Caravanに訊く“過去と現在と未来”――自主レーベル立ち上げから11回目の野音ライブ、そして“旅”について

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2017.5.1
Caravan

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旅をして歌う男。そんなイメージがCaravanにはある。自分と世界、自分と音楽、その距離を常に彼は旅をすることで確かめているかのようにも見える。2012年にプライベート・レーベル“Slow Flow Music”を立ち上げ、より自主的に、よりシンプルに、より揺るぎなく活動するようになったCaravanの、今の状態はとてもいい。それは昨年発表されたDVD+LIVE CD『ノマドの窓』からもよくわかるものだ。過去と現在と未来について話を聞いた。

――Caravanさんというと、まずあちこち旅をしながらライブをしている人という印象が強いんですよ。

まあ、わりとちょこちょこ出かけてますからね。この前も種子島に行ってライブをしてきて。個人的に知り合いに呼ばれてライブをすることもあるので、そういうのも入れると年間けっこうな数になる。それでも長いツアーは以前と比べると減ってるんですよ。前にLonesome Caravan Tourというのを1ヶ月半くらいやったんですけど、そこまで長いツアーは最近はしてないかな。“2週間くらい種子島に行ってきます”みたいなのは、わりとあるんですけど。

――遠くまで旅してライブをするのは好きな方ですよね?

そうですね。俺、落ち着きがないというか、けっこう移動が好きなので。動いてるのは嫌いじゃないですね。フェリーだったり飛行機だったり、何時間も閉じ込められて動けませんっていうような長旅はしんどいですけど、陸路を車や電車で動くのは好きです。

――旅が好きだなっていう意識は昔からあったんですか?

自分はもともと海外に住んでいたんですよ。親の仕事で小学校あがってすぐくらいまで南米に住んでいたんですけど、日本に帰ってきたら引っ越しがすごく多くて。2年に1回は転校していたので、“ここが故郷”というような意識がない。南米にいたけど、南米が故郷という感覚はないし、かといって日本のどこかが故郷という感覚もないんです。ここ10年以上は茅ヶ崎にいて、そこにスタジオも作ったので、ようやく少しホームタウン感もでてきたけど、かといってそんなに茅ヶ崎の連中と年柄年中つるんでるわけでもないし。だから、場所に執着がないというか。

――なるほど。

子供の頃って、みんな故郷の話とかをするじゃないですか。そういうのが自分にはないのがちょっと寂しかったりもしたんですけど、今となってはそれはそれでいいのかなと思ってて。ライブでどこかに行くことによって故郷が増えてきてるような感覚もちょっとあるし……まあ、どこにでも順応しやすくはなりましたね。

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――昔はそうじゃなかった。

うん。どこにいても自分の居場所って感じがしなかったから、子供の頃はできるだけ目立たないようにしてました。そういうふうに気を遣ってる子供でしたね。

――「旅のよさは?」と訊くと、たいていの人は「出会いがたくさんあるから」「いろんな人と知り合えるから」って答えると思うんですよ。もちろんそれもそうだと思うんですけど、Caravanさんが旅に求めているのはそういうこととも少し違うような気がしていて。

旅って、それこそ一期一会で予期せぬことが起こったりもするけど、意外とひとりの時間が多いんですよ。日常暮らしているときよりも孤独になる瞬間が多い。例えば、ぼけーっと何時間もつぶさなきゃならなくなったりすることがあるじゃないですか。そういう時間が俺は意外と嫌いじゃなくて。むしろそれが旅の醍醐味だったりする。世界を知るために旅に出るなんて言ってても、やっぱりそこで知るのは、自分の小ささだったり、足りなさだったりしますから。それがいいんですよね。

――孤独に強いというか、それに対する耐性がほかの人よりもあるのかもしれない。

ああ……意外と“寂しいのが好き”みたいなところはあるかもしれないですね(笑)。

――それが表現活動に繋がっているところもありますか?

どうでしょうねぇ。あんまり考えたことないけど、例えば旅の歌にもいろんなタイプがありますよね。ポジティブ全開で“オッケー” “オーライ”って歌もあれば、“俺はどこに帰るのか”みたいな内向的な歌もある。旅ってそういうふうにいろんな側面があるから。何を旅に求めるかは人それぞれ違うでしょうけど、自分の場合そういう意味では繋がっているかもしれないですね。

