オペラ界のスター・宮本益光とソプラノの新星・三井清夏がサンデーブランチクラシックに登場

レポート
クラシック
2016.6.7
三井清夏 宮本益光 (撮影=原地達浩)

三井清夏 宮本益光 (撮影=原地達浩)

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オペラ界のスター・宮本益光&天使のソプラノ・三井清夏が織り成すプレミアムステージ!第20回“サンデー・ブランチ・クラシック”4.3ライヴレポート

4月最初の日曜日。新しい生活が始まり、ほっと一息ついていた方も、多かったのではないだろうか。この日の“サンデー・ブランチ・クラシック”がお贈りしたのは、宮本亜門演出の『ドン・ジョヴァンニ』に主演し一躍注目を集めるオペラ界のスター・宮本益光、昨年元宝塚歌劇団の演出家、萩田浩一演出の『ウィーン気質』に抜擢されたソプラノの新星・三井清夏が織りなすプレミアムステージ。二人の歌声に対する期待が、カフェに満ち満ちていた。

黒いスーツに身を固め、颯爽と登場した宮本。客席を笑顔で見つめ、宮本は「皆さん、ようこそお越しくださいました。いつもはクラシックのホールで演奏することが多いので、ちょっとドキドキしながらやって参りました。声楽家、オペラ歌手の宮本益光です」と全方位に挨拶をすると、会場からは大きな拍手が巻き起こった。

宮本益光 (撮影=原地達浩)

宮本益光 (撮影=原地達浩)

まず、1曲目に歌われたのは、モーツァルト作曲 オペラ『フィガロの結婚』より「もう飛ぶまいぞこの蝶々」。第一幕の最後、伯爵に軍隊行きを命じられた小姓ケルビーノにフィガロが歌いかけるこの曲を、宮本は一人で魅せていく。時に励まし、時にからかい、情感豊かに。あたかも、そこにもう一人、いるようなステージから、目が離せなくなる。360度取り巻く客席全体に響き渡らせる渾身のロングブレス!

「興奮して、いつもより長く歌ってしまいました(笑)」と、拍手喝采を浴びながら、宮本の表情からは楽し気な笑顔が絶えない。「ここで、一輪の花をご紹介しましょう。ソプラノの三井清夏さんです」と呼び込む宮本。

三井清夏 宮本益光 (撮影=原地達浩)

三井清夏 宮本益光 (撮影=原地達浩)

少々固めの表情で登場した三井だったが、「女の子はいいね~、ドレスがかわいい!」と宮本がさらっと言葉を投げかけると、ほっと表情が和らいだ。さらに宮本は、「もちろん、髙田さんも素敵だよ」と、この日伴奏を務めたピアニスト・髙田恵子にも声をかけることを忘れない。女性の心を鷲掴みにする様は、さすがだ。

緊張がほどよくほぐれたところで、「さて、三井さんに歌って頂くのは・・・」と、三井にステージを託し、宮本は一度ステージを去る。三井がソロで歌ってくれたのは、グノー作曲「アヴェ・マリア」。圧倒的な宮本のバリトンとは一変、可憐なソプラノがふんわりとカフェを包んだ。

三井清夏 (撮影=原地達浩)

三井清夏 (撮影=原地達浩)

三井が歌い終えると、宮本が再びステージに舞い戻る。「三井さんは、昨年デビューした新人で。7月には、私と一緒にオペラ『ドン・ジョヴァンニ』に出ることが決まっています」ということで、次は二人でモーツァルト作曲 オペラ『ドン・ジョヴァンニ』より二重唱「お手をどうぞ」を歌ってくれた。“ドン・ジョヴァンニ”といえば2,065人もの女性と関係を持ったという“愛の運び手”。この「お手をどうぞ」が歌われるシーンも、結婚式を迎えようとしている農民の娘を誘惑する場面だ。

