舞台『ボクの穴、彼の穴。』ノゾエ征爾に聞く~「次代の演劇ファンに持って帰ってもらえるものを提供できたら…」

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ノゾエ征爾

ノゾエ征爾


パルコ劇場クライマックスステージの第二弾として上演されるパルコ・プロデュース公演『ボクの穴、彼の穴。』。パルコ劇場の次なる時代を担うであろうクリエイターにスポットをあてたこの企画、本作の翻案・脚本・演出を務めるのは、2012年「〇〇トアル風景」で岸田國士戯曲賞を受賞したノゾエ征爾。ノゾエは本作をどう描こうとしているのか、そして本作に出演する塚田僚一A.B.C-Z)と渡部秀という二人の若者とどう対峙するのか。話を聞いてきた。

―― パルコ劇場のクライマックスステージとして、この舞台の話が来たときの感想は?

数秒止まりましたね(笑)。すごくうれしかったです。演劇人ならパルコ劇場でやりたいじゃないですか。僕は今まで縁がなかったんですが、ここにきてお話をいただけて。まだこのタイミングではないと思っていたのでびっくりしたんですが…アガりましたね(笑)。 「ノゾエさんで、舞台を1本」というオファーだけで、そこからパルコさんとも相談しつつ、いろいろ考えました。まだそのときはキャスティングも決まっていませんでした。

―― 「ボクの穴、彼の穴」はどんな舞台になるのでしょうか?

これは原作が絵本で、設定としては「戦争」を扱っているものなのですが、人間の愚かさとかおかしさとかが描かれている作品なんです。「戦争」って僕ら日本人からしたら遠いものって感じがちなんですが、戦争の根っこにあるものは、誰とも近しいもの。戦争の中にいる人も、僕らとなんら変わりのない、一人一人。なので、僕らの現代日本の身体のまんま、戦争を通して、一人一人の人間味を舞台上に立ち上げられたらと思います。

―― とはいえ、舞台としてやるのはかなり困難な作品なのでは?

困難だとおもいます。初めての座組みでもありますし。でもその困難が好きです。僕は題材を探すときに演劇と遠いものを探すところがあるんです。例えば小説ですらない、ただのサラリーマンが読む本とかから演劇を立ち上げようとか。そのギャップから生まれるエネルギーに演劇の醍醐味を感じているんです。

―― 偶然にも師匠・松尾スズキさんの訳本ですね。

この本は前から持っていて好きだったんです。でも、演劇にするなんて全くイメージしてなかった。ここにきてふいに浮かんできました。松尾さんにはこの話が決まってからメールしました。そうしたら「おお、おもしろそう」って返事が(笑)。ホッとしました。

―― 演劇の題材として「戦争」に対する興味があるのでしょうか?

興味というと語弊がありますが、どこかにぬぐえないものがあります。触れたことはないけどいつもそばにある地球上からなくなったことはないですし、今ある全てが戦争の経緯のもとにある。……僕の欲なんですが、今回は次代の演劇ファンに持って帰ってもらえるものを提供できたらいいなと。それが何かはまだわからないし、感じ方は人それぞれですが。ただその「きっかけ」的なものをちりばめていけたらな、と考えています。

―― 出演する塚田さんと渡部さんはご存知でしたか?

TV番組などは拝見していました。お二人とも、身体のポテンシャルが高い。でも今回、あまり動かない可能性もある。二人が出したいエネルギーを、ギュッと抑えた時に、そこから漏れてくるものがあると思うんです。なので、あえて「動ける人」っていうのはスタートとしていいなと思っています。稽古場で彼らの身体を通して見えてくるものがたくさんあると思います。どうなるかわからない部分も含めて、いいワクワクがあります。

―― 身体のポテンシャルが高い二人ですが、演じるのはずっと穴の中にいる兵士ですし…二人はフラストレーションがたまりそうですね。

何回かケンカをするかもしれません(笑)。でも、いい「負荷」だと思うんです。濃密な稽古になると思います。

―― 塚田さんと渡部さんが二人の人間を演じるのでしょうか?

基本的には二人の人間ではありますが、それが一人の人間に見える時があってもいい。まあそのあたりはぼかしていただいて(笑)

―― 役者として若い二人と、演出家として若いノゾエさん。3人の若手でどんなことにチャレンジしていきたいですか?

やらせていただくこと自体チャレンジだと思いますが、背伸びしすぎないようにしておこうと思います。下手に無理をしても良くないし、とは言え、色々と超えていきたいですし。自分たちらしく無理していけたらと思います。​

―― 基本的に3人だけの稽古になると思いますが、合間合間で二人とご飯を食べにいったりすることもありそうですね。

僕は一緒に行きたいんですが、行ってくれるのかなあ。むしろ飲むのは好きなので。でも、連れていくところは気を遣いますね。大騒ぎになりそう(笑)

―― ちなみに、ノゾエさんが彼らの年代だったころってどんなことを考えていましたか?

ゴリゴリしてましたね。そのころはアングラなことばかりやってて、過激なことばかり考えてました。どう脱ごうか、とか(笑)。そういう舞台ばっかりやってました。抑えられない‘激情’がありました(笑)。​

―― ご自身も役者として出演されることも多々あるかと思いますが、この作品について「自分が出演したい」という気持ちはありませんでしたか?

パルコじゃなかったら(笑)。パルコの二人芝居で、いきなり片方の人間を自分で演じて、かつ演出もやって、ってのは、逆に20代だったらやっていたかもしれませんが、いやあ、今回は微塵も思わないです。そこまでは無謀にはなれないです。……パルコさんは無謀だと思いましたが。このパルコ劇場の最後のステージにノゾエを引っ張り出したのはなかなかの開拓心だなと(笑)

―― 聞けば聞くほど魅力的な作品、これがたった8公演だけってのはもったいない話ですね。

ならば、建て直し後の一発目にこの作品で再演をぜひ…(笑)

公演情報
パルコ劇場クライマックスステージ Vol.2
パルコ・プロデュース公演
『ボクの穴、彼の穴。


■日程=2016年5月21日(土)~5月28日(土)
■会場=パルコ劇場
■原作:デビッド・カリ
■イラスト:セルジュ・ブロック
■訳:松尾スズキ(千倉書房)より 

■翻案・脚本・演出:ノゾエ征爾
■出演:塚田僚一
A.B.C-Z、渡部秀
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