宝満直也×五月女遥(新国立劇場バレエ団)DANCE to the Future 2016 Autumn 大評判「Disconnect」を再演

新国立劇場リハーサル室でのリハーサルより (左)宝満直也 (右)五月女遥 Photo:M.Terashi & J.Otsuka/TokyoMDE

新国立劇場リハーサル室でのリハーサルより (左)宝満直也 (右)五月女遥 Photo:M.Terashi & J.Otsuka/TokyoMDE


 新国立劇場バレエ団が明日18日から20日まで、『DANCE to the Future 2016 Autumn』を開催する。『DANCE to the Future』は、同団ダンサーがコンテンポラリーダンス作品を上演するシリーズ企画で、今回で5回目となる。

 今回はアドヴァイザーに中村恩恵を迎え、2012年に始まった新国立劇場バレエ団の中から振付家を育てるプロジェクト「NBJ Choreographic Group」を通じて生まれた作品が披露されるほか、初の試みとして、6人のダンサーが生演奏による「即興」で踊るのも見どころとなっている。

 3月に開催された『DANCE to the Future 2016』初演で好評を博し、再演が待たれていた宝満直也振付「Disconnect」の再演にも期待がかかる本公演。すでにチケットはほぼ完売だ。

 「Disconnect」はマックス・リヒターの曲に宝満が振付、五月女遥と宝満が踊るデュオ作品。宝満と五月女のコンビといえば、今年9月、ロームシアター京都での『京都岡崎音楽祭 OKAZAKI LOOPS』オープニングセレモニーでの「Scriabin’s Etude」(構成・演出:中村恩恵、ピアノ:福間洸太朗、使用楽曲:スクリャービン:練習曲 嬰ハ短調 Op.2-1,嬰ニ短調 Op.8-12 『悲愴』)が思い返される。ともに男女の愛と葛藤を描いた作品だ。

宝満(以下H)「『DANCE to the Future 2013』で中村恩恵さん振付のソロ作品「O Solitude」を僕とハルちゃん(五月女)がダブルキャストで踊りました。中村恩恵さんとはその時初めて一緒にお仕事したのですが、そこからずっと観ていただいて、3月の「Disconnect」も首藤康之さんとお二人で観ていただいたんです。その後『OKAZAKI LOOPS』のお話をいただき、ぜひとお声がけいただきました」

 「Scriabin’s Etude」を踊った宝満と五月女はともに、そこに「Disconnect」を感じ取っていた。
五月女(以下S)「稽古の最中、『これ、「Disconnect」に通じるものがあるよね』と、二人で話してました」
H「特に恩恵さんからは「Disconnect」のイメージを基に振り付けられているというお話があったわけではありませんが、恩恵さんも「Disconnect」から強い印象を受けられていたのかなと思います。ただ、おそらく僕たちにあったものをと創っていったら、自然とあのような振りになったのだと感じます」

 『DANCE to the Future』では多くの作品がクラシック音楽を題材に振り付けられている。アドヴァイザーの中村恩恵もその多くの作品にクラシック音楽を取り入れ、『OKAZAKI LOOPS』ではショパン、スクリャービン、フィリップ・グラスを作品にした。2017年の新国立劇場バレエ2016/17シーズンダンス『中村恩恵×新国立劇場バレエ団「ベートーヴェン・ソナタ」』ではベートーヴェンと対峙する。中村との協働を通じてどのようなことを学んだのだろう。

H「振りを作るスピードがとにかく早いですね。リハーサルスタジオに入ってこられて、僕たちの身体の感じを見てすぐに『ここはこう』と進めていく。恩恵さんは、岡崎で使用したスクリャービンの音楽の下調べをすごく深いところまでされていて、恩恵さんの中ですでにできあがったものを僕たちに渡して下さっています。それでも僕が『ここはこうした方がいいですよね』と伝えると『そうだね』と柔軟に考えてもくださる。僕たちにとって恩恵さんはすごい存在の方ですが、折々に意見を求めてくださる方で、どんな意見でもすぐに取り入れて、試される。だから、とても言いやすい環境で稽古ができる。良い空気作りをしてくださる方で、そうしたところは勉強になりましたし、驚きでもありました」

