【blur映画公開記念】アルバム「ザ・マジック・ウィップ」収録曲全曲解説+インタビュー特集 第5弾

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ブラーの最新ドキュメンタリー映画『ブラー:ニュー・ワールド・タワーズ』の日本公開を記念して、メンバー4人によるアルバム収録曲全曲解説とオフィシャルインタビューをご紹介するブラー特集。
いよいよ残すところあと2回となった特集。今週は第五弾!

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香港でレコーディングした音源が、いよいよアルバムになっていく

昨年リリースされたアルバム『ザ・マジック・ウィップ』は、出演予定だった日本のイベントがキャンセルになり、偶然できた時間を使って香港でレコーディングされたのは以前ご紹介したとおりだが、実際に香港でレコーディングされた音源がアルバムになるまでは、実に一年以上も時間が経っている。

その間、グレアムとスティーヴンが香港でレコーディングした音源を引っ張りだして実際にアルバムにする作業を始めなかったら、お蔵入りになっていた可能性すらあったという。
そしてグレアムたちが作業した音源を聞いた時、他のメンバーはどう感じたのだろうか?

デーモン:
俺はすごく心配だった。グレアムがスティーヴンを連れてやって来て、一緒にそれを聴きながら、俺達は手を取り合っていた―これは本当の話だよ。
だって、グレアムは本当にナーヴァスになっていたんだ。俺もすごくナーヴァスになっていた。それでスタジオに座って、最初に聴かせてくれたのが“ロンサム・ストリート”で、それが終わると俺は『うーん…ちょっとどうかな…少し、何となく、昔に逆戻りした感じがする』って言った。ちょっと奇妙な感じがしたんだ。それに俺が渡していたオリジナルのデモからなくなってるパートがあるとも思って、それでちょっとおかしな感じがしたんだ。第一印象は不安定な感じだったね。
それから“ニュー・ワールド・タワーズ”を聴いて、もともとのタイトルは“トレリック・タワー”で、そのタワーからとったアイデアだったんだけど、そういう心理地理学みたいなものと結びつけたくなかったから変えたんだ。でもそれは後になってからの話で。とにかく、その曲はすごく気に入ったよ。すごくいい曲だと思ったし、後でもっともっと良くなった。“ゼア・アー・トゥー・メニー・オブ・アス”を聴く頃には本当に夢中になっていた。
『何てこった…ふたりが何をやってきたのかよくわかる』って思った。俺達がレコーディングしてたものとそれほど違ってなかったけど、それと同時に…それからもう一度聴いて、2回目に“ロンサム・ストリート”を聴いたときにはすごくワクワクした。奇妙な言及が保たれていて、アルバム全体が基本的に香港を拠点にしていて、1曲だけ平壌にちょっと離れるけど、基本的には全部香港での経験を歌ったものなんだ。でも香港でのセッションでレコーディングしていたヴォーカルに、『5:14発のイースト・グリンステッド行き』っていう歌詞があったんだよ!
クリスマスにすべてを完成させようとしてたとき、そこを変えようと思った。でも考え直したんだ。あれは本当にあのとき香港で考えてたことだったから。だから自分で、『どうしてそんなこと考えたんだろう?』って考えてみたら、それが頭にあった理由として考えられるのは、グレアムと俺にはサセックスに住んでる友達がたくさんいるからだっていう、それしかなかった。昔はよくふたりでそこに行ってたから、つながりがあるに違いなかった。
だから、香港のことを歌ってる中で完全に無関係なんだけど、残すことにしたんだ。(聞いた人には)『イースト・グリンステッドだって?一体何の関係があるんだ?』って感じだよね。そこが曲のいいところで、自分の好きなようにできるっていう―ルールなんかない、やりたいようにやってよくて、自分自身でいることで独自の正説を作るんだ。
だから俺は自分の仕事が大好きなんだよね。平凡になったり、繰り返し過ぎたり、あまりにありきたりなものには絶対させないよ。

