アート+コム/ライゾマティクスリサーチ 光と動きの「ポエティクス/ストラクチャー」 思考をオフにしてメディアアートを感じる午後
アート+コム/ライゾマティクスリサーチ 光と動きの「ポエティクス/ストラクチャー」
東京の片隅で、お金をかけなくても想像力とユーモアで楽しく生活していくことを目指す、森田シナモンによる連載企画『東京の片隅で、普通に、楽しく生きていく』。毎回、さまざまな「午後」を探しながら、東京カルチャーの現在を切り取っていきます。第六回となる今回は、『アート+コム/ライゾマティクスリサーチ 光と動きの「ポエティクス/ストラクチャー」』へ。
アート+コム/ライゾマティクスリサーチの展覧会『光と動きの「ポエティクス/ストラクチャー」』が、1月14日から新宿・初台のICC(NTTインターコミュニケーション・センター)で3月20日まで開催されています。
昨今、「メディアアート」という言葉やその代表格である「ライゾマティクス」という言葉をよく聞きます。ですが、いざ「ライゾマって?」と聞かれると、「Perfumeの……」「リオ五輪の閉会式の……」「真鍋さんっていう人だよね……」という認識までで、私も恥ずかしながら実態をつかめていません。
というわけで、ライゾマティクスリサーチ(Rhizomatiks Research)について調べてみました。
●メディアアートやデータアートといった研究開発要素の強いプロジェクトを中心に扱う
●アーティストやデザイナー、プログラマーといった多様な領域の専門家で構成され、リサーチにもとづいてアートやエンターテインメントとテクノロジーをつなぐ活動を行っている
●研究開発セクションを設け、そうした活動の中から、技術的な開発やアップデートを自社で行い、新しい芸術表現を生み出していく
と、だんだん説明も複雑になってきました。シンプルに考えてみると、「新技術があるから、アートに使ってみるか」というよりかは、「こうゆうこと表現したい(ってクライアントがいる)から、それができる技術を開発しました」ということなんでしょうか。アートと科学の融合というより、アートを科学の進歩に足並みをあわせて作っているということなのでしょうね。
この5体の鏡がダンスをする
さて、そのライゾマティクスリサーチが今回発表する新作《distortion》は、鑑賞者の位置情報とアルゴリズムを用いて、仮想世界のオブジェクトと実世界のオブジェクトの位置を決定し、その様子を映像とLEDオブジェを通じて鑑賞するというもの。近年彼らがともに研究をしてきたダンスユニット「イレブンプレイ」との、ダンスとオブジェクトの関係性を研究するプロジェクトの延長上に位置する作品です。
文字にすると難しいのですが、私は、鏡に映る自分=仮想世界のオブジェクトと、それを見ている実際の自分の位置関係を変化させてみるという楽しみ方をしてみました。 ちなみに、Perfumeの演出の元となっているのが、「イレブンプレイ」の実験だそうです。今回の作品もPerfumeのステージに入る感覚に似ているといえばよいのでしょうか。「イレブンプレイ」の実験については、開場に記録映像がありますので、ぜひご覧になってみて下さい。
イレブンプレイのパフォーマンス記録映像
一方、今回ライゾマティクスリサーチと競演するアート+コムは、ドイツ・ベルリンを拠点にビジネスや科学研究などの分野において、デジタルメディアを用いたインスタレーションや空間の設計・開発を手がけてきた組織です。設立は1988年で、ライゾマの先輩のような存在といえるのでしょう。
彼らのクライアントは、ドイツ銀行、BMW、チャンギ国際空港など
今回のアート+コムの作品《RGB|CMYK Kinetic》は、2015年にバルセロナで開催された音楽とアートとテクノロジーの祭典『ソナー・フェスティバル』で発表した《RGB|CMY Kinetic》のアップデート版(コンプリート版ともいわれている)となります。おぉ、あのソナーに……!
5枚の天井から吊られた円盤のミラーディスクが空間内を動き回る。そこに光の3原色である、赤・緑・青(RGB)のスポットライトがあたり、円盤の前に3色の影を落とす。その影はさらに光の反射で円盤の後ろに、シアン・マゼンダ・イエロー(CMY)の影を作る。そこに色が重なり合ったときにできるのモノクロ(K)が加わる。それによって、《RGB|CMY Kinetic》が成立する……という、少々難解な科学の世界がこのアートを作っているのです。
しかし、実際この作品の前にたつと、この円盤の美しい輝きと床に落ちるカラフルな影のダンス、音楽家 オーラヴル・アルナルズが作ったなんとも美しい音楽に、心が浄化されていくようでした。そう感じるのはきっと私だけではないはず。
本展では「光と動き」という要素を、アート+コムとライゾマティクスリサーチの2組がどのように表現しているかを「ポエティクス(詩学)」「ストラクチャー(構造)」を軸に据えて展観する、というストーリーになっています。ですが、それはあくまで楽しみ方の一つの手がかりでしかありません。2組とも、楽しむ側の私たちの思考をプログラミングしてはいないわけですから、まずは、いつもの自分の思考回路をオフにして、そこにある光と音だけを感じてみてはいかがでしょうか。
光と動きの「ポエティクス/ストラクチャー」
会期:2017年1月14日(土)~3月20日(月・祝)
会場:NTTインターコミュニケーション・センター [ICC] ギャラリーA
開館時間:午前11時—午後6時(入館は閉館の30分前まで)
*金曜日,土曜日は開館時間延長 午前11時—午後8時(入館は閉館の30分前まで)
休館日:月曜日,保守点検日(2/12)
入場料:一般・大学生 500円(400円)/高校生以下無料
*( )内は15名様以上の団体料金
主催:NTTインターコミュニケーション・センター [ICC]
住所:〒163-1404 東京都新宿区西新宿3-20-2 東京オペラシティタワー4階
アクセス:京王新線初台駅東口から徒歩2分
お問い合わせ:0120-144199(フリーダイヤル)
E-mail:query@ntticc.or.jp
URL:http://www.ntticc.or.jp/