GLAYの日本武道館3days・最終日 満員の会場に誓った「この先10年、20年と続けていきたい」
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GLAY HIGHCOMMUNICATIONS TOUR 2016 "Supernova" 2014.4.24 日本武道館
GLAYの全国ツアー『GLAY HIGHCOMMUNICATIONS TOUR 2016 "Supernova"』(全国19か所/全30公演)のファイナル公演が4月24日、東京・日本武道館で開催された。2016年1月にリリースされたニューシングル「G4・Ⅳ」が「VERB」(2008年)以来、約7年8カ月ぶりにオリコン週間チャートで1位を獲得。20周年のアニバーサリーイヤーを超え、さらに充実した時期を迎えているGLAYはこの日のライヴでも、その好調ぶりをダイレクトに見せつけた。
日本武道館3daysの最終日となったこの日、公演の一部が「ニコニコ生放送」で緊急生配信。これは4月14日に発生した熊本地震の影響により、“武道館のを持っていても、会場に行けない”というファンの声を受けて、メンバー自身の考案で実現したもの。ライヴ中にTERU(Vo)は「“会場には行けないけど、は記念に取っておきます”という子もいて。この映像で少しでも楽しんでもらえたら」と語り、約9000人のファンから大きな拍手を受けていた。
“ゾンビ子”(シングル「G4・Ⅳ」収録曲「彼女はゾンビ」のMVに登場するキャラクター)の注意事項アナウンスで会場が湧いた後、ついにライブがスタート。「OK!ツアーファイナル、行くぞ!」というTERUのシャウトに導かれたオープニングナンバーは、シングル「G4・Ⅳ」の収録曲「Scoop」。JIRO(Ba)が作曲を手がけたこの曲は、オルタナ&パンキッシュなロックチューン。直線的なビートとアグレッシブなメロディとともに「I'm insane You’re insane Nothing's gonna stop!」という大合唱が生まれ、オーディエンスのテンションは瞬く間に上がっていく。続いて1994年のアルバム「灰とダイヤモンド」に収められた「千ノナイフガ胸ヲ刺ス」へ。20年以上前の楽曲だが、エッジの効いたギターリフ、ドラマティックなボーカルラインが生み出す興奮はまったく色褪せていない。
「明日のことなんて考えなくていいんだぞ、今日は。思い切り暴れていこうぜ!」と煽りまくるTERUも絶好調。さらに「2階席! ガンガン来いよ! 1階席! とことん愛し合おうぜ!」と叫ぶ。
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今回のツアーの特徴は、約22年に及ぶキャリアのなかから満遍なくセレクトされたセットリスト。高速のエイトビートのなかで、“バンドにかけた青春と夢に破れたその後の人生”をテーマにした歌が叩きつけられる「汚れなきSEASON」(アルバム『GLAY』/2010年)、TERUの動きに合わせてオーディエンスが手を左右に振り、サビのフレーズでは大合唱が響いた「STARELESS NIGHT」(デジタルシングル/2008年)、「いま戦っている、すべての奴らに捧げます」(TERU)という声に導かれたポジティブなアッパーチューン「laotour~震える拳が掴むもの~」(ベストアルバム『THE GREAT VACATION VOL.1~SUPER BEST OF GLAY~』/2009年)。故郷・函館への思いをアコースティック・テイストのサウンドとともに描き出した「カナリヤ」(アルバム『BELOVED』/1996年)、“言葉にならない想い”をテーマにしたノスタルジックなラブソング「100万回のKISS」(シングル/2007年)、晩秋~冬の始まりの光景と切ない失恋を重ね合わせた「シキナ」(アルバム『GLAY』/2010年)。ダークかつエッジーなバンドサウンドに合わせて観客がモンキーダンスを踊りまくった「everKrack」(シングル「G4・Ⅱ―THE RED MOON―」/2011年)、そして、緊張感に満ちたアンサンブルと開放的なメロディラインがひとつになった「Believe in fate」(シングル「グロリアス」カップリング曲/1996年)。オーディエンスが求める楽曲、世間のパブリックイメージにも応えながら、ロックバンドとしての新たな進化を追求してきた彼らは、20年以上のキャリアのなかで確固たる独創性を持つに至った。各年代の楽曲が披露された今回のツアーは、GLAYの奥深い音楽性の魅力を改めて示すことにつながったはずだ。
