升毅、劇団レトルト内閣、桂あやめら5団体出演! 音楽×芸能の祭典『VIVA!ミュージックアート館2017』記者会見レポート
「VIVA!ミュージックアート館2017」会見より(撮影/石橋法子)
2014年2月、大阪の新ランドマーク「あべのハルカス」近鉄本店ウイング館8階に再オープンを果たした近鉄アート館。翌年より、毎年恒例となったオープン記念イベント『VIVA!ミュージックアート館2017』が今年も開催される。第3回目となった今回も伝統芸能から、お笑い、小劇場まで幅広い分野から5団体が参加。三方囲みの可動式客席という劇場の持ち味を活かしつつ、”音楽を使った演目”をそれぞれ上演する。大阪で開かれた記者会見の模様をレポートする。
「生演奏付きというのが、他の演劇祭にない特徴です」(東野)
初回から「VIVA!ミュージックアート館」の企画に関わる東野ひろあき
企画・構成・演出業/東野ひろあき:他の演劇祭と違うのは、お芝居でもトークでも、全公演に生演奏が付いていること。楽器は普通各劇団が借りるとすごい手間とお金がかかりますが、このシリーズでは劇場が期間中借りてくれるので、今年も笑い満載、アクション系、パロディもの、古典芸の遊びまでバラエティに富んだ5団体が集まりました。じつは今年は難しくても、来年以降で調整してほしいとお声掛けしている劇団がいくつかあるので、今後も規模やバリエーションを増やして続けていきたいイベントです。
【1】<第一弾:伊藤えん魔プロデュース『アニソン・ヴィランズ』>
ビデオコメントで参加した『アニソン・ヴィランズ』作・演出・出演の伊藤えん魔
伊藤えん魔(ビデオコメント):昨年の『兄貴歌/アニソン!』では、みんなの大好きなヒーローたちが落ちぶれて今人気のキャラクターたちに嫉妬して、それでもなおかつヒーローとして活躍するという物語でした。今回は設定をガラッと180度裏側に設定しまして、悪役たちがどういう風にそれを見ていたのか、さらに悪役たちがこの時代にいかに生き残るかを模索するようなお話を音楽ライブに乗せて届けようと思います。僕はベースを弾き、役者全員歌い踊るという作品。楽器も全員が演奏しますので、そこは他の団体にはないうちの見所だと思います。ある意味ブロードウェイに一番近い作品になるだろうと。芝居は下手だが楽器は上手いと言われてきた僕ですので、メンバーも全員「芝居は下手だが楽器は上手い」やつを揃えました(笑)。
【2】<第二弾:升毅presents『The Talking Music Show!』>
『The Talking Music Show!』に出演する升毅
升毅:もともと主宰していた劇団MOTHERのホームグラウンドが近鉄アート館でしたので、とっても思い入れのある劇場です。3年前の再オープンでは長く演じている『一郎ちゃんがいく。』というお芝居で、オープニングを飾らせていただきました。基本的に音楽系の俳優ではないので、ミュージックアート館には参加するスペースがないなと思っていたところ、3回目に東野さんからお声掛けをいただきまして、演奏は常にバンドが後ろにいるのでと言われ、それならと参加を決めました。出演にはコング桑田、松尾貴史、後藤ひろひとという”癖のあるおじさん”たちを集めてみました。統一のテーマがあるわけではなく、それぞれがそれぞれの思いで”何かをやる”というコンセプトにしました。コング桑田は神父姿で今の日本に物申すみたいなゴスペルを歌うことになるのか。松尾さん、後藤さんは企画力もあり、喋らせたらいつまででも喋り続ける人たちなので、面白おかしいことを持ってきてくれると思います。僕は宝塚OGの月影瞳さん、初嶺麿代さんと3人で、朗読コメディのようなものから歌ネタに、みたいなことをやろうと思っています。
【3】<第三弾:春野恵子『LIVE! KEIKO HARUNO』>
企画・構成/東野ひろあき:浪曲師の春野恵子さんから、浪曲を広めたいと相談を受けて、ロックに乗せてやってみるかと昨年始めたのが「ロウキョックンロール」です。本人も歌が好きで、昔ロックバンドで歌っていたこともあったので。内容は浪曲の語りの部分を間に入れながら、ヒット曲に乗せて歌い綴るというもの。彼女いわく、浪曲はもともと三味線に乗せて歌って語る一人ミュージカルで、それをバンドに変えたのが「ロウキョックンロール」だと。25~30分の話を2本立てで、間に趣向も入れながら披露しようと思います。
【4】<第四弾:劇団レトルト内閣『オフィス座の怪人』>
劇団レトルト内閣の座長、川内信弥
