パリの展示レポート:『DAIDO TOKYO 森山大道』
『DAIDO TOKYO 森山大道』
パリにもわずかに見られる桜が、そろそろ満開の時期を迎えようとしています。
そんなパリで開催中の、『DAIDO TOKYO 森山大道』に足を運んでみました。
カルティエ財団現代美術館は、けして大きな美術館ではないのですが、全面ガラス張りのデザインのため、パリの通りと中庭と空間がでつながっているようで広く感じられます。
正面に入ると、目の前すぐに『DAIDO TOKYO 森山大道』の展示会場。
数々の写真パネルの作品が迎えてくれます。平日の夕方だというのに、入場者が途切れないほどの人気でした。
作品スペースに足を踏み入れると、ここがパリだということを忘れ、東京一色に染まった空間を泳ぐような感覚に陥りました。
会場奥で黒カーテンに仕切られたスペースからは、白黒写真スライド+東京の音によるインスタレーションが放映中。
そこから響く東京の街の音が会場内にもれ広がっていました。
その音のおかげで、ますます、自分が東京に戻って来たような気分に。
東京の匂いまでが写真からにじみ出ているようで、クラクラしそうになるほど。
ちょっと落ち着こうと会場内のベンチに腰掛けたところ、
50代と見える、洗練された美しい2人のマダムが私の横で展示会について語り合っているのが聞こえてきました。
私「この展示会について、どう感じましたか?」
と声をかけてみたところ
マダムの1人は
「私はとても知りたがりな性格だから、全ての写真がなにかしら一つのテーマを持っているのかどうか、とても気になっているところなんです。
でも、それぞれの作品がまるでカオスというか…。平面的で、都会的だというのは強く感じるんだけど。あなたは日本人として、どんな風に感じるのかしら?」
と、逆に私が質問を受けてしまいました。
私「実は東京に長い事住んでいたので、どれもなんだか身近なイメージが多くて
東京にいたときの思い出やら、いろいろフラッシュバックして、疲れるくらいパワーを感じます。」
と応えたら、二人目のマダムが
「あら、入場料だけで東京にいる気分になれるなんて、お得ねぇ」
と、軽やかに、そして、かすかに笑い声をもらしたのでした。
『DAIDO TOKYO 森山大道』展。
東京の磁場を、パリにそのまま持ち込んで来たような強烈な写真展でした。
日時:2016年2月6日(土)~6月5日(日)
会場:カルティエ財団現代美術館
カルティエ財団現代美術館オフィシャルサイト:http://fondation.cartier.com/