二人が歌い出せば、カフェはまるでミニオペラハウス。娘にゆっくりと近づき、その手を取るドン・ジョヴァンニ。いけない、と身をかわすが、ドン・ジョヴァンニの甘い誘惑に次第に心が動かされてしまう娘。ついには、その両手を取り、距離が縮まっていく―。

宮本益光 三井清夏  (撮影=原地達浩)

宮本益光 三井清夏  (撮影=原地達浩)

ドキドキしながら見入っていると、歌い終えた宮本が「普段の演奏会は、照明が強くて、あまりお客様のお顔をはっきり拝見できないんですよね。特にオペラはそうなんですけど。でも、今ははっきりと目線を頂戴していて・・・恥かしいなあ(笑)。どう?」と尋ねると、「・・・はい、とっても恥かしいです(笑)」と再び照れ笑いを浮かべる三井だった。

クラシックの道を進んできたが、ポップスもジャズも大好きだという宮本。「あの自由な空気に、とっても憧れがあってね。だから今日、自由に歌えてとても嬉しいんです」と、改めて語ってくれた。

そんな宮本は、「普通のコンサートだと、続きましては・・・みたいな曲紹介をするんだけど、僕はこれをカッコつけて言いたい!」と、さらに自由度を増してDJ風に曲紹介。グノー作曲 オペラ『ファウスト』より「宝石の歌」を歌い終えた三井を送り出す時も、「三井さんに盛大な拍手をお願いしまーす!」と再びDJ風のMCで、気持ちいいな!と満足げ。

続いて、「外国に行って演奏する時、『日本の歌を歌ってくれよ』とよく言われるんですけど、実は誰もが知っている曲というのは少ないんですね。私の経験上、外国で歌ってもっとも頷かれる曲が次の曲なんですが・・・さて、なんの曲でしょう?」という前振りで紹介されたのは、「上を向いて歩こう」。曲の途中、宮本によるピアニカ演奏も。さらに、指を打ち鳴らし、スイングする宮本に合わせ、客席も手拍子!

宮本益光 (撮影=原地達浩)

宮本益光 (撮影=原地達浩)

宮本益光 (撮影=原地達浩)

宮本益光 (撮影=原地達浩)

「楽しいな。いいな、こういうの・・・でも、早いもので次で最後の曲になりました」と終わる時間を惜しみつつ、最後はミュージカル『ラマンチャの男』より「The impossible dream(見果てぬ夢)」を力いっぱい歌い上げた。

鳴り止まない拍手に、改めて三井をステージに呼び込み、アンコールで滝廉太郎作曲「花」、ダブルアンコールでオペレッタ『メリー・ウィドウ』より「メリー・ウィドウ・ワルツ(唇は語らずとも)」で応え、大盛り上がりの30分を締めくくった。

三井清夏 宮本益光 (撮影=原地達浩)

三井清夏 宮本益光 (撮影=原地達浩)

ステージの上でも、「楽しい、楽しい」と何度も口にしていた宮本。終演後のインタビューでも、「とってもいい時間でした。この“サンデー・ブランチ・クラシック”は、お茶を飲んだり、食事をしたりしながらと、より生活に密着した形というのが体現されていると思います。私たちは歌を披露するというのもひとつの在り方ですが、皆さんの生活の中に入って一緒に楽しむというのも、忘れちゃいけない部分なんですよね。この企画は、それが最もいい形になっているんじゃないかな」と、自身の考えを明かしてくれた。
 

髙田恵子 三井清夏 宮本益光 (撮影=原地達浩)

髙田恵子 三井清夏 宮本益光 (撮影=原地達浩)

三井は、新人ということでまだステージで話すことに慣れていないようだったが、「終演後にお客様とすぐお会いできて、こんなに近くでクラシックの舞台を観たことがなかった、オペラを聞いたことがなかったのでよかったと言って頂けて。お子さん連れの方にも来て頂けて、私自身もとっても嬉しかったです」と話してくれた。