――だと思うんです。だって、安易に“ひとつになろうぜ”みたいなことを歌ったりはしないじゃないですか。

そうですね。ひとつになる瞬間があってもいいと思うけど、ひとつにならないほうがいい場合もあるだろうし。いろんな人種がいて、いろんな宗教観があって、いろんなライフスタイルが地球上にはあるわけで、それは旅をすればよくわかる。そこでひとつになることの恐ろしさもあるわけで。バラバラであることで秩序が保たれてるようなところもあったりしますからね。旅をするとそういうことに気付く。やっぱり押し付けのワンラブはしんどいですよね。

――『ノマドの窓』のフライヤーに、「Life is a Dream… Life is a Gas… Life is a Trip… さあ君は君の道を進め」ってコピーが書いてあって。まさにそういうことだなと。この「君は君の道を進め」ってところが核心だよなと思ったんです。

うん。そうですね。

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――それから、Caravanさんのイメージのひとつとして、“孤高のアーティスト”ってところがある。似た音楽をやってる人はいないし、特定のバンドやアーティストと一緒にイベントをやり続けるみたいなこともないですし。

確かにシーンみたいなものがないんですよね。自分くらいの世代だと、わかりやすいところでは“エアジャム世代”とか、音楽性で一括りにされやすいシーンがあったわけですけど、そういうのがない。まあ、自分がデビューする頃は世界的にもジャック・ジョンソンとかベン・ハーパーとかが盛り上がってたりして、サーフロックみたいな括りで言われてたりしてたけど、一人ひとりはそこに属してなかったりするんですよ、実際は。たぶんそういう人たちはそんなにシーンを求めてないというか、“ほっといてよ”ってタイプの人たちだと思うんですね。だけど、なんとなく一括りにされて。その頃エイベックスからデビューしたので、レーベルがそういう打ち出し方をしててね。ロケっていうと必ず海辺みたいな(笑)。ステレオタイプな。サーフィンは好きだったし、もちろん音楽も好きだから、それでサーフロックってことなんだな、まあいいかって思ってたけど、“でもそんな簡単なことじゃないよな”って思いもありました。当時は若かったこともあって、“オレ、違うから”って抗いたい気持ちがあった。だからよくエイベックスの人と揉めてましたよ。「だってサーフィン好きじゃん!」「いや、そりゃそうですけど、でもね」みたいな(笑)。

――はははは。

その頃だと、KeisonとかLeyonaとかね。あと東田トモヒロくんとか。アコースティックなサウンドで、ルーツ・ミュージックが好きで、旅も好きでっていうアーティストが何人かいて、意外とみんな繋がってたし、世代もだいたい一緒なんですけど、でもそれぞれ勝手にやってる感じだったから、年に1回会うか会わないかで。だから、そういうシーンって、あってないようなものでね。そういう意味では、さっきの故郷感覚がどこにもないっていう話に似てるかもしれない。

――基本的に、あんまりみんなと混ざってなんかやるような性格ではないんでしょうね。

うん。混ざってワイワイやってるのをハタから見ていて楽しそうだなと思っても、いざ自分が混ざろうとすると結局は窮屈になっちゃう。そういう天邪鬼なところがあって。だから、それこそちょっと寂しいくらいのほうがいいというか。

――メジャーをやめて、2012年にプライベート・レーベル“Slow Flow Music”を立ち上げたわけですが、それは自分の居場所を明確にしたいというようなことだったんですかね?

それもあるし、あとはやっぱり大きい会社にいると、やることが決まってっちゃうんですよ。リリースがあって、それに向けてキャンペーンをして、っていうのを10年近く繰り返してきて、違和感を持つことがいっぱいあった。セオリーでやらされてる感じのこともたくさんあって、自分としては、やり方は人それぞれでいいんじゃないかなと思ったし。多様でありたいというかね。で、そんな頃に震災があって、よりそういうことを強く思うようになった。それでレーベルを作ろうと。マネージャーに相談して、まあどうなるかはわからないけど、やってみようって。

――震災があって考えたところも大きかったわけですね。

そうですね。あのときって大きい企業の脆さとか危うさがすごく出たじゃないですか。そのときに、小さくてもメンタル的に強いとか、レイドバックしてるけど最先端みたいなことでやってった方がいいし、そのほうが面白いなって思ったんです。

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――レーベルを立ち上げる段階でもう、どういうふうに活動していくかという方法論は明確にあったんですか?

