The Cheserasera “触発”を求めた対バンツアーがLAMP IN TERRENを迎えて大団円
LAMP IN TERREN×The Cheserasera 2016年12月2日(金)新代田FEVER 撮影=釘野 孝宏
The Cheserasera 秋の晩餐 2016 VS. Tour
2016.12.2(FRI)新代田FEVER
12月2日(金)新代田FEVERにて、The Cheserasera の対バンツアー『秋の晩餐 2016 VS. Tour』のファイナル公演が開催された。今年6月、ワンマンツアーを大成功に収めた彼らが次に求めたのは“触発”。自らがリスペクトするバンドと1対1で音楽をぶつけ合うことで、バンドとして音楽家として、まだ見ぬ境地へ挑んだ。
LAMP IN TERREN 撮影=釘野 孝宏
最後の晩餐の相手はLAMP IN TERREN。「innocence」で始めると、力強さと繊細さを併せ持つ松本のスモーキーな歌声が、会場いっぱいに広がる。「ノレるような曲をあんまり持ってこなかった」という松本のMC通り、テンポも抑え気味でじっくりと聴き入るタイプの曲が多かった。しかしライブが進行するにつれ、どんどん曲の世界に没入してゆくような、不思議な感覚に見舞われる。もちろん全員でシンガロングしたり、踊ったりすることで生まれる一体感もライブの醍醐味だ。だが、彼らの演奏には世界観を共有するような穏やかな一体感をフロアとステージの間に生みだす力がある。鼓動を彷彿とさせるリズムの「heartbeat」では瑞々しいバンドサウンドを披露し、ラストは「緑閃光」で締めくくった。
LAMP IN TERREN 撮影=釘野 孝宏
そしていよいよ、The Cheserasera。ステージに現れるなり開口一番、「無事に東京に帰ってきました!」と宍戸翼(Vo/ Gt)。今まで幾度となくツアー中にアクシデントに見舞われてきた彼らだが、なんと今回は1本目のライブを終えた帰り道に、整備したての機材車が故障したという。それでも、各地で自分たちの納得のいくライブを戦ってきたことは、ステージに揃った3人の顔に書いてあった。
油断するとニヤニヤと笑い出しそうになるのをなんとか堪えて、始まりのナンバー「ファンファーレ」をお見舞いする。そのイントロを聴いただけで、この日のライブがとんでもないものになることを確信した。ステージから飛び出した3人の歓びと音が、一瞬にして会場を駆け巡ると、その勢いのまま「BLUE」へ。美代一貴(Dr)による弾けんばかりのドラミングが前面に踊り出ると、そこに宍戸がロマンチックなギターフレーズを重ね、疾走感を保ちながらもThe Cheseraseraらしい切なさもしっかりと演出しきっていた。
The Cheserasera 撮影=釘野 孝宏
The Cheserasera 撮影=釘野 孝宏
立て続けに演奏された冒頭2曲が終わると、会場からはどよめきにも似た感嘆の声が上がり、次いで熱烈な拍手が彼らの凱旋を讃えた。やはり誰もが、彼らの演奏の変化に気付いたのだろう。まず、作り出す音のエネルギーが格段に上がった。ボリュームも然る事ながら、個々の演奏の密度が濃くなっている。たとえるなら、かつてはどちらかと言えば華奢でやや神経質なタイプだったのが、今やすっかり自信を兼ねて備えた骨太になったと言ったところだ。
宍戸の奏でるセンチメンタルなギターフレーズで始まったのは、新曲。リズム隊の織り成す優しいグルーヴと、宍戸の伸びやかな歌声で聴かせる美しいミドルナンバーだ。MCでは宍戸が、この日披露された曲以外にもツアーを通して新曲を披露してきたことを明かし、新アルバムの制作もほのめかすと、会場からは期待の拍手が沸き起こった。新曲から一気にギアチェンジし、ワイルドな重低音が唸りを上げて始まったのは「ギブミー・チョコレート」。西田裕作(Ba)による、どろりと濃厚なベースラインと宍戸の気怠げな歌声が絡み合い、怪しげな色気を放つ。「オンベース西田!」と宍戸にコールされると、これでもか、とベースを弾き倒して応えるシーンもあった。こういった曲調も似合うのが、彼らのニクいところだ。