アレックス:
あれを選り分けるのは大仕事だった。5日間で20曲やってたと思う。
ロックっぽく始まるのもあれば、それから30分すると、バラードになって、また10分するとファンキーになるっていう。編集作業が大量で、膨大な量の音源を選り分けていった。あとアルバム2、3枚分くらいはあったかもしれないよ。
ともかく、たくさんタイトルがあったのを覚えてる。“ニュー・ワールド・タワーズ”は香港でのあの時期にすごくはまった曲だった。とんでもないメロディだ!あれはずっと頭に残っていたんだ。
ほかの曲はやったのを全然覚えてなくて、忘れてしまったんだけど。バンドが自然にやれてるときはそうなるんだ。シングルを作ろうとしてスタジオ入りすると、うまくいかないもので。今回はすごくリラックスしていて、ダーティなんだ。無理さえしなければうまくいくときもある。最高なのは、一貫性のある作品になったことだよ。5日間スタジオにいて、まさに香港にいるブラーって感じのサウンドになった。最高のブラー・アルバムの音がするんだ。

デイヴ:
聴くのが楽しみだったよ。その時点で僕が聴けていたのは、デーモンが『うまくいかなかったトラックだよ。どうしたらなんとかできるか教えて』って言って送ってきたものだけだったから。
覚えてるのは、すごくワクワクしたことと、自分達がプレイした曲に合わせて口笛を吹いてたことを今でも覚えてる。僕は自分達がやったものを聴くのに興味津々だった。
スティーヴンとグレアムが最初の作業をやってくれて、スティーヴンが送ってくれた曲を聞いて、ともかく僕は『ワオ!』って思った。スティーヴンがすごく乗り気なのはすぐにわかったよ。興奮気味のメールを送ってきて、『君達が思ってたよりずっと先に進んでたよ』って言うんだ。
だからスティーヴンが事前に、『使えるものがあるのかわからないし、本当にレコーディングをしたのかどうかもあやしいし、プレイボタンを押してマシーンに録音することすらしてないかもしれない』みたいなことを言われながらアプローチされたのは間違いないね。それでグレアムが使えるものがあるかどうか選り分けをして、スティーヴンが『君達が思ってたよりずっと先に進んでたよ、全部そうだ』ってメールを送ってきて、彼らがその時点で手を付けてたもののmp3をいくつか添付してくれて、それを聴いたら彼の言うことに納得したんだ。本当に自分達で思ってたよりもずっと多くのことをやってのけてたんだから。それってすごくワクワクすることだった。
グレアムとスティーヴンが続けられるようにスケジュールをあけて、二人はかなりの仕事をこなしたと思う。グレアムは自分のやったことを過小評価してるかもだけど、彼は実際にかなりのことをやってくれたんだよ。香港のセッションで16のアイデアをやったのは確かで、デーモンはそのうち2つがうまくいかないと思っていたから、(うまくいったアイデアは)14あったわけで、12か13くらいはかなり強力なアイデアがあったんだ。


デイヴ:
だからグレアムは大変だったよね。単に、『そのヴァースを動かして、そのコーラスを動かして、ああ、そのヴァースはいい感じだ、その曲はうまくいくね、どうやってまとめようか?』って感じじゃなかったんだから。後になってやるのはそれをやるのは大変だ。スタジオでやるほうがずっと楽で、スタジオにいる間に、『そのコーラスはだめだね』とか『そのコーラスは別の曲で使ってみよう』とか、アルバムを作ってる間にそういう話になるのが普通で。でも全部レコーディングし終えてからそれをやる、テープにしっかり録音されたものでやるしかないっていうのは、もっともっと大変なことなんだ。すごくゆっくりレコーディングした曲があって、そのスピードではうまくいってなかったから、全体のスピードを上げる必要があって、それをうまくやるのは大変なんだよね。新しいテンポの方がずっと演奏しやすいんだ。そういうわけで、すごくワクワクしたよ。それから個々でまたスタジオ入りする時間をとって、こまごまとつなぎ合わせたり演奏し直したりした。うまくいかなかったものか、別のアイデアで。最初のレコーディングには限界があったからね。
特に僕にとってはそうで。香港ではマイク1本でドラムをレコーディングしたんだけど、実際うまくいって、半分くらいの曲ですごくうまくできた。マイク1本あればそれでよかったんだ。でも曲によってはちょっとヘルプが必要なものもあって、グレアムがドラムを叩いて手助けしてくれたときもあって、それはよかったよ。僕がライヴ・ドラムを追加で叩かなきゃいけないときもあった。デーモンもキーボードで同じ状況になってたよ。デーモンは単にもう一度プレイするんじゃなくて、プロダクションでうまくやってたけど。それからデーモンが歌詞を書く時間をとって――僕達がいた場所の雰囲気にもう一度浸るために、短期間で香港に戻ったんだ。それが結果的に本当に報われたと思う。ものすごく美しくて感動的な歌詞になったからね。これは僕達の最高傑作に入ると思うよ。特に歌詞においては、本当に美しいものになった。デーモンが描いたイメージには心奪われるものがあって、どんな意味なのかは本人に聞かないとわからないけど、僕にはみんなで香港にいたときの頃を思い出させるところがたくさんあって、あそこで起こったこと、目にしたもの、感じたことがすごく鮮明に甦ってくるんだ。
実際香港に戻って、もう一度全部やり直したくなるくらいだよ。