この日、宮本はかなりステージを動き回りながら歌ってくれたが、「感情を、歌詞やお芝居に託しながらお届けするのは、楽しいことでしたね。それから、やっぱりまんべんなく伝えたいという思いがありますし。真後ろを向いて歌う瞬間もあったけど、あれはアドリブで。人生がアドリブみたいなものだから(笑)」。

最後に、「こういう場所は、生活の中で音楽を携える喜びを求める、それに最もふさわしいツールなんじゃないかな。だから、ずっと続けて頂きたいですね」と言ってくれた宮本。また出て頂けますか?と問うと、三井も「ぜひとも!」と笑顔で答えてくれた。

髙田恵子 三井清夏 宮本益光 (撮影=原地達浩)

髙田恵子 三井清夏 宮本益光 (撮影=原地達浩)

毎週日曜日、上質なクラシックと音楽の喜びが、そこにある。次回も、どうぞお楽しみに。

プロフィール
宮本益光(みやもとますみつ)
東京藝術大学卒業。同大学大学院博士課程修了。『ドン・ジョヴァンニ』(宮本亜門演出)タイトルロールで衝撃的な二期会デビューを飾る。東京二期会『コジ・ファン・トゥッテ』グリエルモ、新国立劇場『鹿鳴館』(世界初演)清原永之輔、『夜叉が池』(世界初演)学円、日生劇場『メデア』(日本初演)イヤソン、『リア』(日本初演)オルバニー公爵、神奈川県民ホール『金閣寺』溝口等話題の公演で活躍。また、数々の作品で新日本語訳詞や字幕を発表する等多彩な才能を発揮。CD「碧のイタリア歌曲」(オクタヴィアレコード)、著書「宮本益光とオペラに行こう」(旬報社)も好評を博している。16年9月あいちトリエンナーレ『魔笛』パパゲーノに出演予定。二期会会員
三井清夏(みついさやか)
国立音楽大学卒業、並びにオペラソリストコース修了。同大学大学院修士課程修了。二期会オペラ研修所マスタークラス修了時、奨励賞及び優秀賞を受賞。09年 国立音楽大学大学院オペラ『ドン・ジョヴァンニ』ツェルリーナでオペラデビュー。10、13年『コジ・ファン・トゥッテ』デスピーナにて出演。15年東京二期会『ウィーン気質』(阪哲朗指揮)フランツィスカ・カリアリで二期会オペラデビュー。コンサートにおいても、14年岩村力指揮東京フィルハーモニー交響楽団及び大阪フィルハーモニー交響楽団との「第九」、ニューフィルハーモニアオーケストラ千葉「習志野市制施行60周年記念第37回習志野第9演奏会」に出演する等、今後益々の活躍が期待されている。二期会会員 
 

 

宮本益光 公演情報
東京佼成ウインドオーケストラ

日時:6月11日(土)
会場:東京芸術劇場 コンサートホール 
指揮:キンボー・イシイ 

<独唱>
岡田昌子(トゥーランドット)、城宏憲(カラフ)、石上朋美(リュー)、
ジョン・ハオ(ティムール)、井上雅人(役人)、宮本益光(案内役) 
<合唱>
東京音楽大学

曲目・演目:G.プッチーニ/歌劇「トゥーランドット」より抜粋

 
中嶋朋子が誘う 音楽劇紀行 第二夜 古典派オペラ

日時:12月14日(水)
会場:HAKUJU HALL(渋谷区富ヶ谷) 
総合プロデューサー:田尾下哲 

<出演>
中嶋朋子 (案内人)、加藤昌則 (音楽監督/ピアノ)、砂川涼子 (ソプラノ)、
宮本益光(バリトン)、藤木大地(カウンターテナー)、サラ・オレイン (アーティスト) 

