fripSide二年ぶりのアルバム『infinite synthesis 3』本人たちによる全曲レビューインタビュー【前編】
fripSide 八木沼悟志(sat)・南條愛乃
八木沼悟志(sat)と南條愛乃のユニット・fripSideが、約2年ぶりとなるアルバム『infinite synthesis 3』を発売した。枠にとらわれずfripSideらしさを追求した作品に仕上がっている。今回SPICEではfripSideの2人にアルバム全曲を聞きながら、曲を作ること、セルフカバーを行った理由、アルバムの構成などを語ってもらうセルフレビューインタビューを実施した。全曲レビューという超ボリュームにつき、まずトラック1からトラック7までの前編をお届けする。
――3ヶ月ぶりのfripSideのインタビューになります。よろしくお願いします。
南條:お願いします!
――アルバム発売おめでとうございます。
八木沼:ありがとうございます。
――フルアルバムという形では2年ぶりということで、今回は全曲聴きながら一曲ずつ、お話を伺えればと思います。
八木沼:わかりました! やりましょう!
――改めて、アルバムのタイトル含めたコンセプトをお訊きできればなと思っているのですが、コンセプトに関しては二人で話しあったりされたんですか?
南條:その辺りは全部satさんが。
八木沼:コンセプトはないというか、逆に言えば、fripSideというものがコンセプトなので。『Decade』っていうコンセプトアルバムが1つありましたけど、それ以外の『infinite synthesis』に関してはもう……ナンちゃんと僕が、fripSideとしてやればそれがコンセプトなんで、今回はこれっていうのは特にないんですよね。
――なるほど。では早速楽曲について伺いたいのですが、1曲目はインストの「Third cosmic velocity」。これはsatさんに聞きましょう。僕このギターが好きなんですよね。
八木沼:これ大変だったんです。カチッと感を出すためにスライスという技術を使ってて、波形を細かく切って、こういう風に聴こえるようにしているんです。実際に弾くとこうならないんです。
――かっちりとした和音が効いてるなと思ってて。
八木沼:そうなんですよ。うちのギタリストとやりとりをしながら、ああしよう、こうしようとやっていったんです。
――で、この1曲目から始まって、2曲目が「Luminize」となります。こちらは、TVアニメ『フューチャーカード バディファイト ハンドレッド』オープニングテーマですよね。
南條:そうですね。ライブとかでも、何度もやらせてもらっている曲になってるんですけど、実質歌だと1曲目という扱いなので、この曲で勢いづいて、アルバムの幕開けの感じが、さらに強まるかなという感じですかね。
――だいたいアルバムって2曲目ぐらいに決め曲というか、強い曲を持ってくる印象があるんですけど。
八木沼:そうですね。
――歌詞も改めて読んだんですけど、バディファイトのゲーム部分を意識しているというか、作品を意識した歌詞になってて。現行のfripSideのいわゆる決め曲っていう感じなんでしょうか?
八木沼:うーん、僕はどの曲も決め曲だと思って作っているので(笑)。 これがっていうのはないんですけど、これに関してはドラムは生録りしたんです。サウンド的にはナンちゃんが歌った時に、今のfripSideの最先端となる曲じゃないかなというところで、2曲目にしたんですよね。
――続いて3曲目が「1983-schwarzesmarken-(IS3 version)」。こちらは、どことなくメロの作りが懐かしい感じがしたんですよね。
八木沼:うん、そうですね。
――いわゆる僕ら世代のダンスミュージックの印象があります。
八木沼:符割がそうですね。リズムが90年代テクノとか、ハウスとかその辺音感じはあるかもしれないですね。
――これは南條さん、歌ってみていかがでしたか?
