Unlimited toneに訊く、三者三様の個性を活かしたボーカルグループの在り方
Unlimited tone/L⇒R:Ryohei(Vo&G),Luz(Vo&Keys),Dody(Vo&G)
大成建設のCMソングに起用されている配信シングル「Change」に続いて、アニメ『田中くんはいつもけだるげ』の主題歌「うたたねサンシャイン」を4月27日に、そして6月29日にはニューアルバム『&LIFE』を発売し、東阪でレコ発ワンマンライヴを行なう3人組ボーカルグループ・Unlimited tone(アンリミテッドトーン)。先だって開催したフリーライヴには東京・大阪合わせて1,500人を越える観客が集まり、その歌声は大きな広がりを見せている。メンバーの個性を生かした、彼らならではのボーカルグループのあり方を訊いた。
――まずは、Unlimited tone(以下、アンリミ)に欠かせないスパイスを教えていただけますか?
Ryohei(Vo&G):僕は一昨年から正式メンバーに入ったんですけど。僕らは元々ソロで活躍しているシンガーソングライターでありヴォーカリストというメンバーなので、個々のリード力が際立っているところがスパイスだと思います。
Dody(Vo&G):僕らはライヴ感をとても大事にしているんです。同じ場所でも集まる人が異なればそこでしか味わえない空気感が生まれる。それを僕らは歌で奏でていく感じなので、大事なスパイスは会場に集まってくれるお客さんかなと思います。
Luz(Vo&Key):遊び心ですね。ハーモニーというとかっちり歌うイメージがあると思うんです。でも、同じメロディラインでも僕らは各々に任せて自由に歌ってもらってるので、演奏、ライヴごとにフレーズが変わる遊びの要素がある。そこは、ステージではスパイスになってます。あとは、Dodyがトークでふざけたり。撮影の現場だったらDodyとRyoheiの2人がイチャイチャする遊びも(笑)。
Dody:冗談ですよ? そこだけピックアップされたら困るから!
Luz:ふはっ(笑)。
Ryohei:ボーカルグループといっても堅苦しい感じとは真逆のグループなんですよ。
Luz:あと、3人が楽器を演奏するというのも僕らのスパイスだと思います。
――Unlimited toneというグループ名にはどんな意味が込められているのでしょうか。
Luz:僕らは個々が一人のシンガーソングライターとして成り立っている上に、それぞれの声にも三者三様の特徴があるんですね。その声を一つのトーンと捉えると、3人の声が重なったとき無限の広がり、響きが生まれるという気持ちを込めてつけました。
Dody:3人の声が重なったら3つの声が聴こえると思いきや、そうではなくて。倍音が鳴っていて3人以上の声が聴こえてくる。まったく声質が異なった3人がそこで作り出すハーモニーはすごく魅力があると思う。ボーカルグループというのは、それぞれの個性を出すのではなくて。
Luz:なじませる感じなんです。
――なじませるというのは、具体的にいうとどういうことですか?
Luz:誰かの声に対して周りのコーラスの声を溶かす方向でやっていくことです。それはそれで素晴らしいし、僕らも溶かすコーラスが好きな部分もあるんです。でも、僕らはあえて溶かさずに3人の声を生かして共存する方法を研究してやってるんです。
――なぜ“共存”させるという方向を選んだんですか?
