‟キモカワ”なビジュアルがTwitterで話題に 『バベルの塔』展の公式マスコット「タラ夫」はどのようにして生まれたのか?

2017.4.27
インタビュー
アート

展覧会マスコットキャラクター タラ夫

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4月18日(火)~7月2日(日)にかけて上野の東京都美術館で開催されている『バベルの塔』展の公式マスコット「タラ夫」をご存知だろうか。いまTwitter上で話題沸騰中の展覧会オリジナルキャラクターで、インパクト大の出で立ちとユニークなツイートで注目を浴びているのだ。そこで今回はなんと、タラ夫本人の素顔に迫るインタビュー取材を敢行。加えて、今回の展覧会のプロモーション戦略を担当する広報担当者の方にも話を訊いた。

 

――いまTwitterではタラ夫ツイートが大変盛り上がっていますが、まずは誕生の背景からお伺いしたいと思います。

広報担当者:本展はピーテル・ブリューゲル1世の傑作『バベルの塔』を中心に、16世紀のネーデルラント美術が鑑賞できる、いわゆる王道の展覧会です。でも今回はその目玉の『バベルの塔』だけでなく、奇想の画家ヒエロニムス・ボスの稀少な作品と彼にインスパイアされた画家たちの作品も多く、こちらも見逃せない内容になっています。実はボスは奇想天外な画風やモチーフで当時のネーデルラント画壇に一大旋風を巻き起こした人物で、今でいう“キモカワ”なキャラクターの先駆者でもありました。本展のそういった側面は、例えばきゃりーぱみゅぱみゅのようなカルチャーが好きな若い世代の人たちにも十分楽しんでいただけるのでは?と可能性を感じたんです。そこで広報的にも、そういうおもしろい部分をTwitterでしっかり打ち出していこう、という流れになったんです。

ピーテル・ブリューゲル1世《バベルの塔》 1568年頃 油彩、板 Museum BVB, Rotterdam, the Netherlands

――ちなみにタラ夫は、もともとブリューゲルの作品に登場しているモンスターが原案になっているそうですが。

広報担当者:そうなんです。ブリューゲルの作品で『大きな魚は小さな魚を食う』という代表的な版画があるんですが、そのなかに登場する「足の生えた奇妙な魚」がタラ夫のソースになっています。ブリューゲルといえば『バベルの塔』を思い浮かべる方も多く実際そのイメージも強いのですが、実はもともとボスの熱烈なフォロワー(※ここでは、追随する人の意)でもあった、という事実があります。だから当然絵のなかのキモカワな魚も、ボスの影響が色濃く出ているんです。そういった意味でもタラ夫は、ブリューゲルとボスの関係性をあらわす象徴、展覧会の魅力をそのまま具現化している存在でもあるんです!

ピーテル・ブリューゲル1世、 彫版:ピーテル・ファン・デル・ヘイデン 《大きな魚は小さな魚を食う》1557年 エングレーヴィング Museum BVB, Rotterdam, the Netherlands

――そうだったんですね。展覧会ではTwitter用の公式キャラクターを立ててプロモーションをしているところはよく見かけますが、タラ夫のように展覧会の内容と見どころをここまでキャラクターにしっかりと落とし込んでリンクさせている例は、なかなかなさそうですよね。企画段階から広報の意図がすごくしっかりしているという印象を受け、感動しております。

広報担当者:ありがとうございます。しかし実は、タラ夫の登場が決まって展覧会の公式Twitterアカウントを立ち上げた時には、試行錯誤がありまして。一般的に展覧会のTwitterは、展覧会情報を淡々と紹介していくというパターンと、展覧会に関連するキャラクターを立てて口調もそれに寄せてツイートしていくというパターンが多いのですが、始めはどういった路線のアカウントにしようか迷っていたんです。でも『バベルの塔』展をしっかりアピールしていくという広報本来の目的を考えた場合、この二つの中間くらいのトーンが良いのでは、と最終的に着地しました。広報担当者が情報をつぶやきながらも、淡々としがちなつぶやきをタラ夫の存在が中和してくれる。そうした関係性の中、展覧会の魅力にしっかり触れ、中身の部分を伝えるようなアカウント運用を目指そうという方向性になったんです。

タラ夫 2.0ver.

