待望の1stアルバムはその名も『ALL ABOUT POP』 Shiggy Jr.の“ポップ”とは一体どんなかたちなのか?
Shiggy Jr. 撮影=風間大洋
“ポップでポップなバンド”を自称するShiggy Jr.が10月26日にメジャー1stアルバム、その名も『ALL ABOUT POP』をリリースする。これまでシングル・リリースしてきた「サマータイムラブ」「恋したらベイベー」や、インディーズ時代からの人気曲「LISTEN TO THE MUSIC」のニューバージョンをはじめ、レアグルーヴやポップソウル以外にも、アルバムならではの聴かせるナンバーも多数収録。バンドの全方位を楽しめるフルボリュームな内容に仕上がっており、いよいよシーンのど真ん中に打って出ようという高いモチベーションが伺える。そこで今回はアルバムについてはもちろん、Shiggy Jr.がこだわるポップの意味についても追求。特にいけもこちゃんこと池田智子(Vo)の金言は、彼女自身がポップを体現していることを証明しているのでは。
――メジャー1stアルバム『ALL ABOUT POP』についてはもちろん、タイトルにちなんでShiggy Jr.にとってのポップとはなんぞや?というお話も伺えればと思います。このタイトルに原田さんのドヤ顔が思い浮かびまして(笑)。
一同:(笑)。
――自信満々な感じですか?
原田茂幸(G):はい(笑)。
――タイトルは皆さんで考えたんですか?
池田智子(Vo):そうですね。曲が半分とちょっとぐらいできたタイミングでみんなで話してて、茂幸くんが(案を)出したんだっけ?
原田:ま、最終的には、そう。
池田:話の流れでポッと出てきて「それいいじゃん!」って、一気に決定した感じでした。“ポップ”っていうのがやっぱりShiggyにとってはすごく大事な要素だったし、今回はコンセプトアルバムというよりは、シングルカット集に近くてジャンルもいろいろなアルバムだったので、そういうタイトルがいいねって。
――みなさんの中で“アルバム”と言えばどんなイメージがありますか? 名作アルバムと言えば、みたいな。
池田:私は、宇多田ヒカルさんの『First Love』とか。すっごい聴いてたし。
原田:小学生の頃か?
諸石和馬(Dr):もう、全員が持ってたからね。
原田:僕的には……普通は“アルバム”って呼ばないんでしょうけど、コンピレーションアルバムみたいなものが、僕の中でのアルバムのイメージなんですよ。
――いろいろアラカルトで良い曲が入っているイメージですね。今作はシングル曲以外のアルバム曲もたくさん入っていますが、「I like it」はぐっとR&Bっぽかったり、バリエーションが増えていて。アルバムだからこそ入れた曲はありますか?
原田:「I like it」もそうですし、Shiggy Jr.のシングルぽくないものが結構入ってると思います。「I like it」とか「groove tonight」とか、そういうちょっと「ハッピー!楽しい!」みたいじゃないもの?かな。あとは「HOME」とか、ジワジワいいなぁと思うタイプのものが入ったりとか。
池田:まだデビューしてシングル4枚ですけど、シングルのリリース時は、まず自己紹介的な意味もあって、Shiggyの一番ど真ん中を知ってもらいたいって気持ちで曲を選んできていて。でもやっぱりアルバムってなると、もっとこういう面もあるんだよとか、ほんとはこういうこともやりたいんだよ、っていうのが出せるいい機会で。強さよりももっと寄り添ってくれる感じとか、ちょっと大人だったりとか、そういう要素がアルバムだからこそ出せたっていうのはあるよね?
原田:うん。
Shiggy Jr. 撮影=風間大洋
――「HOME」や「手紙」は女性シンガーソングライター的なムードもあって。それは原田さんの中から自然に出てきたものですか? それともバランスを見てこういう曲も入れていった感じ?
原田:もともと僕はそういう曲を結構作るタイプではあるんです。それとは別に、シングル曲はシングル曲として作ったりはするんですけど、割と自然な形でできたものかな。
――「HOME」とか聴いてて泣きそうなんですけど(笑)。
原田:ありがとうございます(笑)。
池田:いい曲だよね。「HOME」はインディーズの時からやってて、そういう意味でも思い入れが強くて。
――聴く人に寄り添う感じの内容だし、リスナーも幅広そうなイメージがあります。普通に働いてる女性が主人公の曲が多いですしね。
池田:そうですね。「HOME」とかは特にそうだと思っていて、「元気に行こうよ!」みたいなところもShiggyの大事な要素なんですけど、生活にもっと寄り添うっていう部分も、私たちが大事にしてることなので、それがすごくちゃんと表現できてる曲だなという風に思います。
――「HOME」「手紙」の流れはまさにそうですし、全体的にも流れが良くて。
原田:車の中で考えたんだよね。
諸石:この曲の後にこの曲が来たらハマる!みたいな話を、ツアーに行く時の車内で話し合いながら、実際に曲を並び替えて流してみて、その聴き馴染みとか聴き心地がいい順番に並べたって感じですね。
――あと「dynamaite」もアルバムならではかな?と。
原田:そうですね(笑)。ハードロック。あれは何でああいうことになったんだろうね?
