湘南のビーチに武藤昭平 with ウエノコウジ、the LOW-ATUSら“4組のペア”が集い、とことん飲んで歌った夏の日

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武藤昭平 with ウエノコウジ 撮影=風間大洋

武藤昭平 with ウエノコウジ 撮影=風間大洋

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MARIACHI BROS AT THE BEACH 2016~2×2×2×2~ 2016.8.8 OTODAMA SEA STUDIO

夏真っ盛りの8月8日(月)、懸念された台風もコースが逸れ(なかなか風は強かったものの)晴天に恵まれた日。鎌倉・由比ヶ浜に夏期限定で登場するライブハウス・OTODAMA SEA STUDIOにて行われたのは『MARIACHI BROS AT THE BEACH 2016~2×2×2×2~』だ。

武藤昭平 with ウエノコウジが主催し5回目を数える同イベントは、夏のビーチサイドにゲストを迎えて繰り広げられる、アコースティックセットを中心としたゆるめのライブにくわえトーク、お酒、海水浴まで楽しめるという、特にちょっと大人なロックリスナーには堪らない内容で、多くのリスナーに愛されている。そして今年の開催は“~2×2×2×2~”と銘打った通りに2人組のペアが4組登場したのだが、あくまで2×4ではなく2の4乗!といったサブタイトルに相応しい相乗効果とお得感で、とびきり楽しい夏の思い出を作り出してくれた。

ATSUSHI & Tabuzombie

ATSUSHI & Tabuzombie 撮影=風間大洋

ATSUSHI & Tabuzombie 撮影=風間大洋

ビーチとの出入り自由なこのイベントだが、いきなりほぼ満員状態となった会場に最初に登場したのはATSUSHI & Tabuzombie。Dragon Ashのダンサー・ATSUSHIとSOIL&"PIMP"SESSIONSのトランペッター・Tabuzombieによる2人組だ。多少のシーケンスとループエフェクトを使用した以外はほぼトランペット1本のサウンドにあわせてダンスをするというかなりアヴァンギャルドなステージ。おまけに歌も無いので、2人の一挙手一投足に注がれる視線と、息づかいまでも感じられるような肉体性を帯びたパフォーマンスだけがひたすら交差していく。

ATSUSHI & Tabuzombie 撮影=風間大洋

ATSUSHI & Tabuzombie 撮影=風間大洋

身にまとった衣を新体操のリボンのように翻したり身体に巻きつけたりしながら踊るATSUSHIのダンスは、Dragon Ashで見るよりも一層前衛的でありながらどこか原始の儀式を観ているようなプリミティヴな印象があり、さらにはある種エロティックでもある。Tabuzombieによるトランペットもメロディやリフを吹くというよりは断片的なフレーズとアドリヴを駆使してダンスのメリハリを際立たせている印象だ。そんな両者の緊張感あるせめぎ合いがメインの見どころであったのは間違いないが、登場するやいきなり小さい鏡とシェーバーを取り出してヒゲを剃り出したり、終演後に携帯を持ち出して無言で自撮りしたりと予測不能な振る舞いをみせたTabuzombieの掴み所のなさも、大いに客席を盛り上げていた。無事トップバッターを務め上げて歓声に送られながらステージをあとにしたこの2人、ちなみにこのあとも大活躍することとなる。

ATSUSHI & Tabuzombie 撮影=風間大洋

ATSUSHI & Tabuzombie 撮影=風間大洋


ホリエアツシ&日向秀和

ホリエアツシ&日向秀和 撮影=風間大洋

ホリエアツシ&日向秀和 撮影=風間大洋

2組めのペアはホリエアツシ&日向秀和。いわずと知れたストレイテナーのフロントマンとベーシストである。ホリエはよく弾き語りスタイルでイベントやフェスに出没しており、この手のイベントとの親和性の高さは折り紙付きといったところだが、この日は日向も一緒ということでサウンド面でもトークの面でもよりキレと厚みが増していた。「彩雲」からスタートしたライブは、一曲ごとにMCを挟みながらゆるやかに進行していき、途中ではTabuzombieが(焼肉を食べながら)登場して「From Noon Till Dawn」をセッションする一幕も。原曲でもフィーチャリングしたTabuzombieとの豪華共演で、少しテンポを緩めた同曲を夕刻に向かうビーチに届けたあと、最新シングル「シーグラス」へ。<今年最後の海>にはまだ早いかもしれないが、午後の海辺で聴くこの曲はとにかく最高。どこか切なげにノスタルジーを掻き立てながらも爽やかなメロディが、灼熱のテント内に涼やかな風を運んでくれた気がした。