Luz:3人のアーティストとしての表現をそれぞれリスペクトしているから、というのが大きいです。いろんな曲でDody君のボーカルが出てきたりRyohei君のボーカルが出てきたりすることで面白い形が作れたらなと思って、いろんな研究を。例えば、1曲を通して歌うときでも、ここはDody! ここはRyoheiがいい! というのを何回も歌って決めていくんです。
――ニューアルバム『& LIFE』も3人のボーカルの研究を重ねてレコーディングされたんでしょうか。
全員:そうです。
Dody:1曲の中での声の流れ、バランス。
Ryohei:その曲が持ってるメッセージ、ニュアンスを伝えるためには誰がサビを取るのがいいのかとかも含めて。
Dody:3人とも元々性格も違う訳ですから。こういう歌詞はRyoheiが合うなとか、Luzが合うなというのがありますからね。
Luz:3人の共存のあり方も、本当に3人が3人ともバラバラだとチームとしてのまとまりがなくなっちゃうんで、バランスですね。バラバラ過ぎる3人でもなくて、でもまとまり過ぎる3人でもない、という中間のバランス。すごくギリギリなところで成り立ってます。
Dody:すごく難しいんですけど。
Luz:そこを見つけるのが面白い研究なんです(笑顔)。
Unlimited tone
――なるほど。『& LIFE』は全曲“生音”にこだわってレコーディングされたそうですね。
Dody:いままでは1枚のアルバムで打ち込みの曲も生演奏の曲も混ぜこぜで制作してたんですけど、今回に関しては1枚のアルバムを通しての方向性を決め込んで作りたいよねというところで、プロデューサーを迎えまして。そこで全曲生演奏でやることになったんです。
Luz:プロデューサーを迎えたのは、前作、前々作と作ってみて、一人の視点から見たアンリミを切り取って欲しいという要望が僕らにあったからです。それで、最初に生演奏で1曲録ってみたら、その感触がすごく良くて。
Ryohei:それには流れがあって。去年の暮れにBillboard Live大阪でワンマンライヴをしたんですけど。そのときに生演奏でやってみてすごい良かったんですね。その感覚があった上で、プロデューサーを選んでいくなか臼井ミトン君に決まりまして。彼は基本、生演奏でというタイプなんですよ。
Luz:それで1曲録ったら「いいね」という感想だったので、全部生にしようと。
――最初に録った1曲というのはどの曲だったんですか?
Luz:「Change」です。
――臼井さんとはどんなお話をされたんですか?
Luz:僕たちの3人の声、Dody君の声、Luzの声、Ryohei君の声をもっとピン(単独)で生かしたいし大事にしたいといわれたんですよ。
――ボーカルグループなのに面白い発想のプロデュースワークですね。
Luz:そうなんです。僕らはいままでボーカルグループとしてコーラスを入れられるだけ入れてたんですけど、臼井君は「3人の声を生かすためにコーラスも入れ過ぎないようにしましょう」と。
Ryohei:聴いた人が、3人の声が手触りで分かるぐらいリアルな方向で行ってみようと。いままでのアンリミの作品は、素晴らしいハーモニーがありつつの3人の声の個性だったので、コーラスも多重録音して入れてたんですね。
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“引き算”のアルバムだからこそ聴こえる、今までにない挑戦の数々
――そういう意味では、今作は“引き算”のアルバムだと思うんですね。もっとここはコーラス重ねたいというところをできるだけシンプルにすることによって、各々の声の粒立ちがより際立つように音が制作されている。
Luz:そうなんです。だから、いままでアンリミの作品を聴いてきた人は「コーラスが少ない」って感じるかもしれないけど、僕らからしたら「よっしゃ!」なんです。
Ryohei:今回はより鮮明な色で勝負してる感じなんです。コーラスでいろんな色を足して色を淡くしていくというよりは、今回のアルバムに関しては赤は赤、青は青でとはっきりしてますね。3人の声の輪郭が。
