『ディズニー・アート展』をレポート ディズニー作品の魔法を解き明かす、日本初公開の原画など約500点が勢揃い

レポート
アート
2017.4.10
『ディズニー・アート展』All Disney artwork © Disney Enterprises Inc.

『ディズニー・アート展』All Disney artwork © Disney Enterprises Inc.

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世界中の人々を夢の世界に誘うディズニー・アニメーションの歴史を紐解く『ディズニー・アート展 いのちを吹き込む魔法』が、4月8日から9月24日までお台場・日本科学未来館で開催される。ほとんどが日本初公開となる原画など約500点の貴重な制作資料や、その時代の最新技術を通して、約90年のディズニー・アニメーションの軌跡を辿る。開催前日に行われたプレス内覧会の様子を、ディズニー・アニメーションの歴史と共に紹介していこう。

ディズニーらしい心躍るプロローグ

『蒸気船ウィリー』から『モアナと伝説の海』まで、ディズニーの歴史を彩る傑作の数々の原画やスケッチなど、貴重なア―ト作品を年代順に紹介していく本展。ウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオの芸術的遺産の保存・保護を目的とした施設、アニメーション・リサーチ・ライブラリーの約6500万点以上のコレクションの中から厳選した約500点が公開される。そんなアート作品に加え、当時の最新技術や試行錯誤の末に生まれた技法も紹介され、ディズニー・アニメーションの“いのちを吹き込む魔法”に深く迫っていく。

『ディズニー・アート展 』エントランス All Disney artwork © Disney Enterprises Inc.

『ディズニー・アート展 』エントランス All Disney artwork © Disney Enterprises Inc.

会場の入口をくぐると、まさにいのちを吹き込まれたように宙に舞う原画に出迎えられ、これから始まる本展への期待が膨らむ。最初の展示室では、東京展限定で設置されるチームラボによる「体験型! いのちを吹き込むペンシル・テスト」を楽しむことができる。スクリーンの前に立つと、ディズニー初期作品の原画が人に呼応するように動き出す。

「体験型! いのちを吹き込むペンシル・テスト」 All Disney artwork © Disney Enterprises Inc.

「体験型! いのちを吹き込むペンシル・テスト」 All Disney artwork © Disney Enterprises Inc.

ミッキーマウス 幻のデビュー作の原画が登場

最初のゾーン「動き出すいのち」では、初期の貴重な原画やストーリースケッチが並ぶ。中でも注目なのがミッキーマウスの幻のデビュー作『プレーン・クレイジー』の原画だ。1928年にサイレント短編映画として制作されたが、その後に作られたトーキー短編映画『蒸気船ウィリー』が先に公開され、そちらがミッキーのデビュー作となった。素朴なタッチで描かれたこの一枚からミッキーマウスの歴史が始まっていくかと思うと感慨深い。

『プレーン・クレイジー』原画 All Disney artwork © Disney Enterprises Inc.

『プレーン・クレイジー』原画 All Disney artwork © Disney Enterprises Inc.

他にも『蒸気船ウィリー』の貴重なストーリースケッチも見どころのひとつだ。テキストが入ったストーリースケッチは初期のものだけで、数少ないそうだ。絵は“ミッキーマウスの真の生みの親”と呼ばれるアブ・アイワークス、テキストはウォルト・ディズニーによるもの。

「蒸気船ウィリー」ストーリースケッチ All Disney artwork © Disney Enterprises Inc.

「蒸気船ウィリー」ストーリースケッチ All Disney artwork © Disney Enterprises Inc.

革新的なアニメーション技術の開発

『白雪姫』エリアのエントランス All Disney artwork © Disney Enterprises Inc.

『白雪姫』エリアのエントランス All Disney artwork © Disney Enterprises Inc.

「魔法のはじまり」ゾーンへと足を進めると、魔法の鏡と共に登場するのが、世界最初の長編カラーアニメーション映画『白雪姫』の可憐で美しい原画の数々だ。『白雪姫』はそれまでの短編映画製作で培われた技法を駆使して、4年の歳月をかけて作られた。

『白雪姫』原画 All Disney artwork © Disney Enterprises Inc.

『白雪姫』原画 All Disney artwork © Disney Enterprises Inc.

実際のアニメーションとは一味違った、キャラクター考察のために描かれたコンセプトアートも見ることができる。コケティッシュな雰囲気の白雪姫もまた可愛らしい。

『白雪姫』コンセプトアート All Disney artwork © Disney Enterprises Inc.

『白雪姫』コンセプトアート  All Disney artwork © Disney Enterprises Inc.

1937年に『白雪姫』を成功させた後も、ディズニーはその時代の最新技術を取り入れ、工夫を重ねながら自由な表現を獲得していく。会場では、その時代の代表作品『ピノキオ』、『ファンタジア』、『ダンボ』などと共に、3次元的な奥行を表現するマルチプレーンカメラや、疑似的な立体音響システム、ファンタサウンドなどが紹介される。

『ピノキオ』におけるマルチプレーンカメラのセットアップ再現 All Disney artwork © Disney Enterprises Inc.

『ピノキオ』におけるマルチプレーンカメラのセットアップ再現 All Disney artwork © Disney Enterprises Inc.

芸術性を高めた伝説的アーティストたち

『ふしぎの国のアリス』エリアに向かうアーチ All Disney artwork © Disney Enterprises Inc.

