「感ピ」ではなくあえて「感エロ」と略されるバンド・感覚ピエロの実像と現在地に迫った

インタビュー
音楽
2017.3.9
感覚ピエロ 撮影=菊池貴裕

感覚ピエロ 撮影=菊池貴裕

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もし、彼らのことをよく知らずにこのページを覗いた方ファイタとしても、まあ、この写真を見た時点でだいたい察してもらえると思うが、枠にとらわれることなく、スタイリッシュで、聴く者を勇気づけるエールあり、艶……もといエロあり、となんでもアリなスタイルでその勢いを加速させているバンド。それが感覚ピエロだ。今回は新作『等身大アンバランス』をリリースしたばかりの彼らを、上京中にキャッチ。制作風景からバンドのキャラクター、さらには東名阪のZepp公演を含むツアーに向けてなど、じっくり語ってもらった。

──2月22日にミニアルバム『等身大アンバランス』をリリースされましたが、タイトル曲にはストリングスが入っていたりして、大きい場所でも映えそうな印象がありました。今作のタームとしては、昨年6月に『不可能可能化』のリリースがあって、8月には「加速エモーション」をYouTubeで公開されていたわけですけど、制作するにあたって考えていたものはありましたか?

横山直弘:このアルバムを制作することになったとき、最初にリードトラックにしようと思っていたのが「加速エモーション」だったんですよ。だから、次のアルバムはこの曲が引っ張っていく認識でいたんですけど、Twitterのプロモトレンドと連動して、受験生の応援歌という形で世の中に出すという企画をいただいて、そのときに作った曲が「等身大アンバランス」で。この曲のスケール感だったり、テーマだったりというものが、思いのほか今の感覚ピエロが一番伝えたいものでもあったので、これを中心にしたものにしようっていうことで、ようやく全体像が見え始めたんですよね。

──「加速エモーション」を作っていたときはどんなことを考えていたんですか?

横山:この曲は秋月が曲の土台を持ってきてくれたんですけど……「加速エモーション」を作ったときはどんなこと考えてたんですか?

秋月琢登:これはインタビュー越しのインタビューってこと?

横山:ははははは(笑)。

秋月:あの曲は、それこそタイトルになっている“加速”を象徴したものというか。疾走感があって、勇気づけられるような楽曲をテーマにして作ったんですよ。で、今回の作品は2017年に出す1枚目というところで、勢いをつけてやっていこう、みんなも前向きにやっていこうみたいなテーマでした。そこからもうひとつ、前向きで、よりスケールの広い「等身大アンバランス」ができて。でも最初は、アルバムタイトルは違うものにしようと思っていたんですよ。

──曲題と作品題は別のものにする予定だったと。

秋月:そうです。でも、ジャケットを作っていたときに「等身大アンバランス」でいいかなと思って。それをメンバーに伝えて、そのまま作品のタイトルにもなったっていうのが流れですね。

──「加速エモーション」と「等身大アンバランス」は、秋月さんと横山さんが作曲を共作されていますが、今までこういう作り方は?

横山:なかったですね。彼が作る曲は全部彼が持ってきて、僕が作るものは僕が全部作る形だったんですけど、ちょっと柔軟にやってみないかということになって。その2曲に関しては、サビとかを秋月が持ってきて、じゃあちょっと肉付けしますっていうふうに、僕が他のところを作ったんですけど。

秋月:だからまぁ、(横山が)卸工場みたいな感じですね。

横山:下請けなんで。

秋月:そうやって作ったものをバンドで編曲して、最後に歌詞を乗せるっていう流れだったんですけど、わりとスピードも速かったし、これはこれでまたパターンとしてひとつあってもいいんじゃないかっていう。

西尾健太:「加速エモーション」って、一回スタジオ入ったぐらいやったよな?