――タラ夫と広報のコラボレーション、絶妙なバランスですよね。それではここで、タラ夫さんに質問です! Twitterを始めてみていかがですか。今の気持ちを聞かせてください。

タラ夫:フォロワーの皆さん、いつもお世話になっております。タラ夫です。Twitterを始めたばかりはフォロワーさんもまだ少なくて正直ドキドキでしたが、先日ついに1万フォロワーを達成することができました! これもひとえに、いつもこまめにチェックしてくださったりリツイートしたりしてくださる、皆さんのおかげです。タラ夫はこれからも皆さんのご期待にお応えできるようにがんばりますので、よろしくお願いします。

――1万フォロワー達成、おめでとうございます。これからの意気込みも十分ですね。ちなみにつぶやき始めてから思い出に残っているエピソードがあれば、ぜひ教えてください。

タラ夫:1万フォロワーを達成したときに、これからの決意も込めてすね毛をすべて剃ったのですが、これがフォロワーさんの中で賛否両論ありました。すね毛はほどなくしてまた元通りに生えてしまったのですが、「ありのままのタラ夫でいいよ」とお声がけしてくださるフォロワーさんもいて励まされました。皆さんにこうして注目していただけて嬉しい限りです。

タラ夫 3.0ver.

――ありがとうございました。タラ夫が愛される秘密がわかった気がします。それでは広報の方にお伺いします。これまでのツイートで反響の大きかった時のことについてお聞かせいただけますか?

広報担当者:タラ夫が平面から立体化して、通称「タラ夫2.0」に進化した時だったと思います。(※現在は、「タラ夫3.0」まで進化済)パペットになって動きが出たことで反響も多く、ここで一気にフォロワーさんが増えたと思います。

それから「ブリューゲルとボスの足跡をたどる」という趣旨でプレスツアーを企画した時にメディア露出をしたので、その際にもたくさんのお声をいただきました。また、本展を楽しんでいただくために様々な企画を行う「プロジェクトバベル」などを定期的に行っており、タラ夫も頻繁に登場しています。そういったさまざまな要素が相乗効果となって全体の反響につながっているのかな、と実感しています。

――なるほど。タラ夫だけでなく、さまざまなプロモーションの仕掛けが功を奏して大きな反響に繋がっているのですね。それでは最後に今回の展覧会の見どころを教えてください。

広報担当者:今回の展覧会には重要な2つの柱があります。一つは24年ぶりに来日するブリューゲル作の『バベルの塔』。そしてもう一つは16世紀ネーデルラント絵画のキモカワブームの仕掛け人、ヒエロニムス・ボスとボスに魅了された作家たちの描く、奇妙なモンスターの作品群です。さらに今回は目玉の『バベルの塔』に向かって、時代の流れが見えるような展示構成になっています。ブリューゲルがボスのフォロワーであったように、作品を通して16世紀ネーデルラントのキモカワの歴史にも注目していただきたいと思います! Twitterではタラ夫が有名になったおかげで、今では“タラ夫展”と言う方まで出てきたのですが、あくまで『バベルの塔』展です(笑)。ぜひ会場で、『バベルの塔』をはじめとした作品群を目撃してみてください。

――それでは最後に、タラ夫から皆さんに一言メッセージをお願いします。

タラ夫:展覧会にぜひお越しください! これからも『バベルの塔』展の公式マスコットとして、日々頑張っていきます。タラ夫3.0の姿で皆さんにお会いできることもあると思うので、楽しみにしていてくださると嬉しいです。東京都美術館でお待ちしております!

 

イベント情報
ボイマンス美術館所蔵 ブリューゲル「バベルの塔」展
16世紀ネーデルラントの至宝 ― ボスを超えて ―


会期:2017年4月18日(火)~7月2日(日)
会場:東京都美術館 企画展示室
住所:東京都台東区上野公園8-36
開室時間:9:30~17:30 ※金曜日は20:00まで(入室は閉室の30分前まで)。
休室日:月曜日 ※ただし5月1日(月)は開室。
入場料:一般 1,600(1,400)円、大学生・専門学校生 1,300(1,100)円、高校生 800(600)円、65歳以上 1,000(800)円
※()内は前売券・20名以上の団体券。
※中学生以下は無料。
公式サイト:https://t.co/3Boe4yto9Z
公式Twitter:https://twitter.com/2017babel

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