守り伝えられてきた仏教世界へ誘われる 特別展『仁和寺と御室派のみほとけ』記者発表会をレポート

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2017.6.23
特別展『仁和寺と御室派のみほとけ』記者発表会

特別展『仁和寺と御室派のみほとけ』記者発表会

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2018年1月、仁和寺を総本山とする全国の御室派寺院の寺宝が上野に集結する。普段は目にすることができない秘仏や、貴重な仏像が一堂に会す特別展『仁和寺と御室派のみほとけー天平と真言密教の名宝ー』が、2018年1月16日(火)から3月11日(日)まで東京国立博物館にて開催される。6月19日に行われた記者発表会より、見どころを紹介していこう。

仁和寺・御室派とは?

京都の仁和寺といえば、御室桜という名とともに桜の名所として思い出す人も多いだろう。仁和寺は仁和4年(888年)に建立された真言密教の寺院で、全国約790箇寺の御室派寺院の総本山だ。平成6年には世界文化遺産にも登録され、世界中から参拝者が訪れる。仁和寺は御室御所とも敬称されるが、もともと「御室」とは、仁和寺を建立した宇多法皇のためにもうけられた室(僧房、僧侶の住居)のことを指していたそうだ。その後も歴代天皇の厚い帰依を受けた仁和寺には、優れた絵画、書跡、彫刻などが伝え残されている。

仁和寺外観

仁和寺外観

そんな仁和寺を筆頭に全国の御室派寺院から、国宝の秘仏や本尊を含む仏像約70体や、貴重な名品が集められた本展は、仏教美術ファンでなくとも決して見逃せない貴重な展覧会となりそうだ。

記者発表会では、総本山仁和寺門跡・真言宗御室派管長の立部祐道氏が登壇。「単なる仏像、仏画ではなく、日本国中が仏の力のもとに成長し、仏が様々な形で多くの人達に祈りの力を与え続けてきたという日本の歴史、文化を感じてほしい」と語った。

仁和寺について語る総本山仁和寺門跡 真言宗御室派管長 立部祐道氏

仁和寺について語る総本山仁和寺門跡 真言宗御室派管長 立部祐道氏

国宝「千手観音菩薩坐像」など、通常非公開の秘仏が勢揃い

本展では、仁和寺創建当時の本尊、国宝「阿弥陀如来坐像」(京都 仁和寺蔵)が公開される。両手を重ね合わせる定印という手の形式は、制作年のわかる日本の阿弥陀如来像の中で最も古い。

国宝「阿弥陀如来坐像」平安時代・仁和4年(888) 京都・仁和寺蔵

国宝「阿弥陀如来坐像」平安時代・仁和4年(888) 京都・仁和寺蔵

他にも、国宝や重要文化財に指定されている貴重な仏像が数多く公開される。中でも注目なのが、普段は公開されていない「秘仏」の数々だ。大阪・葛井寺の国宝「千手観音菩薩坐像」は、十一のお顔、四十の大手、千一の小手、手のひらそれぞれに一眼を持つ、現存最古の千手観音像だ。実際に千の手を持つ千手観音像は極めて珍しい。江戸時代の出開帳以降、東京で公開されるのは初めてのこと。(展示期間は2月14日〜3月11日)。

国宝「千手観音菩薩坐像」奈良時代・8世紀 大阪・葛井寺蔵 展示期間:2月14日~3月11日

国宝「千手観音菩薩坐像」奈良時代・8世紀 大阪・葛井寺蔵 展示期間:2月14日~3月11日

見逃せない秘仏が勢揃いの本展。他にも、精緻な浮彫が美しい高さ約11cmほどの国宝「薬師如来坐像」(京都 仁和寺蔵)や、密教尊像らしい姿が特徴的な重要文化財「如意輪観音菩薩坐像」(兵庫・神呪寺蔵)、鎌倉時代の名品として名高い重要文化財「馬頭観音菩薩坐像」(福井・中山寺蔵)など錚々たる秘仏が揃う。

国宝「薬師如来坐像」円勢・長円作 平安時代・康和5年(1103) 京都・仁和寺蔵 ※展示替あり

国宝「薬師如来坐像」円勢・長円作 平安時代・康和5年(1103) 京都・仁和寺蔵 ※展示替あり


重要文化財「如意輪観音菩薩坐像」平安時代・10世紀 兵庫・神呪寺蔵

重要文化財「如意輪観音菩薩坐像」平安時代・10世紀 兵庫・神呪寺蔵


 重要文化財「馬頭観音菩薩坐像」鎌倉時代・13世紀 福井・中山寺蔵

重要文化財「馬頭観音菩薩坐像」鎌倉時代・13世紀 福井・中山寺蔵

弘法大師ゆかりの秘書を全帖一挙公開

超一級の展示品は仏像だけではない。絵画、書物、工芸品など仁和寺や御室派寺院に伝わる名品も紹介される。仁和寺の宗祖である弘法大師・空海が中国(唐)で修得した密教経典、儀軌などを書き写した国宝「三十帖冊子」(京都 仁和寺所蔵)も登場。空海のみならず、「三筆」の一人と称させる橘逸勢や唐の写経生らの書も含まれており、書道史上も重要なものと考えられている。会期中の2週間限定で三十帖全帖を一挙公開する。(他の期間は一部を展示予定)。

国宝「三十帖冊子」空海ほか筆 平安時代・9世紀 京都・仁和寺蔵 ※展示替あり

国宝「三十帖冊子」空海ほか筆 平安時代・9世紀 京都・仁和寺蔵 ※展示替あり

仁和寺・観音堂を展示室に再現!

現在、仁和寺では観音堂の解体修理が行われている。観音堂は修業の場であるため、通常は非公開で中に入ることはできない。本展覧会では観音堂に安置されている33体の仏像を展示するとともに、高精細画像によって堂内の壁画を再現。展示室で堂内の厳かな空気を体感することができる。

観音堂内部 撮影:横山健蔵

観音堂内部 撮影:横山健蔵

皇室との関わりが深く、平安時代の開創から日本の文化や歴史の形成に大きく関わってきた仁和寺。本展のために一堂に集められる仁和寺と御室派寺院の名宝は、見る者を魅了し、守り伝えられてきた仏教世界へといざなってくれることだろう。2018年の新春はこの貴重な展覧会からスタートすることをお薦めしたい。

イベント情報
特別展『仁和寺と御室派のみほとけ ー天平と真言密教の名宝ー』

日時:2018年1月16日(火)〜3月11日(日)
会場:東京国立博物館 平成館
開館時間:9:30~17:00(毎週金・土曜日は21:00まで)
※入館は閉館の30分前まで
休館日:月曜日(但し、2月12日(月・祝)は開館、2月13日(火)は休館)
観覧料:一般1,600円 大学生1,200円 高校生900円 中学生以下無料
公式サイト:
http://ninnaji2018.com/
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