『オワリカラ・タカハシヒョウリのサブカル風来坊!!』 バーザムの真実に迫る&岡本英郎全仕事史インタビュー前編

インタビュー
アニメ/ゲーム
2017.5.20
左から、タカハシヒョウリ、岡本英郎  撮影=岩間辰徳

左から、タカハシヒョウリ、岡本英郎  撮影=岩間辰徳

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ロックバンド『オワリカラ』のタカハシヒョウリによる連載企画『オワリカラタカハシヒョウリのサブカル風来坊!!』。毎回タカハシ氏が風来坊のごとく、サブカルにまつわる様々な場所へ行き、人に会っていきます。第九回となる今回は、「HGUC1/144バーザム発売記念!」ということで緊急特別編、バーザムをはじめ数々のアニメ・特撮作品でデザインを担当した岡本英郎さんの「バーザムの真実に迫る&岡本英郎全仕事史インタビュー」をお送りします。


風来坊、「歴史」に出会いました。

撮影=岩間辰徳

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1985年、『機動戦士Zガンダム』に登場した「バーザム」というモビルスーツ。このバーザム、「股間」のパーツがアニメの登場シーンによって凸であったり凹であったりする。そのミステリアスさとマニアックさに惹きつけられるバーザム愛好家(バーザマー)は後を絶たず、バーザム界は凸派と凹派に二分された。

そのバーザムのデザインを担当したのが、数々のアニメ・特撮作品で活躍してきたデザイナーの岡本英郎さんだ。不思議な縁(後述)で、岡本さんと知り合った僕は、このバーザムの股間のパーツについて岡本さんと話をした。その時に、岡本さんはその場で図解を描いて、このパーツは岡本さんがデザインした際は「凸」であることを教えてくれた。僕が感動してこの話をツイートしたところ、世のバーザマー達からたくさんの反響があった。

この2017年5月、プラモデル「HGUC1/144バーザム」が発売された。念願でもあった岡本英郎さんとの対談取材が実現した。話はバーザムから、岡本さんの全仕事史へ。それは、ある種の歴史的な記録になったと思う。すさまじい話の数々を、前後編でお届けします。

 

デザイナー・岡本英郎が語る、バーザムの真実

タカハシ:僕と岡本さんとは、いま自分が「オワリカラ」と並行してやっている「科楽特奏隊」という特撮系バンドのメンバー・エミソンヌこと、おかもとえみ(フレンズ)のお父さんということで知り合ったんですよね。元々オワリカラと、えみそんが所属していたTHE ラブ人間がよく対バンしていて。それで、たぶんふとした時に、僕がガンダムとかゴジラの話をしたんです。そしたら、えみそんに「うちのパパ、ゴジラとかガンダムのデザインしてるよ」って言われて。それで、詳しく聞かせてもらったら『機動戦士Zガンダム』の「バーザム」、ゴジラの「デストロイア」をデザインした岡本英郎さんだと。それで衝撃を受けるという、そんな出会いがありまして、そして今回の対談となりました。まずは、ついにバーザムがプラモ化ですね……!

岡本:ねー。やっとですもんね、うれしいですよ。

タカハシ:『機動戦士Ζガンダム』の放送開始が1985年ですから、プラモ化まで32年かかっているわけですもんね。バーザムといえば、この股間の部分のパーツですね。これが一部のバーザマーの間で長年の議論になっていた部分で。

岡本:これね、以前ヒョウリ君と話したとき「論争になってる」って言っていたじゃないですか。そもそも論争なんかないんですよね!!

撮影=岩間辰徳

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タカハシ:あはは(笑)。

岡本:だって、論争っていうのは、「これはAかBか」というのが論争じゃないですか。ヒョウリ君からその話を聞くまで、どの部分が「出っ張っているのか、へこんでいるのか」なんて質問は誰もちゃんとしてこなかったんですよ。ていうか、股間が出っ張っている、へんこでいるって、最初は何を言っているのかわからなかった。

タカハシ:でも実際、バーザムって確かに世に出回っているデザイン画だと、この股間のパーツが凹なのか凸なのか、明確にはわからないっちゃわからないんですよね。

岡本:だから、今日は原画を持ってきました。

タカハシ:うわー! すごい!!