演奏、パフォーマンスも確実に向上していた。もっとも印象的だったのは、リズムセクションの充実ぶり。このツアーでJIROはサポートミュージシャンのToshi Nagai(Dr)とのコンビネーションを見直したそうだが、骨太のグルーヴからは、その効果がはっきりと感じられた。派手なメロディセンスとロック的なダイナミズムを共存させたTAKURO、HISASHIのツインギターも絶好調。昨年行われた約10年ぶりの東京ドーム公演(5月30日、31日に開催された『20th Anniversary Final GLAY in TOKYO DOME 2015 Miracle Music Hunt Forever』)、函館アリーナのこけら落とし公演(7月25日、26日に開催された『GLAY Special Live at HAKODATE ARENA GLORIOUS MILLION DOLLAR NIGHT Vol.2』)といったビッグイベントを経て、GLAYのステージングはさらなる高みへと達したようだ。
ライヴ中盤のMCでTERUは「こうやって長く続けてると、いろんな曲をみんなに聴いてもらえて、楽曲たちも幸せだろうし、僕たちも本当に幸せです。どうもありがとう」と感謝の気持ちを表現した。さらに「これから聴いてもらう曲は、いろんな壁とぶつかり、いろんなものと戦い、また新たな道を歩き始めた頃の曲です」という言葉に続き「SORRY LOVE」(シングル「Ashes.EP」/2007年)を披露。悲しさ、切なさを乗り越え、それでも前を向いて歩いていく意志をエモーショナルに歌い上げたこの曲は、ラブソングという枠を超え、ファンとGLAYの強い関係性を反映したナンバーと言えるだろう。
組曲的な構成を持つ「Will Be King」(アルバム『HEAVY GAUGE』/1999年)、シンプルなバンドサウンドのなかで内省的な雰囲気の歌が広がる「航海」(アルバム『UNITY ROOTS&FAMILY,AWAY』収録/2002年)を挟み、ライヴはついにクライマックスに向かい始める。そのきっかけとなったのは新曲「デストピア」(現在放送中のTVアニメ「クロムクロ」主題歌)。この曲の作詞・作曲を手がけたHISASHIは「どうしてもTERUにエレキギターを弾いてもらいたかったんですよ。意外と出来るもんだなって思いました。独特のグルーヴがあるんだよね(笑)。『デストピア』という字面はエッジが効いてるんだけど、未来への希望も込めているので、そこらへんも聴いてほしい」と語った。鋭利なギターサウンド、スリリングなメロディラインが絡み合うこの曲は、まさにHISASHIの真骨頂。この先のライヴにおいても、大きな武器になりそうなロックチューンだ。
GLAY・TERU
さらにTERUが「武道館、行くぞ!!」と高らかに叫び、「百花繚乱」(シングル/2014年)へ。「YAVAI!YAVAI!カナリYAVAI!」という大合唱が響き渡るこの曲は、GLAYの新たなライブアンセムとしてすっかり定着している。エンディングでHISASHIが「ジギー・スターダスト」(デヴィッド・ボウイ)のイントロのフレーズを弾き、そのまま「TILL KINGDOM COME」(アルバム「MUSIC LIFE」/2014年)に突入する演出も刺激的。官能的なサイケデリアと心地よい開放感を共存させたこの曲によって、会場のテンションは一気にピークへと達した。
大らかなスケール感を備えたメロディライン、ライヴの風景、バンドを続けることの醍醐味を反映した歌詞が心に残った「GREAT VACATION」(ベストアルバム『THE GREAT VACATION VOL.2~SUPER BEST OF GLAY~』/2009年)、そして、「ツアーが終わってしまう寂しさと、やり遂げたという充実感が胸を襲ってます。でも、みんなとまた会えるという約束があるからこそ、前に進めます!」(TERU)というコメントとともに披露された「Supernova Express 2016」(シングル「G4・Ⅳ」/2016年)で本編は終了。メンバーが手を振りながらステージを去った(JIROはひとり残り、“はいチーズ!”とオフマイクで叫びながらオーディエンスを撮影していました)。
