怖くて面白い傑作ミュージカル『スウィーニー・トッド』、大竹しのぶが猟奇的ヒロイン役で熱唱!

インタビュー
舞台
2016.3.29
大竹しのぶ

大竹しのぶ

市村正親と4度目の共演で息ぴったり、巨匠ソンドハイムの傑作ミュージカル!

イギリスに実在したといわれる理髪師をモデルにした哀しくも痛快な復讐譚『スウィーニー・トッド』。2007年に市村正親×大竹しのぶが初共演にして黄金コンビぶりを発揮して以降、度重なるアンコールに応えて4度目の上演が決定した。複雑な人間心理を音楽化する巨星スティーブン・ソンドハイムの代表作にして、ソンドハイム自身からその作品を「もっとも理想的に演出するアーティスト」として評価される宮本亜門が演出・振付を手掛ける。主演舞台『ピアフ』出演のため来阪中だった大竹しのぶに、意気込みを訊いた。

あらすじ: 18世紀末のロンドン。フリート街で理髪店を営むベンジャミン・バーカーは、その妻を横恋慕する悪徳判事ターピンによって無実の罪で流刑にされる。15年後、妻と娘の消息を聞かされたベンジャミンは” スウィーニー・トッド(市村正親)”と名を変え、大家のミセス・ラヴェット(大竹しのぶ)が営むロンドンで1番まずいパイ店の2階で理髪店を復活させた。商売道具のカミソリを手にスウィーニー・トッドの復讐劇が始まる。


◎「人を殺して『やった!』と喜んだり、怖い作品なのにやっていて楽しいです(笑)」(大竹)

-- 市村正親さんとの黄金コンビの復活です。
前回も終わった直後に市村さんや共演者の方々と、「寂しいね、もう一回やりたいね」と話していたので、また上演できるなんて本当に嬉しいです。ソンドハイムの音楽は癖になるほど独特だし、何より楽しい現場だったので。

-- 確かにソンドハイムの音楽は一筋縄ではいかない感じに引き込まれます。
私が最初に歌う楽曲も「間違ってるんじゃない!?」と思われるような音程だけど、だんだんと聴いていくうちに「そういうことなんだ!」とわかる凄さがあります。歌声とオーケストラの演奏が合わさってひとつの音楽になっている。歌うときは、オケにはない半音上の音階を歌ったり、途中から歌い出すときは、どこの音を便りに歌えばいいのか悩むほど、最初はすごく難しくて大変でした。でもそれがだんだんと面白くなってくるんです。

-- まず音楽があって、そのリズムとトーンで芝居が回っていくような感覚です。
そうなんです。この一小節でパッと顔の向きを変えたり、そういう動きまで宮本亜門さんが全部付けてくれるんですけど、初演の稽古場では亜門さんが一番楽しんでいましたね(笑)。音楽を聴きながら動きを付けて芝居もできる、それらがピタッとマッチしたときの喜びが楽しい。

-- 周囲を見て、音を聴いて、体を使って芝居して…全身で演技している様子が伝わってきます。
このチェロの音を聴くとハッとしたり、このティンパニーを聴くと心がどう動くとか、それぞれにポイントがあるので。音楽によって気持ちが高揚したり、一瞬にして役柄の世界へと連れられていく。すごくきれいなバラードを歌いながらもじつはその中で、ボーンボーンとすごく不気味な音が流れていたり、全部計算されている。音符のなかに物語が詰まっている。観客も無意識のうちに「何か変だな…」と感じられる、すごく深い作品だなと思います。

大竹しのぶ

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-- いわゆるミュージカルと聞いて想像する音楽とは、印象が違うかも。
全然違うと思います。オペラに近いですね。ソンドハイムの音楽を聴いて最初に思ったのは、長く複雑な数学の方程式を解いていく面白さに似ているなと。ここでこんな音が入ってくるんだ!という驚きや、答えを導きだす楽しさに惹かれちゃいました。

-- 初演では他の役者さんやオケ奏者の方々も楽曲と格闘されたとか。
初演のときは廃校となった小学校の体育館が稽古場だったんですけど、みなさん稽古の合間に自主練されていましたね。理科室や下駄箱、廊下などにそれぞれ鍵盤ハーモニカを持ち込んで、小学校のあちこちから音が聞こえていました。