秋月:せやね。ある程度作ったものを持って行って。

西尾:本当にスムーズだったんですよ。もうスっとできたんで。「等身大アンバランス」もそうやったし、意外とこの作り方はあってるのかなと思ったりもしました。

感覚ピエロ 撮影=菊池貴裕

感覚ピエロ 撮影=菊池貴裕

──そうなると、横山さんが下請けとして作る曲が増えていきそうな……。

横山:まぁ、仕方ないでしょう(笑)。でも、楽しいですよ。僕の中からは絶対生まれない素材を肉付けしていく作業だったので、そこで新しい刺激がありましたね。下請けといえどもね、極上の商品を提供できるようにしようと思ってましたし。

秋月:だいたい僕か横山が曲を作ってるんですけど、最初のころは横山発信の曲が多かったんですよ。それが最近は(横山)8:(秋月)2ぐらい?

横山:そうだね。

秋月:4年目にして割合が変わってきていて。これがあと5年もしたら1:9とかになるかもしれないですけど(一同笑)。でも、横山的には──あぁ、下請け的にか?

横山:そうっすね。工場的には。

秋月:いい刺激なんじゃないですかね。マンネリをふせぐというか。

横山:そういう作り方だったこともあって、今回のアルバムって、トータルで見ても今までの作品と色が違う感じになっているというか。僕は“シュッとしたアルバムができた”って表現してるんですけど、リスナーさんが聴いたときに、“今、これを聴いている俺ってなんかいけてるかもしれない”みたいな感じが初めて出せたアルバムかなと思ってますね。工場長的には。

秋月:お前、“長”やったんや?(笑)

──でも、聴いている人が「なんかいけてるかもしれない」っていう気持ちになれる音楽ってすごくいいと思うんですよ。そこは感覚ピエロの曲が持っている艶っぽさの部分と関連しているところもあるのかなと思っていたんですけど。

横山:僕と秋月で、書く曲のキャラが全然違うというところがまずあるんですけど、秋月氏は──

西尾:秋月“氏”(笑)。

秋月:呼び捨てからの“氏”。

横山:下請けなんで(笑)。秋月氏は、なんか俺も頑張ろうかなとか、今まで自分が気づいていなかったことに気づけるような歌詞を書いて、僕はそうじゃない曲を担当してるんですよ。まぁ、下ネタとか、下ネタとか、下ネタとか……。

秋月:まぁエロのところですね。僕の場合は、出てくる言葉がどちらかというとエール的というか、諦めんとやりたいことやってこうぜ!みたいなのがそもそもあるんで、それが自分にとって書きやすいテーマでもあるんですけど。

横山:ウチのバンドは、そのどちらかしかダメなわけでもなく、それをどっちもいいねって共存させて歌っていて。その割合をどうこうとかを意識せずとも、自然とそういう風にうまいバランスになっているところが感覚ピエロの良さだと思うんですよ。その意味でいうと、今回の共作っていうやり方は、そのどっちもの要素がうまい具合にブレンドされているんじゃないかなって思ってますね。

感覚ピエロ 撮影=菊池貴裕

感覚ピエロ 撮影=菊池貴裕

──じゃあ、エロとエールのバランスの取り方っていうのは、それこそ感覚でやっていると。

秋月:でも、実際どうなんやろ……エロ要素は元々おもしろがってやっていたのと、そもそもこいつ(横山)が純粋にエロいってうのと、いろいろあると思うんですけど。

横山:(無言でうなづく)

秋月:でも、エロも共感できるというか。男性も女性も絶対にエロい要素を持っていると思うから、それを歌うのは誰かが夢を追っていることを歌うことと一緒なのかなって。だから、全部ひっくるめてメッセージありきかなと思ってますけどね。

──エロであろうが、エールであろうが、そこにはメッセージがあって。

秋月:そうです。ある種、僕らの代表曲に「O・P・P・A・I」っていう曲がありますけど、あれを聴いて“こんなことで悩んでんのアホらしいわ”みたいに捉える人もいると思うので。仮に歌詞に内容がない風でも、それが曲になってノリとかがでてくると、案外その人にとってのテーマソングになったり、勇気づけられる曲になったりもすると思うので、そういう意味でも両方が前に立つんかなって思いますけどね。

