金属恵比須 “プログレの未来を決める” 総選挙、開票速報! 高木大地が4.15ライブをセルフレポート

動画
レポート
音楽
2017.4.26
 撮影=飯盛大

撮影=飯盛大


プログレッシヴ・ロック・シーンが徐々に盛り上がりを見せている。

イエスの「分派活動」だったARWが「イエス」と名乗り始め、「新・南北朝イエス」に和睦の期待度が膨らんできた(ちなみに「旧・南北朝イエス」とは、いわずもがなABWHの頃のいわゆる「1989の乱」)という嬉しいニュース。

その一方で、ジョン・ウェットン、グレッグ・レイク、アラン・ホールズワースといったプログレ界の大御所が次々と鬼籍に入るという悲しいニュース。 しかしそのニュースが、サラリーマンのオピニオン・リーダー『日本経済新聞』の訃報欄に掲載されることで、むしろ「プログレ優等民族」感に浸れるというアンビバレンス。

いずれにせよ、吉凶含め「プログレ」の文字が今更ながら多くの露出をし始めているのは確かである。

しかしそのような時流に関係なく、約40年前から今日まで安定して「プログレ」を発信し続ける街がある。

吉祥寺。

この街には「プログレの聖地」が屹立する。

その名も「シルバーエレファント」。1978年の開店から今日まで変わらずにプログレ・ミュージシャンが集うライヴ・ハウスである。いまだに現在進行形のバンドがしのぎを削って出演している。KENSO、美狂乱、難波弘之、そしてあのスターレス髙嶋(髙嶋政宏)氏も舞台に立っているというまさに伝説のハコであると同時に、プログレの未来を担う新たなバンドも多数出演している。

撮影=飯盛大

撮影=飯盛大

なお「シルバーエレファント」の名前の由来は、八百屋に次いで創業させた吉田銀象氏の名前をそのまま英語化しただけというのはその筋では有名な話。「ブリヂストン」と並び評される秀逸なネーミングセンスである。

ちなみにここで初ライヴをしたバンドで最も有名なのはMr. Children。記事の内容からこれ以上広げられそうもないので以下割愛。

かくいう私も、シルバーエレファントに出演させてもらって17年。プログレ一筋21年のバンド「金属恵比須」の総主席(リーダー)である。

かつてメキシコのプログレ・フェスで野外会場での演奏なども経験したが、お客様がすぐ近くに座っていて、ライヴ中でも雑談ができるようなアットホームなこのハコでライヴをするのがやはりもっとも落ち着いて良い演奏ができるのだ。

余談になるが、現在の店長の話でも……。美人店長として数々のメディアにも登場する幸恵さんとは20年来の知り合いである。ちょうど20年前、お互いが通っていた吉祥寺の音楽教室の発表会の打ち上げで声をかけたのが最初。当時からすでに「美人がいる!」と評判で、恐る恐る話しかけてみれば、シルバーエレファントの娘とのことで舌を巻いた覚えがある。なおその発表会で彼女が歌っていたのはJUDY&MARY。キラキラマントを羽織りながらUK「イン・ザ・デッド・オブ・ナイト」のキーボードを弾いていたのが私、であった。

20年前の記憶は、お互い、恥かしい。

ちなみに金属恵比須の初々しい黎明期のライヴも彼女は見ている。高円寺南児童館でのライヴだったが。

……そんな幸恵さんが切り盛りするシルバーエレファントの伝統的名物企画「PROGRESSIVE LIVE」に、2017年4月15日土曜日、我らが金属恵比須が出演した。対バンは荒牧隆(アウターリミッツ他)率いる「あらんちゃんバンド(仮)」。

撮影=飯盛大

撮影=飯盛大

チケットはソールドアウト。やはり吉祥寺のプログレの熱さは尋常ではない。

開場待ちしていただいているお客様にごあいさつを――と外に出たら溢れんばかりの人だかりができている。

かつてエマーソン・レイク&パーマーが初来日した時に、キース・エマーソンが空港の人だかりを見て「フランク・シナトラが来てるのかと思った」らしいが、私もこの時ばかりは「地下アイドルのイベントが近くであるのでは?」と思った。そういえば去年ぐらいから金属恵比須も「会いに行けるプログレアイドル」と自称し始めたのだった。私の観測は当たらずとも遠からず――とでもいっておこう。

ぎゅうぎゅうの会場の中、あらんちゃんバンド(仮)の演奏が始まった。いきなりキング・クリムゾン「偉大なる詐欺師」を彷彿とさせる攻撃的なリフレインで幕を開け、会場の温度は一気に高くなる。

撮影=飯盛大

撮影=飯盛大

それにしても、ロバート・フリップ直系ながらも妖艶なギター・プレイを聞かせる荒牧氏の音は、同業者のギタリストとして嫉妬を感じさせるほどの完璧さ。フリップの手癖のかゆいところにすべて手が届いているような演奏は、近年、本家以外で聞いたことがない。

