JET SET BOYS ツアー『JET SET BOYS』ファイナル公演レポート「帰れる場所ができました」

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JET SET BOYS LIVE TOUR 2016「JET SET BOYS」
2016.7.3 EX THEATER ROPPONGI

「ボスとか親父とか言われておりますが、私はただのドラマーでございます。他の3人に助けていただいてライブができています。ありがとう」

アンコール、ステージにひとり現れた高橋まことは、しみじみと感謝を述べ、メンバーを呼びこんだ。「変態ロック・ギター」という賞賛で友森昭一を、「(リズムの要として)ウネウネとベースを弾きまくってくれた」とtatsuを、「コイツがいなければバンドは始まらない。惚れ込みました」と椎名慶治を。高橋は、その一人ひとりと握手して、ハグして、背中をポンポンと叩く。その光景を見ながら、ああ、バンドっていいな、と、バカみたいに思ったのだった。

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JET SET BOYS。結成のきっかけは、高橋まことが、故郷・福島の復興支援ライブを行うため、椎名慶治に声をかけたことだった。回を重ねるごとにバンドの楽しさを再認識した高橋は、自分が還暦を迎えた頃から、「もう一度、いや、最後のバンドを組んでみたい」と強く思うようになっていったという。その気持ちを真っ先に打ち明けられたのが椎名だ。もちろん、彼は一も二もなく「やりましょう!」と答えた。椎名と活動を共にすることが多く、高橋の20周年ソロ作品にも参加したギターの友森も、即賛同。そこに、3人から音楽的信頼を寄せられたLA-PPISCHのベースtatsuが加わり、JET SET BOYSは誕生した。結成から2年、レコーディングは昨年の12月から始まり、6月には1stアルバム『JET SET BOYS』をリリース。まさにジェットな勢いで、初のツアーにも繰り出した。この7月3日のEX THEATERは、そのファイナルだ。

SEが鳴り、赤いバックライトが光るなか、静かにメンバーが登場。位置に着くや否や、耳を刺す硬いスネアの音で、超アッパーな「ZIPPER DOWN」が始まった。観客は総立ちで「ヘイ!」と拳を天に突き上げる。ロック魂全開のブレない演奏をしながら、tatsuも友森もシャウト。最初からズドンと歌に集中する椎名とのゴツゴツしたハーモニーがカッコいい。ノンストップで、心地いい8ビートの「LEVIATHAN」、細かいキメがクールな「GET SET」。高橋のドラミングはどこまでも太く、男くさい。でも、友森の奏でるテンション・コードはどこかメロウ。tatsuの指が生み出す微妙なウネリはめちゃくちゃ粋。その個性的なミスマッチ感を全部受け入れて、消化して、JET SET BOYSの世界観として吐き出す椎名。面白い。

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「いやー、初めからトバすな、俺。もう怖いもんないわ(笑)」と、MCの第一声は椎名。興奮が極まってることと、歌詞を飛ばしたことのダブル・ミーニングに、みんなクスッとする。ほころびさえも共有して楽もうというような会場の生産的空気が、この日のライブをどんどんいいものに育てていった。

いちばんのヘソと言えたのが、ステージにライトセイバーのような光が立つなか奏でられた「STRAYED」、「IT'S CALLED LOVE」の流れだった。「STRAYED」は友森と椎名が曲を共作した6/8のラブ・バラード。優しさとどうしようもなさが共存する物語が、抑制と激情がないまぜになった音となり、ギュッと胸がしめつけられる。椎名のこんなせつない歌声は初めてだ。バンドでの共作が、いかに新鮮なものを生むかを、目の当たりにした気がした。対照的に「IT'S CALLED LOVE」は、ビートルズ色漂う温かい愛の歌。しかも、このツアーのための新曲だ。「君が笑ってくれたら、他に何もいらない」なんて歌詞が素直に胸に響き、4人がすごく素敵な男たちに思えてくる。これって案外JET SET BOYSの本質なのかもと、独り言した。

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さらなる新曲「WHO AM I?」では、メンバー紹介を兼ねたソロ回し。特にドラム・ソロはたっぷりの尺。それでも叩き足りないのか、高橋は場外(!)にも飛び出し、床を叩き、マイクスタンドを叩き、最後はおでこでマイクをコン。これにはメンバーも会場も大ウケ。「床、点検してませんでした?」という椎名のMCで、さらに爆笑の渦に包まれたのだった。

観客と「練習」したコーラスがサウンドの一部になった「PROMENADE」、フィリー・ソウルとR&Rが一体化したような「BAD COMPANY」、'80年代のエキセントリックなニューウェイヴを彷彿とさせる「PASTA」。どの曲も一筋縄ではいかないが、ポップさもハンパない。やっぱ只者じゃないな、JET SET BOYS。と、またバカみたいに思う。

「アルバム1枚でツアーをやる無謀さには不安しかなかったけど、今は終わるのが寂しい」と椎名。それにうなずきながらtatsuもボソッと、「やるたびにまことさんがパワーアップするのがスゴかった」と言う。高橋は62歳。一番下の椎名とは22歳差だ。40歳を越えたら人間下降カーブになると思っていた椎名は、いくつになっても上昇カーブが描けることに気づかされたという。そんな話を受けて、「上昇というより現状維持で」と照れくさそうな高橋。「こうなったら線香花火のようにパッとね」という友森。キャリアに裏打ちされた男たちの生き様が、そんな冗談めかした言葉にも表れている気がした。

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「帰れる場所ができました。このホームにまた戻ってこれるように、これから個々の活動も応援してください」と、椎名は心からの言葉を届けた。それぞれがまた新たな旅に出ることを思わせる壮大なロック・アンセム「STANDING THERE」。その一つひとつを大切に噛みしめるように奏でるメンバーの、しみじみとした表情が印象的だった。

思えば、順風満々な人生だったとは言い難い。そんな4人だ。登って、降りて、闘って、音楽人生を貫いて、何の因果かまたバンドをやってる。懲りない自分に呆れつつも、きっとこの夜、それぞれがかけがえのない何かを見つけたことだろう。アンコール最後の「SAYONARA」。「大丈夫だぜ お前の人生そんなに悪くないよ」という歌詞が、そんなメンバーへの贈り物のように思えた。同時にそれは、観ている者にとって、泣きたくなるほどの大きな励ましとなった。


レポート・文=藤井美保 撮影=石黒淳二

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