南條:これもライブで盛り上がる曲なんですけど、今回“IS3 version”ということで、一箇所、歌詞が新規に書き換えられていたり、アレンジもちょっと変わっていて。頭の部分とか。テンポが速くなってたり。
八木沼:そう。シングルのカップリングだったんですけど。テンポが0.5だけ早くなってる。
――速くしようと思った理由はあるのでしょうか。
八木沼:ゲームの主題歌として使うときと、CDに収録するのって全くの別物なので、CDだったらもうちょっと速い方がいいかなっていう感じですね。
――0.5って言葉で聞くとそうでもないかもしれませんけど、聞いているとだいぶ違いますよね。
八木沼:違いますね。
――歌ってて違いますか? 0.5の速さの違いって。
南條:それこそ、ライブで何回もやって盛り上がるっていうのは言ったんですけど、勢いもあるので、この速さで逆にむしろしっくりきているので、あんまり違和感みたいなのは感じないですね。
南條愛乃
――続いて4曲目「determination」なんですけど、今作はアルバムの構成がすごくいいなと思ってて。ちょうど、オープニングがあって、2~3曲強い曲があって……という、これをそのままライブでやっても成立してしまいそうなぐらい。
八木沼:ありがとうございます。
――その辺りは意識されていたりするのでしょうか。
八木沼:そうですね。今って、曲を配信で買う人も多いじゃないですか。
――そうですね。
八木沼:みんな単品で買えちゃうじゃないですか。
南條:そう。
八木沼:僕それ嫌いで(笑)。レコードやCDの時代も、曲順や流れを表現の一つとして作品に落とし込めた時代があったじゃないですか。今、あまりCDを買わない、配信でつまみぐいするって言うのが主流にあるなかで、僕はアルバムとして通して聴いて欲しいんですよね。だから、そこは毎回こだわっています。
――今回一曲一曲印象に残るんですよね。僕も正直配信で一曲買うこともあるんですけど、アルバムで聴くとこんなに、一つひとつ繋がって聴こえるんだっていうぐらい構成が素晴らしいと思って。
八木沼:嬉しいな! ありがとうございます。
――では曲の話に戻りまして……「determination」はいかがでしょうか。作った感じとして。
八木沼:これはもう肩の力を抜いて、バーっと作りましたね。南條さんが気持ちよく歌えることを予想しながら、僕は音で楽しんで、遊んで。それを歌ってもらったっていう感じがしています。
――それを受けて南條さんいかがですか?
南條:私の中では、fripSideらしいという感じの楽曲になっています。メロディもすごく覚えやすかったですし、歌詞の内容的にも閉じた場所からひらけた場所に向かっていくような内容になっていて。爽快感や開放感のあるものなので、歌っていて気持ちが良かったですね。
――開放感はたしかにありますね。
南條:satさんから聞いた話で、疲れたOLに聴いて欲しいみたいな(笑)。
八木沼:そう、そうなんです。僕の中のお姉心が出たというか!(笑)
南條:母性が働いてね(笑)。
八木沼:開花したんだよ(笑)。だからOLの皆さん、大人の女性に聴いて欲しいかもしれないですね。
南條:その話が結構印象的ですね(笑)。
――そして「magicaride」。これが“version2016”ということですが。今回一期の曲を改めて入れようと思った意図をお聞きできればと。
八木沼:fripSideっていう冠でずっとやらせてもらっていますけど、前の曲をやるのもユニットとしては自然なことなのかなっていう風に思うんですよ。まあ、僕たちが古い曲をやるにあたって、賛否両論あるのはすごく分かっているんです。ただ僕は今、南條さんとやらせてもらっている今がすべてだし、僕らのfripSideなので。じゃあ、昔の曲もいいものがそこにあるんだったら、つまみぐいしようかなという感じですね。それによってみんなも楽しんでくれたら、それが最高にハッピーなので。
――南條さん歌ってみていかがでしたか。
南條:これはfripSide的にいうとセルフカバーになるんですけど。私からしたら普通にカバー曲になるので、プレッシャーも少なからずあって。
――そうですよね。
南條:昔から聴き込んでくださってる方が、曲にまつわる思い出とかエピソードもたくさんあると思うので。そういうのも大事にしたいという気持ちを持ちつつ、新規の曲だとしたら私はどうやって歌うのかっていう気持ちでしたね。まぁ……難しかったですけど(笑)。