撮影=岩間辰徳

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岡本:これが一番最初のタイプなんですけれど。

タカハシ:これはすごい! 完全にへこんでない!

岡本:へこんでないでしょ?

タカハシ:いわゆる世に出回っているバーザムのデザイン画は、ここから岡本さんがペン入れしたものなんですか?

岡本:ペン入れっていうか、清書しています。もしへこんでいるなら、ここのフチのパーツは中側に反るじゃないですか。

タカハシ:確かにそうですね。

岡本:多分、アニメの作画の時に間違えたんでしょうね。

タカハシ:そう、アニメだと明らかにへこんでいるシーンがあるんですよね。当時のコピー機の性能的にも、コピーを重ねていくうちに線がつぶれていったっていうのもあるかもしれません。それで、一昨年くらいまでそこが曖昧だった。

岡本:「どっちが正しいのか」っていう問題が起きること自体が、「なんで?」って思っていました(笑)。

タカハシ:原画を見たら一目瞭然ですね、出っ張っていると。カトキさん(※カトキハジメ)がリファインしたこの絵だと、内側に線があるじゃないですか。これは明らかにへっこんでいる表現ですよね。

岡本:そうですね。

タカハシ:こんな感じで凹か凸か解釈が分かれるっていう状況があって、ROBOT魂のフィギュアでは出っ張っているパーツとへこんでいるパーツが両方ついてくるという異例の扱いでした。「好きな方にして良いよ」っていう(笑)。

岡本:何年も前にもそんなことを言われたりしていたんだけれど、僕はなにがどうへこんでいると思われているのか一切わからなかった。で、ヒョウリ君に教えてもらって初めて意味がわかったんです。

タカハシ:そうだ、中華料理屋でバーザムの話しましたね(笑)。そしたら、そこで手帳に図解を描いてくれましたもんね。歴史が紐解ける瞬間にいるみたいでした。で、それと同時に言われているのが、「このパーツ、そもそもなんなんだ?」っていうことなんですよね。バーニアなのか、ビーム砲なのかっていう。ここの部分は何をイメージしているっていうのはあるんですか?

撮影=岩間辰徳

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岡本:エネルギーチューブを差し込んで、メンテナンスをするような、そういうイメージのものですね。

タカハシ:じゃあ、武器とかじゃないってことですね。

岡本:じゃないです。

タカハシ:給油口みたいなものだと。となると結構、意外なところについていますよね。

岡本:空母のエンタープライズから給油したトムキャットが飛んでいく、みたいなイメージ。簡潔にわかりやすく、給油するときの差し口のようなパーツです。バーザムは「量産型」なので、すぐにメンテナンスできるような機構としてそのパーツを設けました。

タカハシ:ああ、一番メンテナンスしやすいところにつけるっていう。

岡本:アニメなんで、分かりやすい演出が必要じゃないかと。

撮影=岩間辰徳

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タカハシ:なるほど。(原画をめくって)……うわー! なにこれ! 歴史的! これ、もう完全に原画ですか?

岡本:原画です。30年間経っちゃっているから色が滲んじゃってますね。富野さん(※富野由悠季)のメモも書いてあります。

タカハシ:うわー、これ本当にすごいなぁ。バーザムのラフに、パワーアッププラン……チョバムアーマー的なものですかね……! 歴史的遺産ですよ、本当に。バーザムってガンダムMk-IIの量産型っていう設定じゃないですか。

岡本:あ、その設定はね、僕は知らなかったんです。とりあえず「ザクに代わるヤラレメカ」としか言われてなかったような。

タカハシ:そうなんですか!

岡本:とにかく、「ザクに代わる新しいものを作ってくれ」っていうことだけだったので。

タカハシ:バーザムをデザインされたのは、番組が始まる前ですか?

岡本:いや、番組は始まっていましたね。

タカハシ:じゃあ、後半に出てくる敵機体っていうのだけは決まっていたということですね?

