「深い事を考えず、ただ楽しんでほしい」村井良大と駒田一が語る ミュージカル「キム・ジョンウク探し」
駒田一、村井良大 ミュージカル「キム・ジョンウク探し~あなたの初恋探します~」
韓国発のオリジナルミュージカルが日本上陸。日本版・ミュージカル「キム・ジョンウク探し~あなたの初恋探します~」が6月12日(日)から上演される。
2006年に韓国・大学路で幕を開け、多くの観客に愛され続け、2014年までロングラン公演となった本作、初恋の人である「キム・ジョンウク」と「初恋を探してあげる男」の2役を村井良大が、「初恋を忘れられない女」を彩吹真央が、そして父、母、インド人、若い女、おばさんなど一人で22役を駒田一が演じる、3人芝居。
まもなく稽古スタートというタイミングで、村井と駒田に話を聞いてきた。
――3人しかいない中で村井さんが一人二役、駒田さんに至っては一人22役ですか!
駒田:正確に言うと24役だったことが判明しました!アハハハ
村井:やばいっすよ。すごい量ですよ(笑)
駒田:もうね、22も24も変わらないから!
村井:確かに(笑)
――一人二役だけでも十分大変なのに!24役なんて!?
駒田:ある意味役者冥利につきますね。一つの作品で何役もできるのって。考えてみれば、ミュージカルだと僕もアンサンブルは経験しているし、アンサンブルの時って一人10役とかしていたりするじゃない。過去にひとりミュージカルで一人17役演じたこともありますしね。だから楽しいんですよ。もちろん苦しいけど。稽古場では「ウエッ」てしそうですが。どこかに楽しみがあると思いますし、何より相手がいてくれるから。
村井:そりゃ一人でやる時と比べたらね。相当大変だったんですね。
駒田:ええもう大変ですよ!相手が二人「も」いてくれるんですから頼もしいですよ。自分がメインではなくて他にメインがいて僕がその周りをいろいろ動けるほうがおもしろいですね。作品全体的にもそれがおもしろいんじゃないかな。
極論からいうと、その人数分役者を呼べばいいのに、あえて3人でやるんだから。
駒田一 ミュージカル「キム・ジョンウク探し~あなたの初恋探します~」
――最初にこのお話が来たときはどんなことを思われたんですか?
村井:最初は一人二役で、3人芝居で、マルチマンと呼ばれる一人22役やる人がいて…僕、少人数でやるお芝居が好きなんですよ。だからこの芝居の内容を聴いただけでもう面白いだろうって思えて。それだけでお仕事を受けた気がします。またこの作品、上演から10周年だそうで、僕もこの仕事を初めて10周年なので、出会うべくして出会った作品だなって。しかもこんな素敵なキャストと一緒にできるんですから。
台本を読んだら僕が想像していたものと大分違っていて。韓国感が結構ある!
駒田:そうそう!
村井:僕、韓国オリジナル作品は初体験なんです。
駒田:僕は「サ・ビ・タ」という作品で、やはり3人でやったミュージカルが韓国ミュージカルでした。作品のあたたかさが韓国のオリジナルミュージカルにはあふれているんですよ。今回の作品もいい意味でのトライアングルの関係があって。4人より3人の芝居のほうがおもしろいんですよ、舞台って。また、台本もいい意味でラフなんです。本当に気軽にさらーっと読み込めちゃう。もちろんこれからもっと読み込んで、立ち稽古に入ったらいろいろ考えていかなければならないんですが。
観ているお客さんはたぶん楽にご覧頂けると思いますよ。
村井:本当に聴いたまますっと頭に入ってくる。微妙な駆け引きとかがない芝居。
駒田一、村井良大 ミュージカル「キム・ジョンウク探し~あなたの初恋探します~」
――それこそ、マンガなどを読むくらいのラフさで?
