時間を忘れさせてくれる空間『魔法の美術館』が大阪文化館・天保山で開催中

レポート
アート
2017.8.8

画像を全て表示(16件)

「魔法がつかえたら……」と、誰もが一度は思ったことがあるはず。そんな夢が叶うかもしれない展覧会が、この夏、大阪文化館・天保山で9月3日(日)まで開催されている。タイトルはずばり『魔法の美術館』。では早速、魔法の世界を覗いてみよう。

そこには17の魔法が

『shicihenge (シチヘンゲ)』田中陽/(C)you TANAKA

『shicihenge (シチヘンゲ)』田中陽/(C)you TANAKA

『shichihenge』 ある時は網目に

『shichihenge』  ある時は網目に

暗い会場、一歩入るとスクリーンには、「ん? モコモコした物体……」と思いきや、自分自身が動くと次の瞬間には網目模様に変わっている。「何だこれは?」と思いながら、むやみやたらに動いてしまう。手を挙げたり、体をよじったり様々なポーズが、おもしろい形になってスクリーンに映し出されている。
 
展覧会では、12組の作家の17の作品が展示されている。その中の、いくつかを紹介しよう。
『なげる、あてる、ひろがる』という作品の前には、子供も大人も、みんな必死でボールをスクリーン目指して投げている。この作品は、スイッチというアーティスト(グループ)の作品だ。投げたボールがスクリーンにあたると、そこに映像と音が生まれる。ボールが当たったところには、水紋のような形や、四角の模様が広がったりと、色々な形が写し出される。汗だくになる子供たちや、笑い転げる大人たち。世代問わず時間を忘れて楽しめる空間となっていた。

『portrait』 宮本昌典/田中陽/(C)masanori MIYAMOTO/you TANAKA

『portrait』 宮本昌典/田中陽/(C)masanori MIYAMOTO/you TANAKA

『portrait』肖像という名の作品の前には順番待ちの列ができていた。これは宮本昌典/田中陽の作品だ。椅子に腰掛けると、芸術的なタッチでに描かれた姿が額縁に現れる。しかも、横を向いたり、上を向いたり、舌を出したり、額縁の中の自分自身が勝手に動き出す。ゴッホが描いたようなタッチもあれば、青一色で描かれていたりと色々なパターンがあるようだ。「これがわたし?」と戸惑いながらも、ジッと見入ってしまった。

ワークショップにて(小松宏誠さんと風をテーマに動くオブジェを作ろう)

『七色小道』 坪倉輝明/(C)teruaki TSUBOKURA

『七色小道』 坪倉輝明/(C)teruaki TSUBOKURA

レポート当日、開催されていたワークショップを見させてもらった。出展作家の小松宏誠(こまつ こうせい)さんが考えた「風」がテーマとなったオブジェを、小学生20名と作っているところだった。

型紙を丁寧に写している参加者

型紙を丁寧に写している参加者

慎重に、慎重に。

慎重に、慎重に。

小松宏誠さん、指導中

小松宏誠さん、指導中

 ストローや紙を使って、ゆらゆら揺れるモビール作りは楽しそうで、こちらも手を動かしたくなる。作っている子供たちも、みんな集中して作業している。先ほどまで展覧会場でデジタル画像と戯れていたからか、手を動かして集中している子供たちの姿は、なかなか頼もしく思えた。

小松さんオリジナル鳥モチーフ

小松さんオリジナル鳥モチーフ

ワークショップの一コマ

ワークショップの一コマ

モビールに吊られる鳥のモチーフは、紙で作ったとは侮れないほど、揺れ方が優しく、そして美しい。下から見上げた時に光を通して明るくなるように、半透明紙を使用している。また鳥の形も、オリジナルで、揺れ方を様々な形で試した結果だそうだ。

小松宏誠に話を聞いた

『Lifelog_シャンデリア』小松宏誠/(C)kosei KOMATSU

『Lifelog_シャンデリア』小松宏誠/(C)kosei KOMATSU

――小松さんの作品は、鳥の羽根を使われているのが特徴だと思いますが、「揺れ」が大切な要素とされているのですね。

大学の卒展がきっかけで、「浮かせる」ことに興味を持ち始めました。浮くものを色々試しましたが、自分には羽根が一番しっくりきて、それ以来10年以上使っています。それと「鳥」自体に憧れています。飛ぶことができるとかではなく、人間にない進化を遂げいるかと思う反面、まったくそうでない部分があったり。そういうところに魅かれています。

――今回の『魔法の美術展』でも羽根を使った作品があって、部屋に入る前から影が見えて美しいと感じました。

それぞれ作品として成り立っていますが、部屋全体を1つの作品として考えてももらいたいと思って展示しています。全体の影が映るように配置していて、影の動きで風を感じてもらえたらと思っています。風と影をみてほしいです。

――1番大きな作品をみていても、徐々に影に見入ってしまいました。作品は、「自然」を表現しているのでしょうか。

今は、デジタルと自然の狭間にいる時代だと思うんです。その時代を表現したいと思っています。今回の展覧会の中でも自分は、その立ち位置にあると思っています。

――阪急梅田駅近くの阪急三番街にある作品「twinkle fruits」を拝見しました。こちらはどういった経緯で作られたのですか?

依頼いただいた作品に関しては、チームの中の一員という意識で仕事しています。社会の一員というか。依頼側との共同作業で、デザイン的な部分の担当者という意識です。自身の作品制作との2面を使い分けています。

――なるほど。あと三宅一生さんや、夏木マリさんともお仕事されていますね。

夏木さんは個展に来てくださり、作品を気に入っていただき、舞台『不思議の国の白雪姫』の美術に関わらせていただいて。舞台では、大きなリンゴを作り、それが割れて羽根が舞うオブジェを作りました。

――最後に、今後関西での展示の予定はありますか?

秋に万博公園前にあるニフレルで新作を展示する予定です。

――楽しみにしています。ありがとうございました。

魔法にかかる年齢に、制限はない

『色のある夢』藤本直明/(C)naoaki FUJIMOTO

『色のある夢』藤本直明/(C)naoaki FUJIMOTO

展覧会を通して感じたのは、『魔法の美術館』は、子供だけでなく、大人も存分に楽しめる展覧会だ。折しも同日、閉館後に大人対象の夜間鑑賞会が行われた。年代もバラバラで、友達同士、カップル、夫婦、親子、一人でと様々な人が、ボールを投げたり、各々が楽しんでいる。100名近い大人たちが、時間を忘れ遊ぶ姿を見ていると、“素直に楽しむ”そんなごく普通のことが何よりも楽しいということに気づかされた。

『.hito』田中陽/(C)you TANAKA

『.hito』田中陽/(C)you TANAKA   

キュビスム体験ができる!

『SplashDisplay』 的場やすし/山野真吾/徳井太郎 (C)yasushi MATOBA/shingo YAMANO/taro TOKUI 協力:電気通信大学小池研究室

『SplashDisplay』 的場やすし/山野真吾/徳井太郎 (C)yasushi MATOBA/shingo YAMANO/taro TOKUI 協力:電気通信大学小池研究室

取材・文=カワユカ  

イベント情報
魔法の美術館 見て、ふれて、遊べる体感型アート

開催期間: ~2017年9月3日(日)
開催時間:10:00~17:00(入館は16:30まで)
会  場:大阪文化館・天保山
◎詳しくは公式ホームページをご覧ください。http://www.ktv.jp/mahou/

 
シェア / 保存先を選択