成河にインタビュー!「天魔王ってものすごく可能性のある役。想像を掻き立てられる」劇団☆新感線『髑髏城の七人』《花》

インタビュー
舞台
2016.9.28
成河

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2017年春に豊洲にオープンする新劇場「IHIステージアラウンド東京」のこけら落とし公演となる、「ONWARD presents 劇団☆新感線『髑髏城の七人』Season花 Produced by TBS」
 
『髑髏城の七人』は1990年から7年ごとに上演されてきた劇団☆新感線の代表作。今回この劇場にて2017年から「ドクロイヤー」となる2018年までを“花・鳥・風・月”の4シーズンに分けて、シーズンごとにすべて異なるキャスト、脚本・演出も練り直されて、全く違ったアプローチの『髑髏城の七人』として上演されていく。

本作のSeason花で天魔王を演じるのは成河(そんは)。現在全国ツアー中のミュージカル『エリザベート』で、暗殺者ルキーニを演じ話題となっている演劇界屈指の実力派だ。成河がこの舞台にかける想いとは……?


――製作発表のときに話が出ましたが、演出のいのうえひでのりさんとは古田新太さんを介してお知り合いになったそうですね。

野田秀樹さんのお芝居(NODA MAP『ザ・キャラクター』)で、古田さんと初めて共演させていただいて……涙が出るほど嬉しい事なんですが、古田さんが僕の事をかわいがってくださって、「いのうえさんを紹介するから」って、一緒に食事に連れていっていただいたんです。

――もともと劇団☆新感線も最初はつかこうへいさんの作品を多数上演し、そこを経て今の形になった劇団。成河さんも「北区つかこうへい劇団」でつかさんのDNAを受け継いだ一人。なにか共鳴するところがありそうですね。

古田さんやいのうえさんとはちょこちょこお逢いするんですが、劇団員の方々と関わっていくのはこれからですね。「俗っぽいところ」…これはつかさんの作品について僕が好きなところなんですが、やたら高尚にならず、猥雑な俗っぽさを劇団☆新感線の舞台にも感じます。決して過剰な毒がある訳ではないんですけど、そういうものを本気で、全員で楽しんでいる姿に憧れていましたね。

――ちなみに「My First新感線」はどの作品ですか?

15年くらい前、大学の頃からビデオではよく観ていました。初めて劇場で観たのは、2010年の『鋼鉄番長』です。橋本じゅんさんで拝見しました。それからは、頻繁に観てます。

――過去の『髑髏城の七人』はご覧になっていますか?

もちろん。2011年の森山未來くんたちが出たときの『髑髏城の七人』(通称『ワカドクロ』)も観ています。

――今回オファーを受けたときは「天魔王役で」というお話だったそうですが、そのときのストレートな感想を。

ストレートに、ですかぁ? ……とりあえず「また森山未來がやった役かー!?」って思いました(笑)。
※ミュージカル『100万回生きたねこ』2013年の公演では森山が、2015年の公演では成河が「ねこ役」を演じている。

未來くんとは一緒にやりたいんだけど、なんでいつも交代なのかなって。縁があるんですかね。よく話すんですよ。一緒にやりたいのになぜか分けられちゃうよねーって。

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――捨之介と天魔王はもともと一人二役で演じられてきたキャラクター。『ワカドクロ』になって初めて捨之介と天魔王を異なる役者が演じる作品となりました。つまり、天魔王のキャラクターはまだそれほど深堀りされてないように思うんです。

まさしくそのとおり! ……元々は罰ゲーム的に生まれた役だって聞いたことがありますが (笑)。
※自分の出番を忘れた古田にいのうえらが怒り、休んでいる暇がないような役をさせてやろう……という発想で一人二役の設定が生まれたとか……。

中島(かずき)さんといのうえさんの間の雑談レベルだそうですが、当初、一人の人間が捨之介と天魔王の二役を演じてきたが、それぞれのセリフや役の掘り下げに関しては物理的に限界があった。でも二人の役者にそれぞれ役を分けたんだから、余裕ができたし、まだ書き足せる「余白」があるはず……って。

