SHISHAMO、初めてのホールツアーで見せた、演奏力・コミュケーション力・歌力の深さと強さ

レポート
音楽
2016.5.16
SHISHAMO 撮影=柴田恵理

SHISHAMO 撮影=柴田恵理

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『SHISHAMOワンマンツアー2016春「少女たちが恋心に気付いたのは、宇宙からの旅がえり』 
2016.5.7 神奈川県民ホール・大ホール

2016年5月7日(土)神奈川県民ホール 大ホール、『SHISHAMOワンマンツアー2016春「少女たちが恋心に気付いたのは、宇宙からの旅がえり』。ニューアルバム『SHISHAMO 3』のリリースツアー、かつ、このバンドにとって初めてのホールツアー、全11本の9本目。「宇宙編」と「地球編」の2部構成。『SHISHAMO 3』収録の11曲はすべてプレイ。他、『SHISHAMO 2』から6曲、『SHISHAMO』から5曲、それからグッズのマフラータオルを買うとついてくるライヴ定番曲「タオル」、という選曲。アンコールはなし。

SHISHAMOが宇宙デビューを果たし、いろんな惑星を回るツアーに出る。ライヴでもらうオーディエンスのエネルギーが、宇宙を旅するのに必要な動力。で、ファイナル公演は、軌道から外れて不時着した星で行うことになり、そのライヴが「宇宙編」である、という設定。なので、彼女たちが乗ってきたロケットがあったり、モニターやドラム台が岩だったりするステージセット。3人も、ちょっと宇宙服っぽいツナギの衣裳で登場。「宇宙編」の後半、壊れた宇宙船が直らなくて、3人の足についているフットブースターで地球を目指したいが燃料がない、エネルギーを集めなきゃいけない、というわけで9曲目の「タオル」に突入、お客さんみんなタオル回しまくってエネルギーを充填、地球に帰ることができる──。という、ここまでのストーリーは、オフィシャルYoutubeチャンネルでおなじみの、例のイラストアニメで説明される。で、地球に戻ってきました、というところから映像が実写になって、3人が横浜中華街や山下公園をなんか食ったりしながら走り抜け、神奈川県民ホールにたどり着き、2部の「地球編」が始まる、その時 にはステージ上の宇宙っぽいセットが取り払われている、という演出だった。

SHISHAMO 撮影=柴田恵理

SHISHAMO 撮影=柴田恵理

「宇宙編」のMCでは、宮崎朝子(Gt/Vo)が「女!」「男!」「1階席!」「2階席!」「3階席!」と客席を分けてコールを求め、「3階席、見えていますよ!」とあおる。「地球編」のMCでは、「いつもどんな人が来てるのかを調査してるんです」と、小学生・小学生以下・中学生・高校生・専門学校生・大学生・大人に分けて呼びかける。小学1年生の子に「誰と来たの?」と話しかけて「パパとママだって!」と喜んだり(これは吉川美冴貴/Dr)、「中学生!」と呼ぶたびに悲鳴のような絶叫で応える3階席てっぺんの女子2名にメンバー一同おののいたり、中学生は男子と女子に分けてコールを求めたり、最後には「Blu-rayプレイヤー持ってる人!」ときいたりして、じっくり時間をかけてオーディエンスとコミュニケーションをとる。

SHISHAMO 撮影=柴田恵理

SHISHAMO 撮影=柴田恵理

ちなみに、お客さんの歓声の具合からすると、高校生と大学生がもっとも多いように感じたが、それ以外も広く来ている。それから、ここまでファンが男か女どっちかに偏っていない、両方とも来ているという例、若いバンドではめずらしいと思う。もうひとつちなみに、Blu-rayプレイヤーに関しては、声を上げたみなさんに対して、宮崎朝子が「カネ持ってるね。私、持ってないもん」とコメント、吉川美冴貴も「私も」と答えたところ、ベースの松岡彩、「私、持ってるや……なんか、ごめんなさいね」。笑いました。なので、Blu-ray・オンリーで4月6日にリリースされたばかりの、2016年1月4日・日本武道館の映像作品、吉川美冴貴はテレビの横に飾っているそうです。

