ボカロP・n-buna本人が新作『月を歩いている』全曲を徹底解剖 童話をモチーフにした今作はいかにして生まれたのか
n-buna
ボカロP・n-buna(ナブナ)が2ndアルバム『月を歩いている』をリリースした。ミリオン作品を続々と投稿している新世代のボーカロイドクリエイターが今作で挑戦したのは、童話をモチーフに世界観を統一感した作品をつくること、だ。前作を作り終えてから実感した自分に足りていない要素の追求し、それを体得するストイックさを発揮、考え方によっては作品の幅を狭める制約となりかねないコンセプチュアルな作品作りを自らに課した彼は、結果として前作以上にバラエティ豊かで広がりのあるアルバムを生み出した。歓声直後のインタビューとなった今回は、本人の口から各収録曲についてたっぷりと解説してもらった。
——まずは作り終えての率直な感想からお伺いできればと思います。
クオリティの面で、前のアルバムからさらに進化したものができたなと。前作ではできなかったピアノやアコギ、ストリングスだったりを上手く入れられるようになって、改めて聴き直してもステップアップしたなと思える一枚ですね。あと、ここ一年でギターが上手くなったなと(笑)。
——それは弾き込んだということですか?
普段ギターソロやイントロのリフを録るとき、練習しないでそのまま流れで弾くんですよ。アドリブみたいな形で何回か録音して、その中から繋ぎ合わせてひとつのフレーズ作って流れを決めてから、ちょっと練習して最終テイクを録音するんですよ。
——コラージュして作る感じで。
そうですね。好きだなって思うフレーズを並べたり、いろいろアレンジしたりして。それをこの一年間やってきたので、単純にアドリブやソロの引き出しも増えたんじゃないかなと思います。
——手癖ってもともとあるじゃないですか。そのパターンが増えたっていうことは、他の音楽をいろいろ聴いて自然にそうなったのか、意識的にバリエーションを増やそうとしたのか。
最近は楽曲制作ばっかりで、他のアーティストのコピーをしたりっていうことは全然できてないんですけど、昔聴いていたアルバムを聴き直しながら、“こういうフレーズがあったんだ!”とか、そういう発見はあります。僕はよくブルースを聴いていて、ジョニー・ウィンター 、スティーヴィー・レイ・ヴォーンとかのブルースはギターのリードとしてすごく好きで。そういうブルースでよく使われるブルーノートを入れてリフを作ってみたり。あと、ラリー・カールトンなんかも、今ギターを弾けるようになって改めてコピーしてみたら、ギターソロのお手本になったりしましたね。
——制作に関しては、難航した部分はありました?
一番時間がかかったのは、ボーカロイドの調声なんですよ。曲ごとに制作期間がある中で、合間に時間を見つけて進めてたんですけど、そこに時間かかったなぁと。でも、そこは妥協したくなかったので頑張りました。最近は曲作りで何日も詰まったりすることはなくなってきたので、ゆっくりながらも進んでいく感じではありましたね。
——ボーカロイド自体は今回何を使用されてるんですか?
(初音)ミクとMIKIと、店舗特典の方で鏡音リンとGUMIを使ってます。
——ソフトによっても違いますしね、癖みたいなものは。
そうですね。ロック系が合うものだったり、バラードが合うものだったり、いろいろあります。突き抜ける声質や歌い方をするボーカロイドはロックに合うんですけど、前から初音ミクの中でも、はっきりとした歌い方をしないやつをわざとロック系で使うことによって、フワフワした感じを出すっていうことをやってて。今回もそうした感じですね。
——それによってn-bunaさんの独特のニュアンスが出てきますよね。そして本日は制作者の口から各楽曲の解説をしていただきたいと思っています。
はい、お願いします!