9000人のオーディエンスのコールに応えて、再びメンバーが登場。まずは初期の名曲「Life ~遠い空の下で~」(シングル「真夏の扉」カップリング曲/1994年)。ディレイを効かせたギターアレンジ、爽やかさと切なさを同時に感じさせるメロディが武道館を包み込み、心地よい感動が広がる。さらに「これからも一緒に夢を見ていきましょう! みんなの夢が必ず叶いますようにという願いを込めて」(TERU)と語りかけた後、「BEAUTIFUL DREAMER」(シングル/2003年)。突き抜けるようなビートと「自分らしくあるがままに そう その為に何が出来るだろう」というフレーズは、すべてのオーディエンスの胸にしっかりと刻まれたはずだ。
この後TERUは、ニコニコ生放送で中継した経緯について改めて説明。「(地震の影響で会場に来られないファンのために)武道館の空気を少しでも届けてあげられたらと思い、急遽、配信することになりました」「ここ数年感じることですけど、GLAYとファンのみんな関係が強い絆で結ばれている気がして。何か困ったことがあったら俺たちも助けられるし、俺たちが困ったら、みんなが助けてくれる。そんな関係を続けていきたいと思っているので、よろしくお願いします」と語った。
GLAY
さらにTERUの作詞・作曲によるメッセージソング「空が青空であるために」(シングル「G4・Ⅳ」/2016年)を演奏した後、メンバー全員がツアーを振り返ってオーディエンスに語り掛ける。
「ファイナルにふさわしいライヴが出来ていると思います。次につながる本当に良いツアーでした。九州も東北もまだまだ大変ですけど、みんなで一丸になって応援してきましょう!」(Toshi Nagai)
「選曲も含めて、最近のツアーのなかでいちばん良かったと思ってるんだよね。GLAYの素晴らしい楽曲をちゃんと演奏しようと思ったときに、まだまだ、やるべきことはいっぱいあるなって。20周年を超えてこんな気持ちになれて、みんながすげえイイ顏しているのも嬉しくて。忘れないと思う、このツアーのことは」(JIRO)
「今回1本も落とすことなく、ツアーを完走しようとしてますけど、みなさんのおかげです。瞳を閉じると思い出が蘇りますよ……」(TAKURO)
そして最後はHISASHI。「武道館に初めて来たのは25年くらい前かな? ホワイトスネイクっていうバンドを見に来たんですけど…」と話していると「ねえ、HISASHIさん……ゾンビ子よ…私の曲を作ってくれてありがとう……これからもずっとそばにいるから……」という声が聞こえてきて、突如ステージ上から“ゾンビ子ちゃん”の人形が落下、「キャー!」という悲鳴混じりの歓声が沸き起こった。
その後に披露された「彼女はゾンビ」(シングル「G4・Ⅳ」/2016年)では、この曲のナレーションを担当している茂木淳一が登場し、CDとまったく同じ掛け合いを再現。最後の最後までオーディエンスを楽しませようとするエンターテインメント精神、本当に素晴らしい。ラストは「HIGHCOMMUNICATIONS」(シングル「G4・Ⅳ」/2016年)。ヘビィなリフによって強烈な一体感を生み出し、ツアーファイナルを締めくくってみせた。
7月30日(土)、31日(日)には幕張メッセでファンクラブイベントを開催。「この先10年、20年と続けていきたい」(TERU)という言葉通り、バンドに対するモチベーションをさらに上げているGLAY。彼らの本当のピークはこの先にあるのかもしれない――そんな嬉しい予感に満ちた、素晴らしいツアーファイナルだったと思う。
レポート・文=森朋之
GLAY
01. Scoop
02. 千ノナイフガ胸ヲ刺ス
03. 汚れなきSEASON
04. STARLESS NIGHT
05. laotour ~震える拳が掴むもの~
06. カナリヤ
07. 100万回のKISS
08. シキナ
09. everKrack
10. Believe in fate
11. SORRY LOVE
12. Will Be King
13. 航海
14. デストピア
15. 百花繚乱
16. TILL KINGDOM COME
17. GREAT VACATION
18. Supernova Express 2016
[ENCORE]
19. Life ~遠い空の下で~
20. BEAUTIFUL DREAMER
21. 空が青空であるために
22. 彼女はゾンビ
23. HIGHCOMMUNICATIONS