今回花・鳥・風・月の4チームでやるんですが、その中で各キャラクターの人物像がだいぶ書き足されていくのではないか、という話です。

捨之介も蘭兵衛も天魔王も、役者が役を掘りこんでいく以前に脚本段階でたっぷり書き込まれる可能性がある。配役も決まっているから、もしかしたら「こいつがこの役をやるのならこうかな?」というアテ書きも入ってくるかもしれないし、逆にそういった書き足しを全部とっぱらって「余白があるままでいきましょう」という判断になるかもしれない。いずれにしても天魔王ってものすごい可能性のある役。魅力的だし、想像を掻き立てられますね。

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――今の段階で、天魔王の人物像をどのようにとらえていらっしゃいますか?

そういうことは稽古に入る前になるべく考えないようにしています。それが僕の考え方なんです。稽古前にいろいろ考えていって失敗したことがあるんです。自分が演じる人物について「ああかもしれない」「こうかもしれない」と遊び半分で想像しているならいいのですが、自分が夢中になるような人物像を作っちゃうと稽古でそれがすごく邪魔になるんです。

今、中島さんが脚本を書いてくださっているところ。御館さまの存在をめぐって蘭兵衛と捨之介が袂を分かち、思想も分かれていく……その事実と関係性だけが重要なので、人物そのもののバックボーンは脚本が出来上がってから考えた方がいいのではと思っています。

――稽古に入るまではまっさらな自分でいたい……と?

ただそれも難しいんですよー! そう心がけた方がいいと思ってますけど、何も考えず素手で行くのってめちゃくちゃ怖いんです。でも、素手で行って稽古場で恥をかいて。恥をかけなくなるのがいちばん怖いと思っていますから。稽古場で自分が考えて作ったものをドーンと見せちゃうと、その場はなんとなく恰好はつくけど、稽古が続くうちに共演者と一緒にやっている感がなくなるんですよ。だから、怖いけど、素手で!

最初のうちは、「天魔王に全然見えないから何とかしてよ!」と言われるくらい素手でいくかな(笑) 。

――最初、キャストだけが決まったときに、成河さんがどの役をやるのか、とファンの間で話題となっていました。「天魔王か……? いや蘭兵衛か……?」個人的には、まさかの贋鉄斎?とも思ったんですけど(笑) 。

僕で贋鉄斎はないでしょー(笑) 。贋鉄斎って『ハムレット』でいったら「墓堀り」のような、成熟した役者さんで、その舞台の屋台骨としてどんと構えてくださる方がやる役かなって。だから古田さんはしっくりくるんですけど、僕がやる役じゃないかな。

――贋鉄斎は捨之介の大立ち回りにも絡んでくるので、身体能力の高い人じゃないとキツイだろうなあって思ったんです。存在のズッシリ感も欲しいんですが、動ける人であってほしい。古田さんは天魔王にもなれるから、そうなると成河さんは何の役をやるのかな、と思ってまして。

どれでもやりたいですよ!(笑) 兵庫も蘭兵衛も捨之介もやりたいと思いますね。蘭兵衛に至っては、前回、早乙女太一くんにあんなすばらしい殺陣を見せられたらねえ……憧れましたね。​

――成河さんが演じる天魔王は最強の男ですから! 近々、殺陣やアクションの稽古が始まるんでしょうね。

楽しみですね、早くやりたいですよ! 醍醐味中の醍醐味ですしね。むしろどういう風に稽古をしていくのかの方が心配です。本番が360°のステージでしょ。普通の稽古場では組めっこないような長さのステージエリアが必要になるだろうし。本番の劇場もそうですが、稽古場でも誰も何もわからない状態で小屋入りするんでしょうね。それを楽しんでやっていくのが新感線なんですよね!