諸石:シゲ、自分で作ったんじゃん(笑)。
池田:ロックなのも欲しいよねって。例えば前に出したEPの「LISTEN TO THE MUSIC」に「oyasumi」って曲が入ってたりとか、こういうのもあるんだぞっていう。あと、リズム隊が大活躍する感じの曲を入れたいっていう感じ?
原田:多分そういう気分だったのかな。
Shiggy Jr. 撮影=風間大洋
――ロックと言ってもどこを切り取るかってあるじゃないですか。昔のハードロックもあれば、今、THE1975がやってるような手法もあるし。どういう考え方でしたか?
原田:「dynamite」はもう、Mr.BIGでしたね。80年代ハードロック。あれはハードロックでいいのかな?
諸石:途中ちょっとミクスチャーの要素もあるけどね。好きなもの全部詰め込んだ感じですよ。レッチリとか、Mr.BIGとか。僕らはもともとロックも好きで、シゲもハードロック風のギターをたまに弾いてたりするし、リズム隊もロックをやってたりしたんで。
――「dynamite」があると「GHOST PARTY」への流れがいいような気がします。
諸石:そうなんすよ! そこはほんとにそうなんすよ。スルッと聴ける。
池田:こだわりポイントだよね。
諸石:「GHOST PARTY」が音の多さとかも含めてものすごい強いんで。他の曲と合わせた時にどうしても「GHOST PARTY」が勝っちゃうんですよね、で、「dynamite」があることで、まだいけるんですよ。
――浮かないってことですね。そして先ほども出た「HOME」、そして「手紙」「スタート」、このあたりの曲は歌ってみていかがでした?
池田:「HOME」はインディーズ時代からやってたし、ライブで何回かやったこともあったので、ライブで歌った時のお客さんの反応を思い出しながら歌ったりしました。でも、私はこの曲は女性っぽいというよりは、普通にサラリーマンとして働いてる男性でも沁みる歌詞かなぁって感じたので、わりと中性的な感じを意識して歌いましたね。「手紙」に関しては最初、失恋ていうか片思いっぽい恋愛の歌詞だったんですけど、少し変わって家族や大事な人への1曲になったんです。そういう曲ってあんまりShiggyには無かったよね?
原田:うん。
池田:ちょっと新しいアプローチなので、歌う時に大事にしたのは……すごいいい歌詞で、私も歌いながら泣きそうになる瞬間があったんですけど、私の感情が入りすぎてると、リスナーの方が聴いた時に入る余地がなくなっちゃうので、そこのバランスをすごく意識しながら歌っていた曲です。「スタート」に関しては、これはバンドのドキュメンタリーっぽい曲っていうか。曲に物語があるとしたら、これはバンドが主人公になってる曲だなと思っていて、それがストレートに伝わればいいなと。細かいことよりも勢いだったりとか、自分たちから出てくるものがそのまま届けばいいなと思って歌いました。
Shiggy Jr. 撮影=風間大洋
――「スタート」は意外なまでにバンドの意思表明をしてますね。
池田:そうですね。熱い曲です。「サマータイムラブ」とか「恋したらベイビー」とかって、主人公がいて物語をいかに表現するかっていう曲で。それもShiggy Jr.なんですけど、「スタート」みたいにバンド自身が一人称になってる曲もあって、その両方があるのが今回のアルバムの良いところだし、私たちなんじゃないかと思うんです。だからこう、ちょうどいい重さというか……多分、自分のことばっかり伝えようとしても、きっとそれはポップにはならなくて、だけど、自分の気持ちを何も言ってくれない人に対してはきっと聴く人も心を開けなくて。その両方バランスがいいなぁって、歌詞を見たときに思いました。
――なるほど。確かにそのバランスはShiggy Jr.らしいかもしれない。
池田:うん。だから物語サイドとドキュメンタリーサイドと呼んでるんですけど、そこのバランスがすごく良くて。物語もキラキラさせながら、でも私たちの泥臭い部分もすごく出ている、それはすごく好きなポイントです。
――アルバムならではのアレンジをしましたっていう曲はありますか?
