飯山裕太と赤澤ムックに聞く、舞台『カーニヴァル』

インタビュー
舞台
アニメ/ゲーム
2016.5.16
舞台『カーニヴァル』 飯山裕太、赤澤ムック (撮影=荒川 潤)

舞台『カーニヴァル』 飯山裕太、赤澤ムック (撮影=荒川 潤)

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その日暮らしをしている少年・花礫(ガレキ)。彼はある日、盗み先の館で腕輪を残して消えた青年“嘉禄(カロク)”を捜す旅をしている不思議な少年・无(ナイ)と出会う。しかし、その館の中で突如能力者(ヴァルガ)に襲われたふたりは危ういところを国家防衛最高機関「輪(サーカス)」によって強制的に保護されるのだが──

御巫桃也(みかなぎとうや)が描く不思議に楽しい冒険ファンタジー漫画『カーニヴァル』。そのコミックとアニメを原作とする2.5次元舞台THE STAGE『カーニヴァル 始まりの輪舞曲』の幕開けに向け、花礫役の飯山裕太と演出の赤澤ムックに本番への意気込みを聞いた。


──まずはズバリ、『カーニヴァル』という作品の魅力とは?

飯山:愛に溢れているところ。ちょっと刺々しい愛、真正面からの愛、哀しい愛…原作を読んでいると、すごくいろんな形の愛が詰まっていることに気づかされるんですよ。そんな中、僕が演じる花礫は素直じゃないというか…いつも「もっと素直にしてたらこんな大変なことにならないんじゃないの?」って心配しながら読んでるんですけどね(笑)。いろいろなモノを抱えてしまっている男の子なんです。舞台を観にきてくださるお客様にも、僕が花礫に感じていたような、思わず見守りたくなる気持ちを味わってもらえるよう頑張りたいです。

赤澤:キャラクターの多様さが、作品の面白さを支える大きなひとつの要素だと思います。しかし、舞台化するにあたっては、どうしても登場人物を絞らざるを得なかった。そこが最初の難問でしたね。だって、みんなチャーミングだしカッコいいし可愛いいんですよ。もちろんそれぞれにファンの方もいらっしゃるでしょうし…でもね、まあ私は今回がTHE STAGE『カーニヴァル』の第一弾だって勝手に思ってるんですけど(笑)、この初演をスタートに、今回出せなかったキャラクターのファンの方も楽しんで次を待てるようなコトに出来ればいいなって、そう考えています。

花礫役・飯山裕太 (撮影=荒川 潤)

花礫役・飯山裕太 (撮影=荒川 潤)

──赤澤さんは自身の劇団「黒色綺譚カナリア派」での活動を始め、小劇場界で精力的に活動されてきた方。2.5次元舞台の演出を手がけられたと最初に聞いたときは、ちょっと意外な気がしました。

赤澤:そうですよね。それこそ10年くらい前までは正当な演劇と呼ばれる作品と2.5次元舞台の間には確実に線引きがあったと思うんです。「そっちはファンのためのエンタメだよね」っていう“区別”が。私が初めて手がけた2.5次元作品は『華ヤカ哉、我ガ一族』ですが…やっぱり最初は2.5次元舞台というジャンルへの抵抗はありました。でも事前に2.5次元舞台をいくつか観たりするうちに、「新しい演劇のお客様に出会える」とか「新たな演劇文化を開拓したい」という思いが湧きあがったんです。まぁその頃自分がちょっと小劇場に飽きてしまっていたのもあるんですけど(笑)。同じお客様がグルグルしてるだけじゃないの?とか、自分が面白いと思うモノと売れて行くモノとが違うな、とか…ね。
 

──もともと漫画やアニメには親しみが?

赤澤:漫画は…実は少年漫画を中心に、ずっと熱心な読者でした。中学生の頃は自分で描いたりもしてましたし。

飯山:えっ。そうなんですか!?

赤澤:そうそう。だから乙女ゲームの世界に触れるのも、ある意味「帰ってきたな」っていう気持ちでした(笑)。舞台創作の中で女の子が喜んでくれるツボを突いていくのも大好物というか、好きですよ。私もとても楽しいんです。

演出家・赤澤ムック (撮影=荒川 潤)

演出家・赤澤ムック (撮影=荒川 潤)

──ムックさんの現場はどんな感触ですか?

飯山:すごく引き出していただいてます。僕は今回の役が自分と真逆のキャラクターということもあって…特に稽古序盤はすごく悩んだり、迷子になることも多くって。

赤澤:うん。それはもう…ありありと(笑)。

飯山:花礫のような“陰”の役は目線ひとつ、動きひとつでも意味深になってしまうので、今まで自分が主に演じてきた“陽”のキャラクターとは表現がまったく違うんです。なので、どう立つかとか、すごく初歩的なところでいきなり迷ってしまうこともあり…。

赤澤:素の飯山くん自身と花礫との間には、確かに距離があるとは思います。「お前あっち行けよ!」とか冷たく突き放す台詞でも、言いながら相手を気遣うような、気にするような空気があるので…。確か、妹さんがいるんだっけ?