駒田:そうそう。
村井:確かにね。
駒田:音楽的要素、ショー的要素、コント的要素…いろいろな要素がバラエティに富んで詰め込まれているんです。とにかく楽しくなりそうな気配がします。
台本も演出も、どこまで本国の制約があるのかわからないですが、日本では日本の「キム・ジョンウク探し」になると思います。細かい話ですが、まったく韓国では使われてないモノが日本版で使われたりするかも。稽古や演出次第ではいろいろ「試せる」と思います。「ああやらなきゃ、こうやらなきゃ」という縛りは僕の中にはないですね。怒られちゃうかもしれないけど。
村井:まんま韓国のミュージカルをやるんだったら、それこそ韓国の演出家の方にお願いしたほうがいい訳ですしね。
駒田:そう。でも演出に(菅野)こうめいさんが入ったことで日本版になる。いいんじゃないですか?「サ・ビ・タ」のときもそうだったし。
――韓国のものをそのまま持ち込むと、どこかで愛とか恋とか、文化のズレが出てくるでしょうし。
村井:人の名前と駅名くらいですよね。韓国の言葉が出てくるのは。
駒田:キムチを食べるシーンとかもないし。
村井:それはそもそも必要ないですよ(笑)
駒田:世界に飛んでいきますからね。
村井:インドに行ったりしますからね。韓国だけじゃないんです。
――ああ、だから駒田さんの役の中に「インド人」というのがあるんですね!ちなみに24役の中でいちばん興味深い役は?
駒田:ベースとしては「お父さん」がありますね。それありきでいろいろな役をやる。あまり言えないんですが「アレも?え、こんなこともやるの?」とかありますよ。
――背景とか大道具的なものまで駒田さんが全身で担当したりとか?
駒田:それに近いようなものもあったりするんです(笑) だからどの役が…というより「あの役をやっている役者、がんばれ!」って思って観てほしいです(笑)
村井:また、最後の方も結構雑になってくるんですよね、扱いが(笑)
駒田:きっと稽古場でいろいろ動くだろうし、こうめいさんのアタマの中でもいろいろ考えられていると思いますよ。作り方としてはガチガチに固められちゃうよりはアイディア出しながらやれる方が楽しい作業だと思うんです。
――村井さんが演じる2役については、どんな印象をお持ちですか?
村井:片方は何をやってもダメダメな男、もう一方はカッコイイ初恋の人=キム・ジョンウクですが、意外とキム・ジョンウクはカッコイイだけの人じゃないんです。もちろん女性がキュンとなることを平気でやる男ではありますが、カッコイイだけじゃないちょっとした柔らかさやユーモラスなところがあって。日本だと「イケメン」だけで取らえるところがそうじゃない。なんだかあったかい男なんです。
そして、ダメダメなほうも僕から観たらそんなにダメな感じがしない。確かに一人二役で2極化するとそう見えるかもしれませんが、ダメなほうにもその人なりの魅力を感じているんです。わかりやすい二役ではなく、もっと細かくて人間味がいっぱい出てくるような二役になると思うんです。
村井良大 ミュージカル「キム・ジョンウク探し~あなたの初恋探します~」
――そういう設定も本作が長く愛されている理由の一つなのかもしれませんね。ちなみにここまでストレートなラブコメディって過去出演されたこと、ありましたか?
村井:ないですね。どちらかというとひんまがった愛とか、海外作品で4人芝居でラブコメもあったんですが、笑えるというよりはブラックジョークの方向だったし。
とはいえ、この作品もどストレートなラブコメという訳ではないんですよ。何と言ったらいいだろう。日本人は描かないような作品だなと思う。
駒田:そこが韓国っぽく感じるところだなあ僕は。描かれ方がね。
村井:途中ドキドキするシーンもあるんだけど、次の場面になったら「あれ?今までの話はどこへ行った?」ってサラッとしたリアルさがある。
駒田:30年くらい前の青春ドラマみたいだね。古き良き時代のね。
――大映ドラマ的なドロドロもあり?