【アルバム全曲解説】10.ピョンヤン

デーモン:
北朝鮮に行ったのは、『不思議の国のアリス』のリサーチのためだった。
でもそうはならなくて、あれは北朝鮮を舞台にした『不思議の国のアリス』みたいなものではなくて、金日成が公爵夫人になるとか、そういうのじゃないんだ。そうやってもうまくいったかもしれないけど、そういうんじゃなくて。でも、うん、実際北朝鮮に10日間いて、本当にマジカルな国だと思ったよ。とにかく特別な経験で、それでこんな狂ったような曲のアイデアが生まれたんだ。まあ、俺が感じたのは、これをなんとか曲にしたいってことで、そうやって生まれた曲で…つまりここに描かれてるのは俺自身の経験なんだよ。今回のはかなり政治的なアルバムで、あからさまではないけど、それは僕のスタイルじゃないからで、でも実際そうなんだ。作っていたときの時代の感じを出そうとしてやってみてるんだ。

デイヴ:
うん、かなり変わってるよね。僕はこの曲のイメージが大好きで、北朝鮮に行ったデーモンがすごく羨ましいんだ。自分でもすごく行ってみたいところだから。
この曲にはすごく、すごく、すごく美しいメロディがあって、僕はきれいなメロディに目がないから、実はドラマーでいることよりもバンドにいることのほうにもっと興味があるんだよね。自分の役割を果たすのは素敵なことだけど、僕は自分のやってることに集中するのと同じくらい、ほかのみんながやってることを聴くのに興味を引かれてしまうんだ。ライヴでこの曲をうまくやれたら、僕はものすごく嬉しいよ。これは、今回のアルバムに4、5曲ある、デーモンがさらりとすごくいいメロディ・ラインを作ってしまってる曲のひとつで、楽々とこなしてるように聴こえるんだけど、本当はそうじゃないんだ。デーモンが恐ろしく努力してるからこそ、すんなりできたように聴こえるわけで。でも、こういう曲を聴くと、そもそも僕達がどうしてこのバンドをやってるのかを改めて思い知らされるんだ。