原田:「手紙」は変わったアレンジをしましたね。前半打ち込みで、途中から生ドラムが入ってくるっていう曲で。弦もちゃんと生弦で録ったから。
池田:贅沢!
――「groove tonight」も大人っぽくて新鮮ですね。
原田:松井寛さんがアレンジで入った曲なんです。
池田:本家だもんね。
原田:「I like it」と「groove tonight」に入ってもらって。フルート・ソロがすごいいいんですよ。
Shiggy Jr. 撮影=風間大洋
――Shiggy Jr.はレアグルーヴとか90年代のお洒落な音楽をそのままやってるわけじゃなくて、自分たちのフィルターを通していて、そこに「今のポップ」っていう意識があるのかなと。
原田:僕的にはどうだろうな? 周りで鳴ってる最近の音楽は聴いてはいるわけで、多分それらも自分の音楽に消化されてると思うんですけど、ただそれを狙ってるわけではなく、基本的には90年代とか80年代の音楽が、僕には一番身にしみてるというか。音も良いし、すごい良い曲がいっぱいあって、そういうものを俺は好きだなと思っているし、目指して曲を作ったりしているんですね。でも、今流行ってるっていうか、自分たちの周りで流れているEDMだったり、そういうものの影響も自ずと受けるというか。で、その中で作るとそりゃ自然にこういう風になるよなと思います。いろんな曲が入ってるってこと自体が、Shiggy Jr.のポップスっていうものだと思っているし。
――多面体なんだけど、どこを切ってもポップであると。その“ポップ”っていろんな風に捉えられると思うんですが、2016年において皆さんが思うポップの基準や価値観ってどういうものなんでしょう。
原田:なんだろう? キャッチーであることが、まず僕の中のポップスにおいては強くて。一回聴いて覚えられたりとか。ジャンルは関係なしにしてっていう。
池田:私の中では、音楽で言えばシゲくんと一緒で、どんなジャンルが好きな人でも好きになれるのがポップスだと思っていて。で、インディーの時からずっと言っていることなんですけど、みんなの共通項になれる音楽をやりたいんです。年齢・性別や好きなジャンルが違っても、Shiggyの曲で「いいね」って気持ちで繋がれたりとか、そういうこと。もっと大きなことで言うと「明るくて分かりやすい」ものであると思っていて、それってパッと見、浮ついて見えたりとか、軽く見られたりすることもあるかもしれないけど、そこを貫いた人にしか無いかっこよさがあるなぁと思っていて、それがポップかなと思います。
――音楽以外ではいかがですか? 例えば今年は『君の名は。』とかポケモンGOとかが流行ってますけど、流行るっていうこととポップであることとは、また違うのかな?
池田:ディズニーランドは最強のポップだと思う。ね?
――そこには何があるんでしょう?
池田:夢。夢です!
諸石:早かった、今(笑)。
池田:ディズニーランドは夢を託しても絶対に信頼に応えてくれるじゃないですか。夢を託していいんだっていう安心感というか。
――音楽もそうですよね、信用して……
池田:そう。この「好き」って気持ちを預けていいんだ!みたいなことだと思います。
Shiggy Jr. 撮影=風間大洋
――すごい。さすがの解釈ですね。ほかもみなさんはどうですか? ポップと言えば。
森:共通認識として、キラキラ感みたいなものはある気がしますね。
原田:ポップって言葉自体にはそういう要素はある。“ポピュラー”から来てるっていう意味では、普通に流行りもののことをポップスっていうんですけど……でも流行ってるものって良いものですからね(笑)。
池田:でも流行るものってさ、みんな薄々思ってたんだけど誰も形にしてなかったこととか、誰も言葉にまだしてなかった気持ちとかをポン!って出した時にワッ!て流行るじゃん? なんかそういうのもあるよね。潜在意識のスイッチをカチッて押してくれるような。
諸石:なんか俺の中では、すーごい分かりやすかったりするものの裏側に深いものが隠されてる、とか。
池田:王道のものと新しいものがかけ合わさってたりとか?
森:10年以上経っても評価され続けるものは絶対ポップだと思うし、10年以上経ったら「あれ、ポップなの?」って疑問を持たれる音楽もあると思うし。でも、本当にポップなものは10年、20年後に誰が聴いても「あれはポップスだよね」っていう何かがありますよね。
――普遍性という意味ですか?
