シルヴァン・カンブルラン(指揮) 読売日本交響楽団 “フランス管弦楽の精華”を聴く好企画

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クラシック
2017.1.12
シルヴァン・カンブルラン ©読響

シルヴァン・カンブルラン ©読響


 2017年1月に600回を迎える読響名曲シリーズに、常任指揮者のカンブルランが、母国フランスの近代音楽を切り開いたデュカス、ドビュッシー、ショーソンを並べたプログラムで登場する。マエストロが最も得意とするフランス音楽の粋に触れる絶好の機会だ。

 まずはデュカスの舞踊詩「ラ・ペリ」。不死の蓮を巡るペリとイスカンダル王の舞踊を、円熟期のデュカスの達者な筆先が妖しく彩る。もともとロシア・バレエ団の委嘱で書かれたが、自分の愛人を起用しようとしてディアギレフから待ったがかかった。とはいえこの愛人の存在がデュカスをして美しい音楽を書かせたのだとも言えよう。

 ドビュッシー「夜想曲」は、形を変えながらゆっくりと流れていく「雲」、にぎやかな祝祭行進を描写した「祭り」、ヴォカリーズによる女声合唱(新国立劇場合唱団)を伴う蠱惑的な「シレーヌ」からなる。ドビュッシーの詩的なファンタジーが、精妙な管弦楽法によって映像のように映しだされる。

 後半はショーソン「交響曲」。1889年から翌年に書かれたが、この頃フランスではサン=サーンスをはじめ、ラロ、フランク、ダンディらが傑作交響曲を次々に発表していた。そうした山脈にあってショーソンの交響曲はとりわけ繊細で陰影感豊かな作品として知られている。

 ところで、これらフランス管弦楽の精華は、ワーグナーを隠れテーマに聴くと一層楽しめるのではなかろうか。実はこの作曲家3人、1889年にバイロイト音楽祭に赴くなど、ワーグナーからの影響を強く受け、その影響を消化し発展させることで、新しいフランス音楽を作っていったのである。柔らかく甘美な響きの向こうに、アンチ・テーゼとしてのワーグナーの影を探ってみるのも一興だ。

文:江藤光紀
(ぶらあぼ 2016年12月号から)


シルヴァン・カンブルラン(指揮) 読売日本交響楽団
第600回 名曲シリーズ

2017.1/25(水)19:00 サントリーホール
問合せ:読響センター0570-00-4390
http://yomikyo.or.jp/
WEBぶらあぼ
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