看場が劇中劇で演じている「富桝浩次」としての芝居しかないですから、難しさもあるのでは?
そうなんですよ。僕自身と、劇団の役者と、その役者が演じている登場人物という3人がいることになるので、すごく頭を使うところです。ただ、人にも言われますし、自分でも思うのですが、芝居ってどんなに作りこんでも演じている人間が出てしまうものなので、今回も舞台上で演じている「富桝」という、あまり周りが見えていない人物の中に、役者である「看場」も必ず出てくるはずだと思うので、そこはある意味リンクしていても良いのかなと。だからまず「看場」がどういう人なのかを自分の中でしっかりディテール作りをしていって、「看場」が演じるならではの「富桝」としての芝居や、居方が出来るようにしていきたいです。
松下洸平(撮影:大倉英揮)
日本版だから許される自由度と新しさ
──海外の戯曲が日本に舞台を置き換えて演じられるというのも珍しいですよね。
もちろん元々の作品の面白さはふんだんにあるのですが、やはりイギリスで笑うポイントと、日本人が観て笑うポイントとはどうしても違うので、そこを置き換えられるのはありがたいですね。これまで海外のミュージカル作品にも色々と出させて頂きましたが、歌詞ひとつとってもこの言葉のままだと日本人にはなじみがない、ということもあって、そこをどうするか?という時に、ある程度変えてもいい時と、絶対にダメな時とがあるんです。でも今回はなんでもやっていい! ということなので、それだけの自由さがある分、お書きになるオークラさんは大変でもあると思いますが、新しいものが生み出せると思います。
──ポスタービジュアルも公開されましたが、撮影にはどのように臨みましたか?
「普通にカッコつけていい」と言われて撮影したので、実際の舞台に接して頂いた後で改めて見て頂くと「何をそんなにカッコつけてるの⁉」と思われるかも知れません(笑)。そう感じてもらえるような舞台にしていきたいです。
──新しい刺激がたくさん得られる作品になりそうですね。
僕は自分が演劇に助けられて生活しているといつも感じているので、役者として演劇に応えていきたいですし、今年は特に角度の違う作品に色々と出させて頂けて、その最初がこのコメディ作品になります。劇場も俳優座で六本木の来て頂きやすい場所ですし、芸人さんも出演されるので、普段演劇にあまりなじみのない方にもどんどん観て頂けたら。今の時代には必要な大笑いできる作品ではないかと思いますので、是非劇場にいらしてください。
松下洸平(撮影:大倉英揮)
まつしたこうへい○東京都出身。08年「ペインティング・シンガーソングライター」としてCDデビュー。09年ブロードウェイミュージカル『GLORY DAYS』で本格的に俳優デビュー。以降舞台、テレビと活動の幅を広げている。近年の主な舞台は『スリル・ミー』『ネクスト・トゥ・ノーマル』『19歳のジェイコブ』『アドルフに告ぐ』など。6月に『ラディアント・ベイビー~キース・へリングの生涯』、11月に『木の上の軍隊』への出演も控えている。
【取材・文/橘涼香 撮影/大倉英揮】
〈料金〉¥7,000(全席指定・税込)
●4/30~5/1◎イムズホール(福岡)