岡本:そうです、そうです。

タカハシ:このティターンズ色とかも岡本さんが?

岡本:いや、色は違います。あらかじめこういう感じでやってくださいっていうものはあって、そこから膨らませていってデザインしていくっていう流れなので。

タカハシ:富野さんが実際にこれを見て、「OKだ」とか「ここを直せ」とかいう指示があったってことですね。

撮影=岩間辰徳

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岡本:そうですね。ちなみにこれ、初めて話すことだと思うんですけれど……Zガンダムは二等辺三角形のフォルムなんですよね。だから、バーザムも二等辺三角形のフォルムをもとにしつつ、ちょっと変えたものにしようとしたんです。Zガンダムとバーザムを並べたときに、真ん中にいるZも後ろのバーザムも目立つようなデザインを考えていて。それで、脚は二等辺三角形のラインを保ちながら、機体の中央を丸っぽい形にしようと思ったんです。要するに、「コンパス」をもとにしたフォルムなんですよね、バーザムは。

タカハシ:あーなるほど! 確かに言われてみれば! かなり腰高でコンパスみたい。

岡本:結局、主役であるZと並んだ時に絵にならなきゃ意味ないわけじゃないですか。それでいてZとは少し違って見えないといけない、というところでこのフォルムにしました。異質感は、強く出したかったんです。

 

岡本英郎の仕事全史を追う
デビューから、ガンダムシリーズを手掛けるまで

タカハシ:岡本さんの最初のデザイナーとしてのデビューというか、どういう経緯でこの世界に入ってきたのかっていうところから聞きたいのですが。

岡本:一番最初は、18~19歳くらいかな、学生の時に『宇宙大帝ゴッドシグマ』(1980)っていう作品のミニカードの原画を38枚やったんですよね。

タカハシ:若い!

岡本:それで、のちに伸童舎を作る野崎さん(※野崎欣宏)っていう方が、新しい作品の敵メカを作るっていうことで人を集めていたんですよ。で、声をかけてもらったんですけれど生意気だったんで「デザインをやるなら基礎からできないのであればやらない!」と言って断ったんです。

タカハシ:企画途中からは入りたくない!、ってことですか?

岡本:ではなく、プロとしての資格みたいなことが欲しかった。アマからダラダラとやるんではなく。

タカハシ:18歳で(笑)。やばい攻めの姿勢。良いなぁ。

撮影=岩間辰徳

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岡本:「だったら日本一厳しい会社に行け」って野崎さんに言われて、デザインメイトに行ったんです。

タカハシ:少し調べたんですけれど、デザインメイトって、お菓子とか食玩のデザイン等がメインの会社っていうことで。

岡本:そうですね。グラフィックデザイン会社です。パッケージやロゴデザインやって玩具のデザインもやってる。パッケージは、明治製菓の『きのこの山』とか。

タカハシ:『きのこの山』は岡本さんが関わっているんですよね?

岡本:版下をやりました。パッケージのここにロゴを入れるとか、ここに商品イラストや写真を入れるとか、アナログ時代の印刷の大元になるものですね。それをやっていたら、僕の上司の樋口さん(※樋口雄一)という方がいるんですけれど、その人が『伝説巨神イデオン』のメカデザインをやっていて、デザイナーのイロハを教わりました。

タカハシ:おー! 1981年ですね。

岡本:樋口さんは、いろんな玩具のデザイン、パッケージのイラストとかをやりながら、プロデューサー的なこともやっていました。そのころに「新番組が始まるんだけれど、やる?」って言われたので「やります!」って言って。それで、『J9シリーズ』(※国際映画社製作のロボアニメシリーズ)からメカデザインに関わるようになりました。

タカハシ:1作目の『銀河旋風ブライガー』は、敵メカとかをやっていたってことですか?