森:うん、普遍性ですね。
――普遍的なものと、「今」ってところでいえば、Shiggy Jr.がやってることってまさにそういうことですよね。
池田:や~、嬉しい。
森:時代が変わっても変わらずにずーっといるというか、時代の流行とかが変わっていく中でも、芯が変わらなければポップであり続けるのかなと思います。例えばRIP SLYMEとかサザンオールスターズとか、変わらずにあり続けるというか。
――そしてもう一つ、アルバムのジャケットのアートワークが、再び江口寿史さんで。江口さんもすごくポップですよね。
原田:本当にかっこいい。
池田:打ち合わせというか、江口先生とみんなでお酒を飲んだ時に、「ポップであるっていうことが一番かっこいいんだよ」って。
原田:「ポップであることは一番ロックなんだよ」って。
池田:そう言ってくれて。江口先生のスタンスもそうじゃないですか? みんながいいと思えて、今どんどんシンプルな絵も増えて来てる状況で、「それを貫くことが一番ロックなんだよ」って言ってて、「かっこいい!」と思ったし、そうありたいと思いました。だからそういう方に描いてもらえるっていうのは、すごい嬉しいです。
Shiggy Jr. 撮影=風間大洋
――江口さんの描く女の子とか最高にかわいいじゃないですか。それはすごい画力があって、基本があるからこそ描けるあの女の子なわけで。そういうことをおっしゃりたかったのかも。
池田:そう思います。パッと見、簡単に見えることを裏打ちする、すごく芯の強い技術だったり、想いがあってもそれを前面に出さないで分かりやすい状態でいるっていうことが、ポップのかっこよさだと思って。江口先生はまさしくその感じですよね?
――池田さん金言連発ですね(笑)。
池田:太字にするとこがいっぱい(笑)。
――そしてアルバムがリリースされてからライブもありますが、次回は対バンとワンマンですね。
森:今回の対バンは、これまでと比べて、いま若手の人たちというか。今まで藤井隆さんとかレジェンドと呼ばれる人に来てもらったり、自分たちが尊敬してる人たちを呼んだりしていて。今回は、どちらかといえばライヴハウスシーンとか、若手でゴリゴリ頑張ってる人たちとやろうって感じです。
――自分たち世代で底上げしたいっていうビジョンですか?
池田:それもあるし、ライブで負けられないみたいな。
原田:そうだね!
池田:同世代ですごくキラキラしてる人たちと一緒にやって、絶対上がるものがある、それは大事にしたいなと思います。
――そしてワンマンはしっかり演出ができそうな会場ですね。
森:色々考えて、仕込んでおります(笑)。
諸石:ライブを考えてる時間ってすごい楽しくて、音源は音源で別の面白さというか。最近はライブ力をあげようと思って頑張っていますね。エンターテイメント性を帯びながら、演奏面をフィジカルでもっと追求しようって曲もあったりとか、本当にいま、作り上げるのが楽しい状態になってます。期待してください!
取材・文=石角友香 撮影=風間大洋
Shiggy Jr. 撮影=風間大洋
10月27日(木)@金沢vanvan V4(w/ Awesome City Club)
11月2日(水)@仙台MACANA(w/バンドじゃないもん!)
11月5日(土)@札幌cube garden (w/ アカシック)
11月9日(水)@名古屋ell.FITS ALL(w/ ココロオークション、ポタリ)
11月10日(木)@高松MONSTER(w/ ココロオークション、Awesome City Club)
11月12日(土)@福岡DRUM SON(w/南波志帆)
一般発売日:10月2日(日)
ALL ABOUT POP Release Tour 『”ワンマン”スかこれ。~東阪編~』
11月24日(木)@大阪・心斎橋BIGCAT
11月27日(日)@東京・六本木EX THEATER
一般発売日:10月23日(日)
「SPICE先行」受付 10/7(金)12:00~10/17(月)23:59
受付URL http://eplus.jp/shiggyjrspice/ (先着順)
お申込みはお早めに!
●【初回盤】[CD+DVD] UMCK-9866 ¥3,980 (tax in)
初回盤ジャケット
通常盤ジャケット
*初回盤・通常盤共通
01. サマータイムラブ
02. 恋したらベイベー
03. ホットチリソース
04.I like it
05. dynamite
06. GHOST PARTY
07. HOME
08. 手紙
09. スタート
10. keep on raining
11. Beautiful Life
12. groove tonight
13. LISTEN TO THE MUSIC (ALL ABOUT POP ver.)
14. Beautiful Life - DJ Fumiya (RIP SLYME) Remix
※M14はiTunes Storeバンドル購入のみのBONUS TRACK
【初回盤DVD収録内容】
□Shiggy Jr. presents「”対バン”スかこれ。vol.1 @恵比寿LIQUIDROOM」LIVE映像
01. 恋したらベイベー
02. oyasumi
03. dance floor
04. day trip
05. keep on raining
06. サマータイムラブ
07. LISTEN TO THE MUSIC
08. Saturday night to Sunday morning (with Negicco)
09. TOWN