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――前に、何かのインタビューで……古田さんは最初の読み合わせでわざととんでもない解釈で本を読む、と聞いたんです。ものすごく遠いところから入ってくるとか。

古田さんならそれはむしろマジメな話ですね。正解から探しにいかない、って古田さんもよくおっしゃってますし。ああ、そういえば明石家さんまさんもおっしゃっていた! 「正解ほどつまらないものはない」って。「正解は正解」ですから。まさか不正解だろう、と思っていたものが正解だったりするのが最高に楽しい訳で! そんなのアリ?ってところから「アリ」を探すのって最高。「これが正解ですね」って思うところから始めることほどつまらないものはないですから。

やっぱり舞台は稽古があってナンボ。映像のお仕事だと「明日、このシーンを全部撮ります」って言われたら、ある程度正解を作っていかなければならないと思いますが、舞台の稽古はいかにたくさん考えていかに捨てるか、そして何を選ぶかが大事だと思います。1個しか選択肢がないときに1個だけ選ぶのか、100個から選んだ1個なのか。結果的には同じ1個なんですけどそこで見えるものは全然違う。99個を捨てていく作業であるべきでしょうね。

ああ早く稽古に入りたいですね。こういう話をしていると!

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――共演者の方について。過去お仕事の接点があるのは古田さんだけですか?

お仕事をしたことがあるのは古田さんとムネちゃん(青木崇高)ですね。ムネちゃんとは鄭義信さんの舞台『ぼくに炎の戦車を』以来の再会。すごく嬉しいんですよ、またやりたいねってずっと言ってたので。彼もすごくマジメな人間なので演技の事をずっと考えていて、その話をするのが楽しくて。当時は演技の話ばかりしていましたね。

――いのうえさんから天魔王役について、何かリクエストをいただいていますか?

ないですよー! いうなればこの扮装(ポスターなどの天魔王ビジュアル)がある意味リクエストなんでしょうから、「こういう感じだからねー」っていうメッセージとして受け取っています。御館さまが亡くなられた事がショックで白髪になった説……が僕の周りでは有力です(笑) 。

劇団☆新感線の舞台って、気合の入り方が違うし完成度も違う。そのときそのときの時代の最先端が詰まってるし、デジタル技術の最先端でもある。すべての事をガツガツと惜しみなく、あるいは節操なくやる! 後ろから指さしてバカにするやつもいるかもしれないけど、でも開拓していくってそういうことだと思うんです。

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――ちなみに、劇団☆新感線の作品で特に好きなもの、選べますか?

『轟天』シリーズはチョー好きですね!『五右衛門vs轟天』も大好きです。創立35周年の記念公演にそういう作品を選んじゃうってところが本当に大好き。あと、この前の『乱鶯』も好きでした。異論あると思うけど、僕はハマりましたねー。

35年も劇団を続けるってすごいですよね。年齢と共に守らなきゃならないものも増えてきますが、それ以上の事をやり続けるってことがすごい。今エンターテイメントは輸入モノが多くなっていますが、国産で、日本人しかおもしろくないだろう(笑) ってものをやっているのがいいですよね。

僕、ネタモノが大好きで。新感線の舞台で必死に遊ぶ大人たちを観ていると、純粋だなっていつも思うんです。お互いプロですけど、人間って楽しそうにしている人を観ているから楽しいんだ!ってすごく純粋な事を思いだしますね。

楽しく舞台上に立つためにはそこに至るプロセスをしっかりと踏まないと。きちっとやった上で、舞台に立ったときは自分たちが好き放題して楽しむ。本当に楽しみです。

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(取材・文・撮影:こむらさき)

公演情報
ONWARD presents 劇団☆新感線『髑髏城の七人』 Season花 Produced by TBS

■日程:2017年3月30日(木)~6月12日(月)
■会場:IHIステージアラウンド東京(豊洲)
■作:中島かずき
■演出:いのうえひでのり
■キャスト:
小栗旬、山本耕史、成河、りょう 青木崇高 清野菜名、近藤芳正、古田新太 ほか
発売日:2016年11月26日(土) 
■料金:S席13,000円 A席9,800円 (全席指定・税込)

■公式サイト:http://www.tbs.co.jp/stagearound/     
 
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