 「Disconnect」のマックス・リヒターは、電子音楽の先駆者であるルチアーノ・ベリオに師事、ポスト・クラシカル・アーティストとして活動するドイツ生まれの作曲家。今年5月の『ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン2016』でヴィヴァルディ「四季」のリコンポーズが披露され話題となったが(ヴァイオリン:庄司紗矢香)、クラシック音楽ファンのあいだでも、まだそれほど知られていない。3月の『DANCE to the Future 2016』では、奇しくもマックス・リヒターを使用した作品が2作品創作された。

H「偶然重なりました。髙橋一輝くんが振付した作品『Immortals』でリヒターの『ヴィヴァルディ「四季」より』を使用しています。彼はバレエ研修所の同期で、2年間一緒に研修をしていた仲間です」

 普段から時間がある時に作品のための曲を探していると語る宝満は、クラシックに限らずポスト・クラシカル、洋楽、ヒップホップも聴く。

H「振りをつくる上で特に音楽のジャンルやアーティストにはこだわっていません。歌声が入っている曲も使います。『Disconnect』で使っているリヒターの「On the nature of Daylight」はもともとオーケストラや弦楽五重奏版ですが、研修所時代にお世話になったピアニストの稲葉さんに、ピアノにアレンジしていただきました。『DANCE to the Future 2016 Autumn』では「3匹の子ぶた」を上演するのですが、こちらはショスタコーヴィチの曲を使います。純粋に面白いなと思って(笑)」

 五月女も今後振り付けをやってみたいと語る。

S「ショパンの曲が好きでよく聴くのですが、いつかこの曲で振りつけしてみたいと思います。ただ宝満くんみたいな才能はないので・・・行動しないと始まらないと思うのですが、その一歩が踏み出せずにいます。この音の感じだったらこの振りがいいなと思ったりもしますが、作品になったときにストーリーが見せられるものでないと、特にコンテンポラリーはつまらないものになってしまう。ショパンはみなさん必ず聴いたことがある名曲ばかりで、すでにできあがったイメージもあると思いますので、難しいですね」

 3月の「Disconnect」初演時、宝満はその振付ノート(公演プログラム掲載)に「踊りの持ち味がまったく違うダンサー同士で男女の葛藤、心の動きを、踊る度、深く描いていきたい」と綴っている。

H「リヒターの曲を聴いていて、男性が女性をリフトしている絵が見えて面白いなあと思いました。最初は他のダンサーに踊ってもらおうと思っていたんです。でも、やっぱり自分で踊りたいと思って、その時に曲を聴いてイメージしたのがハルちゃんです」
 
 振り付けするうえで、何を考え、大事にしているのだろう。

H「いつかこの人と踊りたいと思って振り付けを考えることもありますが、曲から入ることが多いですね。それと、ダンサーをみたときの感じです。人数分の個性があるので、振り入れの時にコミュニケーションをとって、同じ振りでも人によって全く違う動きになったりするので、自分のイメージとは違うニュアンスを出してくれたり、動きを見ながらやっています。がっつり振りを固めてから望むのではなく、ダンサーをみながら創ることが多いです。2013年の『DANCE to the Future 〜Second Steps 〜 NBJ Choreographic Group』の時に、男性とのデュオ作品『球とピンとボクら…。』というコメディタッチな作品を創りました。そのとき2CELLOS (トゥーチェロズ)というチェロのデュオの、前衛的な音楽を使ったのですが、富久ちゃん(小柴富久修)とならいけるかな・・・と(笑)」

 3月の初演時から再演を待望されていた「Disconnect」だが、11月の再演では中劇場から小劇場へと場所が変わる。

H「勝手が全然違うので、同じような照明が使えるのかどうか分かりません。この作品は暗転を多く使って移動するので、ハレーションで見えてしまう可能性があり、そういった不安もありますが、それ以上に、一度やりきった振りをもう一度やり直すのは難しいですね。精神面でもあの時完全燃焼したものをさらにクオリティ高くやらなければいけないので、初演の時よりも難しいだろうという覚悟はしています。いかに本番に向けてモチベーションあげながら、ふたりで合わせていくかということだと感じています」

 「Disconnect」の衣裳は堂本教子が担当する。衣裳についての思いは?