【アルバム全曲解説】11.オン・オン


デーモン:
“オン・オン”の最初のアイデアは、ガレージ・バンド・デモだった。このアルバム自体がそうやって始まったからで、文字通りただのガレージ・バンドが香港のスタジオに入れられて、ドカーンとやって、それをもとにジャムをやり始めて、そうやってアルバム全体が始まったんだ。だからとにかく、これはもともと“オン・オン”って呼ばれてたただの古いデモだったんだ。
どうして“オン・オン”って呼ばれてたのかはわからないんだけど、もう一度手掛けることになったとき、とにかく気に入ったんだよね。何ていうか…すごく変わってるからタイトルとしてキープしときたくて、それから盛り上がる掛け声になって戻ってきたというか。とは言っても、“オン・オン”って言葉自体はまったく出てこないし、そもそもどうして“オン・オン”って呼ぶようになったのか不思議だよ。
クリスマスの間にググってみたんだ、どうして思い付いたのか知りたくて。一体自分は何を考えてたんだろうってね。自分ではまったく覚えてないんだけど、何かすごくおもしろいことが頭にあったに違いないよね。あのオリジナルのデモができてから、4年かそれくらいは経ってるかもしれない。でもググってみても何も出てこなくて、極東のどこかにそんな名前の会社があったけど―たとえば“オン・オン・ホールディングス”みたいな、でもそれだけで何もなかった。言葉としての意味はどの言語にもひとつもなかったんだ。何だろう、スラングにもなかったし、一体どこから持ってきた言葉なのか不思議だよ。
“オン・オン”って言葉をどこで知ったのかわからないんだけど、それから突然気付いたんだ。Ong OngにHとKをつけたらHong Kong(香港)になるって。そのときは、思いがけない偶然の話につながるけど『ほんとにおかしな話だな。結果的に香港でレコーディングすることになったわけで、それまでずっと温めてたことになるんだ』って思ったよ。

グレアム:
“オン・オン”は、足踏みのようなリズムの曲で何度も使ってきたコード・シーケンスから生まれたもので、それをいい感じに大きく太くして、ちょっと変わったピアノを入れて、それから僕がノリノリのリード・ギターを乗せたんだ。
生意気な感じで、ちょっとサーフっぽくて、ああいうハッピーな感じが伝わってくるようにした。でも完成したのはデーモンが決定的なあの、『僕は君と一緒にいたい』ってパートを加えてからで、それがすごくしっくりくると僕は思ったんだ。軽快な感じのいい曲になるとわかってたし、曲がいいからどんな歌詞でも付けられそうだと思ってたけど、デーモンから実際に言われた言葉を引用すると、『一般向けにしたから』って言われて、それで聴いてみたら、『ああ、いいね、すごくしっくりくる』って思った。
何ていうか、バカンスみたいな感じがするというか、僕にはまさしくバカンスの曲って感じがするんだよね。バハマに行くとか、そういう感じの。ヤシの木が並んでて、飛行機が離陸して、非の打ちどころのないビーチがあって、ケヴィン・エアーズがどこかにいて、ほかにもロックスターが何人かビーチにいるみたいな。そういう感じの曲で、言ってみればすごくイデオロギー的なんだ。

作品情報
ブラー:ニュー・ワールド・タワーズ


出演:デーモン・アルバーン/グレアム・コクソン/アレックス・ジェームス/デイヴ・ロウントゥリー
監督:サム・レンチ 撮影:ブレット・ターンブル、バド・ガリモア 編集:ハミッシュ・リヨン/ベン・ウェイン
ライト-ピアース/レグ・レンチ 製作:ニーヴ・バーン/レジーヌ・モイレット/ビル・ロード
2015年/イギリス/カラー/93分/原題:BLUR: NEW WORLD TOWERS
配給:松竹メディア事業部 宣伝:ビーズインターナショナル
協力:S-O-C-K-S INC./フレッドペリー/British Music in Japan/ワーナーミュージック・ジャパン
(c)Blink TV 2015 
blur-movie.jp

 

作品情報
Blur / ブラー
The Magic Whip / ザ・マジック・ウィップ


発売日:2015年04月29日
価格:¥2,457(本体)+税 / 規格番号:WPCR-16444
収録曲:
1. Lonesome Street / ロンサム・ストリート
2. New World Towers / ニュー・ワールド・タワーズ
3. Go Out / ゴー・アウト
4. Ice Cream Man / アイスクリーム・マン
5. Thought I Was A Spaceman / ソート・アイ・ワズ・ア・スペースマン
6. I Broadcast / アイ・ブロードキャスト
7. My Terracotta Heart / マイ・テラコッタ・ハート
8. There are Too Many of Us / ゼア・アー・トゥー・メニー・オブ・アス
9. Ghost Ship / ゴースト・シップ
10. Phyongyang / ピョンヤン
11. Ong Ong / オン・オン
12. Mirror Ball / ミラー・ボール
13. Y'All Doomed / ヤオール・ドゥームド (*日本盤ボーナス・トラック)
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