笑顔あふれる「子連れオーケストラ 西宮きらきら母交響楽団」の演奏会に行ってきました!

レポート
クラシック
2016.10.5
フル編成、大迫力サウンドで聴かせる「子連れオーケストラ 西宮きらきら母交響楽団」 写真提供:西宮きらきら母交響楽団

フル編成、大迫力サウンドで聴かせる「子連れオーケストラ 西宮きらきら母交響楽団」 写真提供:西宮きらきら母交響楽団

静寂の中、指揮者がタクトを下すとオーケストラはこの日のオープニング曲 グリンカ作曲「ルスランとリュドミラ」序曲を奏で始めた。    

本番中もお母さんのそばには子どもが。これこそが「きら響」の象徴的な光景。 写真提供:西宮きらきら母交響楽団

本番中もお母さんのそばには子どもが。これこそが「きら響」の象徴的な光景。 写真提供:西宮きらきら母交響楽団

疾走する音楽。

次の瞬間、ステージの前に座った子どもたちはいっせいにリズムに合わせ体を動かし始め、会場の中を走り出す子どもの姿も。よく見ると赤ちゃんを背負って楽器を吹いているメンバーもいれば、後ろから子どもに抱きつかれながらヴィオラを弾いているメンバーもいる。会場内はもちろんステージの上まで、子どもがいっぱい。

そして、この会場にいる人みんながキラキラと輝く笑顔!

これは「子連れオーケストラ 西宮きらきら母交響楽団」の演奏会で普通に見られる光景だ。

「天国と地獄」の“カンカン”では、オーケストラは総立ち。そしてお客さまも…。 写真提供:西宮きらきら母交響楽団

「天国と地獄」の“カンカン”では、オーケストラは総立ち。そしてお客さまも…。 写真提供:西宮きらきら母交響楽団

この日のプログラムはプロコフィエフの交響的物語「ピーターと狼」やショスタコーヴィチ「祝典序曲」、オッフェンバック「天国と地獄」序曲などで、オーケストラは難易度の高い曲に果敢にチャレンジ。中でも「ピーターと狼」ではナレーションも団員が見事に務め、散漫になりがちなこの難曲を、メリハリの効いた引き締まった演奏で聴かせた。また「天国と地獄」の有名な“カンカン”のところからは、オーケストラはチェロ以外全員が立って演奏。それに応える形で聴衆もノリノリでスタンディング!ドゥダメル指揮のシモンボリバル・ユース・オーケストラのような盛り上がりだった。

今回の会場は客席前列とステージの段差が無く…。当然そこには子どもたちの姿が。 写真提供:西宮きらきら母交響楽団

今回の会場は客席前列とステージの段差が無く…。当然そこには子どもたちの姿が。 写真提供:西宮きらきら母交響楽団

親子連れの姿を見かけるコンサートとしては、プロのオーケストラが音楽の裾野を広げファン拡大を図るための親子参加型コンサートがある。「親子のためのコンサート」「0歳からの子どものための演奏会」「オーケストラ体験教室」など、各オーケストラがネーミングを考え、工夫を凝らした演奏会は、どれも人気があるようだ。

しかし、西宮きらきら母交響楽団は全くスタンスが違っている。

何のためにこのオーケストラを立ち上げ、将来的に何を目指しているのか。このオーケストラの発起人にして団長、コンサートミストレスまで務める馬場京子さんに聞いてみた。

笑顔が素敵な、オーケストラの発起人にして団長、コンサートミストレスまで務める馬場京子さん。 写真提供:西宮きらきら母交響楽団

笑顔が素敵な、オーケストラの発起人にして団長、コンサートミストレスまで務める馬場京子さん。 写真提供:西宮きらきら母交響楽団

--とても楽しいコンサートでした。

「ありがとうございます。子どもが多くて驚かれたのではないですか。私たちのコンサートは子どもたちがいることが当たり前です。子どもがいる光景が社会にとって自然なように。赤ちゃんや子どもを連れて練習や本番を迎えられるというのがこのオーケストラの特徴ですね。世界的にみても珍しいと思います。」