川内信弥:大阪の小劇場で15年ほど活動歴がある、劇団レトルト内閣です。脚本・演出の三名刺繍が作詞・作曲をして曲を作ることができるので、ずっと音楽劇のスタイルでやっています。最近では戦後70年の日本の歴史や、在日コリアンの実業家の一生など、重厚な大河ドラマのようなものを描くことが多いのですが、今回は自分たちの武器を残しつつ、少しライトにいつもと毛色を変えて考えた作品です。某有名ミュージカルを連想されると思いますが、前代未聞の音楽劇になったと自負しております。劇団員の福田恵は橋下市長時代に一躍脚光を浴びた公務員漫才コンビ「安定志向」という別の顔を持つ俳優で、彼女が作品に絡んできます。詳しくは福田から。
劇団レトルト内閣『オフィス座の怪人』に出演する福田恵
福田恵:恐らく5大紙で”公務員漫才師”という肩書きで紹介されたのは、日本で私が初めてではないかと自負しております。今回は”見れば必ず出世する音楽劇”との位置付けです。劇団員もそれぞれ働きながらの30代メンバーが中心で、仕事の悩みでお酒が飲める程度には大人になってきました。そういう日頃の悩みを作品に盛り込んだ、サラリーマンの出世がテーマの物語です。特に重要なのが時期ですが、公演日である3月10日、11日は…そうです!人事異動直前の時期です。社内評価のすごく気になる時期なんです。我々の作品を見ていただければ社内評価は確実に上がることをお約束いたします。ここからは、サックスの武井努さんの演奏と共に作品を紹介します。
福田の解説に即興で伴奏するサックス奏者・武井努
作品中に紹介されるノウハウから、「女子社員は上司をお土産でランキングしている」。これがどういうことなのか、作中で明かされると思います。また、送別会、歓迎会シーズンに向けて「無礼講は都市伝説か」。無礼と無礼講の境界線を皆様にお知らせしたいと思います。最後にキーワードをひとつ。「このお店、アサヒですか? キリンですか?」。この言葉を使うことで、サラリーマン生活が格段にアップすることをお伝えしたい。その他、サラリーマンキーワードを盛り込みながら、有名ミュージシャンの生演奏をバックにおくる豪華なお芝居です。
”見れば必ず出世する音楽劇”を解説する福田恵
【5】<第五弾 うたげきシリーズ Vol.3『喝采』>
うたげきシリーズvol.3『喝采』に出演する、桂あやめ
桂あやめ:昨年に引き続き今年も出演できるこを嬉しく思っています。アート館の舞台に立ったのは、平成6年6月6日の桂あやめ襲名披露公演以来でした。普段は落語家として正面を向いて座布団に座っていますので、立ち姿を後ろからも横からも見られて、背中に緊張が走りました(笑)。今年は以前から演じてみたかった女囚もの。愛する人のためにバカバカしい罪を犯したという共通点がある女たちの物語です。好きになったらアホになる、女心を見ていただきたい。それぞれ生演奏に乗せて好きな昭和歌謡を歌わせていただきます。多分お客さんも歌えるような芝居だと思うのでお楽しみに。
うたげきシリーズvol.3「喝采」に出演する、内海英華
内海英華:ご覧の通り4人ともそこそこ生きて来ておりますので、歌にいろんな感情が乗って、演じているのか、お芝居の中で生きているのか。その辺り、一人ひとりを見て楽しんでいただければ。普段は三味線を持っていますが、今回は手ぶらなので初めてのことに多少緊張していますが、がんばりたいと思います。
うたげきシリーズvol.3「喝采」に出演する、めぐまりこ
めぐまりこ:ものまね芸人をしながら女優をやっております、めぐまりこです。うたげきシリーズ全3回に出ているのは、私とNON STYLEの石田くんぐらいやと思います。今回私は、ちあきなおみさんの歌を歌わせていただきます。他のステージで私が歌うとなると、どうしてもコロッケさん風になるんちゃうかと思われがちなので、やはり芝居の中で歌いたい。最初、脚本の東野さんは女囚ものと聞いて2、3歩引いていたんですが、「そこを面白おかしく書けるのが東野さんやないですか」と説得しまして。書き始めたらえらい乗りはって、「今までで一番いい作品や!」って(笑)。私からは”好きな人のために罪をおかした美人犯罪者”ということだけ、リクエストさせていただきました。お茶目にコミカルに、楽しい作品になっております。
「美人かどうかまで東野さんに任したら悪いで」(あやめ)、「芸人の中では美人枠ですけど!?」(めぐまりこ)
ヴァチスト太田:美人の中に入れていただき光栄です。普段は東京のワハハ本舗という劇団で活動しています。下品ではなく”お下品”にまいりたいと思います。ぜひ見に来てください。
うたげきシリーズvol.3「喝采」に出演する、ヴァチスト太田
質疑応答
--升さんに。出演者全員が揃う場面はお考えですか?