──今作は、シュっとしている印象もありましたけど、ものすごく直球感のあるアルバムでもあるなと思ったんですが。

横山:そこは、それこそ歌詞の部分だと思いますよ。今回の歌詞の割合って、5分の4を秋月氏が書いてるんですよ。

秋月:5年どころかもう1:9でしたね(一同笑)。

横山:そこが大きいんかなと思いますね。聴いている人に対する直球なメッセージがギュっと詰まっているので、そういう印象を持たれたんじゃないかなって。わりと合点がいくところです。

滝口大樹:それこそ、今回はそういうメッセージを後押しするイメージをしながらベースを弾いてて。たとえば、メロディとかギターフレーズの最後に音を添える感覚でやったりとか、みんながガチャガチャ!ってやってるところは刻んでたりとか。

横山:……今日、(滝口の)誕生日なんですよ。

滝口:なんで今言うた!? 急じゃない!?

秋月:今の、間(ま)としては0点やで? サッカーやってていきなりボール2個目投げた感じになってるから。

横山:それルールになってないやん。

秋月:そういうことや!(一同爆笑)

滝口:“水をさす”とはこういうことやな。

──「Tell me why」「CCC」「チェシャ」の3曲は、作品として考えたときに、そういうシュッとしたイメージを考えて作っていたところもあったんですか?

横山:「Tell me why」はかなり昔からあった曲なのでまた別ですけど、「CCC」と「チェシャ」は、特に狙ったわけでもなくて。自分たちの中の旬ってあるじゃないですか。その時期によく聴いていた音楽とか、ライブを重ねていくなかで、こういう曲がほしいなと思っていたことが、曲を作っていたときに自然と出てきたのが「CCC」と「チェシャ」だったんですよ。だから、自分の中では出るべくして出てきた、居心地のいい曲っていう感じですね。

感覚ピエロ 撮影=菊池貴裕

感覚ピエロ 撮影=菊池貴裕

──ライブの影響は結構大きかったですか? どの曲もライブの景色が浮かぶ印象があったんですが。

横山:ライブはデカいと思います。去年は対バンからワンマンから、ライブをすごい本数やってたんですよ。そうなってくると、毎回やる曲も固まってきたりしていて。そのときに、もうちょっとこういう曲があったらいいんじゃないかって思っていたものが、制作の段階で出てきたんじゃないかなって思ってます。

西尾:それこそ「チェシャ」とか「CCC」みたいなダンスっぽい感じの曲って、ライブで定番になってきている他の曲があったんですけど、そこと入れ替えられるような曲があったらいいなっていうのは思ってましたし、そこにハマるような曲になったかなと思います。

滝口:僕としては、「CCC」は久々に横山らしい曲を持ってきたなと思って。じゃあ、こういうアプローチをするんだったら、こういう感じで……っていうので、するするっと。

──“するする”というわりには「CCC」はベースがめちゃくちゃエグいですよね。

滝口:(笑)。彼が前のバンドをやってるときから音源を聴いていて、俺やったらこう弾くなっていうのが結構あったんで、やりやすいのかもしれないですね、個人的には。

秋月:このあいだの東名阪のワンマンツアーで、「CCC」はやってたんですよ。でも、「チェシャ」とか、それこそ「等身大アンバランス」はまだライブでやってないので、その辺は僕らも一回やってみて、リスナーのみんながどうやって受け止めるのかな?っていうところが気になってますね。ここからが楽しみな曲でもあります。

──ライブのお話がありましたが、6月にはワンマンツアー『69ロックレボリューション あなたと私で「69」したいの。』が決まっています。毎回ツアータイトルはこういうノリが多いですよね。前回も『感覚ピエロの三点責め 東名阪 イク×2 ワンマンツアー』っていう。

秋月:いや、僕らはいたって真面目ですよ? だって今回の「69」ってロックですから。そもそも僕ら、1枚目のアルバムを6月9日=ロックの日に出してるんですよ。なのに、なんで僕らが「69」って書いたらみんなニヤつくのか?っていう話ですよ!

横山:たしかに!

