Noism 劇的舞踊 vol.3『ラ・バヤデール―幻の国』

『ラ・バヤデール』より Photo:Ryu Endo

『ラ・バヤデール』より Photo:Ryu Endo

 りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館を拠点に活動する劇場専属舞踊団Noismが、この夏、最新作となる劇的舞踊 vol.3『ラ・バヤデール―幻の国』を上演。新潟を皮切りに全国5都市で巡演し、さらに9月にはBeSeTo演劇祭の1プログラムとして鳥取での上演も決まっている。開幕に先駆けて行われた記者会見では、劇作家の平田オリザ、Noism芸術監督の金森穣、Noism1より井関佐和子、中川賢、石原悠子の主要舞踊家3名が登壇し、作品への意気込みを語った。

 古典バレエの名作『ラ・バヤデール』を下敷きに、平田が翻案を手がけた本作。日本を代表する劇作家として知られる平田だが、金森の依頼を受け今回初めてバレエの脚本を手がけたという。
「『ラ・バヤデール』はインドの階級制度を背景にした話ですが、それを民族対立の問題に置き換えて書き上げました。金森さんと話し合い、現代社会における問題の根源はどこにあるかを考えられる内容にしています」 

 物語の舞台は草原の国「マランシュ」。ひとりの老人の記憶に浮かび上がる幻の国は、さまざまな対立を経て崩壊へと向かい…。メインキャラクターであり、原作のニキヤにあたる主役のミランに扮するのは井関佐和子。
「ミランを演じるにあたり、穣さんから“まれびと”というキーワードをもらいました。これまでは強い女性を演じることが多く、強さの中にある女性の弱さを表現する必要がありましたけど、ミランは時代に翻弄される弱い女性であり、同時にその中にある強さを表現しなければならない。そこに自分自身の新しい可能性を感じています」と語り、これまでにないキャラクター像に意欲をみせる。

 井関をはじめ、劇中はメインカンパニーNoism1と研修生カンパニーNoism2、総勢20名の舞踊家が出演。加えてSPAC
-静岡県舞台芸術センターより、奥野晃士、貴島豪、たきいみきの3名をゲスト俳優に迎える。当然そこでは台詞を言葉で語る者と身体で表現する者、両者の対比が浮き彫りになると金森は言う。
「この作品では舞踊を“話さない表現”という大前提に置くのではなく、喋らない選択をした人たち、あるいは物が言えない人たちと考えています。それは政治的立ち位置かもしれないし、身体的に発することができないのかもしれない。言葉で言いたいけれど、言えない身体がある。役者と対峙することで、舞踊家の非言語表現がより顕在化していくでしょう」

 原作では宮殿が瓦解し、壮大なクライマックスで幕を閉じる。そのあまりに有名な結末をどう描くのか、金森の演出が注目されるところだ。
「重要なのは幻だということ。今回は記憶や歴史性をメインテーマと捉えています。歴史の中で壊されてきたものが今どう受け継がれているのか、個人にどう影響を与えているのか、モティーフになるのは精神的な崩壊です。非言語表現で行う舞踊は記録化すらされない。消えてなくなるものをどう語り継いでいくか、舞踊に携わる者として舞台芸術の意義を提示したい。それはまた、消えてしまうもの、儚いものに対してみなさんがどう考えるかという我々の問いでもあるのです」

文:小野寺悦子
(ぶらあぼ + Danza inside 2016年6月号から) 

記者会見から 左より井関佐和子、金森 穣、平田オリザ、中川 賢、石原悠子 (Photo:H.Yamada/Tokyo MDE)

記者会見から 左より井関佐和子、金森 穣、平田オリザ、中川 賢、石原悠子 (Photo:H.Yamada/Tokyo MDE)


 
 
イベント情報
Noism劇的舞踊vol.3『ラ・バヤデール―幻の国』

演出:金森穣
脚本:平田オリザ
振付:Noism1
音楽:L.ミンクス《ラ・バヤデール》、笠松泰洋
空間:田根剛(DORELL.GHOTMEH.TANE / ARCHITECTS)
衣裳:宮前義之(ISSEY MIYAKE)
木工美術:近藤正樹
舞踊家:Noism1 & Noism2
俳優:奥野晃士、貴島豪、たきいみき(SPAC‒静岡県舞台芸術センター)
特設サイト:http://labayadere.noism.jp/
 
新潟公演:6/17(金)~19(日)@りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館〈劇場〉
神奈川公演:7/1(金)~3(日)KAAT神奈川芸術劇場〈ホール〉
兵庫公演:7/8(金)~9(土)兵庫県立芸術文化センター〈阪急中ホール〉
愛知公演:7/16(土)愛知県芸術劇場〈大ホール〉
静岡公演:7/23(土)~24(日)静岡芸術劇場
鳥取公演:9/24(土)米子市文化ホール〈メインホール〉
※鳥取公演の詳細は下記ウェブサイトでご確認ください。

あらすじ
物語は一人の老人“ムラカミ”の回想から始まる。曖昧な記憶を辿るように、かつてここにあった幻の国マランシュが蘇る。
ムラカミはかつて、ヤンパオ帝国の特務機関としてマランシュに駐留していた。風吹く荒野に忽然と姿を現したこの国に、理想を求め、多くの人や民族が集まってきた。皇帝を中心としたマランシュ族、陸軍の騎兵隊を務めるメンガイ族、踊り子のカリオン族、地方の軍閥である馬賊、そしてヤンパオからの居留民たち。それら五つの民族の人々が、偽りの協和のもと、マランシュに共存していた。メンガイ族の騎兵隊長バートルは、カリオン族の踊り子ミランと秘かに愛し合っている。しかしマランシュの皇帝プージェは、五族協和の象徴として愛娘フイシェンとバートルを結婚させようとする。バートルはミランへの愛と民族への想いの間で苦悶する。そしてメンガイ族の独立を信じ、フイシェンとの婚約を承諾してしまう。一方、隣国オロルから亡命してきた大僧正ガルシンも、踊り子ミランに想いを寄せている。しかしその想いはミランによって拒まれ、その背後にバートルとの逢瀬があることを知る。ガルシンが皇帝プージェにその事実を密告すると、それを知ったムラカミが特務機関として暗躍していく。政治、宗教、民族の対立…あらゆる人々の思惑が憎しみとなって渦巻くなか、バートルとフイシェンの婚約式が始まろうとしていた──​
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