升:オープニングとエンディングは全員が揃います。オープニングはラインナップで見せて、エンディングは全員でひとつのものをと考えています。僕自身楽器は演奏しませんが、歌は全員歌います。昭和演歌、昭和歌謡になると思います。
--桂あやめさんに。去年はチャーリーズ・エンジェルがモチーフでしたが、今回もイメージする題材はありますか?
桂あやめ:題材はとくにありませんが、私は「ざんげの値打ちもない」を歌います。これだけで、だいたいどんな女か分かると思います(笑)。何でここ(刑務所)に入ったのか、どんな男が好きなのかの独白があり、好きな人にもっぺん抱き締められたいと思っている。
めぐまりこ:”切な笑ける”芝居です。
東野:例えるなら、火曜サスペンスです。
めぐまりこ:衣装は囚人服が基本ですが、回想シーンや歌の場面では早着替えもします。あと、石田くんですが前回までは漫才師として劇場の出番があるので、稽古時間を取るのが難しかったのですが、”あの事件”以来いまはピンで活動しているので、今回は堂々と稽古時間が取れるので、「みんな喜んでいる」とは伝えています(笑)。
--石田さんは、うたげきシリーズについては何と?
めぐまりこ:毎年出たいと言っています。ほぼ無理矢理言わせてるんですけれども(笑)。彼は脚本・演出家でもあるので、お芝居に対しては、漫才とおんなじぐらい情熱を持っている。東野さんの作品にもすごく感じるものがあって、毎年呼んでもらえるのが嬉しいって、いつも焼酎飲みながら言ってます(笑)。今回は男一人なので、看守、誰かの面会に来た息子、その他いろんな役をやってもらうつもりです。
--『オフィス座の怪人』はオムニバスですか?
川内:某有名ミュージカルを日本のオフィス社会に置き換えたような一本の物語です。坂口修一さん演じる怪人が、例の仮面をつけて出てきます。
福田:サラリーマンがオフィスの地下にいる怪人にいろいろと教えてもらいながら、出世していく話ですね。サックスの武井さんをはじめ、ミュージシャンは劇団員ではなく、今回のためにいろんなところで活躍されているプロの方々に集まっていただきました。また、役者も劇団員は3人だけ。あとは坂口修一さん、元OSK日本歌劇団トップ娘役の若木志帆さんなど、音楽劇というテーマに向けて、私たちにはできない得意技を持っている方々にたくさん集まっていただきました。
音楽劇にふさわしい実力派の役者とミュージシャンを揃えたという川内と福田
ーー元ネタのミュージカルは音楽も有名ですが、そこもオマージュされる?