やりながらってところもありましたけどね。とりあえず作品を作る環境があればなんとかやっていけるだろうということで、まず茅ヶ崎にちっちゃいスナックがあったんですけど、そこを買い取って改造してスタジオにしたんです。そこを制作の拠点にして、メジャーの最後のアルバムもそこで作ったんですけど、それを経てレーベルを立ち上げて。で、マネージャーがいろいろ事務的なことをやってくれて。

――レーベルを立ち上げても、CDの流通はどこかを通してやるとか、楽曲の出版権はどこかが管理するとか、そういうやり方をする人が一般的ですよね。でもCaravanさんはそれらも全て自分のところでやられている。『ノマドの窓』のライナーに兵庫慎司さんも書かれてますけど、そこまでインディペンデントであることに徹底している人は稀なわけで。

既存の流通だと、いろいろ通さなきゃいけないものが出てくるんですよ。それは著作権もそうですけど、自分的には“なんだろ、これ”っていうのが正直あって。自分はテレビに出てヒット曲出して、っていうふうにやりたいわけじゃない。そうじゃない音楽の浸透のさせ方でやっていきたい自分のような人間にとっては、逆に足かせになるところがあって。別に、曲をかけたかったらすきにかけてくれていいし。自分たちで物販物として管理できる体制があれば、その方がいいじゃないかなって思って、で、そうしてるんですけどね。

――そのへんのやり方は、スタッフのみんなと考えて。

まあ、みんなといっても、僕を含めた3人なんですけど(笑)。

――CDは基本的にライブ会場と、あとは知り合いのカフェとか洋服屋さんで売ってるんですよね。

うん。あとはホームページで。送料はかかっちゃうんですけど、そこで通販してるので、ネット環境があれば買えるようにはなってます。でもそれはそれとして、基本的にはやっぱりライブに来てほしいし、原始的ですけど、ライブで演奏を聴いて、これを家でも聴きたいなと思ったら買ってほしい。無理くりラジオとかテレビに出てプロモーションするんじゃなくて、ライブを観て買ってもらうのが一番自然な流れじゃないかと。シンプルだし、身の丈に合ってるかなって思うんです。

――CDショップでは売らず、カフェや洋服屋さんで売るのも、つまり売ってる人たちの顔が見えるから?

小さいお店ほどスタイルがあったりしますからね。その人の顔が見えて、その人の好みとか伝えたい世界観が色濃く出ていたりする。そのお店の存在そのものがひとつのメッセージになっていたりとか。そういう方を自分は応援したいし、自分と似たところを感じるから、そういうところに自分のCDが置いてあったら面白いなと思って。

――配信に関してはどうなんですか?

配信も毛嫌いしてるわけではないんだけど、単純に自分はレコードとかCDとか、モノが好きなんですよ。自分も好きなアーティストの作品はモノとして持っていたい。昔は例えばジャケットの裏のちっちゃい白黒写真を虫眼鏡で見て、“このアーティストが着てるジージャンはラングラーかぁ”とか言いながらニヤニヤしたりしてたから(笑)。なんかそういうモノに対する愛着を取り戻したいし、好きなものはとことん好きになってほしいというような思いもあってね。配信は絶対やりません、ってことではないんですけど、まずは“面白いモノ作りをしてますよ”ってところを見てもらいたい。その上でまあ、タイミングと合うものがあれば……とは思ってるんですけど。でも最初からラクなほうに流れちゃうより、一回人がめんどくさがることをやってみようかなと。

――昨年リリースした『ノマドの窓』のパッケージも、すごく凝ってますもんね。

ちょっとやりすぎちゃったけど(笑)。やっぱりインディペンデント・レーベルだからこそできることってある気がしていて。このハコの仕様とかも、メジャーだったら採算が合わないってことでやめさせられちゃうと思うんですけど、でもこういう部分での遊び心はひとつの醍醐味だと思って。

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――ところで、この『ノマドの窓』のDVDを見ていて改めて強く感じたのは、Caravanさんの音響に対するこだわりなんですよ。最初の方でアコギを鳴らすシーンがありますけど、めちゃめちゃいい音だなぁと。

ああやってフィールドレコーディング(外での録音)をしてみると、やっぱり場所による音の違いってすごく大きいってことがわかるんですよ。ここはロウを拾うなとか、ここはなぜかスカスカな音になっちゃうなとか、外でも場所によって違いがいろいろある。それが面白くて。

――同じ海辺でギターを鳴らしても、どこどこの海辺とこっちの海辺とでは音の響きが違うぞ、みたいな。

うん。フェスとかもそうじゃないですか。苗場にしたって、ホワイトとヘブンでだいぶ音が違う。もちろんそれはスピーカーの違いとかもあるんでしょうけど、地形の違いでも大きく変わる。こだま感が全然違うんですよね。

――確かに。特にCaravanさんの場合はギターと歌と、あとはハーモニカだけですから、いかにそれをいい音で響かせるかってことはとりわけ大事ですよね。バンドサウンド以上に、そこのよしあしが如実に出るわけで。

そうですね。音圧でごまかせないっていうのもあるし。音量が小さいのに迫力のある音、説得力のある音っていうのはどうしたら出せるのかとか、そこはやっぱり突き詰め甲斐のあることだなと。そういう意味では、アコースティックって意外とハードコアだなと思っていて(笑)。

――ところで、新しいオリジナル・アルバムの予定とかはありますか?