西尾:まぁ遊びゴコロやな、これは。

秋月:そう。ユーモアですよ、僕らなりの。

──でも、「69」でニヤけちゃうのはイメージ戦略がうまくいっているというか。

秋月:そうやと思います。僕らは感覚ピエロっていう名前ですけど、最初に“略されたらなんやろな?”っていう話をしてたんですよ。ああいうのってだいたい頭を取るから「感ピ」かと思ってたら、「感エロ」になりましたからね。

──でも、エロを求められてばかりで苦しいとか、そういう感覚は全然なく?

横山:僕は全然ウェルカムですよ。僕、エロいので。

滝口:まぁ、男4人ですからね。

秋月:うん。なんでもやりますよ、僕ら。それに、言うてもそんなエロくないですからね? みんな“エロいわー!”とか“卑猥やわー!”って言いますけど、全然ノーマルですよ? と、僕らが勝手に思ってるだけなのかもしれないけど(一同笑)。

滝口:まぁ外に出すときはオブラート30枚ぐらい包んでますから。4人でしゃべってるときはもっとひどいこと話してますけど。

感覚ピエロ 撮影=菊池貴裕

感覚ピエロ 撮影=菊池貴裕

──はははははは(笑)。全国6都市、どんなツアーになりそうですか?

西尾:徐々に会場が広くなってきてますけど、そうなると前まではできなかった演出ができるので、そういったところでまた今までと違ったことができたらいいなと思いますね。

──東名阪はZeppですし。

秋月:今までで一番大きい会場ですからね。それこそ演出はこだわりたいし、エロさとかもそこに込めて、音だけというより、目でも楽しめるようなものにして、ひとつの作品にできたらいいなと思います。

滝口:会場が広くなればなるほど、お客さんの顔がよく見えるんですよね。そのぶん一緒に盛り上がれる瞬間が増えてくるので、そういう瞬間をたくさん作っていけたらいいなと思いますね。僕は会場が広くなればなるほど、水を得た魚みたいになったりするので。

横山:真ん中で歌っている僕としては、ワンマンってすごくプレミアムでスペシャルな感じがしていて。そこに来ている人たちは感覚ピエロの音楽を純粋に聴きたくて来ているわけで、それが6ヶ所に増えるということは、それだけまた多くの人たちと音楽ができる、遊べるわけやから。東名阪の会場が大きくなることもそうですけど、ワンマンできる場所が増えたというのも嬉しいですね。まだ僕らのライブに来たことのない人たちも参加してもらって、俺たちこういうバンドだぜっていうところを見せながら、一緒に楽しめたらいいなって思います。

──大きな会場でやる「等身大アンバランス」はどんなものになりそうですか?

横山:それはもうあれですよ。Zeppでやる「等身大アンバランス」……これはもうちょっとヤバいと思いますよ。

秋月:気持ち悪いな、今の言い方。

横山:いや、だってね、(会場が)Zeppっていうこともあって、照明で照らされる僕たちも、今までの僕らと違うわけですよ。で、あの曲にはストリングスが入ってるわけですよね。僕らには今までそういう曲はなかったけど、それがライブハウスのスピーカーからバっと出てくるわけですよ。ということは、実際にライブ会場に来て聴くしかない!

秋月:宣伝ヘタクソやなー。

横山:下請けなんで……(笑)。でも、ここは大事やから。ライブ会場に聴きに来てください!


取材・文=山口哲生 撮影=菊池貴裕

感覚ピエロ 撮影=菊池貴裕

感覚ピエロ 撮影=菊池貴裕

ツアー情報
感覚ピエロ ワンマンツアー2017
「69ロックレボリューション あなたと私で「69」したいの。」
6/3(土):福岡 Live House CB
6/4(日):岡山 CRAZYMAMA KINGDOM
6/11(日):札幌 Sound lab  mole
6/23(金):東京 Zepp DiverCity
6/24(土):名古屋 Zepp Nagoya
6/30(金):大阪 Zepp Osaka Bayside
*全6公演 / 一般発売:4月1日
 

 

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