「英国ロイヤル・オペラ・ハウス シネマシーズン2016/2017」見応え満点のアシュトン・トリプルビル。3名様に公演プログラムをプレゼント
真夏の夜の夢 (C) ROH.PHOTO Tristram Kenton Bill Cooper
「英国ロイヤル・オペラ・ハウス シネマシーズン2016/2017」の11作目『真夏の夜の夢/シンフォニック・ヴァリエーションズ/マルグリットとアルマン』が9月1日より上映されている。英国が誇る振付家、フレデリック・アシュトンの3作が今シーズンのバレエ上映の最後を飾る。
シェイクスピアの戯曲をもとにした『真夏の夜の夢』には、オベロン役にスティーブン・マックレーが、ティターニアには高田茜が出演。アシュトンのシンフォニック・バレエともいえる『シンフォニック・ヴァリエーションズ』には今人気、実力ともに絶賛を浴びているマリアネラ・ヌニェスとワディム・ムンタギロフが登場。そして『マルグリットとアルマン』は、これが引退公演となるゼナイダ・ヤノウスキーが、ロベルト・ボッレとともに渾身の踊りをみせてくれる。
さらにこの「英国ロイヤル・オペラ・ハウス シネマシーズン」ではすっかりお馴染みとなったダーシー・バッセルらの解説や、特別映像・インタビューも充実。非常に見応えのある内容であること間違いなしだ。
※本レポートの最後に英国ロイヤル・オペラ・ハウス現地より取り寄せた本トリプルビルのプログラム(英文)のプレゼント情報も。お見逃しなく!
■圧巻の存在感とキッチュな魅力。高田茜&マックレーの『真夏の夜の夢』
真夏の夜の夢 (C) ROH.PHOTO Tristram Kenton Bill Cooper
とにかくまず、マックレー演じるオベロンの存在感が圧倒的だ。登場した瞬間から舞台空間は「オベロンの森」となる。マックレーの妖精王は一挙手一投足すべてが威厳に満ち、森の絶対的支配者たる威厳をいかんなく発揮する。そしてサラ・ラムの降板でティターニアを演じることとなった高田茜が非常に魅力的。小気味よい動きは、女王の気品をしっかり保ちながらも愛らしく、魔法の花のしずくでロバのボトムに恋する表情には、コミカルななかにほのかな色香も垣間見えるよう。実にチャーミングなティターニアだ。
真夏の夜の夢 (C) ROH.PHOTO Tristram Kenton Bill Cooper
冒頭のインタビューで「音楽性の高い作品で、スピーディーな動き」とマックレーが語っていた通り、この舞台ではオベロン、ティターニア、妖精パックにロバのボトム、森に迷い込んだ若者たち等々、すべての登場人物の踊りや動きが非常に雄弁で軽快だ。メンデルスゾーンの音楽のフレーズ、音が台詞となり、笑いと共に綴られる舞台はまさに「演劇の国・英国」の面目躍如ともいえ、笑いながらも、唸らせられる。
■時代の狭間に誕生した『シンフォニック・ヴァリエーションズ』
シンフォニック・ヴァリエーションズ (C) ROH.PHOTO Tristram Kenton Bill Cooper
男女3人ずつの、6人のダンサーによって踊られるこの作品は1946年、アシュトンが第二次世界大戦後のロイヤル・オペラ・ハウス再開時に振り付けたものだという。
幕間のインタビューには当時のオリジナルメンバーの一人だったヘンリー・ダントン(98歳!)が登場し、当時の思い出を語る。
そんな話を聞いた後に観るこの踊りには、困難な時代と未来という、時代の狭間ならではの思いが込められていたのだろうかと感じてしまう。セザール・フランクの『交響的変奏曲』の流れるような旋律とともに、マリアネラ・ヌニェスとワディム・ムンタギロフをはじめとする6人のダンサーは粛々と、そしてクライマックスは堂々と華やかに、この踊りの魅力をたっぷりと披露する。
■「名女優」の最後の舞台『マルグリットとアルマン』
マルグリットとアルマン (C) ROH.PHOTO Tristram Kenton Bill Cooper
最後を飾る『マルグリットとアルマン』は、アレクサンドル・デュマ・フィスの小説『椿姫』に題材をとった作品だ。音楽は原作と同時代の作曲家であり、また「マルグリット」のモデルとなった女性とも交流があったと言われるフランツ・リスト「ピアノソナタ ロ短調」。ピアノにオーケストラを加えた編曲版だ。1963年の初演はマーゴ・フォンテインとルドルフ・ヌレエフが踊ったことでも知られている。
マルグリットを踊るゼナイダ・ヤノウスキーは、この舞台が最後となる、いわば“アデュー公演”だ。
舞台上映前の幕間インタビューではダーシー・バッセルとヤノウスキーが過去の映像とともに彼女のキャリアを振り返る。『白鳥の湖』のオデット、コンテンポラリー作品の数々、そしておそらく今後も語り継がれるであろう『不思議の国のアリス』のハートの女王の“名演”などが次々と映し出され、名ダンサーであると同時に名女優であったと、改めて感嘆する。
「アシュトンの作品はチームワークが大切。最後にそれを体感したかった」と語るヤノウスキーの言葉を受けてか、舞台は引退公演のお相手を務めるロベルト・ボッレをはじめ、すべてが一丸となったもの。渾身の演技で全てを出し切り、終演後の舞台上で抱き合うヤノウスキーとボッレの姿は、スクリーンでありながらも心からの拍手を送りたくなるほどであった。
長いカーテンコールとフラワーシャワー。そして舞台上には大勢のダンサーのほかカルロス・アコスタをはじめ様々な関係者が訪れ、ケヴィン・オヘア監督が最後に言葉をかける。
長年舞台を支えたプリンシパルへの敬意とねぎらいに溢れたセレモニーは、時間差はあれども、ともに名ダンサーを送り出す機会も与えてくれた。
『真夏の夜の夢/シンフォニック・ヴァリエーションズ/マルグリットとアルマン』パンフレット(提供:ガイエ)
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北海道 札幌シネマフロンティア 2017/9/2(土) ~2017/9/8(金)