<曲目・演目>
歌劇『フィガロの結婚』より
   「スザンナはまだ来ない~楽しい思い出はどこへ」、
   「もう飛ぶまいぞこの蝶々」
   「自分で自分がわからない」
   「早く開けて、開けて」 
歌劇『ドン・ジョヴァンニ』より 「お手をどうぞ」  
歌劇『コジ・ファン・トゥッテ』より「風は穏やかに」、「岩のようにじっと動かず」 ほか

 
「ホリデー・クリスマスイブ・コンサート

日時:12月24日(土)
会場:ミューザ川崎シンフォニーホール

<出演>
山形由美(フルート)、宮本益光(バリトン)、加藤昌則(ピアノ)

<曲目・演目>
「オンブラ・マイ・フ(ヘンデル)」「ポロネーズ」、「バディネリ(J.S.バッハ)」
『フィガロの結婚』より「もう飛ぶまいぞこの蝶々(モーツァルト)」、「メリー・ウィドウ・ワルツ(レハール)」、
クリスマスメドレー(加藤昌則編)ほか、素敵なクリスマス・イブを演出する名曲の数々

 

 

二期会 公演情報
Nikikai Days @ Blue Rose 2016

 日程:2016年7月1日(金)~7月3日(日)
 会場:サントリーホール ブルーローズ(小ホール)
 主催:株式会社二期会21
 協力:サントリーホール

■第1日<華麗なるイタリア・オペラの世界>
日時:7月1日(金) 19:00開演/18:30開場
<演奏予定曲(順不同)>
・大山亜紀子 
ヴェルディ 『ドン・カルロ』より “世のむなしさを知る神”(エリザベッタ) 
・横山恵子 
プッチーニ 『トゥーランドット』より “この宮殿の中で”(トゥーランドット) 
・富岡明子 
ロッシーニ 『ラ・チェネレントラ』より “悲しみと涙のうちに生まれて”(アンジェリーナ) 
・中島康晴 
ドニゼッティ 『ランメルモールのルチア』より “我が祖先の墓よ”(エドガルド) 
・樋口達哉 
プッチーニ 『トスカ』より “妙なる調和”(カヴァラドッシ) 
・上江隼人 
ロッシーニ 『セビリアの理髪師』より “私は町の何でも屋”(フィガロ) 
ほか


■第2日<わたしの特別な作曲家>
日時:7月2日(土) 14:00開演/13:30開場
<演奏予定曲(順不同)>
・山口道子 
山田耕筰 『風に寄せてうたへる春のうた』(全曲) 
・秋葉京子 
マーラー 『亡き子をしのぶ歌』(全曲) 
・大澤一彰 
トスティ 「暁の光から」 
ガスタルドン「禁じられた音楽」 
・又吉秀樹 
シューベルト 「こびと」 
トスティ 「Good-bye(さようなら)」 
・坂下忠弘 
プーランク『村人たちの歌』(全曲) 
ほか

■第3日<オペラ『ドン・ジョヴァンニ』>
日時:7月3日(日) 14:00開演/13:30開場
<出演>
ドン・ジョヴァンニ/宮本益光、ドンナ・アンナ/針生美智子、
ドンナ・エルヴィーラ/林 正子、ドン・オッターヴィオ/望月哲也、
レポレッロ/池田直樹、騎士長/高橋啓三、ツェルリーナ/三井清夏、
マゼット/近藤 圭、ピアノ:石野真穂

公式サイト:http://www.nikikai21.net/concert/days_2016.html

 

サンデーブランチクラシック情報
6月12日(日)
樋口達哉テノール)
第1部 13:00~13:30 / 第2部 15:00~15:30
会場:LIVING ROOM CAFE(リビングルームカフェ)by eplus
MUSIC CHARGE:500円

6月19日(日)

ザ・フレッシュメンピアノ・トリオ)
第1部 13:00~13:30 / 第2部 15:00~15:30
会場:LIVING ROOM CAFE(リビングルームカフェ)by eplus
MUSIC CHARGE:500円

公式サイト:http://eplus.jp/sys/web/s/sbc/index.html​
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