岡本:そうです。敵メカですね。13話から。

タカハシ:『J9シリーズ』って、ノリや音楽は最高ですけれど、作画とかは結構すごいじゃないですか。当時、たとえば国際映画系統のものとサンライズ(※ガンダムをはじめとするロボットアニメの制作会社)系統のものって、ランク的なものとかあったんですか? 例えば、やっぱりサンライズにデザインで参加するほうが狭き門!、っていうような。

撮影=岩間辰徳

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岡本:いやあ、そういうことは、考えていなかったですね(笑)。アニメは、あまり観てなかったです。

タカハシ:岡本さんのテレビアニメでのデビュー作が、ブライガーになるわけですね。

岡本:社内グループ名で出ているので、個人名義ではないですが、そうなりますね。『銀河旋風ブライガー』に始まり、『銀河烈風バクシンガー』、『銀河疾風サスライガー』、あとは『魔境伝説アクロバンチ』とか。あと、あまりやっていないけれど『亜空大作戦スラングル』も。

タカハシ:「ゴリラ!」ですね。その中で、どのメカを担当したっていうのはどの程度覚えていたりするんですか?

岡本:いやー、本当に雑多にやっていたので、はっきりとは覚えていないんです。樋口さんが途中まで描いたものを完成させたりとかしていましたね。

タカハシ:クリーンナップ的なこともやられていたってことですね。

岡本:そうですね。樋口さんが正面を描いてサイドは僕がやる、とか。

タカハシ:分業的な世界なんですね。そういうプロダクト的な手法の中で、岡本さんの個人の作家性というか、「ここをこうしたい!」っていうのは反映できるものなんですか?

岡本:できます。わりと自由ですね。

タカハシ:いわゆる“岡本節”っていうものが生まれた瞬間っていうのはいつなんですかね?

岡本:結構自由にやらせてもらえていたので、そのころからそういうものはあったと思います。僕、プロレスが好きだったので、ブライガーの時に敵のロボット全部プロレスラーをベースにしたりとかしていました(笑)。

タカハシ:確かに、ブライガーって結構プロレスノリあるなぁ(笑)。で、次は『ヤットデタマン』ですね。

岡本:『ヤットデタマン』は会社の中でやっていました。

タカハシ:じゃあビックリドッキリメカ(※『ヤットデタマン』ではミニメカ)をやっていた?

岡本:やっていましたね。いま話した作品、ほぼ全部同じくらいの時期ですね。

撮影=岩間辰徳

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タカハシ:1985年くらいまでですね。あと、手塚治虫さん企画監修の『ワンダービートS(スクランブル)』ですね。

岡本:「テルモ」っていう医療品メーカーがスポンサーになってやっていたアニメでしたね。

タカハシ:『ミクロの決死圏』、ていうかウルトラセブンのダリーの回みたいな。これは何を担当していたんですか? ワンダービート号ですか?

岡本:そうそう、それ!

タカハシ:じゃあ味方側のメカですね。敵側もメカ出てきますが。

岡本:敵メカも雑多にやっていたかな、多分(笑)。

タカハシ:ワンダービート号って、初代、2代目って出てくるんですけれど、どちらをやっていたとか覚えてますか?

岡本:両方やっていたと思います。

タカハシ:じゃあメカに関してはかなりメインで担当されていたんですね。ちなみにこれ、手塚治虫さんからの指示ってあるんですか? お会いしたりとか。

岡本:いやいや、ないですよ。虫プロ(※虫プロダクション)には何回か行ったんですけれど、お会いすることもなかったですね。

タカハシ:そして1985年『機動戦士Ζガンダム』になるわけですけれど。

岡本:「新しいガンダムをやる」ということで、いろんな会社にデザイン画の発注が来てコンペが行われてました。そのころは「もうそろそろ会社いいんじゃないか?」っていう時期でもあり、富野さんから手紙をもらったりしていたのもあって、野崎さんに相談しました。

タカハシ:つまり、フリーになるタイミングだったんですね。そのコンペっていうのは、「モビルスーツを出してくれ」っていう指示だったんですか?