川内:全10曲ほどありますが、すべて劇団のオリジナルでの構成です。
三名刺繍:普段はエレガンスロックと銘打っているのですが、今回はそれに加えて1曲はバロックの名曲をジャズアレンジでやりたい。あと2曲は楽団の方が作曲してくださり、サックスの武井さんの曲はテイスト的にはヘビメタです。劇団としてもクラシック、ジャズ、ポップスありと、多彩な音楽を楽しんでいただけるかなと思います。
劇団レトルト内閣『オフィス座の怪人』脚本・演出・音楽の三名刺繍
--升さんにとって近鉄アート館の存在とは。
升:劇団MOTHERとしては、みんながアート館を三方囲みで使うなら僕らは四方囲みにしようと始めて、それがうちのオリジナルの形になったので。アート館がなかったら劇団の魅力も半減していたと思います。百貨店の中にあるという立地も当時としては珍しく、足りないものがすぐ買いに行けて、公演終わりもすぐ飲みに行けるとか、すごい便利だった。劇場事態がおもちゃ箱をひっくり返したみたいなイメージがあって。芝居や落語、展示会、いろんなことできるスペースが貴重で有り難かった。閉館したときは想像を絶するほどショックでしたが、再開してくれたので。関西の小劇場だけでなく、いろんな方面の方たちが使って、大阪文化を盛り上げる拠点になってくれればなと思う劇場です。
--升さんに。5団体の会見を聞いて、どんな8日間になりそうですか?
升:脈絡のない面白いものになるんじゃないですか(笑)。ほんとに、これだけいろんなものが集まる企画は他にないので。通し券とかあったらいいなと思います。それくらい、みなさんの話を聞いていて、見に行きたいなと思ったので。お好きなカラーをと言うよりも、全カラー楽しんでいただけるものになっていると思います。
「VIVA!ミュージックアート館2017」会見より
『アニソン・ヴィランズ』
2017年3月3日(金)~5日(日)
■会場:近鉄アート館
■作・演出:伊藤えん魔
■出演:宮都謹次、行澤孝(劇団赤鬼)、鈴木洋平、maechang(BLACK★TIGHTS)、長谷川健、西原希蓉美(満月動物園)、イトウエリ(空の驛舎)、天野美帆、宮崎梨緒(Lovelys!!!!)、八木沙季(Lovelys!!!!)、南光愛美(劇団猫の森)ほか
■出演・演奏:平林之英(Sunday)[Sax]、後藤篤哉(Camp.06)[Gt]、下芽良[Gt]、山田直樹[AGt]、石原卓[Key]、角本尚代[Key]、楠美さえこ[Pf]、上田ぢゃか[Dr]、伊藤えん魔[Bs]
■dance&振付:尾沢奈津子(N-Trance Fish)ほか
『The Talking Music Show!』
〜しゃべって歌うおかしな男と女たちの宴〜
■2017年3月8日(水)開演19:00
■会場:近鉄アート館
■企画・構成・台本:東野ひろあき
■出演:升毅、松尾貴史、後藤ひろひと、コング桑田、月影瞳(元宝塚歌劇団トップ娘役)、初嶺麿代(元宝塚歌劇団 男役)
■演奏:赤石香喜(Piano)、東野ひろあき(A.Guitar)、YAMA-Boo(E.Guitar)、梅沢茂樹(Bass)、中村皓(Drums)
『LIVE! KEIKO HARUNO』
〜ロウキョックンロールTOUR 2017〜
■2017年3月9日(木)開演19:00
■会場:近鉄アート館
■企画・構成:東野ひろあき
■音楽監督・編曲:赤石香喜
■出演:春野恵子(Vo & Roukyoku)
■演奏:赤石香喜(Piano)、東野ひろあき(A.Guitar)、YAMA-Boo(E.Guitar)、梅沢茂樹(Bass)、中村皓(Drums)
『オフィス座の怪人』
■2017年3月10日(金)、11日(土)
■会場:近鉄アート館
■脚本・演出・音楽:三名刺繍
■出演:川内信弥、福田恵、たはらもえ、坂口修一、若木志帆、久家順平(舞夢プロ)、杉本レイコ(カラ/フル)、後藤啓太(ベイビープレイ)、小佐田貢、福良千尋、小川弦之介、野村亮太(やまだのむら)、森陽平、高橋宏太(A-Light)、坂口勝紀(劇団暇だけどステキ)、森口稜、今西由夏、寺井竜哉
■演奏:武井努(Sax)、菱沼カンタ(Guitar)、井上歩(Bass)、原口裕司(Drums)
『喝采』〜そんなこと言うたかてランナウェイ!〜
■2017年3月12日(日)開演17:00
■会場:近鉄アート館
■脚本・演出:東野ひろあき
■出演:桂あやめ、めぐまりこ、内海英華、ヴァチスト太田
■ゲスト:NON STYLE 石田明
■演奏:大西楽団