撮影=飯盛大

撮影=飯盛大

作曲センスもヴァラエティに富み、実に秀逸。ハード・ロックあり、バラードあり、民族音楽ありと、何でもあり。しかしそのアレンジの上には、流麗なメロディが必ずあり、決して飽きさせることなく60分のステージがあっという間に終わった。

撮影=飯盛大

撮影=飯盛大

さて次なるは、我らが金属恵比須の番である。

今回のライヴのコンセプトは「新曲総選挙」。

演奏する候補新曲4曲のうち、1曲を選び「投票用紙」に記入し、最も得票率の高かった曲が次回のアルバムに必ず収録されるという趣向だ。こうしてプログレ・シーンの未来をお客様とともに決めていくことを主旨とする。

撮影=飯盛大

撮影=飯盛大

この企画のために投票用紙と投票箱を製作。金属恵比須はこういうところに力を入れる。ライヴ数日前からは楽器の鍛錬ができなくなるほど時間をかける。古い話になるが、かつて中学の頃、ピンク・フロイド『ザ・ウォール』ツアーの“壁”をこしらえる真似をしたことがある。飲料の段ボールを100個以上集めるために毎日コンビニに通うのに精を出しすぎ、お世辞にも良い演奏ができなかったのは苦い思い出。ちなみにその時演奏したのはドアーズ、EL&P、吉田拓郎だった。壁、関係ない。

撮影=安藤光夫

撮影=安藤光夫

さすがに最近はそこまで大それたことはしないけれども、金属恵比須の歴史26年(前身バンド含む)にはそのようなDNAが脈々と受け継がれているのだ。

そうしてライヴが始まる――前に、私が前説をする。メンバー自ら前説をするというバンドを私は見たことがないので、差別化のために1年ほど実践してみている。また、今までライヴ中にMCが長くなり進行に支障をきたしていたことを踏まえ、あらかじめ要点を絞って伝えて、進行をスムーズにさせるという意図がある。つまり「時短」の取り組み。「働き方改善」、である。しかし、今のところ前説の時間だけが純増となり、表立った効果は見られていない……。

撮影=飯盛大

撮影=飯盛大

本編はおなじみ「映画『八つ墓村』より『呪われた血の終焉』」で登場、「鬼ヶ島」で幕を開ける。


4月22日発売の初のLP作品『ハリガネムシのごとく』(ローソンHMVエンタテイメント)のレコ発の意味を込めて、そこに初収録された「鬼ヶ島」をオープニングとした。

1997年12月初演の金属恵比須2曲目のオリジナル曲である。高校2年当時、ブラック・サバスと人間椅子に憧れて作曲したゆえに、リフのひとつひとつにその片鱗が見受けられる。そしてそんな曲を当時憧れていた後藤マスヒロ(元・人間椅子)に現在叩いてもらっているというこの状況――非常に感慨深い。

撮影=飯盛大

撮影=飯盛大

早速MC。

新メンバーの紹介から始まる。1月28日の横浜でのライヴを最後にバンドを休職したベーシスト多良洋祐に代わり、栗谷秀貴が加入した。実は彼、2002年あたりの金属恵比須のサポート・ギタリストを務めていた。「当時高校生で、学校を早退してライヴに参加していた」というエピソードがMCにて今更発覚。本当にごめんなさい。そんなことも知らずに誘っていた私は、罪つくりなひと、である。

撮影=飯盛大

撮影=飯盛大

そしてここから「総選挙」の開始である。

第1候補はヴォーカル稲益宏美の推す「罪つくりなひと」。


ブラック・サバスを意識しすぎてそのまんまのギター・ソロとなってしまったのはご愛嬌。宣教師と信者の禁断の恋をテーマとしたのだが、これは歴史小説家・伊東潤氏のミステリ小説『横浜1963』の影響が大きい。

投票用紙の感想欄には、
・「サビが切なくてイイ!」
・「ハードさ、へヴィさがカッコ良い」

とのコメントをいただいた。

撮影=飯盛大

撮影=飯盛大

続いて第2候補は、私、ギター担当の髙木大地が推す「蝉しぐれ」。


三島由紀夫自決直前に書いた『豊饒の海「天人五衰」』の最後の場面をモチーフに、キング・クリムゾン「インナー・ガーデン」を組み合わせてみた。

コメントを見ると賛否両論で、
・「童謡+サーカス(調の音楽)は好きにならざるを得ない。稲益さんのボーカルがたんのーできて◎」
・「もし『天人五衰』が映画化されたらエンディングに流してほしい感じ」

