ミハイル・プレトニョフ(指揮/ピアノ) “音楽家”プレトニョフの新たな境地

インタビュー
クラシック
2016.4.16
ミハイル・プレトニョフ ©Rainer Maillard/DG

ミハイル・プレトニョフ ©Rainer Maillard/DG


 現代最高のピアニストの一人でありながら、しばらく指揮活動に専念していたミハイル・プレトニョフ。2014年に行われたリサイタルでは、7年間の演奏活動休止が信じられないほどのヴィルトゥオジティでファンを喜ばせた。
「ピアノを休んだ理由は『弾きたいと思うピアノ』がなかったからです。それが、シゲルカワイ・フルコンサート『SK-EX』というピアノに出会って、新たな意欲が掻き立てられたのです」

 「今はとても気持ちがいい。やっとピアノを弾いて満足できる域に達したかな」と謙遜する。復帰後はそれ以前と音楽作品に対する感じ方が違うのだろうかと聞くと「人は7年ごとに変化するんです」とニヤリ。
 「いや、人は変化し続ける。人生とはそういうものではないですか。それに伴って物事の見方や音楽の解釈も変わります」

 そんなプレトニョフが7月に東京フィルとの協奏曲の夕べ(スクリャービンとラフマニノフ第2番)とリサイタル(モーツァルトやグリーグなど)を行なう。
「スクリャービンはまさに変化し続けた人でした。彼の協奏曲は若い頃の魅力が良く出ている。実はラフマニノフのピアノ曲はこれまであまり弾いてこなかったのですが、改めてその素晴らしさを実感しています。いい演奏をお聴かせしたい。モーツァルトは子供でも弾けますが、理解するか否かは別。人生の経験次第です。でもどれだけ長く生きたかではなく、何を経験してどう感じたかが問題なのです。しかもそれを表現する能力がなければならない。モーツァルトにはそれがありました」

 指揮者としての活動にも注目だ。4月には東京フィルを振りグリーグの劇付随音楽「ペール・ギュント」の全曲演奏を行なう。
「グリーグはピアノ曲も含めて大好きです。きわめて多様であると同時にノルウェーの民族音楽の魅力に溢れている。イプセンの戯曲は傑作です。人生そのものを描き、生きることの意味を問いかけている。哲学的で深淵な意味がありますが、精神的な事柄を良く理解できる日本の皆さまにはよくお分かりになるのではないでしょうか。そこにグリーグはただ美しいだけではない、非常に深い音楽をつけたのです」

 最近、ヘリコプターを自身で操縦してロシアから作曲家縁の地ベルゲンまで行ったとのこと。
「空から森や湖、フィヨルドなどを眺めながらのフライトは最高です。原生林には(戯曲に出てくる)山の精トロルの気配がしたし、結婚式のシーンを彷彿させるところもありました」

 「ペール・ギュント」は新国立劇場合唱団、ソールヴェイにノルウェーの歌姫ベリト・ゾルセットらが出演。日本語字幕、俳優・石丸幹二の語り付き。

取材・文:那須田 務
(ぶらあぼ + Danza inside 2016年4月号から)


ミハイル・プレトニョフ(指揮) 東京フィルハーモニー交響楽団
グリーグ:劇付随音楽「ペール・ギュント」全曲
4/24(日)15:00 Bunkamuraオーチャードホール、4/25(月)19:00 サントリーホール
4/27(水)19:00 東京オペラシティ コンサートホール
問合せ:東京フィルサービス03-5353-9522
http://www.tpo.or.jp

 
ミハイル・プレトニョフ リサイタル&コンチェルト
【協奏曲の夕べ】 7/1(金)19:00 【リサイタルの夕べ】 7/6(水)19:00
東京オペラシティ コンサートホール
問合せ:ジャパン・アーツ03-5774-3040
http://www.japanarts.co.jp
※全国公演の詳細は上記ウェブサイトでご確認ください。
WEBぶらあぼ
シェア / 保存先を選択