——まず一曲目はインストで「モノローグ」。インストですけどブックレットには歌詞があるんですね。導入部分となるこの曲は、どんな意識で作りましたか。
アルバムの世界観を強調するものを最初に置きたくて。まずはこういうインストゥルメンタルを聴きながら詞を見て、思いを馳せてほしいなと。詞のイメージがあってそこに向けて音楽を作っていくみたいな。
——曲調自体は、懐かしさを覚えるようなピアノで始まって、だんだんと軽やかに弾んでいきます。
最初のピアノは懐メロっぽい、単純ながらも強いというか……キャッチ—であったり切ない感じのメロディにしたくて。それに適してるのはピアノだなって思って。しっとりと始まってバンドインして、そのままアルバムに繋がっていくっていうことをしたかったんです。あと、この曲はファンタジー感やノスタルジックな感じがほしくて、楽器とかも考えながら作りましたね。マスタリングの三日前くらい、最後の段階でES-335を買ってきて、ソロやバッキングのギターを録り直したんですよ。それがハマったので、よかったです。買った甲斐がありました(笑)。
——触り慣れてないくらいの時にいきなり実践導入した感じなんですね(笑)。
そうですね(笑)。ラリー・カールトン好きとしてはES-335はずっと欲しかったですし、この曲でこう使おうっていうのは考えていたので、イメトレは完璧でした。「かぐや」のギターソロでも使ってましたね。
——では、「ルラ」いきましょうか。
これはもう、“n-bunaポップ・ロック”なものを作ろうと思って作り始めたものです。歌詞は自暴自棄な感じのある曲になっていて、そこに跳ねた感じのリズムで哀愁のあるメロディを作ろうと思っていました。これは、最初のピアノリフができてから曲全体を作っていった曲で、このパターンはこの曲だけですね。
——シンデレラのストーリーがモチーフになっているということで。シンデレラって健気に働いて報われない子が報われる話ですけど、この詞には報われない感が。
僕がシンデレラに抱く思いって、Cメロの<待ってるだけで迎えが来るシンデレラが羨ましいくらい>っていうところに尽きるので。報われなくてもいいかなと思って、自棄な感じの詞を作りたいなと。意味のない言葉も並べてみようと思ったので、メロに良い感じに当てはまるならどんな言葉でもいいやっていうところもあり。口触り優先で言葉を並べました。
——なるほど。では、「三月と狼少年」はいかがでしょうか。
この曲はドラムとベースをプロの人に弾いてもらったので、生っぽさとバンドサウンド感が良い感じにハマったと思います。あと、アコギは最初入ってなかったんですけど、アコギを両サイドに入れてみたら良い感じにポップさが出たなぁと。
——詞の面はどうですか?
ひねくれた感じの歌詞を書こうと思ったんですけど、僕はBメロがお気に入りで。最初Bメロを作ったときに、歌詞も歌いながらパッと出てきて、良い感じにハマったんですよ。二番も同じような文面でBメロを作っていきましたね。
——<ペンが世界を救うもんか><愛で世界が変わるもんか>っていうところとか、厭世的なことを言ってますね。
<ラブソングじゃなけりゃ売れるもんか>っていう歌詞を書いたので、それを書いたからこそ他の収録曲にラブソングっぽいものをわざと入れてみたり。こうやって言っておくことで、ラブソングが映えるかなと思ったんですよ。次の曲の「歌う睡蓮」とか。
——「歌う睡蓮」もギターロックサウンドですが、曲のテンポに対して非常におおらかな附割りといいますか。言葉のノリ方が。「ルラ」に比べると、だいぶ言葉数が少ないですし。
この曲はサビからできたんですけど、“詞先”で作ってて。順番としては、一番の詞ができてから、この歌詞にサビを付けるならどうする?という感じでサビを書いて、上手くハマってから全体を作っていった感じです。僕には珍しく“詞先”でした。その詞を書いた段階で、AメロBメロサビのあと、そのままCメロにいって、ギターソロにいって最後はサビっていう、あまりやってこなかったことをやろうと思ったんです。
——それ故に、良い感じの余白ができたのかもしれないですね。
そうですね、余白とかも上手く使えたと思います。
——この曲は人魚姫ということで。
人魚姫やギリシャ神話のセイレーンをイメージした曲なんですけど、歌に魅入られる感じの話なので、その感じを出したくて作りました。
「花降らし」
——次の「花降らし」はすでに公開されていますね。
このタイトルは結構お気に入りなんですよね。桜の花が降っている情景が曲を作った段階で浮かんで……花が降っていて、桜の木の下や道で踊っている人の映像が頭の中にあったんです。それを元に曲を書きました。サウンド的には、アコギをいれたり、浮遊感をだしたくてコードもそれに合ったものをイントロとかAメロのバッキングに使ったりして。ふんわりとした曲調を出したかったんですよ。
——ふんわりとした曲調とメロに、<はらはらはら>といった擬音歌詞がハマっています。作品の中では早い段階でできた曲?