SHISHAMO 撮影=柴田恵理

SHISHAMO 撮影=柴田恵理

それから、川崎の高校で結成されたバンドなのでここ神奈川県は地元である、だからとてもうれしい、ということも話していた。特に吉川美冴貴は横浜在住で、彼女の家は転勤族で、2年くらいずつあちこち引っ越した末に10年以上住んでいるのが横浜で、だからとても思い出のある場所、今日ここでこうしてライブができるのは誇らしくてうれしくて幸せだ、と口にする。でも家はこのへんではなくて、市内でもすっごい山の方で、最寄りの駅まで来た宮崎朝子は「日本にもこんなところ、あるんだね」と言ったという。なお、SHISHAMO、横浜でワンマンをやるのは初めてで、横浜でのライヴ自体も4年ぶりだそうです。

SHISHAMO 撮影=柴田恵理

SHISHAMO 撮影=柴田恵理

 というような、オーディエンスとの距離がとても近いMC。ギター・ベース・ドラムで演奏するのがふさわしい曲も、必ずしもそうではなさそうな曲も、その楽器3つだけで(打ち込みのホーンを使ったラスト曲「みんなのうた」を除く)、力技で、でも巧みにバンド・サウンドにしていくアレンジ力。それを「ちゃんと音源どおりに」ではなく、音源にプラスαをのっけて再現する演奏力(3人とも別にすごくうまかったりするわけではないが、その曲のことを身体でわかっているプレイをする)。そして、「あ、この人、コードさえあればどんどんメロディを生むことができちゃうタイプのソングライターだ」ということが直感でわかるほど、豊かで、美しくて、聴き手を振り落とさない親和的なメロディ。さらに、わが身を切り売りするのではなく(たまにするが)、作家としての視点で10代後半~20代前半の恋心や悩みや逡巡やせつなさや生活風景などなどを言葉にしていく、宮崎朝子(たまに吉川美冴貴)の歌詞の世界。

SHISHAMO 撮影=柴田恵理

SHISHAMO 撮影=柴田恵理

 俺、今、おっさんでよかったあ。と、観ながらつくづく思った。今10代とかだったら、それこそ3階席のてっぺんで悲鳴を上げていた中学女子ふたりのようになっちゃっていたかもしれないなあ、SHISHAMOに心的依存しすぎです、あなたヤバいかもしれません、みたいなハマり方をしていただろうなあ、と。僕が中学生の頃、自分よりちょっと上の世代、友達のお姉ちゃんの高校生とかで、松任谷由実もしくは中島みゆきにヤバいくらいハマっていた人が何人もいた。その感じを思い出す。

 って、書いた自分も思わず引くほど超大物の名前を出してしまったが、ただし、ユーミンも中島みゆきも「若い子ってこういう感じなんでしょ?」みたいに曲を書くだけだったら、あんなに多くの人の心を撃ち抜くことなどできなかったわけで、そこにユーミンもしくは中島みゆきというフィルターが機能するからこそ生まれ得たリアリティがあるわけで、つまり今、それと同じようなものを、SHISHAMOの曲も持っているということだ。

SHISHAMO 撮影=柴田恵理

SHISHAMO 撮影=柴田恵理

たとえば、ファンはわかっているとおり、確かに自分にはそういうところがあるけどそこはあんまり指摘してほしくない、だからほかのソングライターは歌にしない、みたいなポイントを絶妙に歌にするのが、宮崎朝子は得意だ。わかりやすい例を出すと、この日のライヴだと「地球編」の前半の「熱帯夜」と「女ごころ」あたり。これちょっと彼氏ビビるんじゃない?ってくらい相手にのめりこみすぎちゃってる心情を歌にした「熱帯夜」と、新しい男のことを好きになって、あんなにあなたのこと好きだったのにその気持ちをもう全然思い出せない、ごめんね、ありがとう、さようなら、と前の男をブチ捨てる心情を歌にした「女ごころ」が続いたこのゾーンは、ひっじょーーーにディープだった。みんなすんごく真剣に歌に聴き入っていた。