――やっぱり前の印象ありますもんね。
八木沼:僕がね、ナンちゃんのために作った曲じゃないっていうのがでかいと思うんですよ。
――うん、そうですよね。南條さんにこういう風に歌ってもらう、っていう前提があるのが、fripSideの今の形のような気がします。
南條:うん。
八木沼:そこです。そこで一つハードルがありますよね。あとは、僕が若かったというのもあって、あんまり歌い手さんのことを考えないで作っていた(笑)。
南條:あはははは(笑)。 でも、曲自体にファンの方がついてたりもするので、カバーしたことでお祭り感というか。
八木沼:そうだね。これやってくれるんだ!みたいな。
――ファン目線だとセルフカバーってありそうでなかったような気がしてて。
八木沼:そうなんですよね。やらないよりはやってた方がいいんじゃないっていう感じですよね。
――「やってもいいんじゃない?」っていうところまでfripSideが行ったんですかね。
八木沼:かもしれないですね。物理的には、やっぱり前任のボーカルがいた期間の長さを南條愛乃さんが突破しましたしね。
――では、続いて「Answer」。バラードになっていて、歌詞も切ない感じになっていますが。
八木沼:これがねぇ、ナンちゃんが良い歌詞を書きましてね。
南條:あはは(笑)。
――これ歌詞いいですよね。
南條:やったー! ありがとうございます(笑)。
――なんか表現力が上がっていますよね、南條さん。
南條:ほんとですか。
八木沼:いやー、もうアーティストですよ。本当に。僕基本、彼女ダメなところないと思っているので。
南條:いやいやー!
南條愛乃
――これは歌詞を書いた背景だったりとか、どういう思いがあるんでしょう?
南條:私いままで歌詞書く時って、ヘコんだりしてても、最終的には前を向いて、希望を見据えてみたいな歌詞の書き方をずっとしてきたんですけど、これは希望を見出すところまでいけないっていうものを書いてみたんです。やっぱりそういう時って、誰にでもあると思いますし。そういう時、希望ばかり見据えられてもなんかなぁ……みたいな(笑)。
――あはは(笑)。
南條:実際私もそういう時ってありますし、その時に、聴いて寄り添えるじゃないですけど、辛いとかしんどいとか、先が見えないみたいな、そういうちょっとネガティブな感情にそっと寄り添える歌詞を書いてみたいなと思い立って。
――確かに、最後まで聴いても、なんとなく止まっている感じがしますよね。
南條:泣いてても明日は来てしまうっていうところの無情さだったり、切なさだったり……でもそんなしんどいって言っている中でも、周りにいる人からふとした時に、優しさをもらったりして、ちょっとホロってきてしまうなみたいな。その日常あるあるっていうものを書きたいと思っていて。
――曲作りとしてはいかがですか? 本アルバムで一番のバラード曲ですものね。
八木沼:そうですね。実はこういうの、僕は一番楽に作れる引き出しなんです。でもコレのキモはピアノかな。気持ちよく弾けたんで、聞いて欲しいですね。
――そして、しっとりとしたところで、ガラリと印象が変わって「Two souls –toward the truth-」。これはTVアニメ『終わりのセラフ 名古屋決戦編』のオープニングテーマです。
八木沼:僕この曲大好きです。
――先ほどのアルバムの流れで言えば、バラードが終わって、この曲の前奏でお客さんが立ち上がるみたいな流れが見えるというか。
八木沼:そうですね。閉じて、もう一回開くような感じ。
――改めてこの曲についてコメントをいただけたらと思います。
南條:そうですね。この曲を初めていただいた時に、fripSideらしい疾走感とか強さみたいなのがありつつも、新しいなと思いました。ちょっと新境地なのかな?という感じがしましたね。
八木沼:そうだね。少しポップな部分も押し出してみた感じなんですけど。
――確かにちょっとポップさありますね。
八木沼:そうなんです。アニメの世界観もあったんですけど、結構fripSideってタイアップに関してはサウンドが男子っぽかったと思うんですよ。ちょっとフェミニンなイメージで曲に取り入れてみようと思ったらこうなったんです。
――サビなんかそうですよね。ちょっとフェミニンというか。
八木沼:歌うのがすごい大変だったと思います。
南條:難しいです(笑)。難しいですね……。
――今回14曲ありますが、一番歌うのが難しかったのはどの曲なんでしょうか?