飯山:はい。

赤澤:でも例えばその気遣う感じとか普段の妹さんとの関係が、今回は无ちゃんとのソレに近いんだと思うので…そこは上手く生かしてもらえたらいいかな。それ以外で言うと、彼には積極的に「人を傷つける練習」をしてもらってます。

飯山:そうなんです(笑)。稽古場でもなるべくみんなとふざけたりせずに少し距離を置いてすごす、といったところから土台をつくってます。それもムックさんのアドバイスなんですけど。

赤澤:やっぱり楽しい現場なのでね。そこに引きずられないよう、メリハリを持ってやってみれば?と。

舞台『カーニヴァル』 飯山裕太、赤澤ムック (撮影=荒川 潤)

舞台『カーニヴァル』 飯山裕太、赤澤ムック (撮影=荒川 潤)

──クールモードの特訓中。

飯山:意識してます。稽古はホントに毎日刺激的で発見があるので、ほんとに楽しいし、お腹いっぱいになって帰れる感じですよ! 帰宅する電車の中でも台本読み直して反芻することがたくさんありますし、実りが多いなぁっていう実感が強いんです。ほんと、こんな手応えは今まで初めてかもってくらいに。

赤澤:今回、結構お稽古の時間がみっちり取れているので、中身からじっくりと役を創れているのがいいんでしょうね。時間との闘いで、とにかく外見から“そう見える”ように創っていかなければいけない場合もあるけれど、今回は役者の中身で芝居を創ろうってことを追究できてるので。それは、私もとっても楽しいです。

花礫役・飯山裕太 (撮影=荒川 潤)

花礫役・飯山裕太 (撮影=荒川 潤)

演出家・赤澤ムック (撮影=荒川 潤)

演出家・赤澤ムック (撮影=荒川 潤)

──では、全体の演出に際してのこだわりポイントは?

赤澤:ほら、この前飯山くんが言ってたことあったでしょう? 「当たり前のことが…」って。

飯山:あ、はい。この舞台のストーリーを噛みしめていると、自分が当たり前と思って過ごしていることは、ホントは全然当たり前じゃないんだ。ひとつひとつが貴重なんだって思ったんです。

赤澤:それそれ。今ある当たり前の光景や日々の暮らしや幸せが、誰かにとっては全然当たり前じゃないすごく貴重なことなんだということ。様々なキャラクターの目を通して物語を見ると、ホントにその通りなんですよね。そんなような思いを伝えることも大事なのかなって。
 

──花礫もそうですよね。

赤澤:ですね。花礫の成長もストーリーの中心のひとつですけど、花礫は強盗をしてでも恩返ししよう…と生きてきた少年なので、最初は心を閉ざしてます。でも新たな出会いの中でやっと子どもらしくほぐれていって…そこが、いいんですよ。始めの頃と、終盤に向けてどんどん開いてきたときとのちょっとした空気の違いとか、そんなところもぜひ飯山くんのお芝居で楽しませてもらえれば。

飯山:難しいと思います…けど、頑張ります。絶対期待に応えて課題をクリアし…最後の最後は『カーニヴァル』らしく終われるように。
 

──まずは迷子脱出、ですね。

飯山:(笑)。花礫もほかのキャラクターたちも目の前の壁や紆余曲折を経て…先には哀しいドラマが待ち受けていたりもしますけど、でもしっかりと乗り越えていって、最後はみんな笑顔で終わりたい。辛くて逃げ出したくなったり、心が折れそうになっても笑顔で終われる。お客様がそんな『カーニヴァル』ならではの余韻に浸れるように、僕自身もいろんな感情をぶつけていきたいですね。舞台がこの先も続けていけるようになるためにも、僕も花礫も、もっともっと成長していかなくちゃ。

赤澤:今回の舞台。アニメで去年やっていたエピソードをやるという部分では、原作ファンのお客様も「ただいま」っていう気持ちで劇場に来ていただけるんじゃないでしょうか。そして私たちはみなさんを「おかえり」と迎えたい。『カーニヴァル』は人気作ですし特殊な世界観も特徴なので、おそらく今は「ホントに同じにできるの?」って、どきどきしている方も多いでしょう。でも、ぜひ安心してください。舞台で『カーニヴァル』を観たあとは、また原作を読み返したくなるはず。みなさんの好きな『カーニヴァル』がもっと好きになれる舞台『カーニヴァル』が出来上がること、きっちりお約束いたします。

舞台『カーニヴァル』 飯山裕太、赤澤ムック (撮影=荒川 潤)

舞台『カーニヴァル』 飯山裕太、赤澤ムック (撮影=荒川 潤)



撮影=荒川 潤 インタビュー・文=横澤 由香

©御巫桃也/一迅社・カーニヴァル製作委員会
©2016THE STAGE『カーニヴァル』製作委員会

公演情報
THE STAGE『カーニヴァル 始まりの輪舞曲』

 日時:2016年5月20日(金)~29日(日) ※23日(月)は休演日
 会場:あうるすぽっと(豊島区立舞台芸術交流センター)

 演出:赤澤ムック
 脚本:石橋大樹
 音楽:印南俊太朗

 <出演>
 倉持 聖菜、飯山 裕太、鷲尾 修斗、岡林 佑香
 岸本 卓也、甲斐 千尋、大見 拓土、小板橋 みすず、黒木 シオン

 

 

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