ロンドン発のメガヒット・ミュージカル『ビリー・エリオット~リトル・ダンサー~』の日本初演に挑む吉田鋼太郎にインタビュー

インタビュー
舞台
2017.2.17
吉田鋼太郎(撮影:中田智章)

吉田鋼太郎(撮影:中田智章)


2006年のオリヴィエ賞では最優秀ミュージカル賞を含む3部門を受賞。さらに2009年のトニー賞では作品賞をはじめ10冠を達成した、ロンドン発のメガヒット・ミュージカル『ビリー・エリオット~リトル・ダンサー~』が、今夏いよいよ日本に初上陸する。本作は2000年公開の同名映画をもとに、バレエダンサーの夢を追って寂れゆく炭鉱町を飛び立っていく少年と、さまざまな思いを胸にその姿を見守る人たちが織りなす感動のドラマ。その日本初演で主人公ビリーの父親役を益岡徹とWキャストで演じる、吉田鋼太郎に意気込みを聞いた。

吉田鋼太郎(撮影:中田智章)

吉田鋼太郎(撮影:中田智章)

――出演が決まる以前に、基となった映画をご覧になっていたとか。

劇場公開からしばらく経ってですね、DVDで。あれからもう15年くらい経っているのかな。その間、「リトル・ダンサー」という映画が、なぜか自分の中で“複雑なドラマ”だという認識になっていて。でも最近見直してみたら、すごくシンプルで分かりやすく、「あれ、何でだろう?」と。たぶんね、役者がうますぎるんですよ。いろいろと絡み合った作品のテーマをステレオタイプにじゃなく、きちんとリアルに届けてくれたから、フィクションらしくなかったというか。よくできているなと思いました。自分とは別の世界の話っていうような見方をしていた気もします。

――その映画がミュージカルになり、ウエストエンドやブロードウェイで大変な人気となりました。舞台版をご覧になったことがないそうですが、「どんなステージになるのだろう」と想像ができますか?

いや、全然。以前出演した『デスノート THE MUSICAL』も漫画からミュージカルになったじゃないですか。あれも「まさか」って感じだったので。それでも舞台になっちゃうわけだから。『マイ・フェア・レディ』や『メリー・ポピンズ』のような、いわゆるミュージカルな作品がある一方、僕が出た『ブラッド・ブラザーズ』のようなリアルな人間ドラマに重きを置いた異色作もある。「こんな話も歌いあげちゃうのか」って、ミュージカルの奥の深さに驚きっぱなしです。

――『デスノート THE MUSICAL』のリュークはハマり役でしたね。

いや、ほんとにスミマセン。歌のうまい、達者な人たちの間に入って、何とかして目立とう目立とうとしていた。悪目立ち芝居でしたね……反省しているんです(苦笑)。

――その経験を踏まえ、『ビリー・エリオット』にはどんな気持ちで臨まれるのでしょう?

たまに観客としてミュージカルを観ていて、ノッキングするところがあって。「お芝居がちゃんと成立していないのに、どうして歌があるんだろう?」「芝居をなくして歌だけでいいじゃん」と思ってしまうんですよ。芝居の部分がしっかりしていないと、歌っていてもむなしいだけ。『デスノート The Musical』の時は、そこを気を付けてやろうと思いながら、仲間に入れていただいたので。今回も同じ気持ちです。ただの歌の披露会になってしまったら、つまんない。どんなにその役者の歌がうまくてもね。今回、演出家が海外の方なので、リアリズムを基礎にきっちりお芝居を作ってくださるはず。そこは期待しています。

吉田鋼太郎(撮影:中田智章)

吉田鋼太郎(撮影:中田智章)

――鋼太郎さん演じる炭鉱夫としての生き方しか知らない父親と、そんな父とは別の生き方を見つける息子。二人の葛藤も本作の見どころの一つです。

生まれた時から人生のレールが敷かれていて、その上を歩んでいくのが当たり前。抵抗するどころか、別の道を行きたいと思ったことさえなかった人ですよね、父親は。でも息子には当たり前じゃない道があることに気付く。僕もそこが本作の一番感動的な部分じゃないかなと思います。そのためにはまず、「バレエダンサーになるなんてあり得ない」って思っている人間をがっちり作らないといけない。それが父親を演じるうえで一番大事にしなきゃいけない使命かなと思っています。