『ふしぎの国のアリス』エリアに向かうアーチ All Disney artwork © Disney Enterprises Inc.

アニメーション技術だけでなく、1940年代からさらに表現の多様化も進んでいく。その進化を支えたのは才能あふれるアーティストたちだった。アーチを抜けると、アーティストであるメアリー・ブレアが手がけた『ふしぎの国のアリス』のコンセプトアートが並ぶ。独創的な色彩感覚で描かれたアート作品に目を奪われる。

メアリー・ブレアによる『ふしぎの国のアリス』コンセプトアート All Disney artwork © Disney Enterprises Inc.

メアリー・ブレアによる『ふしぎの国のアリス』コンセプトアート All Disney artwork © Disney Enterprises Inc.

メアリー・ブレアによる『ふしぎの国のアリス』コンセプトアート All Disney artwork © Disney Enterprises Inc.

メアリー・ブレアによる『ふしぎの国のアリス』コンセプトアート All Disney artwork © Disney Enterprises Inc.

続いて『101匹わんちゃん』、『わんわん物語』、『眠れる森の美女』、『ジャングル・ブック』と多彩な作品の原画が紹介されていく。その中でも美しさが際立っていたのが、画家のアイヴァンド・アールによるコンセプトアートの数々である。

アイヴァンド・アールによる『わんわん物語』コンセプトアート All Disney artwork © Disney Enterprises Inc.

アイヴァンド・アールによる『わんわん物語』コンセプトアート All Disney artwork © Disney Enterprises Inc.

ゴシック様式の絵画や美術からヒントを得た、アイヴァンド・アールの前衛的な美術様式を全編に採用したのが『眠れる森の美女』だ。格調高い美しい世界が見事に構築されている。       

アイヴァンド・アールによる『眠れる森の美女』コンセプトアート All Disney artwork © Disney Enterprises Inc.

アイヴァンド・アールによる『眠れる森の美女』コンセプトアート All Disney artwork © Disney Enterprises Inc.

デジタル革命を経た、近年の作品も登場

90年代に起きたデジタル革命は、ディズニー作品を新たな次元へと飛躍させた。『リトル・マーメイド』から徐々にデジタル技術を導入し、初めて3DCGを採用した『美女と野獣』や、最新のCG技術をクライマックスのシーンに取り入れた『ライオン・キング』などを紹介。キャラクターの姿やかたちを検討するために作られた立体模型の雛型、マケットなども登場する。

『リトル・マーメイド』コンセプト・アート All Disney artwork © Disney Enterprises Inc.

『リトル・マーメイド』コンセプト・アート All Disney artwork © Disney Enterprises Inc.

『美女と野獣』マケット All Disney artwork © Disney Enterprises Inc.

『美女と野獣』マケット All Disney artwork © Disney Enterprises Inc.

2006年にディズニーの傘下にピクサーが入ったことで、さらなるCG表現の進化が起こり、ディズニー作品は3DCGアニメーションの時代へと突入する。最後のゾーンでは世界的大ヒットとなった『アナと雪と女王』や、3月に公開になったばかりの最新作『モアナと伝説の海』の貴重な研究資料やアートワークも展示される。

『アナと雪の女王』コンセプトアート All Disney artwork © Disney Enterprises Inc.

『アナと雪の女王』コンセプトアート All Disney artwork © Disney Enterprises Inc.

『モアナと伝説の海』のジョン・マスカー監督のスケッチブック All Disney artwork © Disney Enterprises Inc.

『モアナと伝説の海』のジョン・マスカー監督のスケッチブック All Disney artwork © Disney Enterprises Inc.

ここでしか購入できない! 420点以上のオリジナルグッズ

会場の最後でも大きな楽しみが待っている。グッズ売場には本会場でしか購入できない420点を超えるオリジナルグッズが並ぶ。初期から現代まで様々な時代のディズニー作品のグッズがラインナップされ、あれもこれもと目移りしてしまう。

会場限定「ぬいぐるみ ウィリー」 All Disney artwork © Disney Enterprises Inc.

会場限定「ぬいぐるみ ウィリー」 All Disney artwork © Disney Enterprises Inc.

ディズニー・アニメーションの世界を堪能しながら、名作が生まれるまでの舞台裏を垣間見ることができる本展。ウォルト・ディズニーをはじめとしたクリエーター達の自由な想像力と、それを支えた革新的な技術開発の歴史は、深い感動と驚きを与えてくれるだろう。東京・日本科学未来館での開催は9月24日まで。その後は大阪、新潟、宮城と巡回する。

イベント情報
ディズニー・アート展 いのちを吹き込む魔法​

会期:2017年4月8日(土)~9月24日(日)
会場:日本科学未来館 1階 企画展示ゾーン
休館日:火曜日(ただし、5/2、7/25、8/1、8/8、8/15、8/22、8/29は開館)
観覧料:大人(19歳以上)1,800円 / 中人(小学生~18歳以下)1,200円 / 中人(土曜日)1,100円 / 小人(3歳~小学生未満)600円 ※いずれも当日券の価格(税込)

巡回展の予定:
【大阪展】
会期:2017年10月14日(土)~2018年1月21日(日)
会場:大阪市立美術館
【新潟展】
会期:2018年2月17日(土)~5月13日(日)
会場:新潟県立近代美術館
【仙台展】
会期:2018年6月9日(土)~9月24日(月・祝)(予定)
会場:宮城県美術館

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