-- 大竹さんが思う本作の魅力とは?
音楽につきます。これは他の作品には絶対にない魅力だと思います。ストーリーも人を殺して「やった!」と喜んじゃうとか。すっごく恐ろしいことを笑いながら歌えるので、怖い作品なのにやっていて楽しいです(笑)。


◎「こんなミュージカルもあるんだ!と、怖いけど見たくなるワクワク感をお伝えしたい」(大竹)

-- 4度目の出演にあたり、挑戦したいことは。
歌が上手くなりたいです。海外のミュージカルではみなさん普通にラクな感じで歌われていますよね。ミュージカルである前に芝居であることを大切にしたい。「歌ってます!」とはならずに、”芝居で歌っている”っていうのを、ちゃんと出来たと言えるようになりたいですね。

-- 主演作『ピアフ』でもエディット・ピアフとして歌を披露されています。
ピアフも”芝居で歌う”ので、ミセス・ラヴェットもそうなれたらいいな。自分の世界ではなく楽曲の世界に入り込み、しゃべりながら歌うにはすごい技術がいるので、頑張らないといけないのです。

-- 理髪店の椅子やパイを焼く大窯など可動式の舞台はアトラクションを見るよう。また、個性的なキャラクターたちのメイクも作品世界を盛り上げます。
怖いけどワクワクして見てしまう、お化け屋敷みたいな感覚かも(笑)。市村さんのメイクは時々すごい濃くなるときがあるので、みんなで「それじゃゾンビだよ~」って言って笑ってます。

-- 『スウィーニー・トッド』はティム・バートン監督&ジョニー・デップ主演の映画版も知られています。
映画版はとくに意識はしないですね。私も見ましたが素晴らしかったけど、少しリアルで怖かった(笑)。舞台はそこまでリアルではないので、全く違う感じだと思います。

-- 初めてご覧になる方、作品のファンの方へメッセージを。
初めての方には「こんなミュージカルもあるんだ!」と思ってもらえるような、ワクワク感をお伝えしたい。ファンの方へは、とにかく作品のエネルギーとソンドハイムの音楽をさらにパワーアップしてお届けしようと思っています。それには、私が頑張らないといけないので…あくまでも役者として芝居の延長線上で歌えるように頑張ります。とにかく演じていて、すっごく楽しい作品なので、この先もずっとやり続けたいぐらい。

-- 役柄的にはスウィーニー・トッドに片想いする切なさも感じますが…。
彼と再会した瞬間から、好き好き大好き!幸せハッピーお金いっぱい!と、ずっと好きという気持ちで演じているので切なさとかは全然ないですね。最後だけ「あれ??」という感じです(笑)。

大竹しのぶ

大竹しのぶ

『ピアフ』公演中にも関わらず自然体の穏やかなたたずまいで取材に応じてくれた大竹しのぶさん。歌の話になると「私が頑張らないと…みんなはちゃんとできているので…」と下を向く姿もチャーミングで、その真摯な姿に作品への愛と、大竹さんが求められる理由を垣間見た気がした。再演のコールがなりやまない傑作ホラー・ミュージカル。大竹さんが言う結末に訪れる「あれ??」の衝撃度を、ぜひ劇場で目撃して。

公演情報
ブロードウェイミュージカル『スウィーニー・トッド ~フリート街の悪魔の理髪師~』

■演出・振付:宮本亜門
■出演:市村正親、大竹しのぶ、芳本美代子、田代万里生、唯月ふうか、安崎求、斉藤暁、武田真治 ほか
 
<東京公演>
■東京芸術劇場 プレイハウス(東京・池袋)
■期間:2016年4月14日(木)~5月8日(日)
■料金:S席13,000円、サイドシート席8,500円
一般発売:2016年1月16日(土)

 
<大阪公演>
■シアターBRAVA!
■期間:2016年5月13日(金)~15日(日)
■料金:プレミアムシート15,000円(公演プログラム付き)、S席13,000円※全席指定・税込
一般発売:2016年2月20日(土)

 
<名古屋公演>
■愛知県芸術劇場 大ホール
■期間:2016年5月20日(金)~22日(日)
■料金:S席13,000円、A席10,000円、B席7,000円※全席指定・税込
一般発売:2016年2月6日(土)

 
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