――声の原色感が一番よく分かるのが「Family」だと思うんです。いってみればこれ、リードを3人がリレー形式で歌ってるだけですから。
Ryohei:いままでアンミリを聴いてた人は「これまでと違うことをしてるな」というのをこのシンプルさの中に感じるでしょうね。
――でも、シンプルだからこそ言葉やメロディ、3人の声がよりむき出しになって伝わってくる。しかも、よくよく聴いてると、この曲はフレーズをぶつ切りにして歌いつないでいくんですよね。これにはハッとさせられました。
Luz:そのぶつ切りになってるところは、最初Ryohei君が一人で歌うバージョン、Dody君が一人で歌うバージョン、いろんなバージョンがあったんです。でも、曲を通して聴いたときに、朝「おはよう」という何気ない日常のシーンをそれぞれのカラーで歌ったほうがより景色が見えるなと思って。これは冒険だったんですけど「シーンで歌い手を変えてみよう」という提案をしたんです。
――奇抜なアイデアですけど、その結果、あのぶつ切りで歌っているところがまるでマンガの吹き出しのように聴こえてくるんですよね。
Luz:素晴らしい! それが狙いです(笑顔)。しかも、曲の最後にはボーカルグループなのにユニゾンでサビを歌ってますからね。普通だったらハモるところを全員ユニゾン。ユニゾンで歌うことで逆にファミリー感が出るんです。
――なるほど!! そんな引き算のアプローチばかりの曲のなか、「Way back again」は別枠といいますか。
Luz:そうですね。この曲は臼井さんとも話をして、これは曲ありきでいこうと。コーラスが曲の一部としてあるから、これは重ねて入れようということをやりました。他の曲でなるべくコーラスを削った分、この曲では歌とコーラスをしっかり出そうと思ってそうしました。
――結果、この曲はすごくコーラスが立体的に聴こえるというマジックが味わえる。
Luz:声のオーケストレーションですね(笑顔)。
――素敵ですね、その表現!!
Ryohei:(ドヤ顔で)こういうのをですね、声のオーケストレーションというんです。
Dody:こういうのは俺的にはねぇ……。
Ryohei:はよいえや!(一同笑)
Dody:声のオーケストレーションがええんちゃいますかね(笑)。
Ryohei:これでもいままでのアンリミのコーラスと比べたら、最小限だと思いますけどね。
――今作ではリードボーカルと同じぐらいのボリュームでコーラスをやる3人の声も聴こえてきますが。そこは狙ったんですか?
Luz:何声も重ねたコーラスを全部出しちゃうと、コーラスしか聴こえないものになっちゃうんですが、今回は引き算したことによって、出してもうるさくないんです。コーラスをここまで出してもちゃんと楽器の音も聴こえるし、リードボーカルの雰囲気もちゃんと残せるのでこういうことができました。
――そこも今作ならではの特徴ですね。
Luz:リードを歌うときとコーラスを歌うときは若干声が違うんです。ボーカルグループはそこをパキッと分けて歌う人たちが多いんですが、僕らは感覚的には違うんですけど、気持ちはリードと同じ。デュオで歌ってるといえばわかりやすいかな。リードに寄せつつ自分を出しつつというバランスです。
Dody:難しいんですけどね。
Ryohei:そういうところも含め、3人リードというアンリミのグループの特性がこの作品を聴けば、より分かってもらえると思います。
Unlimited tone
アニメにちなんで「○○さんはいつも○○げ」でメンバー紹介をして見えた、
メンバーしか知らない意外なキャラクター
――そして、アニメ『田中くんはいつもけだるげ』の主題歌「うたたねサンシャイン」についても教えてください。アニメはご存知でした?
Ryohei:僕この間、最速先行上映会で観てきたんですけど、すごい人気なんですね。このアニメ。大盛り上がりでした。
――曲はどんな風に制作されたんですか?