と、高い評価をいただく一方、

・「問題作」
・「もっと練って!」
・「楽曲にもっと起伏があるといいのでは?」

と、厳しいご意見もいただいたりした。

撮影=飯盛大

撮影=飯盛大

次なるは待望の第3候補「道連れ」である。


後藤マスヒロが金属恵比須のために書いた、当ライヴ初披露の曲。世論調査では、最も高い評価を得ていた。

・「サワヤカ。イルカと海が見えました」
・「一般層にひろくアピールできる魅力をもれなく持っている」
・「新機軸」

と、「爽快」や「さわやか」という感想が目立ち、ドロドロとした猟奇的な金属恵比須のイメージを覆したにもかかわらず、おおむね好意的な意見が多かった。

あと、
・「ジェネシスじゃん!」
と、手厳しい(?)感想も多かったが、後藤の名誉のためにいっておくと、この「まんま」アレンジに変えたのは後藤ではなく私である。

撮影=飯盛大

撮影=飯盛大

最後の第4候補はキーボード宮嶋健一の推す「月澹荘綺譚」。


9分以上の大曲でピアノ・ソロから始まるという、こちらもまた新機軸。テーマは三島由紀夫の同名怪奇小説から取っており、極めて猟奇的。ピンク・フロイド「狂ったダイヤモンド」と薬師丸ひろ子「セーラー服と機関銃」が曲のモチーフとなっており通称「狂った薬師丸ひろ子」。稲益のかき鳴らす新兵器マトリョミン(テルミンを内蔵したマトリョーシカ)が錯乱気分をいっそう煽る。

・「主題歌ありきで映画ができてほしい。1時間くらいきいていたくなった。SEXY」
・「名曲の予感ビシビシ」
・「自分にとって好みかどうかよりも、プログレ・ファンに受けそう」

と、絶賛の声多数。

他には、
・「だからストラト」
と。そのとおりである。フロイドを意識するにはストラトキャスター(ピンク・フロイドのギタリスト・デイヴ・ギルモアの使用するギター)は必須だ。

・「フロイドの基本はやはりブルースですね」
と、もはや金属恵比須の感想とは思えない意見も多数。あの……一応、オリジナル、なんですが……。

・「いなますさん、『快感』といってほしかった」
もはやテーマすら外れる意見すらも。次からは稲益にセーラー服でも着させてみようか。え? アラフォーにそれは犯罪? ではオリジナリティを極めるため、「モンペ服と竹槍」とでもしようか。組み合わせ、普通か。いや、むしろ、この世界の片隅に佇む彼女には、すごく似合いそうだが。

撮影=飯盛大

撮影=飯盛大

ということで、候補曲の公示は終了。

撮影=飯盛大

撮影=飯盛大

定番曲「ハリガネムシ」「みつしり」で本編終了。栗谷のベース・ソロは、速弾きを主体とし、ビリー・シーンやジョン・ミュングを彷彿とさせるとの感想も出たりした。

 


アンコールはいつもの「イタコ」。大興奮のうち、70分を超えるライヴに幕を下ろした。


ここで、投票結果である(得票率換算)。

◆第1候補「罪つくりなひと」:3.6%
◆第2候補「蝉しぐれ」:10.9%
◆第3候補「道連れ」:36.4%
◆第4候補「月澹荘綺譚」47.3%
(白票:1.8%)
※投票率:55.0%

ということで、「月澹荘綺譚」が見事次回アルバムに必ず収録されることが決定! こうして吉祥寺の「聖地」より、プログレの未来がきわめて民主的に決定された。

金属恵比須としては、決して独りよがりになることなく、このようにお客様とともに新たなプログレ・シーンを築き上げていきたいと思う一心なのである。かつての大物の訃報に一憂するだけではつまらない。未来を見よう。

撮影=飯盛大

撮影=飯盛大

撮影=飯盛大

撮影=飯盛大

さて、金属恵比須の次回アルバムはいつ発表されるのかって?

――今回の選挙でやっと1曲が決まったばかりで、それ以外の曲は全くの未定。いつになることやら……。

そこで、投票用紙の感想がふと目に入る。
・「できれば全部入れて下さい!」

そうか、その手があったか。

撮影=飯盛大

撮影=飯盛大

撮影=飯盛大

撮影=飯盛大

文=高木大地(金属恵比須) ステージ写真=飯盛大

公演情報
シルバーエレファント「PROGRESSIVE LIVE」金属恵比須、あらんちゃんバンド(仮) ※公演終了
■日時:2017年4月15日(土)18:00
■会場:吉祥寺シルバーエレファント
■出演:金属恵比須、あらんちゃんバンド(仮)
■シルバーエレファント公式サイト:http://www.silver-elephant.com/
■金属恵比須公式サイト:http://yebis-jp.com/
■荒牧隆FACEBOOK:https://www.facebook.com/TakashiAramaki.jp/

モノ・マガジンリアルショップ
プログレッシブロックバンド「金属恵比須」プレミアムライブ&トーク

■日時:5月5日(金・祝)12:00~13:00
■会場:秋葉原マーチエキュート神田万世橋
■入場無料
■公式サイト:
http://www.monomagazine.com/info/mi170331.html
 
アルバム情報
金属恵比須 初LP「ハリガネムシのごとく」

・オリジナル・マスターテープからのリマスター 
・300枚限定

 
【収録曲 】
Side A
01. ハリガネムシ 
02. 光の雪
SIde B
03. 阿修羅のごとく 
04. みつしり (2016年改訂版) 
05. 鬼ヶ島
シェア / 保存先を選択