今は曲を作ってるところなので、まあ年内に出せたらいいなと思ってるんですけど。前のアルバムから少し経ってますけど、今はミキシングまで自分でやっているので、1枚作るとけっこうぐったりしちゃうんですよ。そこから立ち直るのに1年くらいかかる(笑)。だからそんなに続けて出すこともできなくて。

――どんどん曲を作って出すよりも、結局は今ある曲をライブでいかに熟成させるかの方が大事だったりするところ、ありますもんね。

そうなんですよ。リリースしたら終わりってことじゃないので。アルバムというのは、まさにアルバムと言うくらいだから、そのときの青写真みたいなところがあるわけで、そこから曲と一緒に自分が旅をしたり歳をとったりしていくなかで味わいが出てくる。アレンジもどんどん変わっていって、そこであるとき「ああ、ようやくこの曲ができてきたな」って思える瞬間があったり。

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――そうなんでしょうね。

特に自分は結局ひとりだから、アルバムのキレイな音をそのまま再現できるわけでもないし、今俺はこの曲の何を伝えたいのかみたいなことがすごく大事になってきたりもするので。

――さっきのパッケージの話もそうですけど、やっぱりCaravanさんの根っこにあるのは、一つひとつを丁寧にやっていきたいっていうことなんでしょうね。

そうですね。そこで「マイペースで、スローでいいねぇ」って言われちゃうと、「すいません」って感じになっちゃいますけど(笑)、まあそれができる環境ならば自分はそうやっていきたいですね。リリースしたときだけ頑張ってたくさんプレイして、っていうんじゃなくて、やっぱり長く楽しみたいですからね。消費はしたくないというか。

――因みに次のアルバムはどんな感じになりそうか、なんとなくイメージはあるんですか?

だいぶ曲を録りためているんですけど、シンプルなものもあれば、わりと華やかなアレンジになっているものもあるので、けっこうカラフルなものになりそうな気はしているんですけど。

――わかりました。楽しみにしてます。あと、最後に5月7日の日比谷野音について。野音はもう何度もやられてますよね?

11回目かな? 野音が好きなんですよ。中学生くらいからあそこでいろんなライブを観ていて、感動したものも多くて。初めて自分が野音のステージに立ったときは、過去に観たライブを思い出したりしてましたね。雰囲気もいいでしょ、あそこ。だんだん黄昏ていく感じとか。

――そうですね。今回はどんな感じで?

ひとりきりでやります。過去に野音でひとりだけでやった例はないらしくて、数年前に自分がやったのが最初らしいんですよ。なので今回も、ひとりなんだけどみんなでグルーブを作れたらなと思ってます。


取材・文=内本順一 撮影=大橋祐希


 

 
 
ライブ情報
Caravan LIVE EXTRA SPECIAL 2017 “Lonesome 野音 AGAIN”
5/7(sun) 日比谷野外大音楽堂
OPEN 16:45 / START 17:30
ADV 指定席¥4.800 *雨天決行
ticket now on sale!!! (pia/lawson/e+)
公演情報URL:http://www.diskgarage.com/ticket/detail/no075067
info. DISK GARAGE 050-5533-0888
■公演チケットは5月6日まで各プレイガイドでに販売中!

 

リリース情報
DVD+LIVE CD『ノマドの窓』

HARVEST ONLINE SHOPにて発売中
http://harvest-music.shop-pro.jp/
SFMD-004 ¥5.556(本体価格)+tax

Disc 1 DVD
01. Well-come
02. Back to roots again
03. サンティアゴの道
04. Stay with me (新曲)
05. その瞬間
06. Saraba
07. Bohemian blues
08. Seed
09. Magic
10. もっと遠くへ
★BONUS SONGS (Caravan 10th Anniversary @渋谷公会堂)
01. Music save my life
02. Key of life
03. 光の舟に乗って
★オーディオコメンタリー
Disc 2 LIVE CD
LIVE EXTRA Lonesome鎌倉 @鎌倉芸術館
01. Message
02. Trippers anthem
03. The story
04. Esperanza
05. Love & free world
06. Camp
07. その瞬間
08. Folks
09. Over
10. サンティアゴの道
11. アイトウレイ
12. Trippin’life
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