【WEBぶらあぼ特別インタビュー】スヴェトラーナ・ザハーロワ&ミハイル・ロブーヒン(ボリショイ・バレエ)
左:ミハイル・ロブーヒン 右:スヴェトラーナ・ザハーロワ (C)Takayuki Yoshida
ロシアの名門ボリショイ・バレエの頂点に輝くスヴェトラーナ・ザハーロワとミハイル・ロブーヒンが2016年夏、バレエ界屈指の花形ダンサーが集結する夢の饗宴「オールスター・バレエ・ガラ」(7月23日〜27日、東京文化会館)にパートナーを組んで出演する。同公演への意気込みやパートナーシップ、ボリショイ・バレエの近況について聞いた。
取材・文:高橋森彦(舞踊評論家)
進歩し成長する特別なパートナーシップ
類まれな美しい容姿と高い精神性に満ちた踊りによって当代随一のプリマバレリーナとして君臨するザハーロワ。屈強でエネルギッシュなダンスを武器に飛躍するロブーヒン。共通項はサンクトペテルブルグのワガノワ・バレエ・アカデミーを卒業し、マリインスキー・バレエを経て、モスクワのボリショイ・バレエに移籍した点だ。俗にマリインスキーは何よりも優雅さを大切にし、ボリショイは力強くダイナミックな表現が特色といわれる。2003年にボリショイに移籍したザハーロワはすっかり“女王”の貫録を示す。
「移籍から10年以上が経ちボリショイのスタイルになじんでいます。マリインスキー時代から『スパルタクス』(振付:Y.グリゴローヴィチ)のような作品を踊りたかったのです」
ザハーロワが「ミーシャ(ロブーヒンの愛称)にはグリゴローヴィチ作品をはじめ、ボリショイのレパートリーが合っている」とフォローするように、10年に加入したロブーヒンは『スパルタクス』の表題役などで声望を高める。
「ボリショイとマリインスキーはどちらもスタイルやテーマの違う新しい作品を創り、海外を含め色々な所でみせている。お互いを意識しながら発展していると思います」
ザハーロワは近年自身の企画などでロブーヒンと組む。
「同じ所に立っていたのでは進歩がないのでお互いに成長したいと思っています。ミーシャは新しいプロジェクトの時に失敗を恐れずにリスクを冒して取り組んでくれます」
ロブーヒンにとってもザハーロワと組むことは特別だという。
「スヴェトラーナと踊るのは大きな誇り。彼女と1回1回共演するたびに大きなお祭りをやっているようなものです」
スヴェトラーナ・ザハーロワ (C)Takayuki Yoshida
定番の古典と厳選した新しい作品を披露する「オールスター・バレエ・ガラ」
「オールスター・バレエ・ガラ」東京公演では、Aプロで『海賊』(振付:M.プティパ)と『トリスタンとイゾルデ』(振付:K.パストール)、Bプロで『ジゼル』(振付:M.プティパ)と『ディスタント・クライズ』(振付: E.リャン)を踊る(大阪公演ではAプロを予定)。ザハーロワが厳選したラインナップだ。
「ポピュラーな古典と新しい作品を選びました。『海賊』は非常にテクニックを要求される踊りですし『ジゼル』は抒情的です。『ディスタント・クライズ』『トリスタンとイゾルデ』は私たちも楽しみですし、お客様にも気に入っていただけると思います」
ロブーヒンが『トリスタンとイゾルデ』を踊るのは今回が初めて。
「スヴェトラーナから『こういう作品があるけれど踊ってくれる?』とオファーがあるのですが彼女のセンスを信頼しています」
共に初めて訪れた外国が日本だったこともあり、日本への思い入れは深い。ザハーロワは初来日からまもなく20年を迎える。
「96年冬のマリインスキーの来日公演の時が初めてでした。文化的水準が高くバレエに対する関心・素養もある日本のお客様の前で踊るのは凄く楽しみです」
ロビーヒンは学校公演で初来日し以後親日家だ。
「日本は初恋の国。他の外国と違い舞台に出ると客席に張りつめた空気感があります」
『海賊』より ザハーロワ&ロブーヒン (C)Pierluigi Abbondanza
ボリショイ・バレエの最新状況と来年の日本公演
16年3月よりボリショイ・バレエの芸術監督にマハールベク・ワジーエフが就任した。長らくマリインスキー・バレエの芸術監督を務め、その後イタリアのミラノ・スカラ座バレエも率いた重鎮で2人とは旧知の間柄だという。
バレエ団の雰囲気についてロブーヒンは「トップが変われば雰囲気は変わりますが今の段階ではバレエ団も監督もお互いに様子を見ている」と分析し、ザハーロワは「若い人は実力を発揮して新しい役に付くことを期待しているので雰囲気は盛り上がっています」と話す。
17年6月には日本公演が予定される(『白鳥の湖』『パリの炎』『ジゼル』)。ザハーロワが「自分のプロジェクトで来る時は全ての責任を負う緊張感がありますが、来日公演では劇場の一ダンサーとして来ます。責任がない訳ではありませんが、バレエ団全体のレベルが高いですから、それに負けないようにレベルを保ちたいという別な緊張感があります」と述べると「全く同意見ですね」とロブーヒンがうなずく。
ボリショイを代表する二人のパートナーシップは今後も挑戦を重ねつつ、さらに進化していくに違いない。
ミハイル・ロブーヒン (C)Takayuki Yoshida
プログラムA 7/23(土)14:00、7/26(火)18:30
プログラムB 7/24(日)14:00、7/27(水)18:30
東京文化会館
問合せ:ジャパン・アーツ 03-5774-3040
http://www.japanarts.co.jp
問合せ:フェスティバルホール センター06-6231-2221
http://www.festivalhall.jp
『ジゼル』『白鳥の湖』『パリの炎』
2017年6月4日(日)〜6月15日(木)
東京文化会館
*公演の最新情報は下記ウェブサイトでご確認ください。
c