ホリエアツシ&日向秀和 / Tabuzombie 撮影=風間大洋

ホリエアツシ&日向秀和 / Tabuzombie 撮影=風間大洋

その後もホリエが即興のラップ(?)を披露したり、怖い話風に普通の話をするホリエに日向が乗っかったりというツッコミ不在のトークを交えつつ、ホリエのソロ名義・entの楽曲「Water Screen」に日向がテクニカルなベースラインを乗せたりと、レアでプレミア感のあるシーンも観ることができた。何よりステージ上でも舞台裏でもそうなのだが、この2人は終始良い感じに肩の力が抜けて楽しそう。で、笑顔。こういった客席との距離感が近いライブで普段以上にその魅力が引き出されていたのは間違いない。ラストはSUPER BUTTER DOGの不朽の名曲「サヨナラCOLOR」をカバーして締め。笑いと心地よさで包みながら2人編成とは思えない厚みのある演奏をしっかり聴かせてくれる、さすがのステージだった。

ホリエアツシ&日向秀和 撮影=風間大洋

ホリエアツシ&日向秀和 撮影=風間大洋


the LOW-ATUS

the LOW-ATUS 撮影=風間大洋

the LOW-ATUS 撮影=風間大洋

3組め。ステージ転換のインターバルもそこそこにTabuzombieを従えてステージ上に現れたのは、上裸に海パン、そしていつもの前掛け、という出で立ちのTOSHI-LOWと細美武士――the LOW-ATUSの2人だ。Tabuzombieの演奏(直前に舞台裏で「ムーディーな曲吹いて」とオファーしてました)をバックに、ATSUSHIのダンスを模したポーズを披露したかと思えば、いつの間にか筋肉を誇示するポーズに切り替わり、場内は大爆笑に。そこから「演奏を聴きに来た人、ゴメン」と断りを入れて、いきなり怒涛のMCタイムに突入した。実はこの日のレポートを書くにあたって最大の問題がこの人たち。なにしろ持ち時間の大半がトークな上、書けること2割、ギリ書けないこと3割、絶対書けないこと5割くらいの配分でガンガン攻めるのだ。何気ない雑談がいつの間にか他バンド弄りになったり(武藤やウエノもしっかり餌食に)、かと思えば「(最近の)ロックバンド、大丈夫か?」という熱い想いをぶつけたり、さらには社会的なメッセージをも厭わない。でもシリアスな話をしていた次の瞬間にはまた笑いに包まれている、そんな1時間弱。

the LOW-ATUS 撮影=風間大洋

the LOW-ATUS 撮影=風間大洋

……ごめんなさい。本当は全部文字に起こしたいくらい最高なトーク内容だったのだけれど、このレポが異常に長くなってしまう上、僕にはその勇気がありません。気になった方はthe LOW-ATUSとして出演するフェスやイベントに、ぜひ一度足を運んでみてほしい。極上のカオスとガツンと胸を打つメッセージを目一杯浴びられるので。演奏に話を向けると、「4時間で4曲しかやらなかったことがある」との発言もありどうなることかと思ったが、この日は5曲を披露してくれた2人。「Redemption Song」や「Have You Ever Seen the Rain?」といった洋楽から、和製ブルースともいうべき「酒と泪と男と女」まで、全編カバー曲を並べ、TOSHI-LOWの迫力ある歌声と細美の伸びやかなハイトーンという、格別なハーモニーを聴かせてくれた。トリ前のOTODAMA SEA STUDIO。お酒を飲みながらの際どすぎるトークと突然差し込まれる名曲カバーに、the LOW-ATUSの真髄と矜持を見た。