The Cheserasera 撮影=釘野 孝宏
「自分は好きで音楽をやってきただけだけど、ガッツリ売れてやりたいことをやりたいと思う」。だから、これからも応援してほしい。終盤のMCで、ツアーを振り返った宍戸はそう語った。「目指せ武道館!」などと明確な目標を掲げて活動をするバンドは今も昔も少なくない。しかし、The Cheseraseraというバンドはそういったものとは無縁なのだと思ってきた。音楽家的な好奇心やバンド活動をよりよくする為に注力してきたことは勿論だが、そういった言葉を口にはしてこなかったし、するタイプでもないと思っていた。それがツアーを通して色々な人と関わり、ふつふつと湧きあがってくるものがあったのだろう。結果的に宍戸の当初の目論み通り“触発”された形となったのだ。
そこから本編ラストまでは、一曲ごとにベストアクトが更新されていく、そんな時間だった。MC明けの「賛美歌」がまず素晴らしかった。MCを挟んだことで力みが取れたのか、3人の演奏のスケール感が増し、会場を満たしたエモーショナルな空気と相まって、思わず感極まってしまう。観客の手拍子とともに駆け抜けた「東京タワー」や美代が立ち上がってスティックを打ち鳴らし、全員が振り絞るように演奏した「Drape」も圧巻だった。そしてラストは「月と太陽の日々」。巻き舌交じりでご機嫌に歌う宍戸が、サビ終わりの歌詞<日進月歩>のところで、拳で自分の胸をトン、と叩いてみせた。決して速い速度ではないし、立ち往生することもしばしばだったが、それでも日々、歩みを進めてきた。そしてその自負が、彼らをこんなにも強くしたのだろうか。まったく頼もしい限りだ。
LAMP IN TERREN 撮影=釘野 孝宏
アンコールではLAMP IN TERRENの松本を迎えてGRAPEVINEの「風待ち」をセッション。このツアーへの出演を熱望した宍戸が松本に送ったという長文メールから、両者共にGRAPEVINEのファンであることが発覚。このセッションに至ったらしい。MCで「僕が女だったら松本くんの嫁になってもいい」と暴露するなど熱烈な宍戸と、一貫して冷静な態度を通してきた松本だが、セッションでは初めてとは思えぬほど息の合ったハーモニーを生み出した。「秋の晩餐」のデザートよろしく、この日はダブルアンコール。最後は「僕たちが一番最初に作った曲です」と「でくの坊」で締め括り、約ひと月に渡るツアーは大団円となった。
取材・文=イシハラマイ 撮影=釘野 孝宏
2016年12月02日(金)新代田FEVER
◆LAMP IN TERREN
02. 林檎の理
03. ランデヴー
04. ボイド
05. とある木洩れ陽より
06. pellucid
07. heartbeat
08. 緑閃光
◆The Cheserasera
02.BLUE
03.butterfly(in my stomach)
04.Take me!
05.goodbye days
06.新曲
07.ギブミー・チョコレート
08.白雪
09.Yellow
10.インスタントテレビマン
11.賛美歌
12.東京タワー
13.Drape
14.月と太陽の日々
<ENCORE>
15.GRAPEVINE - 風待ち
16.ラストシーン
17.灰色の虹
18.でくの坊
2017年01月21日(土)六本木VARIT.
開場18:30 / 開演 19:00
前売:¥3,000 / 当日:¥3,500(税込・1DRINK別)
ACT : The Cheserasera、LUNKHEAD
◎一般発売日:12月10日(土)
INFO 六本木VARIT. 03-6441-0825
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