駒田:でもドロドロはしてないんですよー。すれ違ったり交通事故があって恋人が記憶喪失になったりもしない(笑)
村井:このチラシ(もしくは公式サイト)のようにポップで明るい恋物語ですね。
駒田:でもよくよく考えると、韓国のTVドラマとか映画にはドロドロがあるけど、韓国発のオリジナルミュージカルにはそういうのが少ないように思うんだよね。
――この舞台を観にくるお客さんは「韓国発のラブコメ=ドロドロ系」というイメージは持たなくてよさそうですね。
駒田:そう、深い事は考えなくていいと思うよ。
村井:やっていることは超アナログですしね。マルチマンとかも。だから目に入った情報がすでにおもしろいです。そこが見やすいなあと思いますね。
――今お話している感じだと、三角関係の2角がすでに強固な関係になっているように見えます。そもそも今回初共演ですよね。
駒田:そう、初仕事です。もちろん面識はありますけど。
村井:前に「ダンス・オブ・ヴァンパイア」のときにね。
駒田:彩吹さんも初仕事なんだよ。
村井:僕も初めて。
駒田:本当に三人とも共演経験がない初仕事なんです。今回は村井くんの普段の感じが活かされる作品なのかな。
村井:僕もそう思いますね。作りこむ感じともまたちょっと違うような。
駒田:作りこんでいてもそのことを感じさせない。まあ変に作りこんで違う人間になるよりは村井良大という男を題材に作ったほうがおもしろいんじゃないかな。
村井:等身大の役柄を演じるほうがいいんじゃないかな。
駒田:僕の役名なんて「マルチマン」ですよ!それなのに「マルチマン」という名前の人物はいないんですよ(笑)
村井:なんとなくタキシードが似合いそう(笑)
――舞台裏が今からもう大変そうですね。衣装とか段取りとか。
村井:でも三人だからこそ、段取りもうまくできそうですね。
彩吹さんといえば、昨日「九条丸家の殺人事件」を観て! すっごいおもしろかったー!「ど」コメディで彩吹さんは、宝塚時代の片鱗がなんにも残ってないような(笑)体当たり芝居だったんです。
駒田:こっちの舞台でも思いっきりはっちゃけてもらいたいですね。
村井:はっちゃける要素だらけですけどね。
――今、言える範囲での注目ポイントは?
駒田:とにかく展開が早いんですよね。
村井:本国だと110分の芝居だそうですよ。
駒田:台本を読むともっと長くなりそうな気がするんだけどね。
村井:160Pありますからね!
――ええっ!?160P!?
駒田:単純に110分にはならないようにすると思いますが、ええっと見どころは…やはり駒田の24役を(笑)
村井:まずはそこから観ていただきたいですね。それはこの作品の醍醐味でしょ。
駒田:それはまああると思いますが、それだけはなくて、三人のチームワークも見どころでしょうね。コメディって「間」が非常に大事だからカッチリ決められたことをやるのではなくて、ライブ感覚で稽古場でいろいろ出し合って深めていければいいな。それを深めていくことで本番の舞台に出てくるのではないかな。
村井:稽古場でいかに失敗していかに成功するかが今回のポイント。
駒田:こういうのって稽古場でいっぱい出さないとね!引き出しをいっぱい空けとかないと。
村井:稽古場は発散の場所になりそうですね。でもバタバタっと進むところが続くかと思ったら、途中しっとりと見せるところもある。この緩急のつけ方が好きなんですよ、このお芝居。
駒田:そこを僕がかき回しに出てくるんですよ(笑)
村井:そうだ!台本を読んだときに、最初に開演5分前アナウンスのセリフがあったんです。それが台本に書いてあるんです。僕と彩吹さんが日替わりで毎日やるんですが、僕、そんな台本初めて見ましたよ!
――録音じゃなくて毎日、生アナウンス!?
村井:毎日です!本当にアナウンスをやる前提で書かれている台本なんて見たことがない!笑いましたね。「これ、もしかしたらそのあとの芝居に関係あるのかな?」とも思ったんですが、全く関係なかった!(笑)
駒田:ただの前説だよね。携帯電話、飲食、非常口とか…
――お客さんは前説も聞き逃さず早めに席に座ってもらわないと!遅刻厳禁で。
駒田:見どころって今の段階でどこまで言っていいのかわかんないよね(笑)
村井:でも前半はマルチマンのショータイムでしょうね!
駒田:俺お客さんとしてこの舞台観ることになったら「うわっ、クッダラネー!」って大笑いすると思う。もちろんいい意味で。これ、大劇場でやらないほうがいいタイプの作品だよねって。
駒田一、村井良大 ミュージカル「キム・ジョンウク探し~あなたの初恋探します~」
■上演台本・作詞・演出:菅野こうめい
■音楽監督:かみむら周平
■振付:広崎うらん
■出演:村井良大・彩吹真央/駒田一
■演奏:かみむら周平(Key)/窪田晴男・伊平友樹(Gt.)/バカボン鈴木(Ba.)/山下嘉範(Dr.)
■日程・会場:
2016/6/12(日)~2016/6/26(日) よみうり大手町ホール (東京都)
2016/6/29(水)~2016/6/30(木) サンケイホールブリーゼ (大阪府)
■公式サイト:http://hatsukoi-musical.com/