南條:全部難しいですよ!(笑)
八木沼:わはははは!(笑)
南條:歌う回数が増えるごとに馴染んでくる感じがありますけどね。でもこれは特に難しいなって思いましたね。
インタビュー=加東岳史 撮影=岩間辰徳
【初回限定盤】
【CD+Blu-ray×2】GNCA-1490 ¥5,300(税別)
【CD+DVD×2】GNCA-1491 ¥4,800(税別)
【通常盤】
GNCA-1492 ¥3,000(税別)
●クリアスリーブ&デジパック仕様
●Blu-ray(2枚)収録内容
・fripSide concert tour 2015 ~infinite synchronicity~
<2015.12.13[sun] 東京・府中の森芸術劇場 どりーむホール>
・fripSide オランダドキュメンタリー映像
・1983-schwarzesmarken-(IS3 version) PV
・PV Making
・SPOT(SPOT in Stores Now ver./SPOT Special ver.)
<封入特典>*初回生産分のみ(3タイプ共通)
fripSide LIVE TOUR 2016-2017 FINAL in Saitama Super Arena -Run for the 15th Anniversary- supported by animelo mix
先行応募券(受付締切:2016.10.16(日)23:59)
■収録曲
1.2016 -Third cosmic velocity-
2.Luminize
(TVアニメ「フューチャーカード バディファイト ハンドレッド」OPテーマ)
3.1983-schwarzesmarken-(IS3 version)
4.determination
5.magicaride -version2016-
6. Answer
7.Two souls -toward the truth-
(TVアニメ「終わりのセラフ」名古屋決戦編OPテーマ)
8.white forces -IS3 edition-
9.crescendo -version2016-
10.Run into the light
11.Dry your tears
12.unlimited destiny
13.One and Only
14.Side by Side
■2016/10/29(土)千葉 市原市市民会館大ホール(開場17:00/開演18:00)
■2016/11/13(日)北海道 千歳市民文化センター大ホール(開場17:00/開演18:00)
■2016/11/19(土)神奈川 神奈川県民ホール大ホール(開場17:00/開演18:00)
■2016/11/27(日)長野 キッセイ文化ホール中ホール(開場17:00/開演18:00)
■2016/12/04(日)大阪 オリックス劇場(開場17:00/開演18:00)
■2016/12/11(日)広島 広島上野学園ホール(開場17:00/18:00)
■2016/12/17(土)岩手 盛岡市民文化ホール大ホール(開場17:00/開演18:00)
■2016/12/18(日)宮城 仙台サンプラザホール(開場17:00/開演18:00)
■2016/12/24(土)福岡 福岡国際会議場メインホール(開場17:00/開演18:00)
■2017/01/07(土)愛知 名古屋国際会議場センチュリーホール(開場17:00/開演18:00)
■2017/01/21(土)岡山 倉敷市民会館(開場17:00/開演18:00)
■2017/02/19(日)福島 南相馬市民文化会館(開場17:00/開演18:00)
■2017/02/26(日)新潟 新潟県民会館大ホール(開場17:00/開演18:00)
■2017/03/05(日)石川 本多の森ホール (開場17:00/開演18:00)
fripSide LIVE TOUR 2016 - 2017 FINAL in Saitama Super Arena - Run for The 15th Anniversary - supported by animelo mix
日時:2017年3月18日(土) 開場:14:00 開演:16:00
会場:さいたまスーパーアリーナ
出演者:fripSide
料金:通常席 前売 8,640円(税込)、当日 9,180円(税込)
e+プレオーダー
<お申込み期間:2016/11/16(水)12:00~2016/11/22(火)23:59>