そうですね。ミドルテンポなものを作ろうと思って、ストリングスを入れることを考えてたんですけど、わりと早い段階でできましたね。
——そこからインストの「落花」へ。この打ち込み感って今まで中々なかったですよね。
この曲だけ違うドラムソフト使ってて。他と違う感じが良いアクセントになってるなと思ったんです。ここも浮遊感が欲しかったので、アルペジオから始めてますし、「花降らし」から綺麗に繋がるものをイメージして作りました。
——アコギの音はあたたかみを感じられますけど、リズム自体はわりと冷徹で細かく刻んでいて良いアクセント。そこから繋がる「泣いた振りをした」はアコースティックでフォーキーなニュアンスがある曲になってて。
アコギとピアノを使った曲を作ろうと思ってたんですよ。まずサウンドが頭の中にあって、そこに当てはまるように作っていきましたね。まず“この楽器を使いたい!”と思って、そこから実際にやってみて良い感じにはまったなという感じです。
——アコギとピアノで曲を作ったらこんな感じになるんだろうなっていうイメージはありました?
ありましたね。考えとしてはエレキでバッキングを入れてる時と同じというか、それがそのままアコギの音に変わるだけだなと思っていたら、実際にそうだったので。アコギって音がクリアじゃないですか。だからこそコードのひとつひとつの音がハッキリするし、コード感が増すから、こういうポップ感のある曲にぴったりはまったなと。それに純粋にピアノが聴こえやすいんですよね。「ルラ」とか象徴的ですけど、エレキの音があるバンドサウンドの中だとピアノが埋もれて聴こえて。この曲はアコギとかドラムの空いた隙間からピアノがガンガン聴こえてくるから、そのあたりで相性の良さを感じましたね。
——エレキが主役の曲と、アコギの曲——もっと言えばピアノジャズとかになると、ピアノが果たす役割って変わってきますよね。この曲はモチーフはないんですかね?
オリジナルです。童話作家が主役の曲を作ろうと思って。童話がモチーフとなっている世界観の中で、これは童話を書く人の物語で、これが最後のボーナストラックの「カエルのはなし」に繋がっていくんですけど。イメージとしては、この童話作家が描いた絵本が「カエルのはなし」です。
——もっと言ってしまえばn-bunaさん自身?
結構投影されてるかもしれないですね。順番としてはこの童話作家の曲を作ろうと思ったところから、童話作家が作った絵本の曲も作ろう、そこから特典の絵本を作るか!ってなったんです。
「白ゆき」
——非常に腑に落ちました。次の「白ゆき」は先に公開されてますけど、「花降らし」とはまた違ったエモい感じのギターロックというか、テンポの速めな曲になってますが。
ザ・エモい感じの曲を作ろうと思って。この曲はサビで転調するんですけど、そういう構成も先に考えてて。Aメロ、Bメロ、イントロとか全部オンコードで構成されてるんですけど、サビでバンとポップに。サビを強調するするために転調させて。
——展開としては少しトリッキーな感じではありますけど、メロの起伏にもなりますし、“ボーカロイド楽曲だな”っていう感じですよね。
そうですね。これは好きにやろうと思って作った曲ではあります。
——歌詞に関しては……ダークというか。
服毒自殺する話で、毒を飲もうとするんですけどその人の顔がちらついて、死ねなかった、生かされてしまった……という。だから歌詞はダークな方だと思いますね。僕の根暗な部分が出てます(笑)。
——白雪姫が根底にあって、毒っていうワードはもちろんそこに絡んでくるわけですけど。
これは主人公が白雪姫っていうわけじゃくて、“河川のベンチで眠ってた黒い髪の人”が白雪姫なんですよ。魔性の美しさがあるから生かされてしまった、死ねなかった人っていうコンセプトなんですよ。「白ゆき」っていうタイトルは歌詞の人物じゃないんです。
白ゆき
——原作を分解して、エッセンスを抜き出す作業があったんですね。そして「ラプンツェル」はピアノバラード。
これは原作に目の潰れた王子が何年間も王女を探すっていう展開があるんですけど、最終的に王女様を見つけて、王女様の涙で目が治るっていう。その展開にすごくエモーショナルパワーを感じて、そのパワーからこの曲が作り出されました(笑)。王子様は盲目になるんですけど、この曲では実際に目がつぶれたわけじゃなくて、精神的な盲目<恋は盲目うんたら>っていうことを表現しました。
——目が見えなくても探しまくるっていうところにエモさを感じるn-bunaさんも、何かをストイックに追い求めるっていう部分はあるんですか?
サウンド的には追い求めますね。サウンドだったり、クオリティは追い求めます(笑)。
——そしてインストが2曲続きますが「落陽」は「落花」と対になりつつも、「白ゆきの独白」につないでいくような役目なんですかね。
これはもともと「落陽」と「白ゆきの独白」含めて一つのインストで、それを分割したんですよ。夕暮れの中に人が立っているっていう情景をまず思い浮かべて。そこから前半後半に分けてそれぞれのタイトルをつけた感じですね。
——「白ゆきの独白」には、また詞があって。「モノローグ」と同様に。
この詞は童話作家の気持ちを書いた詞ですね。
——7曲目の「泣いた振りをした」と同じ人なんですか?