岡本:要するに「次作の新しいコンセプトのガンダムをデザインしてくれ」っていう発注ですね。で、その新しいガンダムのプランを出したんです。

タカハシ:その絵はもう現存しないんですか? 手元にはもうないんですかね。

岡本:どっかにあると思うんだけれどなあ……。

タカハシ:永野護さんが『Z』の時に描いた新ガンダム案(※後に百式の原形になる)とか、バンダイ側が描いた案(※後のサイコガンダム)とかは結構本に出るじゃないですか。岡本さんが描いたガンダムがどんなのだったかはめっちゃめちゃ見てみたいですよ。それが出てきたら歴史的なものですよ。

撮影=岩間辰徳

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岡本:僕、関節のプランを出したんですよ。「足の関節がこう動く」とか。それが富野さんに気に入られたみたいでしたね。富野さんは、忘れられてるでしょうね。

タカハシ:富野さんがそれを見て、「やるな!」ってなったってわけですよね。ちなみにそれは、会社仕事っていうよりかは個人としてやっていた?

岡本:その辺は、曖昧な感じだったような(笑)。いまでこそ、そういう線引きはするのかもしれないけれど、当時は混沌としてたような気がします。そういうこともあって、会社を辞めることになったんです。で、伸童舎の野崎さんのところに行って「新しいザクみたいなのを描け」って言われて、それがフリーデビュー戦一発目、バーザムだった、ていう感じです。それが続いて、「じゃあ次の『機動戦士ガンダムZZ』も」っていうことになった。

タカハシ:そこは、富野さんとやりとりしながら作っていくっていう感じなんですか。

岡本:そうですね、みんなそうです。

タカハシ:実際、富野さんからはどういう指示が出るものなんですか?

岡本:もう赤い文字でいっぱい、あれがなんだとか、これがなんだとか。

タカハシ:ははは(笑)。確かに、大河原さん(※大河原邦男)の原画とか見ると相当細かく……「ふくらはぎのラインがダメ!」とか。

岡本:いろんな人のデザインをバラバラに切って、まとめるみたいな。でも、富野さんより内田プロデューサーからいろいろ言われました。

撮影=岩間辰徳

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タカハシ:ちなみにメカデザインの面で影響を受けた人とかはいるんですか? 子供のころに見ていて……とか。

岡本:僕はもう『マジンガーZ』。

タカハシ:ああ、じゃあ永井豪。

岡本:僕、小学校の時に、近所の友達の親戚に辻忠直という人がいたんです。辻忠直さんというのは、『マジンガーZ』の美術をやっていた人で、その方に「マジンガーZを空に飛ばすにはどうしたらいいと思う?」って言われたんですよ。

タカハシ:おおおお!

岡本:そこで僕が「デビルマンの羽をつければいい!」って言ったんです。

タカハシ:すごい! ジェットスクランダーの誕生秘話!

岡本:で、『マジンガーZ対デビルマン』が作られて、「あ、自分の意見採用された!」って思ったんですよ(笑)。それが小学校5~6年のころかな。ところが後にLPを見たら、「空飛ぶマジンガーZ」っていう曲にジェットスクランダーとあって、「なんだもう決まっていたんじゃないか!」と(笑)。

タカハシ:でももしかしたら、ちょっとは参考にしたかもしれないですよ(笑)。じゃあ、子供のころ一番好きだったロボットは『マジンガーZ』?

岡本:あとは『鉄人28号』ですね。

タカハシ:そのあとに『ゲッターロボ』とかたくさん出てくるじゃないですか。

岡本:その辺も全部影響受けてます。『マグネロボ ガ・キーン』までですね。あ、バーザムはガ・キーンに似ているかもしれない!(笑)

タカハシ:(笑)。少し話を戻しまして、ZZガンダムについてお聞きしたいんですが、「デザインをまとめた」と言われてますが、実際どういう流れだったんでしょうか? いわゆる世の中に出ているZZのデザイン画のクリーンナップは担当しているんですか?