H「『DANCE to the Future 2012』で平山素子さん振付の『Butterfly』を踊ったのですが、そのときの衣裳が堂本教子さんでした。その衣裳に惚れ込んで、堂本さんの感性がすごく好きでフィーリングがあうんです。小野絢子さんたちに振り付けた『3匹の子ぶた』の衣裳もお願いしています」

S「動いていないときにラインや、鏡で見たときに綺麗に見えるかどうかを確認しています。日頃からタイトなものを着るようにしているので、少しでもゆとりがあると気になりますね。ゆとりがあると、特に男性と組むときに指がからまったりする原因になるので気をつけています。第三者の目で見ていただいて、自分では気づかないところを綺麗にしていただけるのは衣裳さんなので、丈の具合等は相談しています」

 振り付けすることが好きで楽しい、これからも創っていきたいと語る宝満は公演に際し、ある思いを抱く。

H「新しいものを創ってそれを評価してもらうのは純粋に嬉しいですね。僕の振付作品を踊ってくれたダンサーたちに楽しかったと言ってもらえたり、それを観てくださったお客様が感想をいってくださるのはとても嬉しいです。定期的にヨーロッパの劇場に舞台を観にいくのですが、ダンサー、お客様、劇場全体に活気があるのが伝わってきます。海外のマネをする必要はないと思いますが、ジャンルにとらわれず、面白いものに人が集まるようになるといいなと思います。」

 最後に、劇場に集うファンに向けて、それぞれの思いを聞いた。

H「劇場に来て、観て、感じていただいたことを大事にしてほしいです。劇場でしか感じられない感覚があるとおもうので、そこでお客様とつながれたらいいなと思います。

S「コンテンポラリーダンスの公演を観に行くと、ダンサーの見せ方によって作品の雰囲気が変わるのを感じます。これを踊っているダンサーが他の作品を踊った時、そして違うダンサーがこの作品を踊った時にどうなるんだろうと期待を持ってもらえるような舞台を作れたらいいなと思っています。その事が結果としてこれから先、お客様にコンテンポラリーやバレエなどの舞台を観に来ていただける一つのきっかけになると嬉しいです。」

(取材・文:寺司正彦/編集部 Photo:M.Terashi & J.Otsuka/TokyoMDE
*写真はすべて、新国立劇場リハーサル室でのリハーサルより、五月女遥、宝満直也)


新国立劇場バレエ団
DANCE to the Future 2016 Autumn


11/18(金)19:00、11/19(土)14:00、11/20(日)14:00 
予定上演時間:約1時間50分(第一部25分 休憩15分 第二部30分 休憩20分 第三部20分)
新国立劇場 小劇場
●アドヴァイザー:中村恩恵
 
■第一部
「ロマンス」
【振付】貝川鐵夫
【音楽】F.ショパン
【出演】小野絢子、玉井るい、益田裕子、木村優子、中沢恵理子

 
「angel passes」
【振付】貝川鐵夫
【音楽】G.F.ヘンデル
【出演】小野寺雄

 
「ブリッツェン」
【振付】木下嘉人
【音楽】M.リヒター
【出演】米沢唯、池田武志、宇賀大将

 
■第二部
「Disconnect」
【振付】宝満直也(「DANCE to the Future 2016」上演作品)
【音楽】M.リヒター
【出演】五月女遥、宝満直也
 
「福田紘也」
【振付】福田紘也
【音楽】Alva Notoほか
【出演】福田紘也

 
「3匹の子ぶた」
【振付】宝満直也
【音楽】D.ショスタコーヴィチ
【出演】小野絢子、八幡顕光、福田圭吾、池田武志

 
■第三部
生演奏によるImprovisation即興
【音楽監修】笠松泰洋
【演奏】
中川俊郎(pf.)、木ノ脇道元(fl.)(18日)
スガダイロー(pf.)、室屋光一郎(vl.)(19日)
林正樹(pf.)、佐藤芳明(acc.)(20日)
【出演予定(全日)】米沢唯、貝川鐵夫、福田圭吾、木下嘉人、福田紘也、宝満直也
 
※出演を予定していた井澤駿は、怪我のため出演できなくなりました。代わりまして、小野寺雄が出演いたします。
11月18日(金)、20日(日)
『angel passes』
 井澤駿 → 小野寺雄(※全日出演)
問合せ 新国立劇場ボックスオフィス03-5352-9999
http://www.nntt.jac.go.jp/dance/
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