本作ではたまたま父子の物語として描かれているけれど、どんな人間関係においてもまったく違う価値観に感化される瞬間っていうのが起こりうるんですよね。おそらく今の日本にも「何かに挑戦してみたいけど、才能がないからできない」「特別なことはできないから、与えられた仕事をただこなすだけ」と思って生きている人が多いはず。そんな人たちに本作を観て、人間の可能性について気付いてもらえればと。

――鋼太郎さんの父親役、とても楽しみです! が、大変申し訳ないのですが、子役が活躍するような家族向け作品に出られているイメージがあまりなく……。

そうですね、どっちかというと子役がメインの芝居を避けてきたところがあるので。まあ、オファー自体なかったですが(笑)。以前、子どもたちの演技に大人たちがいかにも合わせているって感じの舞台を観たことがあって、それってどうなんだろうと。ぶつかり合いやコミュニケーションから生まれた芝居じゃないじゃないかって。もちろん、子役たちは言われたことを一生懸命にやっていたはず。でも失礼ながら、僕はやっぱり子どもにだって“それ以上”を求めちゃう。求めちゃいけないって分かっていても(苦笑)。

ただね、ビリー役の子たちの稽古を見に行ったら、いや~、すごかったんです。みんなそれぞれに個性豊かで、才能もあって。バク転の稽古をしていたんですが、なかなか先生が厳しくてね。ダメ出ししながら、何回も何回もやらせるんですよ。でもみんな、目をキラキラ輝かせながら嬉々として取り組んでいて。その時にちょっと反省しました。子役に対する自分の偏見を(苦笑)。

吉田鋼太郎(撮影:中田智章)

吉田鋼太郎(撮影:中田智章)

――今回、稽古期間も入れると半年近くの長丁場の公演になります。

全部で126ステージあるんですよね。こんなに長い公演、初めてですよ! (キャストやスタッフと)ずーっと一緒なんでね、他人行儀にしていても仕方がない。子どもとか大人とか関係なく、みんなでずけずけ言い合える関係になれればいいなと。あと、不摂生しないようにしないとね。声がガラガラになったりしたらヤバいから。そこはちょっと観念して、公演期間中はこの作品に奉仕する覚悟でいます。

――ちなみに、“夢見る少年の物語”にひっかけ、58歳となった鋼太郎さんの今の夢や目標など、もしあれば教えていただけますか?

蜷川(幸雄)さんの遺志を継ぎ、彩の国シェイクスピア・シリーズを演出することになったので、蜷川さんに恥ずかしくない舞台を作るっていうのが今の目標ですね。自分が勉強してきたこと、自分の中に蓄積してきたものを惜しみなく出して、蜷川さんが残してくれたエッセンスとうまくミックスさせ、面白いものを作れればいいなと思います。

――最後に、公演を楽しみにしている観客の皆さんにメッセージをいただけますか。

昔も今も変わらず、いろんな意味で閉塞しているこの世の中で、夢を追いかけている人、新しいことにチャレンジしたいと思っている人、今の生き方を変えたいと思っている人などなど……たくさんいるでしょう。そういう人たちの背中を「やればできる」「不可能なことはない」とちょっとでも押せるような作品になればいいなと。そのために誠実に、とにかく誠実に僕らは芝居を作っていくしかないんで。いい舞台をお届けできるように頑張りますので、ご期待ください。

――鋼太郎さんのチュチュ姿を見るのが今から待ちきれません!

もう、どんどん着せていただきます。って、着るのは最後だけで、ずっとその恰好というわけじゃないからね!