the LOW-ATUS 撮影=風間大洋

the LOW-ATUS 撮影=風間大洋


武藤昭平 with ウエノコウジ

武藤昭平 with ウエノコウジ 撮影=風間大洋

武藤昭平 with ウエノコウジ 撮影=風間大洋

ラストを飾るのはもちろん、この極上のひとときを作り出した『MARIACHI BROS AT THE BEACH 2016~2×2×2×2~』を主催する武藤昭平 with ウエノコウジだ。冒頭、この日大活躍のTabuzombieも交えた「君といつまでも」を投下。湘南といえばの若大将・加山雄三の名曲だ。このまさかの選曲には大きな歓声が起こり、あまりにも有名な「幸せだなァ」のセリフをウエノが口にすると、歓喜の渦が巻き起こる。いろいろ濃いステージが続いたあとのトリだが、さすがは歴戦の2人。掴みはバッチリだ。次にthe LOW-ATUSもカバーしていたボブ・マーリーの「Redemption Song」をカバーすると、the LOW-ATUSの2人がステージに乱入し、いきなりの4人でのコラボレーションに会場は一層熱を上げる。武藤の即興のセリフ披露が楽しい「レッツ・ブーズ・イット」や、しっとり聴かせるブルージーな「スウィート・タウン」と続ける頃には、いつしか由比ヶ浜の浜辺は陽が落ちており、オーディエンスは少し涼しくなったフロアでグラス(正確にはペットボトルやプラカップ)片手に、大人のロックを響かせる2人の調べを聴きながら思い思いに体を揺らすという、格別の空間が出来上がっていった。ビターでかすれた武藤の歌声と円熟の歌い回し、ウエノのかき鳴らすアコースティックベースの温かみのある低音が疲れた体に染みる。

武藤昭平 撮影=風間大洋

武藤昭平 撮影=風間大洋

後半の「ワルチング・マチルダ」「老いぼれパンクス」に向かうあたりではATSUSHIやTOSHI-LOWらが次々にステージ後方に顔を出すなど、ライブはどんどん収拾がつかなくなっていったのだが、そんな風にステージ上、フロア、ステージ裏までも巻き込んで、どんどん楽しさが伝播する、誰もがノリノリで楽しんでしまう自由な空間こそが『MARIACHI BROS AT THE BEACH』の、そして武藤昭平 with ウエノコウジのライブの真骨頂。本編ラストの「アミーガ・アミーゴ」では無数のカップとペットボトルが頭上で揺れ、アンコールでは「グッドナイト・アイリーン」が終わりゆく1日を惜しむかのように哀愁たっぷりに響いた。曲自体はかなり渋目でこってりしたブルースやロックンロールのはずなのだが、場の空気や二人のキャラクターも相まってどこか軽やかに聴けてしまう、そして誰もが笑顔になるステージ。真夏のビーチを舞台に5時間にも及んだライブは、武藤昭平 with ウエノコウジの手によってとびきり和やかに幕を下ろした。

ウエノコウジ 撮影=風間大洋

ウエノコウジ 撮影=風間大洋

すごく主観的な話で恐縮なのだけど、ロックはビール片手に聴くのが一番だと思っている。ビールが一番美味しいのは夏だとも思っている。そして一番夏を感じられるのは、そう、ビーチだ。ロック×ビール×ビーチという無敵の組み合わせが実現し、しかも普段はステージ上でバキバキに決めるロックスターたちが数段テンションを緩めたライブを繰り広げる最高のイベント。それが『MARIACHI BROS AT THE BEACH』だった。武藤は最後「みんなまた会いましょう~♪」と歌った。言われるまでもなく、筆者も、あの場に居合わせた誰しもがまた行きたくなったに違いない、そんな1日だった。

まだ知らない人はもったいない。音楽ファンにとっての夏の風物詩はフェスだけじゃないぞ。


取材・文・撮影=風間大洋

武藤昭平 with ウエノコウジ 撮影=風間大洋

武藤昭平 with ウエノコウジ 撮影=風間大洋

ライブ情報
~武蔵野Jamboree~

2016年10月13日(木)
吉祥寺ROCK JOINT GB
 
出演:藤井一彦 / 武藤昭平withウエノコウジ
OPEN:19:00 / START:19:30
前売\3,500 / 当日\4,000(+ドリンク代\600)

チケット:9/3(土)より吉祥寺ROCK JOINT GB店頭、e+、にて販売開始。
吉祥寺ROCK JOINT GBホームページにてチケット予約受付。

 

中津川 THE SOLAR BUDOKAN 2016
(the LOW-ATUS、ストレイテナー、Dragon Ash、the HIATUS、TOSHI-LOW、Tabuzombie、武藤昭平、ウエノコウジが出演)

開催日時
Day1: 2016年 9月10日(土)
Day2: 2016年 9月11日(日)
※ 雨天決行(荒天の場合は中止)
 
開催場所:
岐阜県中津川市 中津川公園内 特設ステージ
(岐阜県中津川市茄子川1683-797)

各プレイガイドでチケットが販売中!

 

 

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