岡本:アニメ用最終稿は、北爪さん(※北爪宏幸)ですね。僕らはどうしてもプラモデルというか、立体図でデザインしちゃうんですが、北爪さんはアニメーターなんで動きを重視したデザインするんです。アニメなんだから当たり前ですが、最初のガンダムも大河原さんが描いて、安彦さん(※安彦良和)がアレンジしていたんですが、そういう感じです。

タカハシ:では小林誠さんがデザインしたものを、岡本さんがまとめて、北爪さんがアニメっぽくしたっていうことなんですかね。

岡本:そうです、そうです。もう時効かと思うんですが、プランニングデザインだと変形できなかったので、その辺の機構とか直してくれと言われました。年の瀬で、正月明けまでに出来ないと番組がすっ飛ぶと言われ、正月返上でどうにか間に合わせました。

タカハシ:岡本さんが0からデザインしたZZっていうのは存在しないんですか?

岡本:いっぱい描きました!

タカハシ:うおーまじすか。

撮影=岩間辰徳

撮影=岩間辰徳

撮影=岩間辰徳

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岡本:これもそうだし……。

タカハシ:すさまじいものが……! これはZZ案として出した?

岡本:そうです。でも全部ボツになりましたね。

タカハシ:これはすごいなあ。これなんか、すごい新しいです。90年代のガンダムっぽいですね。F91かゴッドガンダムみたいな感じで。これは世間的には全く出ていないんですか?

岡本:出していないですねえ。これ原画ですから。

タカハシ:えーこれ、ガンダム系のイベントでいくらでも……あ、バウだ!

岡本:バウの原型になっているものを僕が描いていたんです。まだ名前も無い頃の。

タカハシ:これもすごいですね。バウは今でも人気モビルスーツじゃないですか。当時、これが20年後、30年後も世の中にありつづけるっていうこと、思っていらっしゃいましたか?

岡本:そんなこと考えていないですよねえ。ちょうど、藤田くん(※藤田一己)と明貴くん(※明貴美加)と机を並べていたころかな。

タカハシ:その当時、まだ20代中盤とかですよね。

岡本:そうですね。で、当時……これも時効かな? 作品を取り巻く揉め事がすごく多くて。それが嫌で嫌で、途中でZZを下りてしまったんですよ。同時期に、実はILM(※アメリカのVFX制作会社)との実写特撮番組のテレビシリーズの話があって、そっちに行きたいのもありました。アニメでパイロット版も作られています。

撮影=岩間辰徳

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タカハシ:でも、ZZのメインデザインに岡本さんの名前は残っていますよね?

岡本:もうやめたいっていうのは言っていたんだけれど、「せめて顔のクリーンナップや変形機構とかはお前やれよ」と言われてやったんです。ただその時に、いまでも悔しい思いが残っているんですけれど、直していいと言われていたのに、遠慮してしまったんです。つまり「調和」を取ったんですね。デザインを自分流に変えることを遠慮したんです。そのことで起きた問題は、30年経った今も消えないでモヤモヤしてるんです。トラウマですよね。ガンダムがどうこうとは別の、絵描きの根幹に関わる問題なので、取り返しのつかない悔しさが残っていますが、逆に今の原動力にもなってます。

タカハシ:なるほど……。

岡本:その時、ガンダムから途中で抜けるということで、サンライズの山浦社長(※山浦栄二)にすごい怒られました。当時、ガンダムに袖を振るっていうのは、相当なことで、ありえないことですから。山浦さんに呼ばれて「責任取れ」って言われました。それだけ期待をかけていただいたのに。逆に野崎さんからは、(やめるのは)すんなりでした。他の伸童舎の仕事は、やってましたし。それで、僕は責任を取る意味でって『鎧伝サムライトルーパー』をやることになったんです。

タカハシ:あ、なるほど! 同じサンライズですもんね、サムライトルーパー。

岡本:番組を決めるって、どれだけ紙一重のことか分からずでした、この頃は(笑)。

撮影=岩間辰徳

撮影=岩間辰徳

 

次回は、特撮作品への関わりからUMA研究家としての話まで、さらにディープな証言の数々! 後編に続く……!

 

商品情報
HGUC 1/144 バーザム

価格:1,620円(税込)
発売日:2017年05月20日
対象年齢:8才以上
(c)創通・サンライズ 
詳細:https://bandai-hobby.net/item/1937/(バンダイ ホビーサイト)
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