SHISHAMO 撮影=柴田恵理

SHISHAMO 撮影=柴田恵理

宮崎朝子が露悪趣味だから、人のそういう感情を歌にするのではないと思う。ただ、さまざまな感情を歌にしていく上で、そこだけオミットするのは不自然だから、そういう歌も作るのだと思う。というか、不自然だとか考える前に、あたりまえにそうしているのだろうが。とにかく、そのめったやたらなリアルさが、他の曲のリアルさも担保している、SHISHAMOの歌の強さってそういうところにあるんだなあ、と、改めて思った。

SHISHAMO 撮影=柴田恵理

SHISHAMO 撮影=柴田恵理

 あとひとつ。宮崎朝子、吉川美冴貴、松岡彩の3人のバランス、とてもいいんだなあ、ということも、改めて感じた。この3人ならではのおもしろいトライアングルを描けていることが、特にライヴだとよくわかる。

たとえば。ステージでの宮崎朝子は、よく言えばカリスマチックに見える、悪く言えばちょっと怖く見えることがある(ちなみに、生で会うと全然そんなことはない)。笑い方が「……ふっ」だったり、お客さんに何か言う時の口調が、ちょっと強めだったり。しかし、宮崎朝子がそういう言い方をした次の瞬間、矢のような速さで松岡彩が「やさしくね」とか「言い方、やわらかくね」と言葉をはさむのだ。なので、その宮崎朝子の口調の強さの印象が、瞬時にふにゃっと消えてしまう。ああ、ベースもいいけどキャラもいいなあ、さすが『RUSH BALL』の裏方やってるところをいきなりスカウトされただけのことはある、と、感心しました。

なお、この日のライヴがBlu-rayに「なるんじゃないかなあ」ということと、7月16日(土)・17日(日)に日比谷野外大音楽堂で2Daysを行うことが、ステージで発表された。日比谷野音は「夜空編」「青空編」と題して、1日目は18:00開演、2日目は14:30開演で行う、とのこと。
 

レポート・文=兵庫慎司

SHISHAMO 撮影=柴田恵理

SHISHAMO 撮影=柴田恵理

セットリスト
『SHISHAMOワンマンツアー2016春「少女たちが恋心に気付いたのは、宇宙からの旅がえり』 
​2016.5.7 神奈川県民ホール・大ホール

宇宙編
1 手のひらの宇宙
2 中庭の少女たち
3 僕、実は
4 推定移動距離
5 笑顔のとなり
6 深夜のラジオ
7 がたんごとん
8 花
9 タオル
10 きみと話せないのは
11 君と夏フェス
12 恋する
 
地球編
1 僕に彼女ができたんだ
2 ごめんね、恋心
3 熱帯夜
4 女ごころ
5 旅がえり
6 量産型彼氏
7 バンドマン
8 さよならの季節
9 生きるガール
10 君とゲレンデ
11 みんなのうた

 

ライヴ情報
SHISHAMO NO OSAKA-JOHALL!!!
SHISHAMO
6月25日(土) 大阪城ホール
前売:全席指定 ¥4,400(税込) / 開場16:00 開演17:00 
 
一般発売中!!!

 

SHISHAMO NO YAON!!! 2016 /日比谷野外大音楽堂
 


【SHISHAMO NO YAON!!! 2016 夜空編】
7月16日(土)・開場17:15 開演18:00 
【SHISHAMO NO YAON!!! 2016 青空編】
7月17日(日)・開場13:45 開演14:30 
 
前売:指定 ¥4,400(税込) 

「SHISHAMO NO YAON!!! 2016」オフィシャルサイト先行
受付期間:05.09(月) 12:00 ~ 05.17(火) 23:59
※申し込みは、SHISHAMOオフィシャルサイト(http://shishamo.biz/)へアクセス!!!
 
プレイガイド最速先行(先着順):2016年5月19日(木) 12:00~5月29日(日) 23:59
一般発売:2016年6月19日(日) 10:00~

 

 

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