吉田鋼太郎(撮影:中田智章)

吉田鋼太郎(撮影:中田智章)

取材・文:兵藤あおみ   写真撮影:中田智章

公演情報
 
ダイワハウスpresents  ミュージカル 『ビリー・エリオット~リトル・ダンサー~』
 
<プレビュー公演>
■公演期間:2017年7月19日(水)~7月23日(日)
■会場:TBS赤坂ACTシアター
■料金(全席指定、消費税込):S席12,500円、A席8,500円
 
<東京公演>
■公演期間:2017年7月25日(火)~10月1日(日) 全100回予定(プレビュー公演含む)
■■会場:TBS赤坂ACTシアター
料金(全席指定、消費税込):S席13,500円、A席9,500円
 
<大阪公演>
■公演期間:2017年10月15日(日)~11月4日(土) 全26回予定
■会場:梅田芸術劇場 メインホール
■料金(全席指定、消費税込):S席13,500円、A席9,500円、B席5,500円
 
発売スケジュール>
2017年3月11日(土) プレビュー公演/東京公演前期(7月、8月分) 一般発売
2017年6月03日(土)  大阪公演 一般発売
※東京公演後期分(9月、10月分)の発売日については後日発表
 
の問い合わせ>
ホリプロセンター   03-3490-4949(平日10am~6pm/土10am~1pm/日祝・休)
 
<キャスト>
加藤航世 木村咲哉 前田晴翔 未来和樹/吉田鋼太郎 益岡徹/柚希礼音 島田歌穂
久野綾希子 根岸季衣/藤岡正明 中河内雅貴/小林正寛/栗山廉(Kバレエ カンパニー) 大貫勇輔
 
森山大輔 家塚敦子 大塚たかし 加賀谷真聡 北村 毅 佐々木誠 高橋卓士 辰巳智秋 橋本好弘 羽鳥翔太
原慎一郎 丸山泰右 横沢健司 木村晶子 小島亜莉沙 竹内晶美 三木麻衣子 秋山綾香 井上花菜 出口稚子
 
古賀 瑠 城野立樹 持田唯颯 山口れん 香好 佐々木琴花 夏川あさひ
遠藤美緒 大久保妃織 小野梓 久保井まい子 佐々木佳音 高畠美野 近貞月乃 並木月渚 新里藍那 堀越友里愛
小溝 凪 笹川幹太 山城 力 岡野凜音 菊井凜人 桜井 宙
 
<ロンドンオリジナルスタッフ>
■脚本・歌詞:リー・ホール
■演出:スティーヴン・ダルドリー
■音楽:エルトン・ジョン
■振付:ピーター・ダーリング
■美術:イアン・マックニール
■演出助手:ジュリアン・ウェバー
■衣裳:ニッキー・ジリブランド
■照明:リック・フィッシャー
■音響:ポール・アルディッティ
■オーケストレーション:マーティン・コック
 
<日本公演スタッフ>
翻訳:常田景子
訳詞:高橋亜子
演出補:甲斐マサヒロ
振付補:前田清実
音楽監督補:鎮守めぐみ
歌唱指導:山川高風
照明補:大島祐夫
音響補:山本浩ー
衣裳補:阿部朱美
ヘアメイク:studio AD
擬闘:栗原直樹
演出助手:西祐子、伴・眞里子
舞台監督:徳永泰子
技術監督:小林清隆
プロダクション・マネージャー:金井勇一郎
 
<コーチ協力>
バレエコーチ:K-BALLET SCHOOL
タップコーチ:Higuchi Dance Studio
アクロバットコーチ:コナミスポーツクラブ
 
■主催:TBS / ホリプロ/ 梅田芸術劇場 /WOWOW
■Billy Elliot the Musical worldwide is produced worldwide by Universal Stage Productions, Working Title Films and Old Vic Productions and is based on the Universal Pictures/Studio Canal film.
■特別協賛:大和ハウス工業株式会社
■協賛:イープラス こだま印刷 ジェイワールドトラベル
 
■日本公演公式サイト:http://www.billyjapan.com/
■日本公演公式ツイッター https://twitter.com/Billy_Japan
■日本公演公式フェイスブック https://www.facebook.com/BillyJapan

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