そうですね。なので、タイトルから分かるように、この人=「白ゆき」の人で、「泣いたふりをした人」=「白ゆき」で出てきた人です。河川のベンチで寝てた人が童話作家の人で、その人がぽつりぽつり語っている感じのイメージで書きました。楽曲ごとにちょっとずつ繋がりがあるんですけど、その辺りは意識しないと分からないので、分かってもらえなくて大丈夫なんですけど……(笑)。
——裏テーマ的な。
細かい繋がりがあった方が、僕も世界観を作ってて楽しいですし、同じ世界の出来事って思えるので、そういう風に作ってますね。
——そして、「セロ弾き群青」。
最初ギターでバーっと作ってたら、リフまでギターで作っちゃって「あれ?チェロは?」ってなっちゃった曲です(笑)。セロ弾きの曲を作る中で、部屋で一度はセロを止めた人が一人でセロを弾いている絵が情景として浮かんで。それを元に作っていったので、その人が弾いている曲をそのままサビに持ってきた感じです。なので、サビが結構大事で、1番2番3番とサビの歌詞がずっと変わらないんですよ。同じ歌詞を繰り返すからこその強調というか、一貫したものを作ろうと思いました。
——生々しいことというか、現実感のあることを歌ってるだけに、サビでこの景色が差し込まれてくるのが流れとしてすごくキレイだなと思います。
この曲は詞が上手く書けたなって思います。Cメロも特に好きで、わりと僕は楽曲の中にその時々の感情だったり思想を入れることが多々あるんですけど、それにあたるのがCメロの<前を向かず歩かず止まってることがいけませんか>なんです。昔作った「ウミユリ海底譚」あたりは、楽曲の世界観と関係ない言葉が急に出てくるんですよね。<僕の歌を笑わないで>とか、僕の言いたいことが急に出てくるような自由な歌詞なんですけど、この曲は僕の言いたいことを曲の世界観を崩さずに入れれたなって。この曲はダメな人間の曲で、僕もダメな人間なので(笑)、だからこそいい感じに差し込めたのかもしれないです。やっぱり楽曲を作る理由の一つとして、誰かに認められたいっていう思いもありますし、自分の感情や思想を知ってほしい・外に出したいっていう気持ちがあるんです。だからこそ、自分から切り離した作品をあまり作れないんだと思うし、自分らしい作品を作ることができるんだとも思います。
——それが昔は唐突に言いたいことが入ってきてたけど、今は上手いこと落とし込めていると。
結構ごまかせるというか、これは自分じゃないですよっていう顔をしながら歌詞を書けるようになりました(笑)。
——チェロの曲を書きたいと最初に思ったって言ってましたけど、「セロ弾きのゴーシュ」が頭に中にあったんですか?
そうですね。宮沢賢治が大好きなので。
——なるほど。「ヘンゼルとグレーテル」の曲「それでもいいよ」に続きますが、これはまたハードで。
アルバムの最後の方にアップテンポのものを入れたくて。アルバムの世界観が暗めで人生に悩んでいる中で、前を向いたものを作りたかったので、そこを意識して歌詞を書いたりメロディを作ったりしてました。世界への反骨精神みたいな、暗い世界に対して、逆らってやるぞ感を出せたらなと思って。納得できないことに対しての気持ちをCメロの<人生に間違いがなかったら諦めなんて歌わねえよ>に詰め込んだりしました。
——「ヘンゼルとグレーテル」ってお菓子の家の話ですよね?