Luz:先に原作を見てから制作したんですよ。田中君のちょっとほんわり、まったりした雰囲気とか、気だるげなんだけど柔らかい光が差してる感じ。そんなところを軸にAメロのまったりとした空気感、サビのキラっとした空気感が生きた曲ができました。主題歌が流れる冒頭のアニメと音楽のハーモニーは、見ていてにこやかになる感じだと思います。
――では、このアニメにちなんで「〇〇さんはいつも〇〇げ」という感じでメンバー紹介をして頂こうと思います。まずDodyさんから。
Ryohei:「Dodyさんはいつも寂しげ」。という瞬間を僕は知ってます。表向きはみんなを楽しませるキャラだけど、本当は寂しげ(微笑)。
Dody:今夜寂しいな…。
Ryohei:一人で寝ろっ!!(笑)
Luz:「Dodyさんはいつもお茶目げ」。どんな現場でもジョークを飛ばしてます。撮影現場でもNGシーンを作ろうといって僕を椅子の上にのせたり、お茶目なことをすぐ考えつくんですよね。
――次はLuzさん。
Dody:「Luzさんはいつも食べたげ」。食べ物が好きで、お店にもうるさいんですよ。「どうする? あそこ行く?」って選択肢をくれるんですけど、自分の中で行くところは最初から決まってるんですよ。だから「俺はどこでもいいからな」って。
Ryohei:いっつもそう! 「それじゃああそこに行こうか」って仕方ない感じでいうんですけど「でもそこ行きたかったんやろ、結局」というオチはよくあるパターン(笑)。僕は「Luzさんはいつも忘れげ」。忘れげ、じゃなくて「忘れる」です(笑)。忘れ物が本当に多い。忘れたことも忘れてるぐらい物を忘れる。
Luz:昼ご飯を食べに行ったお店に自分のバッグを丸ごと忘れてきたことに気づかず、そのまま夕方になってたりしますから(笑)。
Ryohei:財布を忘れるのが一番多くて。新幹線とかに平気で忘れるんで困ってます(笑)。
――では、次はRyoheiさん。
Luz:「Ryoheiさんはいつもせっかちげ」。例えば一緒に曲を作っていて「Aメロ作って」と頼まれて、5秒ぐらいしたら「できた?」って。「そんな早くはできへんよ」っていった後、また10秒ぐらいしたら「もうできた?」って(笑)。
Ryohei:できる人だからいってるの(笑)。
Dody:「Ryoheiはいつも女げ」。撮影とかしてると「女子かな?」と思う仕草をするんです。僕はそっちじゃないから出来ないんですけど。
Ryohei:おいおいおい(笑)。
Luz:セーターの萌え袖とか女子高生げ、JKげで。写真映りがJKげなんだと思います。
Ryohei:俺は2人より全然男臭い感じなんですよ?
Dody:なのに写真に写ると女げ(笑)。
――では、この後大阪、東京で開催されるワンマンライヴに向けて抱負を聞かせて下さい。
Luz:今回も生バンドとのライヴになります。アルバムの生の雰囲気を大事に、僕たちの声と生楽器という編成で届けられたらと思います。
Ryohei:アルバムは今まで以上にトライしている作品ですし、「うたたねサンシャイン」はいろんな人に聴いもらえる機会が増えるチャンスだと思ってるので、ライヴは今まで以上に気合いを入れつつ、かつふざけたいなと思います。
Dody:生バンドでやるので、一番ストレートに伝わると思いますし、来て下さったみなさんと一緒にその空間を楽しめたらなと思います。
インタビュー・文=東條祥恵 ヘアメイク(インタビューカット)=坂田佳子
2016年4月27日発売
LACM-14476 ¥1,200+税
1. うたたねサンシャイン ※TVアニメ『田中くんはいつもけだるげ』オープニング主題歌
2. DOOR
3. うたたねサンシャイン(off vocal)
4. DOOR(off vocal)
アルバム『& LIFE』
2016年6月29日発売
5月7日(土)名古屋クラブクワトロ
出演者赤と嘘 / Unlimited tone / イロドリ / 袈裟丸祐介 / そよかぜ / 田中雄也 / ナカノアツシ / 亮二
NEWシングル「うたたねサンシャイン」発売記念ライブ- in TOKYO
5月28日(土)Mt.RAINIER HALL SHIBUYA PLEASURE PLEASURE
NEWアルバム『& LIFE』発売記念ライブ- in OSAKA
7月15日(金)サンケイホールブリーゼ
NEWアルバム『& LIFE』発売記念ライブ- in Yamaguchi 【特別公演】
7月30日(土)YCAM スタジオA
NEWアルバム『& LIFE』発売記念ライブ- in TOKYO (ファイナル)
8月19日(金)品川インターシティ