--メンバーには男性もいらっしゃるのですね。

「はい。母に限らず、男性でも小学生でも楽器初心者でも音大出身者でも入団には一切の垣根はありません。子どもと音楽が好きな方ならどなたでも入団出来ます。2014年4月に立ち上げて、現在140名の団員がいます。」

--このオーケストラを作られたのはどうしてですか。

「出産を契機に夢や活動をあきらめる人がいます。音楽活動もそうです。その原因のひとつに、子どもがいるのにそんな事をしてはいけません!という社会があるからではないでしょうか。私はそういった社会の制約や枠組みを変えたいのです。いつでも自分の好きなことに挑戦していける世の中になって欲しい!すべての垣根を感じない社会であって欲しい!との願いから西宮きらきら母交響楽団を作りました。私たちの演奏を聴いた皆さんが、私でも何か出来るのではないか!私も変わっていきたい!と思っていただけると嬉しいですね。」

--誰でも入団出来るということですが、厳しくてしてでも演奏の精度を高めていくのか、楽しさを優先して考えるのか。難しいと思いますがそのあたりは?

「練習でみんなが集まると色々な共通する話題が飛び交い、本当に楽しいですよ。でもそれだけではありません。このオーケストラを立ち上げて2年半経過しましたが、演奏のレベルは飛躍的に向上しています。参加されている皆さんは真剣です。時間を色々と工夫しながらしっかり練習されている方が大半。オーケストラとして活動している以上、演奏面でも常に高みを目指したいと思っています。」

--将来的な目標としては?

「いつか海外の音楽祭から招待されることです。

まずは、12月のコンサートを成功させないといけません。このコンサートではメインでボロディンの「ダッタン人の踊り」を、オーケストラとロシア語で歌う合唱団の合同で演奏します。楽器経験のない皆さまも、合唱で参加しませんか。私たちと一緒に感動を分かち合いましょう。指揮者にパリ在住でご活躍中の阿部加奈子さんを迎えることが出来たので、フランス音楽にも挑戦します。ぜひお越しください。それと、先日のコンサートのダイジェストがテレビでも放送されます。ご覧いただき、西宮きらきら母交響楽団のことをもっと知っていただきたいです。」

コンサートは大成功! 最後にオーケストラのメンバーと子どもたちで、記念写真。 写真提供:西宮きらきら母交響楽団

コンサートは大成功! 最後にオーケストラのメンバーと子どもたちで、記念写真。 写真提供:西宮きらきら母交響楽団

世界でもあまり例を見ないユニークなオーケストラ、子連れオーケストラ 西宮きらきら母交響楽団。団長の馬場京子さんにとってこのオーケストラの立ち上げは、社会運動そのものなのかもしれない。2年半で団員140名の大オーケストラへと発展を遂げているだけに、今後の活動から目が離せない。まずは12月のコンサートで、実際のサウンドに触れてみてはいかがだろうか。

公演情報
「とってもかきねのないコンサート」
 
日時:12月3日(土)14時開演
会場:西宮市民会館アミティホール
指揮:阿部加奈子(パリ在住)
曲目(予定)
オッフェンバック/ローゼンタール:パリの喜び
ラヴェル:亡き王女のためのパヴァーヌ
サン=サーンス:死の舞踏   
デュカス:魔法使いの弟子
チャイコフスキー:弦楽セレナーデより第2楽章
ボロディン:歌劇「イーゴリ公」より‘ダッタン人の踊り’
※入場無料(0歳より入場可能)
■公式サイト:子連れオーケストラ 西宮きらきら母交響楽団公式ホームページ:http://nkirakyo.web.fc2.com/
 
放送情報
■番組名:「カンテレ通信」
 
放送局:関西テレビ
放送日時:10月30日(日) 午前6:30~7:00
放送内容:「みんなが元気になる音楽会」(9月19日 於:カンテレ扇町スクエアなんでもアリーナ
■出演:西宮きらきら母交響楽団)の演奏の模様をダイジェストで放送。
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