そう、魔女のおばあさんから逃げて。
——お菓子の、一見居心地の良さそうな家だけど、実はそうじゃなくて、そこから逃げだしてやるんだという。
良い感じに例えてもらってありがとうございます。このアルバム自体がいろいろ詰まった理想の世界と、寂しい雰囲気の月の世界をイメージしてて。「かぐや」は月にいる人の話ですけど、他はこのアルバムの世界で。醜かったり、住みにくかったり、そういう世界から逃げ出したいなっていう感情は誰にでもあるじゃないですか。ヘンゼルとグレーテルって魔女の家から逃げ出す話ですけど、そういうところでシンパシーを感じたというか(笑)。それをこの曲の世界観にあてはめて、今いるところから逃げ出したいっていう気持ちを発信できたらなと思って書きました。
——その「かぐや」は、違う世界にある曲ということですが。
(タイトルは)この曲から取りました。この曲だけ別の世界にいるイメージで、月の世界を一人寂しく歩いている話なんです。最後に<月の上の夢を見終えたら>ってあるように夢見心地の世界で……あとは精神的に子供な感じの歌詞ですね。<大人になったら僕はどこへ行こう>とか言ってますし、わりと現実逃避にも近い。現実の世界の醜さを見ないように、理想だけを目指している話になってます。そこからアルバムタイトルも取りましたね。
——サウンドとしてはどうでしょう。
アルバム自体をアコースティックに締めようと思ってて。あと、途中からストリングスのピッチカートが入って、二番のサビから本格的にピチカートが入るんですけど、いつもギターで刻んでやってるものを、そのままストリングスに置き換えてやったんですけど、結構忙しいんですよね。そういう現実的にはあまりできないだろうなっていう使い方は、こういうDTMだからこそできるものだし、敢えて人間っぽい使い方をしなかったんですよ。DTMだからできることを追求したいこともありました。
——なるほど。そして最後に「エピローグ」が。
「モノローグ」がピアノで始まったんで、ピアノで終わろうと思って。ピアノのインストを何曲か入れたかったですし、4つのピアノインストがこのアルバムを支える中でこの曲は最後になるので、切なく不思議な感じで。
——余韻があとを引くような感じもありますし。
映画の終わりみたいなイメージで作りましたね。最後が「エピローグ」だから、“最初はプロローグじゃないんかい!”ってなると思うんですけど、最初に詞があって、その詞が独白っていうイメージがあったし、「白ゆきの独白」から取っているものでもあるので、最初は「モノローグ」にしようと思いました。
「カエルのはなし」
——「カエルのはなし」は、初回版のみに収録ですが、これはn-bunaさんが考えたお話なんですよね。
そうです。普遍的な話を作ろうと思って。コンプレックスを抱えたカエルがそれを解消する旅に出て、コンプレックスを克服するっていう流れの曲ですね。
——なんでカエルだったんですか。
なんでカエルなんだろう……(地元の)岐阜でカエルをたくさん見たからですかね?(笑)
——特に好きなわけではない?
普通です(笑)。でも、一発目にカエルが出てきました。擬人化しやすいっていうのもあると思います。わりと絵本でもカエルが擬人化してますし。
——曲自体は音楽の教科書に載っててもおかしくないような、まるで児童唱歌。からの跳ねるピアノでメルヘンな感じで楽しいものになってます。
童話作家の雰囲気を踏襲しつつ、メルヘンにしました。耳に優しい曲を作ろうと思ってたので、エレキでジャーンっていうバッキングは絶対禁止だ!と思ってました(笑)。
——という16曲。全体的に歌われている内容としては閉塞感や重ためなものもありますけど、サウンドの面ではキレイなものだったり、持ち味のロック要素も良いバランスで入っているアルバムでした。
ピアノが好きっていうのもあるんですけど、キレイなサウンドやコード進行がもともと好きで。そういう要素をずっと使いたかったので、今回それがそのまま出せてよかったなって思います。久石譲さんとかも好きでサントラを持ってたりするんですけど、そこから学んだ部分もありますね。
——それこそ物語に沿った音楽を作るエキスパートでもありますし。
天才ですよね。
——ああいった活動もやってみたいですか?
劇伴とかやってみたいです。その場面にあった音や曲をいつか作ってみたいですね。そういうこともできるようにたくさん勉強します!
——最後に。8月には初ライブもありますが、場所や歌う人に関しては当日まで分からないんですよね。
そうですね。セットリストは大体決まりまして、今度リハーサルをやる予定です。なんとなくのバンドメンバーも決まりましたし。ただ、今日の朝もギターを立って弾く練習をしてたんですけど、久しぶりすぎて本番で弾けるかなっていう不安はあります(笑)。
——ボカロ曲の完全再現は難しいじゃないですか。だからこそ、そこをどう上手くバンドアレンジにするかっていう構成も醍醐味ですしね。どうですか、ライブは楽しみですか?
楽しみです! 上手くできるか分からないので心配要素はありますけど、やってみて初めて見える景色もあると思うので。頑張ります!
インタビュー・文=風間大洋
2016年7月6日発売
『月を歩いている』
OPEN 17:30 / START 18:00
※AL「月を歩いている」購入者対象の応募抽選による招待制ライブとなります。
OPEN 11:00 / CLOSE 20:00