『REON JACK 2』レポート ファッショナブルに、スタイリッシュに! 柚希礼音が多彩な顔を披露
「進化と挑戦」「よりスタイリッシュに、アーティスティックに、さらにパワーアップしたステージをお届けしたい」。宝塚歌劇団退団後、2回目となるソロコンサート『REON JACK 2』の会見で、柚希礼音はこう語っていた。
ゲストに東京バレエ団の上野水香(大阪・東京公演)や、バレエ、ジャズ、コンテンポラリーなど多様なジャンルで活躍するダンサーの大貫勇輔、ステージングも担当する大村俊介(SHUN)、前回公演でも登場したタンゴダンサーのクリスティアン・ロペス、ストリートダンサーのYOSHIE(福岡公演)が名を連ねており、この多様なジャンルのゲストと果たしてどのようなステージが繰り広げられるのか注目されていた。
その「REON JACK 2」が去る3月23日に大阪で幕を開け、3月30日・31日にはパシフィコ横浜での公演が行われた。そこで繰り広げられたのは歌あり踊りあり、トークありのバラエティ豊かな舞台。宝塚時代、そして卒業後に出演したミュージカルや、歌手としての経験の蓄積とともに、男や女というジェンダーを越えた「柚希礼音」という人間の魅力がいかんなく発揮され、4000人を超える観客を沸かせた。ここでは、この横浜公演を振り返りたい。
■ブラック&ホワイト。歌と踊りで魅せるオープニング
公演の開幕。柚希のシルエットが映し出されたスクリーンが上がり、ステージは中央に階段の上に柚希とダンサーが現れる。白と黒を基調とした衣装に七色のライトが目まぐるしく輝く華やかなステージだ。「Maybe If…」、「太陽を射る者」が歌と踊りとともに披露され、そしてSHUNとの共演による「Two Snakes feat.NAOTO」で一気に大人のムードに。その後、プロジェクションマッピングによる雨の町角が映し出される。その中で歌われる「love U」は、クールダウンのようなしっとりとしたナンバーだ。続いて女性ダンサーも登場する「Witch's Mirror」。前半はマニッシュな魅力を漂わせながら一気に聴かせる。
■柚希&上野のコラボレーション
6曲を歌ったところで黒に赤のポイントが入った衣装で柚希、ゲストのロペスと大貫が登場する。揃いの衣装3人で踊る「TUS OJOS DE CIELO」の柚希はまるで少年のよう。三つ巴のBLの世界を彷彿とさせるような、妖しい魅力が会場を包み込む。
そしていよいよ、この大阪・横浜公演の目玉ともいえる「リベルタンゴ」が始まる。紫色のミニドレスに身を包んだ上野と、紫色のスーツを着た柚希礼音のダンスだ。ここでの柚希は完全に宝塚時代を彷彿とさせる男役……だが、宝塚時代とはやはり雰囲気が違う。相手が上野だから、とうわけではない。やはり宝塚を卒業して積み重ねてきた経験が上積みされた、今の柚希としての男役なのだと、踊りを見て感じる。
2人の踊りのスタイルは会見で「どちらがどちらに寄るわけでもなく、それぞれの持ち味を」と語った通り、それぞれが長年培った経験が発揮された、コラボレーション。個性と個性が融合し、今の柚希による男役の魅力とバレエダンサーである上野の踊りがピアソラの妖艶な世界を醸し出していた。
■タンゴでは大人の女性に
後半は男性ダンサー総出演による「Feeling good」。キレのあるダンスと歌に続き次はがらりと変わり、ロペスとのタンゴ「A Evarist Carriego」が始まる。タンゴを踊る柚希は真っ赤なドレス。ここでは完全に女性の顔だ。マニッシュな魅力、少年っぽさ、男役の顔に続いて後半で大人の女性を滲ませるこの変化ぶりが実に見事だ。
ドレスの後は白のパンツルックで「夜空に眠るまで」などアップテンポの曲を続け、さらに客席を沸かせたところで「僕は何を探してるんだろう?」を歌う。森雪之丞が作詞した聴かせるナンバーで、少年らしい瑞々しい魅力が爽やかに吹き抜ける。
フィナーレは柚希自身が作詞した「希望の空」。宝塚退団後の心境を歌詞にこめ、退団後の最初のコンサートで歌ったというこの曲には素直な思いが綴られ、今なお初々しく心に響いてくる。常にひとつひとつ、自分のできることを積み上げ真摯に舞台に向かってきた柚希の、舞台人としてのベースはここにあるのだという思いがひしひしと伝わり、こみ上げてくるものも感じた。
■横浜スペシャル「僕は怖い」は驚きのコラボレーションで
フィナーレ後には横浜公演のオリジナルプログラム、ファンからのリクエストナンバーが披露された。
この日歌われたのは宝塚時代に演じた「ロミオとジュリエット」のナンバー「僕は怖い」だ。そしてなんと、ミュージカル「ロミオとジュリエット」で死のダンサーを演じた大貫勇輔が、柚希ロミオと共演するという驚くべきコラボレーションがここで実現する。宝塚版とミュージカル版の共演という思いもよらぬステージに、客席はさらに盛り上がる。
その後大貫を呼んでのトークが始まる。この「僕は怖い」の宝塚版とミュージカル版の振り付けは微妙に違うそうだが、「宝塚の方が先でオリジナルだから、この振り付けは絶対に譲れない」という柚希。軽快な2人のトークに客席からはしばしば笑いが起こり、宝塚時代の台湾公演によるファンからの、中国語の歓声も聞こえてくる盛り上がりを見せた。
最後は「Yes!世界に魔法が降り注ぐ」「REON JACK」の2曲が歌われ、ゲスト一同も登場して華々しくフィナーレ。ミュージシャンやダンサーも素晴らしいメンバーを揃え、寸分の隙もない、全力で駆け抜けた2時間だった。
宝塚時代の蓄積の上に、さらに着実に経験を積み上げてきていると感じられた舞台『REON JACK 2』は4月19日(水)、20日(木)に福岡市民会館で公演が行われる。ゲストにストリートダンサーのYOSHIEが加わってのステージは、大阪とも横浜とも違ったものになるに違いない。様々な顔を持つジェンダーを越えた「柚希礼音」という人間がこれからさらにどう進化していくのか。これからもますます目が離せない。
取材・文:西原朋未
■ステージング:大村俊介(SHUN)
■振付:大村俊介(SHUN)/YOSHIE ほか
■出演:柚希礼音
(大阪公演、東京公演)上野水香、大貫勇輔、大村俊介(SHUN)、クリスティアン・ロペス ほか
2017年3月23日(木)〜 3月26日(日)
会場:梅田芸術劇場メインホール
2017年3月30日(木)・ 3月31日(金)
会場:パシフィコ横浜国立大ホール
2017年4月19日(水)、20日(木)
会場:福岡市民会館
■公式サイト:http://www.reonjack2.com/